氷の騎士は、還れなかったモブのリスを何度でも手中に落とす

みん

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クレイルともふもふ

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「来月は、その視察に同行しないといけないから、蒼の邸ここにもあまり帰ってこれないと思う。」

ディと一緒にノアに騎乗している時に、リュウ達の視察の話になった。

「やっぱりそうなんですね。その、視察団?が来る前からも、忙しくなる感じですか?」

「いや、その辺はランバルト達が気を利かせてくれて、2日の連休をもらったから、久し振りに美味しい物でも食べに行くか?」

「はい!行きます!」

嬉しくて、パッと顔を上げてディを見上げると

「─っ!」

一瞬のうちに、掠めるだけのキスをされた。

「なっ!!ここ!そっ…外だからね!?」

腰に回されているディの腕をペシペシと叩く。

「まだ慣れないか?」

「慣れる訳無いよね!?ディの思考はどうなってるの!?」

ー本当に勘弁して欲しい!誰かに見られたら…恥ずかしいよね!?ー

グリグリと頭をディの胸に擦り付け───って、これも外でやる事じゃないよね!?

「───ノア、今すぐ蒼の邸に帰ろう。」

『分かりました。』

ノアは“ふふっ”と笑ってから、少しスピードを上げて走り出す。

「え?何で?もう少し───」

「煽ったコトネが悪い。」

「ひゃいっ!?煽っ!?」

ディが私の耳もとで囁く。

ーえー!?煽ってませんけど!?何で!?ー


はい、勿論、私の抵抗虚しく────



問答無用で夫婦の部屋へと運ばれました。

どうしてか?それは、察して下さい。







次の日、少し遅めの朝食を夫婦の部屋で──ディに全体重を掛けて食べさせてもらっています。何故か?は、訊かないで下さい。察して下さい。コレも、ルーティンになりつつあります。




「視察の最後の場所がパルヴァンの森なんですね。」

「あぁ。あの森と海を挟んで隣国と繋がっているからな。昔は、戦地になった場所でもあるから。」

1ヶ月の視察では、特に農作業で繁栄している領地を主に見て回り、最後、帰国前に特殊とされるパルヴァンの森を見て帰るそうだ。勿論、未だに穢れが出ていないから入る事が許されたんだろう。

「ひょっとして、ミヤさん─聖女様も?」

「今回の視察は、ランバルトの指揮下で行われるんだが、婚約者となった聖女のミヤ様も同行する事になった。」

「なるほど。あー…だから、余計に王太子様は浮かれてるんですね?クレイル様が、“浮かれ過ぎて気持ち悪い”って言ってました。」

「クレイル……、ネロを撫で回しに来たのか?」

「はい。もふもふしてましたね。本当に、クレイル様ってネロが好きですよね?その気持ち、分かりますけどね。あれ以上の癒やしはないですからね!」

「リスになったコトネも…癒しだったけどな?」

少し意地悪そうに笑いながら、私の頬をツンツンとつついてくる。

「もう、リスにはなりませんからね!?」

もう二度と、変なモノは口にしません!やっぱり、今度リュウに何か仕返しでもしよう!と、心に決めた事は内緒にしておきます。

「ご馳走様でした。ディも、そろそろ仕事に行く準備をする時間だよね?」

「はぁ─…もう少しこのままコトネと一緒に居たい。」

と、お姫様抱っこ宜しくな私をギュッと抱きしめてくるその腕を、ペシペシと叩く。

「今度の休みの日は、ゆっくりと一緒に居られますから。楽しみにしてますね。」

「ゔっ──無自覚に煽って来るから質が悪いよなぁ…」

「ん?何か言いましたか?」

「何でもない。兎に角、休みの日は俺も楽しみにしている。」


それから、ディはルナさんとリディさんに私を任せてから登城した。







「あれ?クレイル様、また来てたんですか?」

お昼前に、ネージュの元に行くと、今日もまたクレイル様が来ていた。

「おはよう、ハル殿。今日もハ──ネロは可愛いね。」

『ありがとーなのー』

クレイル様がもふもふしているのを、ネロは嬉しそうに尻尾を振ってされるがままになっている。

ーコレが乙女ゲームなら、2人は結ばれそうだよね?ー

それは“有り得ない!”と、リュウとネージュに一蹴されたけど。ちょっぴり残念─なんて、思ってませんからね?

「あ、クレイル様も、来月の視察には同行するんですか?」

「同行するよ。一応、ランバルトとミヤ様の護衛も兼ねてだけどね。でも、そうなると、来月はなかなかネロに会いに来れないから、いまのうちにもふもふしておこうと思ってね。」

『まどーし、しばらくこれない?』

綺麗な真っ黒なフワフワな毛並みをしたネロが、クレイル様を見上げながらコテンと首を傾げる。

「「可愛いーっ!!」」

とクレイル様とハモった後、2人でネロをワシャワシャと名撫で回すと、ネロは『きゃーぁ』と、また尻尾をフリフリと喜んだ。



それから、満足した?クレイル様が

「ネロ、暫くは来れないけど、また絶対に来るからね?」

と言うと──

『くだもの、まってるのー』

「「……果物………」」





ーあぁ、やっぱり、本当にネロがクレイル様に懐いているのは…餌付け…されてたからなんだねー

と、ちょっぴり胸が痛くなったのは気のせいにしておきます。




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