22 / 62
目覚める
しおりを挟む
あの騒動から3日。
ハルもネージュも、まだ眠ったままだった。
「ハルの事…宜しくお願いします。」
「ええ。任せてちょうだい。」
ハルが倒れてからずっと側に居たエディオルも、そろそろ仕事を──と言う事になり、ランバルトの計らいで、代わりにミヤがハルの元へとやって来た。ついでに、改めて森の浄化をすると言う事もあったからだ。
『それじゃあ、私も主と王都に戻るから、ママの事は頼んだよ?』
『わかったの!まかせてなの!パパは、おしごとがんばってなの!』
ノアとネロが鼻と鼻をくっつけた後、ノアは主であるエディオルと共に、王都へと戻って行った。
『まま…もうすこしなの……』
ネロはそのまま大樹の根元に身を寄せて、尻尾をフリフリさせながら目を瞑った。
*ハルの部屋にて*
「私には、魔力がいまいち分からないのだけど、ハルの今の状態はどうなの?」
聖女としはチートなミヤであっても、魔力に関してはイマイチ分からない。
「もともと、ハルの魔力量は多かったから、その分回復するのにも時間が掛かっているんだと思います。見た感じでは、八割程は回復してますから、いつ目が覚めてもおかしくないでしょうね。ハルの存在が大き過ぎて忘れがちですが、クズ──リュウも魔法使いで結構な魔力持ちだから、アレもアレで回復迄時間が掛かってるんですよ。」
「リュウね…」
ー王城に転移した後、リュウの存在を忘れてて、その分更に治療が遅れたから──とは…言えないわねー
と、ミヤは心の中で…少しだけ反省した。
「ところで、ゼンさんもちゃんと休んでいるの?エディオルさんもそうだけど、ゼンさんもハルが絡むと周りが見えなくなるから。それこそ、エディオルさんやゼンさんが倒れたら、ハルが悲しむわよ?」
「昨日迄は、後始末が少し大変だったんです。それで、あっちは、事が事ですから、一旦国王預かりとなりました。明日、魔導師長自らが迎えに来るそうですよ。」
今回騒動を起こしたのは、某国─デライト王国の王族の末裔だった事と、騒動が起きた所がウォーランド王国の重要な領地であった事、更には王太子の婚約者であり聖女が巻き込まれたと言う事で、国王のもとに裁きを受ける事となった。
とは言っても、最終的には、パルヴァンが締め上げる─と言う形にはなるだろう─と、誰もが思っている。
「でも、確かに。私が倒れればハルが悲しみますね。ミヤ様、少しだけ…ハルをお願いしても良いですか?少し…体を休めて来ます。」
「ふふっ。私は大丈夫よ。ハルの事は任せて。」
「ありがとうございます。それでは…失礼致します。」
ゼンはミヤに頭を下げてから、部屋から出て行った。
「…ハル……」
ベッドの上で寝ているハルは、3日前は真っ白と言っていい程の顔色だったが、今ではすっかり顔色も元に戻っていて、寝ている理由を知らなければ、ただただ普通に寝ているだけ─の様に見える程だった。
「他人の事は言えないけど…ハルって、本当に…トラブル体質よね?」
そっとハルの髪を撫でる。
「皆待ってるからね?」
*****
ミヤがパルヴァンに来て2日後。
ミヤが、寝ているハルをルナと、ハルの様子を見に来たグレンに任せて朝食を取っていた時だった。
「きゃぁ───っ」
と、微かな悲鳴の様な声が邸内に響いた。
それにいち早く反応したのがゼン。それに次いで、ミヤも食事中にも関わらず立ち上がり、ゼンの後を追うように食堂から走って出て行った。
ー今の声…ハルの声…よね!?ー
ようやく目が覚めたのかもしれない。
逸る気持ちを抑えながら、ミヤはハルの部屋へと急いだ。
「ハルが…目を覚ましたの!?」
と、ハルが居る部屋へと入って行くと──
「ミヤ……様」
何故か悲しそう?な顔をしているルナと、身体が固まったように動かないゼンさんと───
グレン様にしがみついて震えているハルが居た。グレン様に至っては、酷く困惑しているようだった。
「えっと…皆どうしたの?ハルが…目を覚ましたのよね?」
すると、グレン様にしがみついていたハルが、ゆるゆると私の方へと顔を向けると───
『……おねえ…さん?』
「え?」
何故か、ハルが軽く目を瞠ってから日本語で話し掛けて来た。
『えっと…ハル、目が覚めたのね。身体は大丈夫なの?』
何か意図があるのか?と思い、私も久し振りに意識をして日本語を口にする。
『!お姉さん!!』
すると、グレン様から離れて、今度は私の方へと走って来て、そのままの勢いで私に抱きついて来た。
『─っ!?ちょっと…ハル?一体どうしたの?』
『お姉さんが居て…良かった。目が覚めたら…知らない部屋に居たから、ひょっとして…私だけ何処かにとばされたのかなって。』
『知らない部屋?』
ギュッと、震えながら必死にしがみついて来るハル。
『ハル、ちょっと落ち着いて?私の顔を…見て?』
私の胸にくっつけている顔を、私の方へと上げるように促すと、しがみついたままに顔だけを上げる。
『ハル…よね?知らない部屋って…どう言う───』
『ここ、王城の…私の部屋じゃないですよね?』
と、ハルは震えるような声でそう言った。
ハルもネージュも、まだ眠ったままだった。
「ハルの事…宜しくお願いします。」
「ええ。任せてちょうだい。」
ハルが倒れてからずっと側に居たエディオルも、そろそろ仕事を──と言う事になり、ランバルトの計らいで、代わりにミヤがハルの元へとやって来た。ついでに、改めて森の浄化をすると言う事もあったからだ。
『それじゃあ、私も主と王都に戻るから、ママの事は頼んだよ?』
