10 / 203
第一章ー最初の1年ー
悪意
しおりを挟む
「先ず、この1ヶ月の私達の状況を話すわね。」
泣いているミヤさんの横で、ショウさんが話し出した。
4人一緒の勉強が終わった次の日から、あの魔導師の指導のもと、聖女の力の訓練が始まった。少しでも早く浄化が出来るようになる為に、少しでも早く日本に還る為に、毎日朝早くからその日の許す限りの時間迄、クタクタになりながらも頑張っていた。勿論、朝は早いし、お昼は訓練場のある城の別室でとる。夜は遅いので各々自室でとる毎日だった。たまに早く終わった日は、ハルの部屋に行こうってなったりもしたが、ハル付きの侍女に、
「ハル様は、今はいません。」
「ハル様は、もう寝ています。」
とか言われて会えなかった。
それに、ハルの勉強は捗ってる?大丈夫?他にも何か困ったりしてない?と、ハル付きの侍女達に訊くと
「ハル様は、勉強が嫌だと言ってあまりお勉強をされていません。」
「食事も好き嫌いが多いようで、よく食事を残されるので、料理長も困っています。」
「こちらの世界のルールもよく分からないようで…私達が側に居るのも嫌なようで、よく追い出されるのです。」
と、ハル付きの侍女達に言われた。
勿論、私達3人はその話を信じる事はできなかった。だけど、その侍女達があちこちでその話をするから、あっと言う間にこの城内にその噂が広まってしまった。
私達はハルに直接会う迄は、そんな噂なんて信じない。ハルに会わせろと何度も言ったけど、聖女としてすべき事を優先して欲しい。今は我が儘放題と言われるハルには会わせられないと王太子殿下に直接言われた。王太子殿下にそう言われたら、誰も逆らえない。
それでも、ハルを私達聖女と同じ様に対応すると王様と宰相様が約束してくれていたから、それを信じる事にした。
そんなモヤモヤした日を過ごしていたある日、私達が訓練をしているところに第一王女様が見学をしに来た。
「ねぇ、ハル様は本当に噂通りの方なの?」
第一王女ベラトリス様は、開口一番に私達に訊いて来た。そこで、ようやく話を聞いてくれる人が現れたとばかりに王女様に話をした。その話を王女様の後ろに控えて聞いていたのがサエラさんだった。サエラさんは、もともと王女様の母である現王妃様付きの侍女だった。サエラさんが復帰した後、王妃の願いでベラトリス様付きになったのだ。
「お許しいただけるのであれば、私がハル様の様子を見て参りましょうか?」
そんな話をしている所に、王太子殿下が訓練場にやって来た。だけど、いつも側で控えている近衛騎士のエディオル=カルザイン様が居ない事が気になって、どうしたのか?と訊くと─
「聖女様達が気になると言うので、エディオルに様子を見に行かせた」
と言う。それに驚いたのが私達。ハルは男性が苦手…男性恐怖症に近いものがある。と言うと、サエラさんが慌ててハルの部屋へ駆け付けてくれたと。
「あぁ、だから、あの時サエラさんが来てくれたんですね。」
「後からサエラさんから聞いたんだけど、その時のハル、今にも倒れそうだったって…本当に、何もされてない?」
「はい、何もされてません。ただ…本当に…怖かっただけなんです…」
「それでも!噂だけを信じて目の前のものを見ないなんて…許せるものじゃないけどね!」
と、ようやく泣き止んだミヤさんが息巻いている。
「兎に角、これが、ここ1ヶ月のこちら側の状況の話ね。次は…ハル側の状況の話。」
ショウさんがチラリとサエラさんを見ながらそう言うと、スッとサエラさんが私の横に来た。
「この1ヶ月のハル様の状況のお話は、私からさせていただきます。」
ハル様に付いた侍女は3人。3人とも男爵家の令嬢であった。聖女付きになれると思いきや、まさかの巻き込まれでやって来たただの平民。しかも言葉が理解できないし喋れない。色々な不満を、嫌がらせで発散していた。先ずは、ハル様に付けた筈の語学の先生。その先生は予定通りに約束の日にやって来ていた。だが、場所はハル様の部屋ではなく、王城の客室だった。だったのだが、その事をハル様に伝えなかった。しかも、その語学の先生には
「勉強が嫌だと言って、部屋から出て来ない」
と、嘘をついた。勿論、その先生はその場で怒り帰ってしまった。
それから、食事やお菓子にも少しずつ嫌がらせをし始める。
「食事が不味いと言って食べない。」
「辛い物が好きらしい。」
「野菜が嫌いだから、具がないスープが良い」
等々、好き嫌いで我が儘だと、料理長も手を抜くようになる。
