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第三章ーパルヴァン辺境地ー
本邸へ
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「ゼンさんが、毒蛇に噛まれたの!」
「毒蛇に!?」
「取り敢えず、応急処置としてレベル1を飲ませたんだけど、いまいち効いてないのよ。ひょっとしたら、過去にも噛まれた事があるのかもしれない。」
確かに。大抵の毒蛇の毒なら、レベル1で十分だ。但し、2回目となると1回目よりも症状が酷くなる。勿論、その分ポーションの効きも悪くなる。
「レベル2…この前冒険者の人に使ってしまって…それで、丁度必要な薬草が無くなって…。」
その必要な薬草は、あの森にしかない。そこで今回の視察の事を聞いたから、視察が終わってから採りに行こうと思っていたのだ。
「アンナさん、アンナさんは今ある材料で作り始めてもらえますか?私、今から森に行って薬草を採って来ます!それと、リディさんは、この事をパルヴァン様に伝えて来てもらえますか?」
「それは勿論ですが、今は安全な森と言っても夜も遅いですから、ハル様1人では行かせられませんので…ティモスに同行してもらいます。ルナ、今すぐ騎士邸に行って事情を説明してティモスを連れて来てくれる?」
「分かったわ。では、ハル様、準備ができましたら、西門前でお待ち下さい。そこにティモスを連れて行きます。」
そう言って、各々がすべき事をする為に動き出した。
*****
「ティモス、ちょっと良い?」
パルヴァン邸にある騎士邸のサロンで、俺達視察組の騎士とパルヴァンの騎士と交流を深めていた時、侍女らしき女性がティモス殿を呼び止めた。
「ルナ!?あぁ、オーブリー殿、すまないが少し失礼する。」
と言って、ティモス殿が“ルナ”と言う女性の元へ少し焦る様にして駆け寄って行った。
ー何を焦っているのだろうか?ー
ティモス殿の様子が少し気になり、何となしに2人の様子を窺っていた。
「…が……で…ルさまが…です……ます…」
「…った…」
女性の方は淡々と話していたが、話を聞いたティモス殿は少し驚いた後、近くに居たパルヴァンの騎士に何か話し、また焦った顔になりこっちに戻って来た。
「オーブリー殿、すまない。急用ができた為、今から出掛ける事になった。後の事は残っている者に頼んである。明日は私も一緒に森に行くので、また明日、宜しくお願いします。」
そう言って、ティモス殿はまた急いでサロンから出て行った。何かあったんだろうか?気にはなったが、勝手に動く訳にも行かないので、そのままサロンで他の騎士達と過ごした。
「ハルー!」
「あ、ティモスさん!こんな遅くにごめんなさい!」
薬草採取の準備をして、西門に到着してすぐにティモスさんもやって来た。やって来た…んだけど…
「いや、こっちはまだ視察の騎士達と騒いでいたから大丈夫だ。兎に角、ゼンさんの事が心配だから、急ごう!」
そう言って、ティモスさんは馬上から手を差し伸べて来た。
「えっと…どうしろと?」
私、自慢じゃないけど馬に乗った事なんてないよ?頑張って走ってついて行けばいいんだろうか?
「ハル、手を出せ…」
「手?」
言われたまま手を出すと、そのままグイッとティモスさんの後ろに引っ張りあげられた。
「少しでも早い方が良いだろう?しっかり俺に掴まっておけよ?」
そう言った瞬間、ティモスさんは私の返事を聞かずに馬を走らせた。
必死にティモスさんにしがみつき、森で目当ての薬草を採取してアンナさんの居る本邸の調剤室にやって来た。
ーやっぱり、この世界はモブに優しくないー
初めての乗馬だった。それなのに…ティモスさんは遠慮無かった。全速力で走らせた。そりゃあ、ゼンさんの命が掛かっているんだから、仕方無いけど…まだ足が震えてるからね!!