『わかったの!まかせてなの!パパは、おしごとがんばってなの!』
ノアとネロが鼻と鼻をくっつけた後、ノアは主であるエディオルと共に、王都へと戻って行った。
『まま…もうすこしなの……』
ネロはそのまま大樹の根元に身を寄せて、尻尾をフリフリさせながら目を瞑った。
*ハルの部屋にて*
「私には、魔力がいまいち分からないのだけど、ハルの今の状態はどうなの?」
聖女としはチートなミヤであっても、魔力に関してはイマイチ分からない。
「もともと、ハルの魔力量は多かったから、その分回復するのにも時間が掛かっているんだと思います。見た感じでは、八割程は回復してますから、いつ目が覚めてもおかしくないでしょうね。ハルの存在が大き過ぎて忘れがちですが、クズ──リュウも魔法使いで結構な魔力持ちだから、アレもアレで回復迄時間が掛かってるんですよ。」
「リュウね…」
ー王城に転移した後、リュウの存在を忘れてて、その分更に治療が遅れたから──とは…言えないわねー
と、ミヤは心の中で…少しだけ反省した。
「ところで、ゼンさんもちゃんと休んでいるの?エディオルさんもそうだけど、ゼンさんもハルが絡むと周りが見えなくなるから。それこそ、エディオルさんやゼンさんが倒れたら、ハルが悲しむわよ?」
「昨日迄は、後始末が少し大変だったんです。それで、あっちは、事が事ですから、一旦国王預かりとなりました。明日、魔導師長自らが迎えに来るそうですよ。」
今回騒動を起こしたのは、某国─デライト王国の王族の末裔だった事と、騒動が起きた所がウォーランド王国の重要な領地であった事、更には王太子の婚約者であり聖女が巻き込まれたと言う事で、国王のもとに裁きを受ける事となった。
とは言っても、最終的には、パルヴァンが締め上げる─と言う形にはなるだろう─と、誰もが思っている。
「でも、確かに。私が倒れればハルが悲しみますね。ミヤ様、少しだけ…ハルをお願いしても良いですか?少し…体を休めて来ます。」
「ふふっ。私は大丈夫よ。ハルの事は任せて。」
「ありがとうございます。それでは…失礼致します。」
ゼンはミヤに頭を下げてから、部屋から出て行った。
「…ハル……」
ベッドの上で寝ているハルは、3日前は真っ白と言っていい程の顔色だったが、今ではすっかり顔色も元に戻っていて、寝ている理由を知らなければ、ただただ普通に寝ているだけ─の様に見える程だった。
「他人の事は言えないけど…ハルって、本当に…トラブル体質よね?」
そっとハルの髪を撫でる。
「皆待ってるからね?」
*****
ミヤがパルヴァンに来て2日後。
ミヤが、寝ているハルをルナと、ハルの様子を見に来たグレンに任せて朝食を取っていた時だった。
「きゃぁ───っ」
と、微かな悲鳴の様な声が邸内に響いた。
それにいち早く反応したのがゼン。それに次いで、ミヤも食事中にも関わらず立ち上がり、ゼンの後を追うように食堂から走って出て行った。
ー今の声…ハルの声…よね!?ー
ようやく目が覚めたのかもしれない。
逸る気持ちを抑えながら、ミヤはハルの部屋へと急いだ。
「ハルが…目を覚ましたの!?」
と、ハルが居る部屋へと入って行くと──
「ミヤ……様」
何故か悲しそう?な顔をしているルナと、身体が固まったように動かないゼンさんと───
グレン様にしがみついて震えているハルが居た。グレン様に至っては、酷く困惑しているようだった。
「えっと…皆どうしたの?ハルが…目を覚ましたのよね?」
すると、グレン様にしがみついていたハルが、ゆるゆると私の方へと顔を向けると───
『……おねえ…さん?』
「え?」
何故か、ハルが軽く目を瞠ってから日本語で話し掛けて来た。
『えっと…ハル、目が覚めたのね。身体は大丈夫なの?』
何か意図があるのか?と思い、私も久し振りに意識をして日本語を口にする。
『!お姉さん!!』
すると、グレン様から離れて、今度は私の方へと走って来て、そのままの勢いで私に抱きついて来た。
『─っ!?ちょっと…ハル?一体どうしたの?』
『お姉さんが居て…良かった。目が覚めたら…知らない部屋に居たから、ひょっとして…私だけ何処かにとばされたのかなって。』
『知らない部屋?』
ギュッと、震えながら必死にしがみついて来るハル。
『ハル、ちょっと落ち着いて?私の顔を…見て?』
私の胸にくっつけている顔を、私の方へと上げるように促すと、しがみついたままに顔だけを上げる。
『ハル…よね?知らない部屋って…どう言う───』
『ここ、王城の…私の部屋じゃないですよね?』
と、ハルは震えるような声でそう言った。
31
お気に入りに追加
1,056
あなたにおすすめの小説
異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)
深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。
そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。
この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。
聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。
ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。
召喚から外れたら、もふもふになりました?
