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第二章ー浄化の旅と帰還ー
お別れの挨拶とお礼①
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「ハル様、お帰りなさいませ!」
帰城翌日の午後、私はベラトリス様にお茶に誘われたので、指定された、お城の庭園内にあるガゼボに来ている。ベラトリス様専用の、プライベートの庭園である。
「ベラトリス様、お誘いありがとうございます。それと…ミリリーナさんの事も…ありがとうございました。」
「ふふっ。お誘いと言っても、私がハル様に会いたかっただけですわ!」
はい。ベラトリス様は、色々と成長をされていました。
ーえー…これで私と同じ二十歳なの?色気があり過ぎませんか?ー
美人さんに磨きが掛かったベラトリス様だけど、2年前と変わらず、私がプレゼントしたブレスレットを着けてくれていた。
そして、この2年の間にあった事を、お互い時間が許す限り語り合った。
ーきっと、こうやってゆっくりお話ができるのは…今日が最後になるだろうー
そう思うと、少し寂しい気持ちになる。
「ハル様は…明後日の夜会にも…参加しないんですのね?」
「…はい。」
「……」
少しの沈黙の後…
「…寂しく…なりますわ…。」
「…ベラトリス様…。あの本当に…ありがとう…ございました。私、ベラトリス様があの時動いてくれていなければ…壊れていたと…思うんです。そのお陰で、元の世界に還っても前に進んで行けると…。私…ベラトリス様の事、絶対…絶対に忘れません。」
「ーっ!ハル様!!」
ギュウッと、ベラトリス様に抱き付かれて
「私も、忘れませんわ!!」
と、暫くの間2人で抱き合って、別れを惜しんだ。
夕食は、お姉さん達と一緒に食べる約束をしていたので、夕方にはベラトリス様のガゼボを後にした。
「ハル殿!」
そして、私の部屋への帰りの途中で声を掛けられた。
「オーブリー様。こんにちは。」
ペコリと挨拶をする。
「あの…少しだけで良いんだけど…時間あるかな?」
チラリと、私の横に居るサエラさんを見ながら訊かれる。
「?えっと、部屋に帰るだけなので…少しなら大丈夫です。」
私も横に居るサエラさんを見ながら答える。すると、サエラさんが
「私は少し離れた所に控えておりますので、お話が終われば声を掛けて下さい。」
と言って、私達から離れて行った。
「ハル殿は…明後日の夜会に出ないのは…もう決定事項?」
「はい。ベラトリス様にも声を掛けられたんですけど…。」
「そっか…。」
そう言ったまま、オーブリー様は少し思案した後、持っていた箱を私の目の前に差し出して来た。
「?」
何だ?と思いながら、その箱を見ていると
「これ、クッキーのお礼。あの時、ハル殿からクッキーをもらった5人から。王都では結構有名で評判の良いお店のなんだ。ハル殿の作ったクッキーも美味しかったけど、これも美味しいと思うから、食べてみてくれ。」
「態々買って来てくれたんですか?ありがとうございます。」
帰って来たのが昨日なのに…ご飯の残り物で作ったクッキーのお礼がコレとは…海老鯛(海老で鯛を釣るよう)で申し訳無いです。断るのも失礼なので、しっかりといただきます!!
「それと…これは、俺個人からのお礼。」
と言いながら、小さな箱を今もらった箱の上に乗せて来た。
「え?個人的?」
「まぁ…旅の間は薬師としてお世話になったし…癒されたし…」
ん?最後の方がよく聞こえなかったなぁ??
「でも、薬師は仕事ですし、お礼を戴く理由にならないと思うんですけど…」
「んー…じゃあさ、これは…この世界で俺と会った思い出として…もらってくれるか?それに、たいした物じゃないから、安心してくれ。」
「…思い出…」
オーブリー様は、ただただ静かに笑っている。
「分かり…ました。思い出として…頂きます。」
それを受け取ると、オーブリー様は更に笑みを深めて
「…多分…これでもう、話せる時と言うか会う事は…無いと思う…。どうか…元の世界に還っても…元気で…。」
「はい。オーブリー様も…お元気で。」
ニコリと笑って挨拶をすると、オーブリー様は箱を持っていない方の私の手を持ち上げ、私の手の甲に軽くキスを落とした。
「ーっ!?」
「それじゃあー…」
オーブリー様は、そのまま何もなかったかの様に走り去って行った。
ーえ?何が起こった?え?ー
「ハル様…大丈夫ですか?」
呆然とした私の横にサエラさんが戻って来た。
「えっと…この世界では…よくある事…なんですかね?」
「時と場合と…相手によります。」
ーですよねっ!?そうだと思いました!イケメンさんは、本当に何しても絵になるんですね!?ー
恥ずかしい気持ちを抑えて、何とか部屋へと戻って来た。
5人の騎士様達からのお礼は、マドレーヌの様な焼き菓子だった。ベラトリス様とお茶をしたばかりで、お腹は空いていなかったから、明日食べる事にして、サエラさんに片付けてもらった。
そして、オーブリー様個人からのお礼は…ティアドロップの形にカットされた、水色の石が三つ付いたブレスレットだった。
ー可愛いけど…思い出の品としては…高価?過ぎませんか!?たいした物じゃないですか!?ー
