95 / 203
第四章ー王都ー
付き添いは誰に?
しおりを挟む「お願い?」
「はい─。」
隣に座っているパルヴァン様も、少し驚いているのが分かるが、今は王様をしっかり見据えておく。
「先日、イリス=ハンフォルト様とお話しをする機会があったんですけど…その時…ハンフォルト様に纏わり付いている黒い煙?モヤ?みたいな物が…視えてしまって…。それが…すごく気になりまして…。その黒い物が何なのか…調べたいんです。」
「もしかして、あの時淹れてくれたお茶は…」
「そうです。あの時、黒い物に効果があるかどうか分からなかったんですけど、ハンフォルト様に飲んでもらったら、その黒い物が消えたんです。」
「確かに、あのお茶を飲んだら…頭がスッキリしたんですよ…。でも…どうしてハル殿に、ソレが視えたんだろうか?」
「私、レフコースの魔力の影響で、私自身の魔力も強くなってるみたいなんです。そのせいかと…。」
ー嘘は…言ってないー
「ハル殿、その黒い物だが…今、ここに居る誰かに…纏わり付いているか?」
パルヴァン様が訊いてきたので、正直に答える。
「…王太子様に…」
ーずっと気になってたんですー
2日前に見掛けた時にはなかったのに…たった2日で。しかも、ハンフォルト様の時よりも濃い黒だ。やっぱり、王太子様は、あのピアスを着けていない。
「それが何かは分からないが…それが、殿下達がおかしくなる原因と言う事か…」
「あの…王太子様…ピアスを…黒と水色のピアスを持ってますか?」
「あぁ…持っては…いる。最近は着けていないが…。あれ?あのピアス…最近見てないな…。」
ーあの黒いのは、思考も低下させるんだろうか?厄介だなぁー
「取り敢えず、今日は、先程言っていた茶葉を持って来たので、飲んでもらっても良いでしょうか?」
そう言って、私はこの部屋に居る人数分のお茶を用意した。
結果、ハンフォルト様の時よりも濃い黒色だったけど、問題無く浄化できました。
「本当だ。頭の中の霧が晴れた感じだ。久し振りにスッキリしている。」
「それなら…良かったです。」
と、ニッコリ笑っておく。
「─かっ…」
「“か”?」
ダルシニアン様が何か言い掛けて、そのまま慌てて自分の手で口を押さえた。
「─いや、何でもない。」
そう口を噤んだダルシニアン様の代わりに、王様が話し出した。
「それで…調べたいと言う事だが…。調べてくれると言うなら、こちらとしては有難いのだが…どうやって調べるつもりだ?」
「先ずは、最近様子がおかしい人が誰で、どれだけ居るか教えて下さい。それから…王城に立ち入る許可が…欲しいです。勿論、立ち入ってはいけない場所には行きません。王城外では、まだ黒い物を視たことがないので、王城内から調べたいんです。」
「それなら、城内では私が付き添いをしよう。」
「─えっ!?」
そう言ったのは…カルザイン様だった。
ーえ?何で?ー
口に出しては言ってないけど、本当に何でカルザイン様が私の付き添いを?そこは…魔術や魔法が関係しているかもしれないから、魔導師のダルシニアン様の方が適任では…ないのだろうか?
王太子様も思ったのだろう。
「エディオル…何故お前が?一応と言うか、お前は俺の近衛騎士だったと思うんだが…」
「一応じゃないだろ。それに、付き添いなら、魔導師の私の方が適任だと思うけど。」
と、ダルシニアン様が言う。
「一番影響が出ているのが、王太子であるランバルトで、王城内を調べたいと言うなら、神殿勤めのクレイルより私の方が適任だと思うが?魔導師で影響が出ている者もいないだろう?」
ー確かに…そう言われたら…カルザイン様の方が適任なのかなぁ?ー
「でも、近衛が王太子から離れてどうする?」
ーそれもそうだよね…職務放棄?になる?ー
ダルシニアン様とカルザイン様が言い合うのを聞きながら、「うーん…??」と唸る私を、王様と宰相様とパルヴァン様とイリス様は、生暖かい目で見ていた─事には全く気付いていなかった。
「ハル殿はどうしたい?」
ふいに、宰相様に問い掛けられた。
「私…ですか?」
「確かに、エディオル殿は王太子の近衛だが、近衛はエディオル殿だけではないからね。王太子と接点を持たせる為にはエディオル殿も適任だと思う。今回の事は魔術や魔法が関係している可能性があるから、魔導師であるクレイル殿も適任と言えば適任だ。」
ーそんな事言われると…選びにくいよね…と言うか、私が選ぶ側って事がおかしくないですか?ー
「えっと…私は…どちらでも…いえ…お二人とも忙しいでしょうから…違う人でも…最悪、1人でも大丈夫ですよ?(王城内を1人で動くのは駄目なんだろうけど)」
と答えると、王様と宰相様とパルヴァン様とイリス様が、何だか可哀想な子を見る様な目で見て来た。
ーえ!?何で?レフコース、私、変な事言った?ー
『…主…気のせいだ…気にしなくていい…。』
ーそうなの!?ー
「あー…それでは…取り敢えずはエディオル殿とクレイル殿の2人で、ハル殿を手伝ってもらう事に…しましょうか。」
と、苦笑気味の宰相様に、そう提案され、断る理由もなかった為それでお願いした。
88
お気に入りに追加
2,379
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない
猪本夜
ファンタジー
2024/2/29……3巻刊行記念 番外編SS更新しました
2023/4/26……2巻刊行記念 番外編SS更新しました
※1巻 & 2巻 & 3巻 販売中です!
殺されたら、前世の記憶を持ったまま末っ子公爵令嬢の赤ちゃんに異世界転生したミリディアナ(愛称ミリィ)は、兄たちの末っ子妹への溺愛が止まらず、すくすく成長していく。
前世で殺された悪夢を見ているうちに、現世でも命が狙われていることに気づいてしまう。
ミリィを狙う相手はどこにいるのか。現世では死を回避できるのか。
兄が増えたり、誘拐されたり、両親に愛されたり、恋愛したり、ストーカーしたり、学園に通ったり、求婚されたり、兄の恋愛に絡んだりしつつ、多種多様な兄たちに甘えながら大人になっていくお話。
幼少期から惚れっぽく恋愛に積極的で人とはズレた恋愛観を持つミリィに兄たちは動揺し、知らぬうちに恋心の相手を兄たちに潰されているのも気づかず今日もミリィはのほほんと兄に甘えるのだ。
今では当たり前のものがない時代、前世の知識を駆使し兄に頼んでいろんなものを開発中。
甘えたいブラコン妹と甘やかしたいシスコン兄たちの日常。
基本はミリィ(主人公)視点、主人公以外の視点は記載しております。
【完結:211話は本編の最終話、続編は9話が最終話、番外編は3話が最終話です。最後までお読みいただき、ありがとうございました!】
※書籍化に伴い、現在本編と続編は全て取り下げとなっておりますので、ご了承くださいませ。
美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます
今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。
アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて……
表紙 チルヲさん
出てくる料理は架空のものです
造語もあります11/9
参考にしている本
中世ヨーロッパの農村の生活
中世ヨーロッパを生きる
中世ヨーロッパの都市の生活
中世ヨーロッパの暮らし
中世ヨーロッパのレシピ
wikipediaなど

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる