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第六章ー帰還ー
グレンとミヤ
しおりを挟む「─ゼンさんかぁ…怒ってないかなぁ?」
「ゼンが怒る?」
つい、言葉に出して囁いてしまったのを、パルヴァン様に聞かれてしまった。
「あー。えっと…その…何も言わずに、王都のパルヴァン邸を飛び出してしまったので…。」
と言うと
「それは、ハル殿が気にする事ではない。さっき、ミヤ様も言っていたが、連絡の確認を怠ったあやつの自業自得なせいだ。ハル殿が元の世界に還ったと知って、ショックは受けているだろうがな。」
ーゼンさん、怒ってないと良いなぁ─怒ってたら…うん。考えるのはやめておこうー
「それじゃあ、ゼンさんには、こっちに帰って来る迄ハルと私の事は内緒にしておきましょう。」
ーん?ー
ミヤさんの言い方が気になり─
「ゼンさんには?」
「そうよ?他の人達には、まだまだ知らせないって事よ?」
ーわぁ…ミヤさん、本当に滅茶苦茶…怒ってるんですね!?ー
「私だってね、ハルがエディオルさんに早く会いたい─って思ってる事は分かってるのよ?」
「─なっ!??」
「でもね…ハルがお城で苛められた時、ハルが1人で色んな事を抱え込んでしまう人間だって分かった筈なのよ?それなのに、同じ事を繰り返してる。しかも、ハルは実際は魔法使いだけど、周りはそれを知らなかった。知らなかったと言う事は、あのお偉い様達は、普通の女の子を犠牲にして国の平穏を選んだって事。まぁ…ある意味、国を守る立場の人間としては…正しい事なのかも知れないけどね?でも、頂点に立つ王族も、ハルを守ってくれなかった─守り方を、また間違えたのよ。そんな人達をすぐ許すなんて─私には無理!ここで優しくすると、また同じ事を繰り返すからね?暫くの間は、自分達の仕出かした事に苦しめば良いのよ!」
ー確かに…ごもっともな意見ですー
恥ずかしいけど…会いたいと言うのが本音だけど。でも、少し時間を空けた方が、私も落ち着けるかもしれない。
「あ、ハル様、私、気になる事があるんですけど。」
と、リディさんが思い出したように声を上げた。
「繋がりが切れた─とレフコース殿は言ってましたけど、レフコース殿が、今、ハル様の魔力を感知?する事はできないんですか?」
ーレフコースか…まだ、誰とも名を交わしていないのかなぁ?元気に…してるのかなぁ?ー
「あ─そう…ですね。繋がりが切れているし、私の中に流れていた微かな巫女の魔力も失くなったので、気付き難くなってると思います。それに─私とミヤさんには、今、体に薄く結界?みたいなものを張っているので─。」
「「「「「え─!?」」」」」
これには、ミヤさんも一緒に驚いている。
「こっちに戻って来た時に、一番気になったのはリュウだったので…。リュウに、私達の存在がバレないように。認識阻害まではいきませんけどね?」
「ハル…またチートを発揮してたのね…」
ーすみません。本当にチートなんですー
「あの魔法使いが、ハル様は自分よりも遥かに格上の魔法使いだったと言ってましたけど…本当だったんですね…。」
「…それは否定しませんけど…でも、私…攻撃魔法は一切使えませんよ?」
「「「「「─えっ!?」」」」」
これにも、その場に居る全員が驚く。
「それで─私は…これから、魔法使いとして、国の管理下に置かれるんでしょうか?」
ーそうなったら…嫌だなぁー
「ハル殿、それは心配は要らない。そんな事を…私が許すとでも?勿論─ミヤ様も許さないだろう?」
と、パルヴァン様がミヤさんに尋ねると
「ふふっ…当たり前ですよ。国の管理下って…許す訳ないじゃないですか…。国に─あの人達に預ける方が心配になるわ…。」
ーこの2人─ゼンさんを入れて3人に勝てる人は…居るんだろうか?ー
パルヴァン様とミヤさんは、とても良い笑顔で笑い合っていた。
「俺、何も聞いてない事にして良いか?」
「…手遅れよ…ティモス…」
と、ティモスさんとリディさんは、顔を引き攣らせていた。
*****
「買い物をしている時に、美樹と千尋が何かコソコソしてるなぁ─とは思ってたのよ…。」
あれから、皆で色んな話をして、久し振りに皆で夕食を食べた。そこから、私は自室へ、ミヤさんも用意してもらった私の隣の客室に一度下がった後、私が預かっていたミヤさんのリュックサックを持って行った。
そのリュックサックは、私が魔法陣を展開させた後、ミヤさんと一緒に飛び込んで来た物だけど、どうやら、コレを用意したのは美樹さんと千尋さんだったようだ。
「私好みの服に、私の好きなお菓子が入ってる。」
「─ミヤさん…」
「本当に…この世界に戻って来れた事は嬉しいんだけど…あの2人や警察仲間にもう会えないのか─と思うと、やっぱりちょっと寂しいわね…。ハルは…何の準備も心構えも無く独り残されて…。ハル…本当にハルはよく頑張ったね?本当に、心が壊れる前に還って来てくれて良かった─。」
「……」
「それに…私もここに連れて来てくれて…ありがとう。ハルの選んだ選択肢のお陰で、私の憂いは…全て無くなったわ。ハル、本当にありがとう。そして、これからも宜しくね?ハルが嫌だと言っても、私はハルと一緒に居るからね?」
フワリと優しく笑うミヤさん。
「…私の方こそ…ミヤさんが一緒で…本当に嬉しいです。ミヤさんが嫌って言っても…私も離れません!」
それから、2人とも泣く事はなかったけど、リュックに入っていたお菓子を食べながら、夜遅く迄色んな話をした。
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