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第五章ー聖女と魔法使いとー

ハル、自覚する

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「ご…ごめんなさい!!!」


いっぱい泣いて…落ち着いて…我に返って…恥ずかしくなって…
カルザイン様の服が…シワシワになっていて…私の涙で濡れてて…

謝っています←今、ここです。


で泣いてと言ったのは俺だから、気にしなくて良い。」

そう言って、本当に何も気にしてない風に笑っているカルザイン様。寧ろ、嬉しそうに笑っているから、本当に…

ー心臓が痛いー

「あの…そろそろ…そのー…離してもらっても…大丈夫かなーと…。」

そう。何故か、私はまだカルザイン様の…腕の中に収まったままなのだ。

「ん?どうだろう?ハル殿は大丈夫じゃないのに、大丈夫と言うからなぁ…。」

と言って、更にギュッと抱き締められた。

ー何故だ!?本当に大丈夫だし!コレ、本当に恥ずかしいんですけどっ!?ー

「ほ…本当に大丈夫ですから!もう嘘と言うか…駄目な時は言いますから!許して下さい!」

そう言いながら、なんとかカルザイン様の胸をバシバシと叩いてみる。

「…はぁー…」

大きな溜め息を吐いた後、ようやくカルザイン様が私を解放してくれた。

「本当に、もう大丈夫?」

「はい…あの…カルザイン様のお陰で…落ち着きました。ありがとうございます。」

「なら…良かった。」

ーう゛ー…本当に心臓が痛いー


「そう言えば…ハル殿が意識を失う前に…俺の事“ディ様”って呼んだんだけど…覚えてる?」

「ディー!?」

ーえっ!?何ソレ!?全く記憶がない!!ー

「すみません!全く覚えてないんですけど!私なんかがごめんなさい!!!」

ガバッと頭を下げて謝る。

「そうじゃなくて…前に、俺の名前で呼んでくれると言っていただろう?だから、そう呼んでくれるなら嬉しいなと思ったんだ。」

「まさか!“エディオル”様なら未だしも…“ディ”様だなんて!!失礼にも程があります!!」

「じゃあ、“エディオル”とは…呼べると?」

「そうですね──!」

ーって…あれ?ー

チラリとカルザイン様を見ると…それはそれは…とても綺麗な笑顔をしていました。

「えっと…あの…違う─」

「ん?“ディ”の方が…良かったか?」

ー違う!そうじゃない!その二択じゃない!ー

あれ??カルザイン様って、こんな人だった?確かに、ハルとして再会してからは甘かったけど…。更に甘くなってない?それと…遠慮が…無くなって来てない??

でも─

そんなカルザイン様が…嫌じゃない。

寧ろ─


「…エディオル様で…許して下さい………エ…ディオル様。」

恥ずかしいながらも、名前で呼んでみたら

一瞬キョトンとした後、カルザイン様─もといエディオル様は、嬉しそうに笑ってくれた。

ーエディオル様のこの笑顔…好き…だなぁー













ーえ?ー





ー好き?ー





ー誰が?誰を?ー





ーちょっと…落ち着こうか?ー




チラリと、カルザイン様を見てみる。

「ん?」

すると、カルザイン様も私を見ていたようで目が合ってしまった。

『ん?』

と言って、少し首を傾げて優しい目を向けて来るカルザイン様を見ると…やっぱり…好き…だな…と思ってしまう…。

ー好き?ー

ど…どうしよう!!??うわー!!!!
今まで心臓が痛いとか思ってたのって…そう言う事だったの!?ちょっと待って!!
脳内は大パニックです!!

元の世界では、男性恐怖症に近かったせいもあって、恋愛の“れ”の字も無かった。
この世界に来てからも、自分の事だけでいっぱいいっぱいだったし…モブだしと思っていたから、自分がこの世界で恋をするなんて…思ってもいなかった。

しかも、相手が─エディオル=カルザイン様攻略対象者ー王太子殿下の近衛騎士であり、貴族様。

方や、私は…巻き込まれて還れなかったモブ。

ーあれ?失恋確定じゃない?ー

その前に…優しくされて?好きになるって…私…チョロ過ぎじゃない?

恋に自覚した途端、失恋確定?とか…流石の私でも…辛いものがある…。

「ハル殿?ひょっとして…疲れたのか?」 

俯き加減で思案していた私の頬に手を当て、そのまま顔を上げさせられ、結構な至近距離で目が合った。

「──っ!!??」

“ボンッ”

と、音が鳴ったんじゃないかと思う位に、一瞬にして顔が赤くなったのが分かる。

「だっ…大丈夫です!本当に!疲れてません!」

「…顔が赤いけど…熱でも出たのかもしれないな?マリン殿を呼ぼうか?」

カルザイン様は、本当に私の事を心配してくれているようで、少し困った様な顔をして、更に私の顔を覗き込んできた。

ーいや…ちょっと待って!本当に待って!本当に勘弁して欲しい!近い!恥ずかしい!ー

「っちか──」

「ん?“ちか”?」

「近過ぎ…ませんか!?」

「あぁ…成る程…やっとか?」

カルザイン様が何やら呟いたけど、声が小さ過ぎて聞こえなかった。

「あのーカルザイ──」

「“エディオル”」

「は…はい?」

相変わらずの至近距離で、ニッコリ笑うカル─エディオル様。笑ってるのに…圧を感じるのは気のせい…ではないだろう…圧を…掛けられてるんだろう…。

「…エディオル様…本当に…お願いします…」

ー圧なんかに負けない!ー

と、頑張ってカル─エディオル様をキッと睨み付けた。

「──くっ…」

エディオル様は、呻きながら離れてくれました。

ーよし!私だってやれば、圧位掛けれるんです!ー

自慢気に笑う私を、レフコースが何とも言えない顔で笑っていた─事には気付かないフリをした。



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