巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん

文字の大きさ
196 / 203
ー余話ー

ゼン

しおりを挟む
時は少し遡り、ゼンが王都のパルヴァン邸で、ミヤとハルと再会した日─



『あの…ゼンさん。黙って居なくなってすみませんでした。あの時は何て言うか…心が疲れちゃってたみたいで…。』

ハル様は何も悪くないのに、俺に謝って来た。ハル様は一番の被害者なのに。ハル様の横でミヤ様も苦笑している。

ーハル様は、本当にお人好し過ぎるなー

「心が疲れちゃって─か…」

自分の力だけで元の世界に還ったと聞いて驚いた。それ程の─規格外の魔力を持つハル様。だのに、攻撃魔法は一切使えない。
普段はコロコロと表情を変えて、思っている事が全て顔に出るのに。

心が壊れる前に、聖女様達に会えて…本当に良かった。そして、またこの世界に戻って来てくれたのだ。また、娘が戻って来てくれた─ような感覚。

ー今度こそ、俺の側に居る限りはハル様を見守っていこうー









と思っていたが──






「外堀埋めが、完璧過ぎないか?」

「──何の事だか?」

俺の目の前で、澄ました顔をするエディオル=カルザイン。グレン様を始め、ハル様の保護者的な人物のほぼ全員が、このエディオルをハル様の相手として認めている。理由だって解っている。このエディオルは、ハル様が巻き込まれて来た時から、ずっとハル様に想いを寄せていたのだ。そして、ハル様の恩人でもある。そのハル様自身も─最近では…このエディオルに…少し…ほんほ少しだが、好意を持ち始めている事も知っている。

ー娘を男に取られる心境とは…辛いものがあるー

ハル様には…まだ早くないか?早過ぎるだろう!?

「少し─攻め過ぎじゃないか?ハル様も、困っていただろう?それに─抱き付きたくなる気持ちが分かるとは─どう言う意味だ?」

自然と声のトーンが下がってしまった。

「…遠慮して…どうなった?俺は…、ハル殿を失い掛けたんだ。ほんの少しだけだが、ハル殿に近付けたと思っていたのに。もう、あんな思いはしたくないんです。俺は、ハル殿しか要らない。」

エディオルは、俺の目を真っ直ぐに見据えながら言った。

ーあぁ、本当に、ハル様が好きで仕方無いのかー

「俺だって、反対している訳じゃないからな?ただ─前にも言った事があったと思うが…お前にやるには…まだ早過ぎる─と思っているだけだ。」

「──知ってます。分かってます。」

エディオルは苦笑する。

本当に、これは俺の我が儘だ。それに─

『主を取られたくない』

と、レフコース殿が“待った”を掛けるのでは?と期待していたが─

まさかのメス─女性だった事実。魔物であれ、口調がおじさんであれ、心が女性ならば、そりゃあ主の恋を応援するよなぁ─。

「まぁ…あれだけあからさまに態度で示しているのに、ハル様にはイマイチ届いていないと言うのは面白─可哀想ではあるがな─。」

「──良いんです、それで。それもハル殿の可愛らしいところなので…」

ーちっ。惚気られたー

確かに、言っている事は理解できるから許そう。

「はぁ──ここまで素直に出られると…苛め甲斐もないな。」

「あぁ─俺を苛めている自覚はあったんですね。」

「──エディオル…殿も…言うようになったな。」

「ゼン殿には…遠慮は必要無いと分かりましたからね。」

ーふん。面白いな。これ位じゃなければ、安心してハル様を任せられないー

「兎に角、ハル様が嫌がる事だけはするなよ?」

「──善処します。」

ー善処って何だ!?今迄何をして来たんだ!?ー



『主が小さくて可愛く見えるのだ。騎士もそうであろう?小さくて可愛くて─抱き付きたくなるだろう?』

『あぁ、確かにそうだな。ネージュ殿の言う事─よく分かるよ?』



「──エディオル。明後日にでも…少し…手合わせでもしようか?しよう─するぞ。分かったな?」

「──拒否権は……」

「無いに決まっているだろう。明日ではなく、明後日にしてやってるんだ、感謝してもらいたい位だ。」

「──ありがとう……ございます。」



大人気ない事は分かっている。エディオルもハル様もいい大人だ。抱き付く、抱き締める位は普通なんだろうが…


としては…辛過ぎるー












しおりを挟む
感想 152

あなたにおすすめの小説

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~

魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。 ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!  そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!? 「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」 初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。 でもなんだか様子がおかしくて……? 不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。 ※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます ※他サイトでも公開しています。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

【完結】私を忘れてしまった貴方に、憎まれています

高瀬船
恋愛
夜会会場で突然意識を失うように倒れてしまった自分の旦那であるアーヴィング様を急いで邸へ連れて戻った。 そうして、医者の診察が終わり、体に異常は無い、と言われて安心したのも束の間。 最愛の旦那様は、目が覚めると綺麗さっぱりと私の事を忘れてしまっており、私と結婚した事も、お互い愛を育んだ事を忘れ。 何故か、私を憎しみの籠った瞳で見つめるのです。 優しかったアーヴィング様が、突然見知らぬ男性になってしまったかのようで、冷たくあしらわれ、憎まれ、私の心は日が経つにつれて疲弊して行く一方となってしまったのです。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

処理中です...