みん
恋愛
私の名前は望月杏子。家が隣だと言う事で幼馴染みの梶原陽真とは腐れ縁で、高校も同じ。しかも、モテる。そんな陽真と仲が良い?と言うだけで目をつけられた私。
今日も女子達に嫌味を言われながら一緒に帰る事に。
すると、帰り道の途中で、私達の足下が光り出し、慌てる陽真に名前を呼ばれたが、間に居た子に突き飛ばされて─。
気が付いたら、1人、どこかの森の中に居た。しかも──もふもふになっていた!?
他視点による話もあります。
❋今作品も、ゆるふわ設定となっております。独自の設定もあります。
メンタルも豆腐並みなので、軽い気持ちで読んで下さい❋
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
【完結】聖女召喚の聖女じゃない方~無魔力な私が溺愛されるってどういう事?!
未知香
恋愛
※エールや応援ありがとうございます!
会社帰りに聖女召喚に巻き込まれてしまった、アラサーの会社員ツムギ。
一緒に召喚された女子高生のミズキは聖女として歓迎されるが、
ツムギは魔力がゼロだった為、偽物だと認定された。
このまま何も説明されずに捨てられてしまうのでは…?
人が去った召喚場でひとり絶望していたツムギだったが、
魔法師団長は無魔力に興味があるといい、彼に雇われることとなった。
聖女として王太子にも愛されるようになったミズキからは蔑視されるが、
魔法師団長は無魔力のツムギをモルモットだと離そうとしない。
魔法師団長は少し猟奇的な言動もあるものの、
冷たく整った顔とわかりにくい態度の中にある優しさに、徐々にツムギは惹かれていく…
聖女召喚から始まるハッピーエンドの話です!
完結まで書き終わってます。
※他のサイトにも連載してます
教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
海空里和
恋愛
王都にある果実店の果実飴は、連日行列の人気店。
そこで働く孤児院出身のエレノアは、聖女として教会からやりがい搾取されたあげく、あっさり捨てられた。大切な人を失い、働くことへの意義を失ったエレノア。しかし、果実飴の成功により、働き方改革に成功して、穏やかな日常を取り戻していた。
そこにやって来たのは、場違いなイケメン騎士。
「エレノア殿、迎えに来ました」
「はあ?」
それから毎日果実飴を買いにやって来る騎士。
果実飴が気に入ったのかと思ったその騎士、イザークは、実はエレノアとの結婚が目的で?!
これは、エレノアにだけ距離感がおかしいイザークと、失意にいながらも大切な物を取り返していくエレノアが、次第に心を通わせていくラブストーリー。
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
『完結』孤児で平民の私を嫌う王子が異世界から聖女を召還しましたが…何故か私が溺愛されています?
灰銀猫
恋愛
孤児のルネは聖女の力があると神殿に引き取られ、15歳で聖女の任に付く。それから3年間、国を護る結界のために力を使ってきた。
しかし、彼女の婚約者である第二王子はプライドが無駄に高く、平民で地味なルネを蔑み、よりよい相手を得ようと国王に無断で聖女召喚の儀を行ってしまう。
高貴で美しく強い力を持つ聖女を期待していた王子たちの前に現れたのは、確かに高貴な雰囲気と強い力を持つ美しい方だったが、その方が選んだのは王子ではなくルネで…
平民故に周囲から虐げられながらも、身を削って国のために働いていた少女が、溺愛されて幸せになるお話です。
世界観は独自&色々緩くなっております。
R15は保険です。
他サイトでも掲載しています。
聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件
バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。
そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。
志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。
そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。
「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」
「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」
「お…重い……」
「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」
「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」
過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。
二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。
全31話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる