124 / 203
第五章ー聖女と魔法使いとー
面会①
しおりを挟む「ゼンさんも、第一騎士団に所属してたんですね。」
今は、あの魔導師に面会をする為に、馬車で移動中。そして、何やら王城に用事があるらしく、ゼンさんも一緒に行く事になった。
「はい。とは言っても、グレン様とは違って、ただの、平の騎士でしたけどね。」
と、ニコッと笑うけど…パルヴァン様の留守を預かる位だから、きっと…絶対にただの騎士じゃなかっただろう…と思うけど、私は突っ込みません。きっと、突っ込んではダメなヤツです。
「あ、それじゃあ、今日は騎士団の離宮に用事があるんですか?」
と訊けば…ゼンさんは何も言わずに、ただただダンディー然りな微笑みを浮かべるだけだった。
ーあ…これ、きっとヤバいやつだー
チラリと、馬車に乗り込んでから黙ったままのエディオル様を見ると…目が合って…首をふるふると振られた。
ーあぁ…止められないパターンなんですね?ルイス=カルザイン様…頑張って下さいー
王城に着き馬車を降りる。
ゼンさんがエディオル様と少し言葉を交わした後、私の側迄やって来て
「ハル様、私は一緒には行けませんが、絶対に無理はされませんように。おかしいと思ったら…すぐに面会を終えて下さい。いいですね?」
「はい。無理はしません。」
「では、エディオル様、レフコース殿、ハル様を宜しくお願いします。」
そう言って、ゼンさんは騎士団の離宮の方へと歩いて行った。
「ハル殿、大丈夫か?」
「…はい…。レフコースも居るし…そのー…エディオル様も…居てくれるので、大丈夫です!」
心配をかけたくなくて、頑張って言いました!
「─っ!…そうか…分かった…。そう言ってもらえると、俺としても…嬉しい。」
そんな2人を、レフコースはやっぱり尻尾をフリフリしながら見ていた。
「あぁ、エディオル、ハル殿、待っていたよ。」
神殿で出迎えてくれたのは、ダルシニアン様だった。
「お願いを聞いていただいて、ありがとうございます。」
「いや─。私達としても、何も進展がなかったから助かるよ。但し…まぁ、皆から言われてると思うけど、無理だけはしないようにね。」
「はい。絶対に無理はしません。」
「じゃあ…行こうか。」
ーうん。大丈夫。ダルシニアン様も居るし、レフコースも居る。そして…エディオル様も居るー
そっと深呼吸をして、ダルシニアン様の後を付いて行った。
「何?また来たの?あんたも飽きないね?」
先にダルシニアン様だけがその部屋に入った。そして入るなり、あの魔導師が軽い口調で喋り出す。
「飽きる飽きないの問題じゃないからね。」
「ふーん。ま、どうでもいいけど…。俺は本当に何も知らないよ?」
「今日は、私じゃなくて、いつもと違う者が、お前の相手をする。但し、余計な事はするなよ?」
知らず知らずのうちに、体に力が入る。
すると、エディオル様が私の手をそっと握って
「大丈夫だ。俺も、レフコース殿も居るから。」
「ありがとう…ございます。」
ーうん。大丈夫だー
ゆっくりと、その部屋に入った。
「あれ?あの時の…?」
「…そうです。」
「ひょっとして…そのフェンリルと名を交わした?」
「あなたに答える必要が…ありますか?」
「…いや?答えなくていいよ。あんたとそのフェンリルの魔力を見れば、名を交わした事くらい分かるからね。」
『でも、何故だ?何故彼女じゃない?』
ーあぁ…やっぱりー
この魔導師は、小さい声で囁いただけで、誰にも分からないと思ったのだろう。
この魔導師が言葉にしたのは…日本語だった。
「フェンリルが、“贄”では従属しない。必要なのは名を交わす事と知っていて、何故私を贄にしたんですか?」
「…へぇ…」
その魔導師は、目を細めて私を見て来た。
「何故?と訊かれてもね。俺はギデルに言われた通りにやっただけだから…。」
「贄を用意するより、名を交わす方がリスクは少ない筈。ならば、誰かに指示されたとしても、自分のリスクを減らす為に、本当の事を言った方が良いと…思わなかった?実際、失敗して捕まった。」
『…グレンが死ななかったから…と言ってもなぁ…』
ーえ?ー
『何故ストーリー通り進まない?』
ドクンッと、心臓が嫌な音を立てる。
ーこの人…ゲームを知ってる?ー
「だから、俺は言われた通りにしただけ。もともと捕まる気もなかった。あの攻撃が成功したら逃げれてたし…。あの攻撃が完璧に防御された事…それだけが計算外だったんだよ。」
「……」
言いたい事、訊きたい事はたくさんある。あるけど…今はまだ、私が日本人だと言う事は言わない方が良いだろう。勝手に日本語で愚痴ってくれるから…情報は得やすいかもしれない。
「もし、その攻撃が成功していたとしても、神殿の地下から出て、更に王城から逃げられるなんて…無理では?」
「逃げ道位、用意してたからね─。」
『─と言うか…魔法使いである俺なら…簡単なんだよね…。』
ー魔法…使いー
この人も…日本人で…魔法使い…。
ちょっと…ヤバくない?
『暫くは様子をみてたけど…クレイルもエディオルの攻略も進んでないし…どうなってんだ?』
「顔も知られてるのに、何処に逃げるつもりだったの?」
「さあね?何処だろうね?」
『隣国まで一気に帰るさ─。』
ーこの人がー隣国の魔法使いだー
応援ありがとうございます!
40
お気に入りに追加
2,270
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる