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第五章ー聖女と魔法使いとー

買い物

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「ゼンさんは、また騎士団の訓練に行くんですか?」

と、気になっている事を訊いてみると

「いえ。もう訓練には行きません。今回の事で、ルイス様─第一騎士団長様も、と思いますから。これ以上腑抜ける事はないでしょう。」

と、ニッコリと微笑む。

「ソウナンデスネ…。」

ー第一騎士団長様、本当に、本当にお疲れ様でした!今度、体に良いポーション、持って行きますね!ー



「じゃあ、この一週間は、パルヴァンとしの仕事があるんですか?」

「それもあるのですが、宰相様にお願いされた仕事もあるので、明日以降も登城はしなければいけないのです。ハル様については、王女殿下との面会以外の予定はないので、自由に過ごして頂いて良いですよ?」

ー“自由に”と言われると、逆に悩むんだよねー

あ、そうだ、パルヴァンでお世話になった人達へのお礼を考えて用意しようかな?

「あのー、また街に買い物に行っても良いですか?」

「それは勿論構いませんが、必ず誰かを連れて行って下さいね。1人では行かないようにして下さいね?」

「勿論です!」

ゼンさん、何となく目が笑ってませんからね?これは、絶対守らなければいけない約束ですね?“誰か”と言う事は、レフコース以外にと言う事ですね?了解です!

「ハル様は物分かりが良くて助かります。」

ーおぅ…ゼンさんも私の考えてる事が…分かるんですね…いや、私が分かりやすいんでしたねー











「ハル殿、すまない。私も数日、登城する事になった。」

買い物に行きたい─と相談しようとする前に、エディオル様がそう言って来た。

「あーいえ、私の方は大丈夫なので、お仕事?を優先して下さい。と言うか…私はもうスッカリ元気なので…このまま近衛に復帰しても─」

と言い掛けると、エディオル様がそっと私の頬に手を滑らせて─

「一週間後には、パルヴァンに帰ってしまうんだろう?それ迄は、近衛に復帰しないし付き添いも辞めない。」

「っ!!わ…分かりました!!」

「ん。分かってもらえて良かった。」

ニコリと、微笑むエディオル様。

ーこの世界の人達は、笑顔で圧を掛けてくるのが標準なんだろうか?ー

「そう言えば、レフコース殿が居ないが…どうかしたのか?」

「あー、レフコースなら、お散歩に行ってます。なんでも、お昼寝するのに良い場所を見付けたみたいで、今日も行って来るって言ってました。」



『パルヴァンに帰る前に、主を連れて行きたい。』 



と言ってくれたレフコース。一緒に行って一緒に昼寝…大きくなってもらって、モフモフに埋もれて寝かせてもらえるだろうか?

「そうか…。なら、俺もレフコース殿も居ない時は、ルナ殿かリディ殿と一緒に行動するように。」

「ふふっ。ゼンさんにも同じ事を言われました。1人では行動しません。」

ー買い物は、ルナさんとリディさんと行こうー








『主、ただいま─』

フワリと、お花?の香りが漂った。

「レフコース、お帰りなさい。お花?の良い香りがするね。お気に入りの所には、お花も咲いてるの?」

『あぁ、沢山咲いている。主にも見てもらいたい。』

と、嬉しそうに話すレフコースは…本当に、安定に可愛い。

ー擬人化したレフコースー 

一体、どんな容姿をしているんだろう?アレ?レフコースって…一体何歳なんだろう?え?まさかのおじいちゃん!?

と、1人脳内でワチャワチヤしたのは…レフコースには内緒にしておく。












「では、買い物は明日、行きましょうか?」

就寝の準備をしている時に、買い物に行きたいと、ルナさんに相談すると、すぐに了承してくれた。

『主が買い物に行くなら、散歩に行って来ても良いか?』

「レフコースは、よっぽどその場所が気に入ったんだね?」

『気に入っている。なんとなく、昔のパルヴァンのあの森の雰囲気に似ているのだ。きっと、主も気に入ると思うぞ?』

と、尻尾をフリフリしながら嬉しそうに笑う。そんなレフコースをワシャワシャて撫で回してからベットに潜り込んだ。












*翌日*


「何を買うかは決まってるんですか?」

「はい。ある程度は決めてあるので、後は選ぶだけですね。」

特にお世話になった、パルヴァン様とシルヴィア様とルナさん、リディさん、ティモスさんには、防御魔法を掛けた魔石を加工して、アクセサリーを。他の人にはハンカチを…と。
魔石を選んでいる途中、レフコースの瞳の色とよく似たアイスブルーの魔石を見付けたので、それも一緒に購入した。

ーレフコースにも、何かプレゼントをしようー

たまに裏切られる事もあるけど、レフコースにはいつも助けられている。本当に…有り難くもあり、大切な存在だなと思う。



『本来、真名じゃないと名を交わしても繋がれる事はないんだ。でも、繋がれた。それは、あんたの中に微かだけどパルヴァンの巫女の魔力が流れているから。その魔力に“レフコース”の魔力が反応しただけ。だから…あんた達の繋がりは…とても脆い。そこに、本当に繋がる筈だった宮下香が割り込んで来たら…どうなるんだろうね?』


ふと、魔法使いリュウの言葉を思い出す。

ーレフコースは…その事を知ってるんだろうか?ー

いつも私に真っ直ぐなレフコース。
うん。レフコースには…本当の事…を話してみよう。

そう思いながら、ルナさん達と買い物をして、少し早目にパルヴァン邸へと帰った。



    
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