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第三章ーパルヴァン辺境地ー
別人?
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「やっぱり、王太子殿下達は、ハル殿もちゃんと元の世界に還ったと思っている…信じているみたいだよ。」
視察1日目の夜、本邸で王太子様達と夕食をとってから、別邸に帰って来たレオン様に執務室に呼ばれてやって来た私に、レオン様はそう言った。
あの時、魔法陣の中ではそれなりに動きがあったと思う。それに、大きな声もあげていた。それでも、あんなに近くに居たお姉さん達でさえ、光が眩しくてハッキリ見えなかった。特に、私と手を繋いでいなかったショウさんに関しては、そこに一緒に居た?と思える程記憶にないのだ。
ならば、その魔法陣から離れた所に居た人達には、絶対に私達の動きは見えてなかっただろう。
光が消えて、そこに誰も居なくなっていたなら…4人とも無事に元の世界に還ったと思っても仕方無いと思う。
「そう…なんですね。まぁ…予想通りですけど。還ったと…思ってくれていて…良かったです。」
「それで、明日は父上が引率して王太子殿下とダルシニアン様とカルザイン様と、後少数の王都の騎士が森に視察に入るから。ハル殿は、明日は森に行かないようにね。」
「ふふっ。分かりました。明日も引き籠ります。」
「本当に、ハル様は欲が無いんですね。私だったら、還れなかった!って慰謝料を請求するのに…。」
カテリーナ様が口を尖らせながら言う。
ーあ、これは…ヤバイなぁー
「リーナがハル殿の立場だったら?そんなの、私が元の世界なんかに還す筈ないよね?」
レオン様はキラキラ笑顔でそう言いながら、カテリーナ様の腰に手を回してグッと引き寄せた。
「ちょっ…レオン!?何してるの!?そう言う意味ではなくて!それに、人前では止めてー」
「ハル殿なら、もう居ないよ?」
「─えっ!?」
「人前ではないからね?じゃあ、まだ私の気持ちが解ってないようだから、解らせてあげようか?」
「えっ!?いや…解ってるから!」
「はいはい、ちょっと黙ろうね?」
レオンはニッコリ微笑むと、そのままカテリーナを抱き上げた。
ーカテリーナ様、ごめんなさいー
レオン様はカテリーナ様大好き人間だ。あんな風に、スイッチが入ったレオン様には逆らえません。お邪魔なんてした日には…うん。考えるのは止めよう。今も、ちゃんと正しい選択をした…筈だ…。
そう思いながら、自室へと戻った。
その日、入浴を済ませ、寝る準備をしている時にルナさんが
「ハル様、私ふと思ったんですけど…。今視察でいらっしゃってる方達とは、お互い認識がおありなんですよね?」
「はい。騎士様達の中にも居るかどうかまでは把握できてませんけど。」
と言っても、騎士様で顔見知りとなったらオーブリー様位しか居ないけど…。
「その方々は、今のハル様の姿をご存知なんですか?」
「……あーっ!!」
スッカリ忘れてました!!
「私の本当の容姿を知っていたのは、お姉さん…聖女様達だけでした。実際にこの容姿になったのも、ここ最近ですし…。そっか…。」
「それなら、余程近付かない限りは、今のハル様が巻き込まれたハル様と同一人物だとは、気付かないかもしれませんね。髪の色だけでも印象は変わりますから。」
確かに。この世界では、髪を染める事がないから、“シルバーブロンド=ハル”にはならない。それに…眼鏡も外してるから、瞳の色も違う。
「よくよく考えたら…全然違う人になってる?」
「うーん…そうですね…。容姿だけで言うと別人ですね。」
「ん?容姿だけ?」
ルナさんだけではなく、リディさんも少し困った様な顔して…
「何と言いますか…動きがハル様なんです。」
ーう…動き?ー
「ハル様って、動きが…動きも可愛いんですよね…。本当に…。なので、分かる人には分かるんですよね…。」
何となく自慢気?に話すルナさん。
「でも…今視察に来ていらっしゃる方々とは…私達の様に毎日会ったりお話したりは、なかったんですよね?それなら、大丈夫だと思います。私とルナは、毎日ハル様を見ているからこそですから。」
リディさんまで自慢気な顔…。何だかよく分からないけど…
「取り敢えずは、近付き過ぎなければ大丈夫って事ですね?」
「そうです。6日間も別邸に籠りきりもお辛いでしょう?せめて、庭でお茶位しませんか?本邸から別邸の庭は見えにくくなっていますし、本邸から見えたとしても、ハル様だとは気付かれる事はないでしょう。」
まぁ、念には念をと言うから、実際庭でお茶をするかどうかは別として、少し気が楽になったかなーとは思う。
ちょっと気分が上昇したままベットに入ろうかと思った時ー
「ハル、まだ起きてる?」
ドアの向こうから、アンナさんが声を掛けて来た。ルナさんは私の顔を伺い見てから、ドアを開けに行く。そして、入って来たアンナさんは、少し焦っている感じだった。
