91 / 203
第四章ー王都ー
稀×稀
しおりを挟む邸に戻ると直ぐにパルヴァン様に、夕食後に話があるから時間が欲しいとお願いをした。その時、レオン様とカテリーナ様とルナさんとリディさんとティモスさんの同席もお願いした。それと、夕食迄は1人にして欲しいと─。
「レフコース、いくつか確認したい事があるんだけど…良いかな?」
『何でも訊いてくれ。』
ちょこんと座って尻尾をフリフリするレフコース。
ー可愛い以外が見付からなくて辛いー
「一番気になってる事なんだけど、私は“巫女”なの?“魔法使い”なの?」
『ん?主は“魔法使い”だ。巫女の魔力を引き継いではいるが、巫女ではない。勿論“聖女”でもない。』
「私の中に、レフコースと巫女様の魔力?が流れてるから、魔法使いになってしまってるって事?」
『いや─。恐らくだが、主がこちらの世界に召喚されて来た時には、もう魔法使いになっていたと思う。聖女達が聖女の力を得たのと同じタイミングで。巫女の魔力をいつ引き継いだかは…寝ていた我にもよくは分からぬが…余程相性が良かったのかも知れぬな。』
ーうーん…やっぱり魔法使いは魔法使いなのかー
『我と名を交わし、お互い魔力も交わしているからと言う名目で、主の魔力が強くても、主が魔法使いだと言う事はある意味隠せられる。因みに、主の作る水には浄化作用があるとは言ったが、主自身が聖女のように、穢れを浄化する事は無理だと思う。飽くまで、穢れを祓えるのは“聖女”だけだ。だから、聖女にされる事もない。』
成る程。魔力が大きくても強くても、フェンリルと名を交わしたからと言えば、誤魔化せると言う事か…。
「主は、パルヴァンの者にも魔法使いと言う事は黙っておくつもりなのか?」
「…そこは…少し悩んでいるの。今回の事で、きっとパルヴァン様達の過保護ぶりが強くなりそうだなと思って。しかも、私はリスらしいから。」
『リス?』
レフコースが首を傾げる
「パルヴァンって、土地柄上、皆強いの。今日、それを実感したばっかりなんだけどね…。兎に角、私、パルヴァン様達から見たらリス並みの存在らしくて。でも、私が“魔法使い”だと言ったら…少しは安心?してくれるかなぁ?って…。」
レフコースは首を傾げたまま
『それはどうだろうか?主は…攻撃魔法は使えぬだろう?その上の稀な存在の魔法使いならば、更に心配をかけるのではないか?』
「そ…それもそうか…。やっぱり、レフコースのお陰で魔力が強くなったって事にした方が良いかな?」
『今の時代、魔法使いの存在がどう言う扱いをされているか分からぬが、稀な存在である事は変わらぬだろう。我は、そのせいで一度主を失った。もう二度も失うつもりも失わせるつもりもないが…。』
そう言えば─
『この世界での魔法使いって、すっごくレアなのよ!あのね、このゲーム、誰とも恋愛に進まなくてノーマルエンドになると、日本に還れるのよ。でも、魔法使いなんてバレたらどうなるかなんて分からない。だから、ハルが魔法使いって事は、私達4人だけの秘密にしとこう!』
お姉さん達が言ってたっけ。
「うん。取り敢えず、魔法使いって事は…今はまだ黙っておく事にする。じゃあ、次の質問なんだけど、この世界でのレフコース…フェンリルはどんな存在なの?」
私が知っているフェンリルとは、神話に登場する狼。そのフェンリルも、強すぎて拘束されてとか何とかだったような…。
『ランクの高い魔獣だな。我も稀な存在と言われているが、魔法使い程ではないと思う。』
「稀なフェンリルと稀な魔法使いの組み合わせ…」
ーえーそれって、ヤバくないのだろうか?ー
『ふむ。ヤバいのだと思うが、主は必ず我が守るからな。今度こそは、何があっても…』
「レフコース…」
レフコースは、巫女様を守れなかった事を後悔している。その分、私を必要以上に守ろうとするのかもしれない。でも…
私は、レフコースの側迄行き、そっとレフコースの頭を撫でながら、レフコースと視線を合わせるようにしゃがみこむ。
「レフコース。あなたが私を守りたいように、私もあなたを守りたいと思ってる。私は、レフコースが私の為に傷付いたりするのは…嫌だからね?“命を懸けて”なんて守り方はしないでね?あなたに何かあったら、私はきっと…自分を赦せない。」
レフコースの揺れていた尻尾はピタリと止まり、耳はピンと立ち上がったままで、目は少し大きく見開かれたままで私を見ている。
暫くそのまま見つめあって─
また尻尾が揺れだし、目を嬉しそうに細めると
『分かった。我も、我自身を大切にする。その上で主を守る。ありがとう…主…。』
そう言って、自身の頭をグリグリと私の頬に擦り寄せて来た。
ーウチの子が本当に可愛い過ぎる!ー
そのまま、私は暫くの間、レフコースを好き勝手に撫で回したのは…言うまでもない。
67
お気に入りに追加
2,321
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
巻き込まれ召喚された賢者は追放メンツでパーティー組んで旅をする。
彩世幻夜
ファンタジー
2019年ファンタジー小説大賞 190位!
読者の皆様、ありがとうございました!
婚約破棄され家から追放された悪役令嬢が実は優秀な槍斧使いだったり。
実力不足と勇者パーティーを追放された魔物使いだったり。
鑑定で無職判定され村を追放された村人の少年が優秀な剣士だったり。
巻き込まれ召喚され捨てられたヒカルはそんな追放メンツとひょんな事からパーティー組み、チート街道まっしぐら。まずはお約束通りざまあを目指しましょう!
※4/30(火) 本編完結。
※6/7(金) 外伝完結。
※9/1(日)番外編 完結
小説大賞参加中
【完結】聖獣もふもふ建国記 ~国外追放されましたが、我が領地は国を興して繁栄しておりますので御礼申し上げますね~
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放? 最高の褒美ですね。幸せになります!
――いま、何ておっしゃったの? よく聞こえませんでしたわ。
「ずいぶんと巫山戯たお言葉ですこと! ご自分の立場を弁えて発言なさった方がよろしくてよ」
すみません、本音と建て前を間違えましたわ。国王夫妻と我が家族が不在の夜会で、婚約者の第一王子は高らかに私を糾弾しました。両手に花ならぬ虫を這わせてご機嫌のようですが、下の緩い殿方は嫌われますわよ。
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放。すべて揃いました。実家の公爵家の領地に戻った私を出迎えたのは、溺愛する家族が興す新しい国でした。領地改め国土を繁栄させながら、スローライフを楽しみますね。
最高のご褒美でしたわ、ありがとうございます。私、もふもふした聖獣達と幸せになります! ……余計な心配ですけれど、そちらの国は傾いていますね。しっかりなさいませ。
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
※2022/05/10 「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過
※2022/02/14 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2022/02/13 小説家になろう ハイファンタジー日間59位
※2022/02/12 完結
※2021/10/18 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2021/10/19 アルファポリス、HOT 4位
※2021/10/21 小説家になろう ハイファンタジー日間 17位
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
出戻り巫女の日常
饕餮
ファンタジー
転生者であり、転生前にいた世界に巻き込まれ召喚されて逆戻りしてしまった主人公、黒木 桜。桜と呼べない皆の為にセレシェイラと名乗るも、前世である『リーチェ』の記憶があるからか、懐かしさ故か、それにひっついて歩く元騎士団長やら元騎士やら元神官長やら元侍女やら神殿関係者やらとの、「もしかして私、巻き込まれ体質……?」とぼやく日常と冒険。……になる予定。逆ハーではありません。
★本編完結済み。後日談を不定期更新。
傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました
みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。
ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。
初恋の還る路
みん
恋愛
女神によって異世界から2人の男女が召喚された。それによって、魔導師ミューの置き忘れた時間が動き出した。
初めて投稿します。メンタルが木綿豆腐以下なので、暖かい気持ちで読んでもらえるとうれしいです。
毎日更新できるように頑張ります。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる