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ネロ

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*時間は少し遡り、ハル達がパルヴァン辺境地へと行く日の朝*






『危険は無いと思うが、ネロは蒼の邸ここでお留守番をしてくれ。』

『ネロ、おるすばん、するの!できるの!』

お座りして鼻先を少し上に向けて、エッヘンみたいに得意気な顔をするネロ──は、めちゃくちゃ可愛いです!!

「ネロ、昼間、何かあったり寂しかったりしたら、邸の方に来て良いってバートさんが言ってたから、その時は遠慮なく邸に行って良いからね?」

『わかったのー』

更に尻尾をフリフリとさせるネロ──本当に可愛いしかないよね!?

と、ワシャワシャ撫で回したいのをグググッと我慢して、後ろ髪引かれまくられ状態で、私はネージュとパルヴァン辺境地へ転移した。









*浄化当日*


『ネロ、私も今から主と一緒に登城するけど、時間ができれば戻って来るから。お留守番は大丈夫かな?』

『ネロ、おるすばんできるの!いいこでまってるの!』

『ふふっ。分かった。』

ノアが目を細めて、鼻をネロの頬にスリスリとさせてから、エディオルを乗せて城へと向かった。







その日はとても天気の良い穏やかな日だった。

ネロは蒼の邸では孫?みたいな扱いで、使用人皆がネロの相手をしに庭へとやって来ては、ネロは楽しそうに走り回っていた。
そんなネロもまだまだ幼獣な訳で、お昼になる前に、走り回って疲れたのか、庭にある木の根元でスピスピと寝てしまっていた。



そんなネロの耳が、ピクピクと反応する。

『───まま?』

目を開けて、周りをキョロキョロと見渡す。
それから続いて、身体もピクピクと反応する。

『あーじ?』

そのままネロはスッと立ち上がり、キラキラと身体が輝いたかと思えば、ネロは擬人化した姿になっていた。

『いかなきゃなの!』

と、ネロは気合いを入れるように握り拳を作って、そこからパタパタと走り出した。








*王城内、ランバルト執務室*


「今日の浄化は、午前中の予定だったか?」

「そうだね。予定では、もう始まってるんじゃないかなぁ?あーでも、魔法使いリュウが居なかったら、私も行けたのになぁ…残念だ。」

執務中のランバルトが、誰とも言わず問い掛けると、クレイルがソレに答えた。

「クレイルは、パルヴァンに行きたかったのか?」

「そりゃあ行きたかったよ。あの、聖女様の浄化している時の姿って…本当に綺麗なんだよ。だから、また見てみたかったんだよね──って、ランバルトは…見た事ないんじゃない?」

「「え?」」

クレイルの言葉に、同じ執務室に居たエディオルとイリスが驚いたように声を出した。

「───あぁ……見た事が…無い。私だって…今回はこっ……婚約者として同行したかった!!」

「あーうん。これから一緒に居られるんだから、そのうち…見れる時が来るよ。元気だせよ?ランバルト!」

バシバシッと、クレイルは励ますようにランバルトの背中を叩いた。






「さぁ、ランバルト、そろそろ執務に戻ろうか?」

「分かった。」

ショゲていたランバルトが落ち着いて来た頃、イリスが声を掛けて仕事に戻ろうとした時

コンコンッ

「あのっ…すみません!エディオル=カルザイン様はいらっしゃいますか??」

「ん?あぁ、居るぞ。入って来て良いぞ。」

と、ランバルトが扉の外に居る来訪者に声を掛けると、困惑した顔をした騎士が入室して来た。

「あの…5歳位の黒髪で黒目の女の子が“氷の騎士とパパに会いたいの!”と、門の所で騒いでいるようで…。あの…エディオル様…お知り合いで──」
「今すぐその子を連れて来てくれ!!」

と、エディオルは焦る気持ちを抑えて、その騎士に指示を出した。




『こおりのきし!たいへんなのー!』

と、予想通り、擬人化したネロが俺に抱きついて来た。

「ネロ!何があった?何が大変なんだ?」

『ままのまりょくがとぎれたの!そしたら、あーじのまりょくも、よわくなったの!なにか、あったの!』

「まま─ネージュ殿の魔力が途切れて…ハルの魔力が…弱く…なった?」

ーどう言う事だ?途切れる?弱くなった?ー

「エディオル、ネロは、母親であるネージュ殿と、ネージュ殿と名を交したハル殿の魔力を取り込んで成長しただろう?だから、ネロもある意味ネージュ殿とハル殿の魔力と繋がっているんだ。だから、ネロは何かを…感じ取ってる可能性がある。“途切れた”も“弱まった”も…ヤバいかもしれない。急いでパルヴァンに行った方が良い。ランバルト、兎に角、私とエディオルでパルヴァンに転移して行く。ひょっとしたら、ミヤ様達は王城こっちに転移して来るかもしれないから、城に待機していてくれ。それと、ネロをノアパパの所に連れて行ってあげて欲しい。」

クレイルが一気に話した後、その場で転移魔法陣を展開させた。





ただ、一気にパルヴァン辺境地へとは…コトネ以外には無理だと言う事で、王都のパルヴァン邸へとやって来た。

「ロン、ハルに危険が迫ってるかもしれないから、ロンもパルヴァン辺境地に転移して、グレン様とゼン殿に伝えてくれ。俺は、先にクレイルと森へ行く。」

「分かりました。エディオル様、ハルを頼みましたよ?」

「あぁ──」



ーコトネ、どうか…無事でいてくれ!ー










*パルヴァンにて*


「結界が張られてるけど──これ位のモノなら…任せろ!」

パルヴァンの森に張られいた結界は、そこそこのモノだった。規格外なコトネのせいで忘れていたが、クレイルはこの国一番の魔導師。その結界もすぐに解除できた。

そして、俺の目に──視界に入り込んだのは──



魔力封じの枷を嵌められて、サリスに捕まっているコトネの姿だった。






「お前は────覚悟ができているんだろうな?」




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