勿論、ハルは気付いていない。この色が、ステファン=オーブリーの瞳と同じ色だった事に。
帰城翌日の午後、私はベラトリス様にお茶に誘われたので、指定された、お城の庭園内にあるガゼボに来ている。ベラトリス様専用の、プライベートの庭園である。
「ベラトリス様、お誘いありがとうございます。それと…ミリリーナさんの事も…ありがとうございました。」
「ふふっ。お誘いと言っても、私がハル様に会いたかっただけですわ!」
はい。ベラトリス様は、色々と成長をされていました。
ーえー…これで私と同じ二十歳なの?色気があり過ぎませんか?ー
美人さんに磨きが掛かったベラトリス様だけど、2年前と変わらず、私がプレゼントしたブレスレットを着けてくれていた。
そして、この2年の間にあった事を、お互い時間が許す限り語り合った。
ーきっと、こうやってゆっくりお話ができるのは…今日が最後になるだろうー
そう思うと、少し寂しい気持ちになる。
「ハル様は…明後日の夜会にも…参加しないんですのね?」
「…はい。」
「……」
少しの沈黙の後…
「…寂しく…なりますわ…。」
「…ベラトリス様…。あの本当に…ありがとう…ございました。私、ベラトリス様があの時動いてくれていなければ…壊れていたと…思うんです。そのお陰で、元の世界に還っても前に進んで行けると…。私…ベラトリス様の事、絶対…絶対に忘れません。」
「ーっ!ハル様!!」
ギュウッと、ベラトリス様に抱き付かれて
「私も、忘れませんわ!!」
と、暫くの間2人で抱き合って、別れを惜しんだ。
夕食は、お姉さん達と一緒に食べる約束をしていたので、夕方にはベラトリス様のガゼボを後にした。
「ハル殿!」
そして、私の部屋への帰りの途中で声を掛けられた。
「オーブリー様。こんにちは。」
ペコリと挨拶をする。
「あの…少しだけで良いんだけど…時間あるかな?」
チラリと、私の横に居るサエラさんを見ながら訊かれる。
「?えっと、部屋に帰るだけなので…少しなら大丈夫です。」
私も横に居るサエラさんを見ながら答える。すると、サエラさんが
「私は少し離れた所に控えておりますので、お話が終われば声を掛けて下さい。」
と言って、私達から離れて行った。
「ハル殿は…明後日の夜会に出ないのは…もう決定事項?」
「はい。ベラトリス様にも声を掛けられたんですけど…。」
「そっか…。」
そう言ったまま、オーブリー様は少し思案した後、持っていた箱を私の目の前に差し出して来た。
「?」
何だ?と思いながら、その箱を見ていると
「これ、クッキーのお礼。あの時、ハル殿からクッキーをもらった5人から。王都では結構有名で評判の良いお店のなんだ。ハル殿の作ったクッキーも美味しかったけど、これも美味しいと思うから、食べてみてくれ。」
「態々買って来てくれたんですか?ありがとうございます。」
帰って来たのが昨日なのに…ご飯の残り物で作ったクッキーのお礼がコレとは…海老鯛(海老で鯛を釣るよう)で申し訳無いです。断るのも失礼なので、しっかりといただきます!!
「それと…これは、俺個人からのお礼。」
と言いながら、小さな箱を今もらった箱の上に乗せて来た。
「え?個人的?」
「まぁ…旅の間は薬師としてお世話になったし…癒されたし…」
ん?最後の方がよく聞こえなかったなぁ??
「でも、薬師は仕事ですし、お礼を戴く理由にならないと思うんですけど…」
「んー…じゃあさ、これは…この世界で俺と会った思い出として…もらってくれるか?それに、たいした物じゃないから、安心してくれ。」
「…思い出…」
オーブリー様は、ただただ静かに笑っている。
「分かり…ました。思い出として…頂きます。」
それを受け取ると、オーブリー様は更に笑みを深めて
「…多分…これでもう、話せる時と言うか会う事は…無いと思う…。どうか…元の世界に還っても…元気で…。」
「はい。オーブリー様も…お元気で。」
ニコリと笑って挨拶をすると、オーブリー様は箱を持っていない方の私の手を持ち上げ、私の手の甲に軽くキスを落とした。
「ーっ!?」
「それじゃあー…」
オーブリー様は、そのまま何もなかったかの様に走り去って行った。
ーえ?何が起こった?え?ー
「ハル様…大丈夫ですか?」
呆然とした私の横にサエラさんが戻って来た。
「えっと…この世界では…よくある事…なんですかね?」
「時と場合と…相手によります。」
ーですよねっ!?そうだと思いました!イケメンさんは、本当に何しても絵になるんですね!?ー
恥ずかしい気持ちを抑えて、何とか部屋へと戻って来た。
5人の騎士様達からのお礼は、マドレーヌの様な焼き菓子だった。ベラトリス様とお茶をしたばかりで、お腹は空いていなかったから、明日食べる事にして、サエラさんに片付けてもらった。
そして、オーブリー様個人からのお礼は…ティアドロップの形にカットされた、水色の石が三つ付いたブレスレットだった。
ー可愛いけど…思い出の品としては…高価?過ぎませんか!?たいした物じゃないですか!?ー
勿論、ハルは気付いていない。この色が、ステファン=オーブリーの瞳と同じ色だった事に。
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