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第五章ー聖女と魔法使いとー

変わる日常

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『“強制力”って分かる?例え違うように進んだとしても、結局は基在るところに向かうんだよ。』


『これから宮下香は…あんたの居場所を奪って行く筈だから。』


違う。そうじゃない。例え、ここがゲームの世界であったとしても、1人1人に意志がある。さっき、エディオル様が何も言わなかったのも…きっと、何か理由がある…筈…。私が、聖女様と距離を置きたいと言ったから。きっと、後で…帰って来たら、今日の事を説明してくれる筈。



『ハル殿が隠したいと言うなら隠しても良いけど、は…隠さないで欲しい。』



エディオル様はそう言ってくれた。なら…私も思ってる事を素直に話そう。兎に角、帰って来たら、エディオル様と話をしよう。


沈み掛けてた気持ちを何とか持ち上げ、エディオル様とゼンさんが帰って来るのを待っていた。その間も、ルナさんが心配そうに声を掛けてくれた。“大丈夫です”と笑っても、うまく笑えていないのか、余計にルナさんに心配されてしまった。











「帰って…来なかったなぁ…」

結局、エディオル様もゼンさんも帰って来なかった。

「あの父が、連絡一つ寄越さないとは…何かあったのかもしれませんね。こちらから、連絡を飛ばしてみます。」

と、ロンさんが王城に魔術で連絡を飛ばしてくれた─けど、その日も、ゼンさんから連絡が来る事も、2人が帰って来る事もなかった。

本当に、怖い位に今迄の日常とはガラリと変わってしまった。

そして、あれから4日目。今日は、ベラトリス様が視察から王城に戻って来る日─だったのだが…


“王都に入る前の道で、土砂崩れがあったらしく、遠回りをする事になったから、帰城が2日程遅れるらしい。”

2日遅れ─と言う事は…。予定ではゼンさんと私がパルヴァンに帰る日だ。この知らせは、ゼンさんからではなく、イリス=ハンフォルト様からだった。そして、そこには、“ハル殿が帰る当日になってしまうが、可能ならばベラトリス様に会って欲しい”と書かれていた。勿論、私も会いたいので、“できる限り、会いに行きます” と書いた手紙を、ロンさんに頼んで魔術で飛ばしてもらった。


相変わらず、エディオル様とゼンさんは帰って来ない。流石のロンさんも、どうなっている?と、色々調べたりしているようだった。

ー本当に…一体何が起こってるんだろう?ー

不安になる気持ちに蓋をして、大丈夫─と、言い聞かす。


「ハル様、準備はできましたか?」

「はい。いつでも行けます。」

今日は、加工を頼んでいた魔石を受け取りに行く為に、街に出掛けるのだ。気晴らしにでも…なるかな?

ーレフコースは…今日もお散歩かぁー

本当に、その場所が好きなんだろう。明日にでも…連れて行ってもらおうかなぁ?そう思ったら、久し振りに心が軽くなった気がした。









「ハル様の用が終わるまで店内を見ていますので、終わったら声を掛けて下さい。」

と言って、ルナさんとリディさんは私から離れて行った。そして、店員さんが持って来た、加工されたアクセサリーをカウンターで確認していると、奥の部屋から誰かが出て来た。

「─え?」

「ふふっ。エディオル様、ありがとうございます。」

奥の部屋から出て来たのは、聖女様とエディオル様だった。思わず、サッとカウンターの下に隠れてしまった。

ー何で隠れちゃったの!?ー

チラリとルナさん達が居た方を見てみると…店内に姿がなかった。多分…いや、きっと、私の反応を見て合わせてくれているんだろう。
そして、軽く息を吐いて、こっそりとエディオル様達を見る。

聖女様はロング丈の青いワンピースを着ている。首に着けているネックレスを、嬉しそうに触っている。
方や、エディオル様は何故か、近衛ではなく第一騎士団の騎士服を着ている。剣も佩帯しているから、プライベートなお出掛けでは無い…のかもしれないけど…。

ーあれ?ー

佩帯している剣が目についた。

『ハル殿に“似合う”と言われたら嬉しいが…俺は…こっちのの方が…好きかな。』

そう言って、淡い水色の魔石を購入しなかった?でも…今、佩帯している剣に填めてある魔石は


ー“黒色”だー


私には無い色だ。
あの日、エディオル様は、佩帯している剣に填める為にと、淡い水色と青色の魔石を購入した。でも…本当は違うかった─と言う事なんだろうか?

「あのー…お客様?大丈夫ですか?」

カウンターの下に座り込んで考えていると、カウンターの上から店員さんに声を掛けられた。

「あ、すみません。大丈夫です!あの、落とし物をしちやって…」

と、もう一度店内にチラリと目を向けると、そこにはもうエディオル様達の姿はなくなっていて、ルナさんとリディさんが困ったような顔をして、私の方へ近付いて来ていた。

「えっと、これで問題もなさそうなので、お会計をお願いします。」

「はい。ありがとうございます。」

心臓が、ドクドクと嫌な音をたてているが、“大丈夫”と言い聞かせながら、加工されたアクセサリーを購入した。










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