巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について

みん

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ー余話ー

ゼン

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時は少し遡り、ゼンが王都のパルヴァン邸で、ミヤとハルと再会した日─



『あの…ゼンさん。黙って居なくなってすみませんでした。あの時は何て言うか…心が疲れちゃってたみたいで…。』

ハル様は何も悪くないのに、俺に謝って来た。ハル様は一番の被害者なのに。ハル様の横でミヤ様も苦笑している。

ーハル様は、本当にお人好し過ぎるなー

「心が疲れちゃって─か…」

自分の力だけで元の世界に還ったと聞いて驚いた。それ程の─規格外の魔力を持つハル様。だのに、攻撃魔法は一切使えない。
普段はコロコロと表情を変えて、思っている事が全て顔に出るのに。

心が壊れる前に、聖女様達に会えて…本当に良かった。そして、またこの世界に戻って来てくれたのだ。また、娘が戻って来てくれた─ような感覚。

ー今度こそ、俺の側に居る限りはハル様を見守っていこうー









と思っていたが──






「外堀埋めが、完璧過ぎないか?」

「──何の事だか?」

俺の目の前で、澄ました顔をするエディオル=カルザイン。グレン様を始め、ハル様の保護者的な人物のほぼ全員が、このエディオルをハル様の相手として認めている。理由だって解っている。このエディオルは、ハル様が巻き込まれて来た時から、ずっとハル様に想いを寄せていたのだ。そして、ハル様の恩人でもある。そのハル様自身も─最近では…このエディオルに…少し…ほんほ少しだが、好意を持ち始めている事も知っている。

ー娘を男に取られる心境とは…辛いものがあるー

ハル様には…まだ早くないか?早過ぎるだろう!?

「少し─攻め過ぎじゃないか?ハル様も、困っていただろう?それに─抱き付きたくなる気持ちが分かるとは─どう言う意味だ?」

自然と声のトーンが下がってしまった。

「…遠慮して…どうなった?俺は…、ハル殿を失い掛けたんだ。ほんの少しだけだが、ハル殿に近付けたと思っていたのに。もう、あんな思いはしたくないんです。俺は、ハル殿しか要らない。」

エディオルは、俺の目を真っ直ぐに見据えながら言った。

ーあぁ、本当に、ハル様が好きで仕方無いのかー

「俺だって、反対している訳じゃないからな?ただ─前にも言った事があったと思うが…お前にやるには…まだ早過ぎる─と思っているだけだ。」

「──知ってます。分かってます。」

エディオルは苦笑する。

本当に、これは俺の我が儘だ。それに─

『主を取られたくない』

と、レフコース殿が“待った”を掛けるのでは?と期待していたが─

まさかのメス─女性だった事実。魔物であれ、口調がおじさんであれ、心が女性ならば、そりゃあ主の恋を応援するよなぁ─。

「まぁ…あれだけあからさまに態度で示しているのに、ハル様にはイマイチ届いていないと言うのは面白─可哀想ではあるがな─。」

「──良いんです、それで。それもハル殿の可愛らしいところなので…」

ーちっ。惚気られたー

確かに、言っている事は理解できるから許そう。

「はぁ──ここまで素直に出られると…苛め甲斐もないな。」

「あぁ─俺を苛めている自覚はあったんですね。」

「──エディオル…殿も…言うようになったな。」

「ゼン殿には…遠慮は必要無いと分かりましたからね。」

ーふん。面白いな。これ位じゃなければ、安心してハル様を任せられないー

「兎に角、ハル様が嫌がる事だけはするなよ?」

「──善処します。」

ー善処って何だ!?今迄何をして来たんだ!?ー



『主が小さくて可愛く見えるのだ。騎士もそうであろう?小さくて可愛くて─抱き付きたくなるだろう?』

『あぁ、確かにそうだな。ネージュ殿の言う事─よく分かるよ?』



「──エディオル。明後日にでも…少し…手合わせでもしようか?しよう─するぞ。分かったな?」

「──拒否権は……」

「無いに決まっているだろう。明日ではなく、明後日にしてやってるんだ、感謝してもらいたい位だ。」

「──ありがとう……ございます。」



大人気ない事は分かっている。エディオルもハル様もいい大人だ。抱き付く、抱き締める位は普通なんだろうが…


としては…辛過ぎるー












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