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第七章ー隣国ー

王都の外れの森へ

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「2週間程の休みをもらった」

と言えば─

「なら、その間、彼女とゆっくりしてきたら?」

と、母に笑顔で言われた。勿論、母に言われるまでもなく、そのつもりだった。

「はい。約束していたので─。明日、パルヴァン邸に行って来ます。」

その日のうちに、パルヴァン邸へ先触れの手紙を飛ばした。







*****


「ハルに会う前に、少し話がしたいのだけど─」

ハル殿に会いにパルヴァン邸に行けば、聖女─ミヤ様に声を掛けられた。

ー一番厄介な相手かも知れないー

キュッと気を引き締めた。








「──ツンデレならぬ、ツンツンだったのね…その上…拗らせか…」

思っていた通り、ミヤ様達が知っていた頃の、俺のハル殿に対する態度の事を訊かれた。もう隠す必要もないし、ミヤ様はハル殿の保護者の1人だ。洗いざらい全て話した。話し終えると、“ツンデレ”やら“ツンツン”と言われたが─よく分からない。

「私が言わなくても分かってると思うけど…。ハルはいつも他人を優先して、自分の─特に“負”の感情程隠すのが上手いから…そこを、エディオルさんには上手く掬って欲しいの。普段はすぐに顔に出るのにね─」

ーあぁ、ミヤ様も、本当にハル殿の事をよく見ているし、大切にしているんだなー

「俺は、ハル殿に頼ってもらえるように、いつでもハル殿を守れるようにありたいと─。グレン様にも言われたんです。“心まで守ってくれ”と。今回は…できなかったけど…同じ失敗はしない。もう、あんな思いは懲り懲りだ。」

しっかりと、ミヤ様の目を見据えたまま答えた。すると、ミヤ様は驚いた様に少し目を見開いてから

「エディオルさんは…本当ににハルが好きなのね?あー…ピアスを見て分かってはいたんだけどね?どうしても第一印象がだったから、いまいち納得できなくて…だから、“お触り禁止”なんて言ってごめんなさいね?守れなかった─と思うけど。」

「……すみません」

ー触れずにいるなんて…出きる筈が無いー

「ふふっ─謝らないで?ハルにも言ったけど、お互いいい大人なんだから。好きにして良いのよ─と言っても限度があるけど。それに、あのハルだから…大変なのは、きっとエディオルさんの方でしょうね?何と言うか…まぁ…頑張ってね?」

と、最後には同情されるように応援された。兎に角、これでミヤ様もクリアした─って事で良いんだよな?

「そうそう、ハルは、今日、エディオルさんが来る事を知らないのよ。」

「──え?」

ーまさかの…会わせない!とか!?ー

「何と言うか…ゼンさんがね?“サプライズです”とか言ってね?」

と、ミヤ様は苦笑する。

「あぁ─分かりました。“娘は簡単にはやらん!”状態ですね?」

「そうみたい。ゼンさん、ハルが可愛くて仕方がないみたいね?」

「あの─それで…今日はハル殿には…会えないのでしょうか?」

「ふふっ、心配しなくても大丈夫よ?ハルは今、ネージュと一緒に王都の外れにある森に行っているの。ネージュには、エディオルさんが来る事を伝えてあるから、ある程度その森に近付いたら、ネージュが迎えに来てくれると思うわ。その森の場所…知ってるかしら?」

「王都の外れの森─」

そう言えば、前にレフコース殿が言っていた。

“パルヴァンの森に似ていて、懐かしい森”だと。

「そこかどうかは分からないけど、行ってみます。」

「そう─気を付けて行ってらっしゃい」

ミヤ様に笑顔で見送られ、俺は急いでノアに跨がりノアを走らせた。



「─本当に…エディオルさんがねぇ…。これ、美樹と千尋も知ったらビックリしただろうなぁ─」













王都の外れにある森へ、ノアをひたすら走らせた。

ー帰ったら、ご馳走をあげようー

そう思いながら走らせ続けていると

『騎士、ようやく来たか?』

「ネージュ殿!」

上空からネージュ殿が現れた。どうやら、俺が向かっていた場所であっていたようだ。

「ハル殿は─」

『主は今、森で寝ている。そこまで案内する故、我について来い─』












ネージュ殿の後をついて行き、辿り着いたのは、森の奥の大樹のある場所だった。近く小さな池があり、ノアにそこで水を飲ませる為に、そこまで連れていき、ノアを撫でながら、落ち着いて辺りを見回した。

『騎士よ、主を頼むぞ?』

ネージュ殿は、大樹のある方を一瞥した後、嬉しそうにそう言うと、いつもの様に姿を消し去った。

もう一度、大樹の方に視線を向ける─

「──見付けた。」

ノアをポンポンと軽く叩いた後、俺はゆっくりと大樹へと足を動かした。








大樹の足元で、ハル殿が寝ていた。

「可愛い─」

ーきっと、ネージュ殿に凭れて寝ていたんだろうなー

ソッとハル殿の髪に触れる。プラチナブロンドの髪が、木漏れ日の光を受けキラキラと輝いている。

「─ハル殿?」

このままでは体を痛めるかもしれない─と起こそうかと思ったが、起こすのも可哀想か?と思い直し─そのままソッと抱き上げた。

そのまま、どこか座れる所がないか探していると、ハル殿がギュッと俺の服を掴んで来た。

「ハル殿?」

どうやら、寝ながら掴んで来たらしい。

ー本当に可愛い……どうしようか?ー  

いやいや、“どうしようか?”とは、何だ!?落ち着こう!と、自制していると

「───ん?」

ハル殿の瞼がソロソロと持ち上がった。

「─ん?ネージュ?───って…えっ!?」

ー寝起きのハル殿も、ビックリした顔をしたハル殿も…可愛いしかないなー

「あぁ、起こしてしまったか?」

俺が声を掛けると、ピシリッ─と、ハル殿の体が固まった。

「─────へ?」



そんな間抜けた声までもが─

愛おしい─と思った。



やっと、ハル殿の瞳に、俺が映りこんだ─












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