「ハル、レベル2の解毒ポーション…持ってない?」
「レベル…2…ですか!?」
レベル2って、そこそこ強いポーションだ。
「ゼンさんが、毒蛇に噛まれたの!」
視察1日目の夜、本邸で王太子様達と夕食をとってから、別邸に帰って来たレオン様に執務室に呼ばれてやって来た私に、レオン様はそう言った。
あの時、魔法陣の中ではそれなりに動きがあったと思う。それに、大きな声もあげていた。それでも、あんなに近くに居たお姉さん達でさえ、光が眩しくてハッキリ見えなかった。特に、私と手を繋いでいなかったショウさんに関しては、そこに一緒に居た?と思える程記憶にないのだ。
ならば、その魔法陣から離れた所に居た人達には、絶対に私達の動きは見えてなかっただろう。
光が消えて、そこに誰も居なくなっていたなら…4人とも無事に元の世界に還ったと思っても仕方無いと思う。
「そう…なんですね。まぁ…予想通りですけど。還ったと…思ってくれていて…良かったです。」
「それで、明日は父上が引率して王太子殿下とダルシニアン様とカルザイン様と、後少数の王都の騎士が森に視察に入るから。ハル殿は、明日は森に行かないようにね。」
「ふふっ。分かりました。明日も引き籠ります。」
「本当に、ハル様は欲が無いんですね。私だったら、還れなかった!って慰謝料を請求するのに…。」
カテリーナ様が口を尖らせながら言う。
ーあ、これは…ヤバイなぁー
「リーナがハル殿の立場だったら?そんなの、私が元の世界なんかに還す筈ないよね?」
レオン様はキラキラ笑顔でそう言いながら、カテリーナ様の腰に手を回してグッと引き寄せた。
「ちょっ…レオン!?何してるの!?そう言う意味ではなくて!それに、人前では止めてー」
「ハル殿なら、もう居ないよ?」
「─えっ!?」
「人前ではないからね?じゃあ、まだ私の気持ちが解ってないようだから、解らせてあげようか?」
「えっ!?いや…解ってるから!」
「はいはい、ちょっと黙ろうね?」
レオンはニッコリ微笑むと、そのままカテリーナを抱き上げた。
ーカテリーナ様、ごめんなさいー
レオン様はカテリーナ様大好き人間だ。あんな風に、スイッチが入ったレオン様には逆らえません。お邪魔なんてした日には…うん。考えるのは止めよう。今も、ちゃんと正しい選択をした…筈だ…。
そう思いながら、自室へと戻った。
その日、入浴を済ませ、寝る準備をしている時にルナさんが
「ハル様、私ふと思ったんですけど…。今視察でいらっしゃってる方達とは、お互い認識がおありなんですよね?」
「はい。騎士様達の中にも居るかどうかまでは把握できてませんけど。」
と言っても、騎士様で顔見知りとなったらオーブリー様位しか居ないけど…。
「その方々は、今のハル様の姿をご存知なんですか?」
「……あーっ!!」
スッカリ忘れてました!!
「私の本当の容姿を知っていたのは、お姉さん…聖女様達だけでした。実際にこの容姿になったのも、ここ最近ですし…。そっか…。」
「それなら、余程近付かない限りは、今のハル様が巻き込まれたハル様と同一人物だとは、気付かないかもしれませんね。髪の色だけでも印象は変わりますから。」
確かに。この世界では、髪を染める事がないから、“シルバーブロンド=ハル”にはならない。それに…眼鏡も外してるから、瞳の色も違う。
「よくよく考えたら…全然違う人になってる?」
「うーん…そうですね…。容姿だけで言うと別人ですね。」
「ん?容姿だけ?」
ルナさんだけではなく、リディさんも少し困った様な顔して…
「何と言いますか…動きがハル様なんです。」
ーう…動き?ー
「ハル様って、動きが…動きも可愛いんですよね…。本当に…。なので、分かる人には分かるんですよね…。」
何となく自慢気?に話すルナさん。
「でも…今視察に来ていらっしゃる方々とは…私達の様に毎日会ったりお話したりは、なかったんですよね?それなら、大丈夫だと思います。私とルナは、毎日ハル様を見ているからこそですから。」
リディさんまで自慢気な顔…。何だかよく分からないけど…
「取り敢えずは、近付き過ぎなければ大丈夫って事ですね?」
「そうです。6日間も別邸に籠りきりもお辛いでしょう?せめて、庭でお茶位しませんか?本邸から別邸の庭は見えにくくなっていますし、本邸から見えたとしても、ハル様だとは気付かれる事はないでしょう。」
まぁ、念には念をと言うから、実際庭でお茶をするかどうかは別として、少し気が楽になったかなーとは思う。
ちょっと気分が上昇したままベットに入ろうかと思った時ー
「ハル、まだ起きてる?」
ドアの向こうから、アンナさんが声を掛けて来た。ルナさんは私の顔を伺い見てから、ドアを開けに行く。そして、入って来たアンナさんは、少し焦っている感じだった。
「ハル、レベル2の解毒ポーション…持ってない?」
「レベル…2…ですか!?」
レベル2って、そこそこ強いポーションだ。
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