と、何とか頑張って薬草を無事にアンナさんに渡し、アンナさんが手際よくレベル2のポーションを作り、急いでゼンさんに飲ませた。
「ゼンさんの事は私に任せて下さい。アンナさんは、早くお子さんのところに帰ってあげて下さい。」
アンナさんには5歳の娘さんが居る。家には旦那さんや旦那さんの両親も居るそうだが、やっぱり子供からしたら“ママ”は一番の存在だろう。ゼンさんもレベル2のポーションを飲んだら落ち着いたので、アンナさんには帰ってもらう為に、私がゼンさんの看病をする事にした。
「ハルにとっても、今は大変な時なのに…ごめんなさいね?」
「大丈夫ですよ。あの人達がゼンさんを見舞いに来る事はないでしょうから。なんとでもなりますよ。」
アンナさんは、申し訳なさそうな顔をしながら帰って行った。
ゼンさんは、ポーションがよく効いているのか、顔色も良くなり、呼吸も安定していた。
ーうん。これなら大丈夫だね。良かったー
この本邸に居るのは…王太子様と宰相様とダルシニアン様とカルザイン様。明日、森に視察に行くのが朝食後少し時間を空けてからだったか…。ならば、朝食前にパルヴァン様に報告に行こう。私にお茶を持って来てくれたルナさんに、その事をパルヴァン様に伝えてもらうようにお願いをした。
「毒蛇に!?」
「取り敢えず、応急処置としてレベル1を飲ませたんだけど、いまいち効いてないのよ。ひょっとしたら、過去にも噛まれた事があるのかもしれない。」
確かに。大抵の毒蛇の毒なら、レベル1で十分だ。但し、2回目となると1回目よりも症状が酷くなる。勿論、その分ポーションの効きも悪くなる。
「レベル2…この前冒険者の人に使ってしまって…それで、丁度必要な薬草が無くなって…。」
その必要な薬草は、あの森にしかない。そこで今回の視察の事を聞いたから、視察が終わってから採りに行こうと思っていたのだ。
「アンナさん、アンナさんは今ある材料で作り始めてもらえますか?私、今から森に行って薬草を採って来ます!それと、リディさんは、この事をパルヴァン様に伝えて来てもらえますか?」
「それは勿論ですが、今は安全な森と言っても夜も遅いですから、ハル様1人では行かせられませんので…ティモスに同行してもらいます。ルナ、今すぐ騎士邸に行って事情を説明してティモスを連れて来てくれる?」
「分かったわ。では、ハル様、準備ができましたら、西門前でお待ち下さい。そこにティモスを連れて行きます。」
そう言って、各々がすべき事をする為に動き出した。
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「ティモス、ちょっと良い?」
パルヴァン邸にある騎士邸のサロンで、俺達視察組の騎士とパルヴァンの騎士と交流を深めていた時、侍女らしき女性がティモス殿を呼び止めた。
「ルナ!?あぁ、オーブリー殿、すまないが少し失礼する。」
と言って、ティモス殿が“ルナ”と言う女性の元へ少し焦る様にして駆け寄って行った。
ー何を焦っているのだろうか?ー
ティモス殿の様子が少し気になり、何となしに2人の様子を窺っていた。
「…が……で…ルさまが…です……ます…」
「…った…」
女性の方は淡々と話していたが、話を聞いたティモス殿は少し驚いた後、近くに居たパルヴァンの騎士に何か話し、また焦った顔になりこっちに戻って来た。
「オーブリー殿、すまない。急用ができた為、今から出掛ける事になった。後の事は残っている者に頼んである。明日は私も一緒に森に行くので、また明日、宜しくお願いします。」
そう言って、ティモス殿はまた急いでサロンから出て行った。何かあったんだろうか?気にはなったが、勝手に動く訳にも行かないので、そのままサロンで他の騎士達と過ごした。
「ハルー!」
「あ、ティモスさん!こんな遅くにごめんなさい!」
薬草採取の準備をして、西門に到着してすぐにティモスさんもやって来た。やって来た…んだけど…
「いや、こっちはまだ視察の騎士達と騒いでいたから大丈夫だ。兎に角、ゼンさんの事が心配だから、急ごう!」
そう言って、ティモスさんは馬上から手を差し伸べて来た。
「えっと…どうしろと?」
私、自慢じゃないけど馬に乗った事なんてないよ?頑張って走ってついて行けばいいんだろうか?
「ハル、手を出せ…」
「手?」
言われたまま手を出すと、そのままグイッとティモスさんの後ろに引っ張りあげられた。
「少しでも早い方が良いだろう?しっかり俺に掴まっておけよ?」
そう言った瞬間、ティモスさんは私の返事を聞かずに馬を走らせた。
必死にティモスさんにしがみつき、森で目当ての薬草を採取してアンナさんの居る本邸の調剤室にやって来た。
ーやっぱり、この世界はモブに優しくないー
初めての乗馬だった。それなのに…ティモスさんは遠慮無かった。全速力で走らせた。そりゃあ、ゼンさんの命が掛かっているんだから、仕方無いけど…まだ足が震えてるからね!!
と、何とか頑張って薬草を無事にアンナさんに渡し、アンナさんが手際よくレベル2のポーションを作り、急いでゼンさんに飲ませた。
「ゼンさんの事は私に任せて下さい。アンナさんは、早くお子さんのところに帰ってあげて下さい。」
アンナさんには5歳の娘さんが居る。家には旦那さんや旦那さんの両親も居るそうだが、やっぱり子供からしたら“ママ”は一番の存在だろう。ゼンさんもレベル2のポーションを飲んだら落ち着いたので、アンナさんには帰ってもらう為に、私がゼンさんの看病をする事にした。
「ハルにとっても、今は大変な時なのに…ごめんなさいね?」
「大丈夫ですよ。あの人達がゼンさんを見舞いに来る事はないでしょうから。なんとでもなりますよ。」
アンナさんは、申し訳なさそうな顔をしながら帰って行った。
ゼンさんは、ポーションがよく効いているのか、顔色も良くなり、呼吸も安定していた。
ーうん。これなら大丈夫だね。良かったー
この本邸に居るのは…王太子様と宰相様とダルシニアン様とカルザイン様。明日、森に視察に行くのが朝食後少し時間を空けてからだったか…。ならば、朝食前にパルヴァン様に報告に行こう。私にお茶を持って来てくれたルナさんに、その事をパルヴァン様に伝えてもらうようにお願いをした。
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