氷の騎士は、還れなかったモブのリスを何度でも手中に落とす

みん

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目覚めともふもふ

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『流石は…ハルだな……』
『ハルね』

リュウさんに魔力の扱い方を教えてもらい始めてから3日。

『えっと…リュウさんの教え方が…上手だから──』

『くっ…そんなお世辞…要らないからな?それに、“リュウ”は止めてくれ!ハルにさん付けで呼ばれるのは、やっぱり気持ち悪いから、“リュウ”と呼んでくれ!』

『ごっ…ごめんなさいリュウさ───リュウ!』

どうやら、私は本当にチートな魔法使いのようで、この3日でそれなりに魔法を扱えるようになりました。

『さすがはあーじなの!!』

これまた驚きの一つ。以前、私のベッドに潜り込んでいた黒犬は、実は魔獣のフェンリルでした。なんでも、このネロの母親─ネージュと私が契約?を結んでいるらしく、子供のネロにも私の魔力が流れているそうです。
兎に角…この子がめちゃくちゃ可愛いんです!もふもふなんです!母親のネージュはもっともふもふらしいけど、どうやら、大樹の中で眠りに就いているらしく、まだ目覚めてはいないそうです。早く会ってみたいな─と思っています。

ネロは、私の魔法がうまくいくと、私と一緒になって喜んでくれます。

ーめちゃくちゃ可愛いです!!ー

と、ネロをワシャワシャと遠慮なく撫で回した。






今日も1日が終わり、お風呂も入って後は寝るだけ─と言う時間。

『……?』

何となく…何かは分からないけど、この、寝る前の時間になると、ポッカリと胸?に穴が空いた様な感覚に陥る。

『魔力を使い過ぎたのかなぁ?』

何かが足らない?
でも、分からない。
忘れてしまった記憶の中に、何か大切なモノがあったのだろうか?

『いつか…その記憶も思い出せるかなぁ?』

チクリと痛みを感じながら、布団に潜り込んだ。








『───主……我を……んで…しい。』








『──ん?』

夢の中で、誰かに呼ばれたような気がして目を開けると──

『あーじ、ままがよんでるの!』

『ネロ!?』

目の前に、尻尾をブンブンと振っているネロが居た。

『ママが呼んでるって…あの大樹で眠ってるって言ってた…ネージュの事?』

『そうなの!あーじがよんでくれるのを、まってるの!』

今は真夜中。ミヤさんも…寝てる…よね?勝手に外に出ても…大丈夫かなぁ?

『うん。魔法は…想像力─だったよね?ネロ、私の側に来てくれる?』

『いいの!』

と、ネロがベッドの上に居る私の足の上に乗って来た。チョコンと座るネロが…本当に可愛いです!

『えっと…ネロと一緒に、あの大樹の元に──』

と、転移する事を想像すると──

『えっ!?でき…ちゃった!?』

私の周りに魔法陣が現れて、そこから淡い水色の光りが溢れ出した。

『あーじのまほうは、いつもきれいなの!』

と、嬉しそうに尻尾をフリフリさせるネロを目にしたのと同時に、一瞬の浮遊感に襲われた。






はい。今、目の前に、大樹があります。
はい。転移、成功しました!

『モブなのにチート?私、大丈夫??』

何となく首を傾げていると

『あーじ、ままをよんでほしいの。まま、まってるの。』

『はっ!そうだった!ごめんね、ネロ。でも…“呼ぶ”って…どうやって?』

そっと大樹に手をあてる。




『主…我の名を────』





とても、懐かしい声が響いた。



『────ネージュ……私─コトネの処に…還っておいで?』



自然と口から出た言葉だった。ネージュの事は覚えてはいないけど…私の元へと…還って来て欲しい─と思ったから。

すると、その大樹からキラキラと光りが溢れ出して、そこから、真っ白な毛並みの魔獣が現れた。

『主!ネロ!』
『まま!』

ネロが、その魔獣─多分ネージュ…だよね?に飛び付く。

『まま!まま!よかったの!』

『ネロ、ずっと我の側に居てくれてありがとう。』

『まま!』

今迄、ネロはずっと笑っていたけど…今は母親であるネージュに飛びついたままで、顔をネージュにスリスリしながら…泣いている。

ーそう言えば…ネロはまだ幼獣だったっけ?ー

きっと、今迄我慢していたんだろう。



暫くの間泣いていたネロも、ようやく安心したのか、ネージュにしがみついたまま寝てしまっていた。

『えっと…ネロは寝ちゃった?』

『あぁ、寝てしまったな。ネロには…申し訳無い事をしたな。』

『あの…ネージュ?私……』

ーあなたの事を覚えていないー

と言おうとすると

『主。主と我は名を交し魔力が繋がっている故、喩え我が眠りに就いていたとしても、主に何があったのかは分かっている。我の事も…覚えていないのであろう?』

『…ごめんなさい…。』

『主、謝る必要はない。ただ…記憶が無くとも、このまま我の主で居てくれぬか?我は…これからも主の側に居たい。』

ネージュの耳と尻尾が、一気にシュンと垂れ下がる。

『ゔっ──────っ』

ーえ!?何!?この子、可愛い過ぎませんか!?ー

『ネージュ!勿論!私の方こそ、記憶が無くなったけど、一緒に居てくれる?』

すると、ネージュの耳がピンッと立ち、尻尾はブンブンと動き出した。

『勿論、我は…ずっと主の側に居る!』

そこから、私はネージュを思う存分もふもふした。




ー親子揃って、可愛いです!ー



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