「私達から取り上げたお菓子でお腹がいっぱいだから、食事は要らないそうです。」
とハル様付きの侍女が言えば、料理長もそれを疑わず作らなくなる。そうして、ハル様の食事が1食や2食出なくても誰も不思議に思わなかったと。
「この世界でのルールに従うのが嫌で、私達侍女を側に置くのを嫌がって、いつも追い出されるんです。」
と、目を潤ませて訴えれば、今迄の噂がある分信憑性を持たせ、更に周りがそれを信じる。
気が付けば、ハル様は傲慢かつ我が儘な巻き込まれ異世界人となっていた。
*今日中に、もう1話投稿する予定です*
泣いているミヤさんの横で、ショウさんが話し出した。
4人一緒の勉強が終わった次の日から、あの魔導師の指導のもと、聖女の力の訓練が始まった。少しでも早く浄化が出来るようになる為に、少しでも早く日本に還る為に、毎日朝早くからその日の許す限りの時間迄、クタクタになりながらも頑張っていた。勿論、朝は早いし、お昼は訓練場のある城の別室でとる。夜は遅いので各々自室でとる毎日だった。たまに早く終わった日は、ハルの部屋に行こうってなったりもしたが、ハル付きの侍女に、
「ハル様は、今はいません。」
「ハル様は、もう寝ています。」
とか言われて会えなかった。
それに、ハルの勉強は捗ってる?大丈夫?他にも何か困ったりしてない?と、ハル付きの侍女達に訊くと
「ハル様は、勉強が嫌だと言ってあまりお勉強をされていません。」
「食事も好き嫌いが多いようで、よく食事を残されるので、料理長も困っています。」
「こちらの世界のルールもよく分からないようで…私達が側に居るのも嫌なようで、よく追い出されるのです。」
と、ハル付きの侍女達に言われた。
勿論、私達3人はその話を信じる事はできなかった。だけど、その侍女達があちこちでその話をするから、あっと言う間にこの城内にその噂が広まってしまった。
私達はハルに直接会う迄は、そんな噂なんて信じない。ハルに会わせろと何度も言ったけど、聖女としてすべき事を優先して欲しい。今は我が儘放題と言われるハルには会わせられないと王太子殿下に直接言われた。王太子殿下にそう言われたら、誰も逆らえない。
それでも、ハルを私達聖女と同じ様に対応すると王様と宰相様が約束してくれていたから、それを信じる事にした。
そんなモヤモヤした日を過ごしていたある日、私達が訓練をしているところに第一王女様が見学をしに来た。
「ねぇ、ハル様は本当に噂通りの方なの?」
第一王女ベラトリス様は、開口一番に私達に訊いて来た。そこで、ようやく話を聞いてくれる人が現れたとばかりに王女様に話をした。その話を王女様の後ろに控えて聞いていたのがサエラさんだった。サエラさんは、もともと王女様の母である現王妃様付きの侍女だった。サエラさんが復帰した後、王妃の願いでベラトリス様付きになったのだ。
「お許しいただけるのであれば、私がハル様の様子を見て参りましょうか?」
そんな話をしている所に、王太子殿下が訓練場にやって来た。だけど、いつも側で控えている近衛騎士のエディオル=カルザイン様が居ない事が気になって、どうしたのか?と訊くと─
「聖女様達が気になると言うので、エディオルに様子を見に行かせた」
と言う。それに驚いたのが私達。ハルは男性が苦手…男性恐怖症に近いものがある。と言うと、サエラさんが慌ててハルの部屋へ駆け付けてくれたと。
「あぁ、だから、あの時サエラさんが来てくれたんですね。」
「後からサエラさんから聞いたんだけど、その時のハル、今にも倒れそうだったって…本当に、何もされてない?」
「はい、何もされてません。ただ…本当に…怖かっただけなんです…」
「それでも!噂だけを信じて目の前のものを見ないなんて…許せるものじゃないけどね!」
と、ようやく泣き止んだミヤさんが息巻いている。
「兎に角、これが、ここ1ヶ月のこちら側の状況の話ね。次は…ハル側の状況の話。」
ショウさんがチラリとサエラさんを見ながらそう言うと、スッとサエラさんが私の横に来た。
「この1ヶ月のハル様の状況のお話は、私からさせていただきます。」
ハル様に付いた侍女は3人。3人とも男爵家の令嬢であった。聖女付きになれると思いきや、まさかの巻き込まれでやって来たただの平民。しかも言葉が理解できないし喋れない。色々な不満を、嫌がらせで発散していた。先ずは、ハル様に付けた筈の語学の先生。その先生は予定通りに約束の日にやって来ていた。だが、場所はハル様の部屋ではなく、王城の客室だった。だったのだが、その事をハル様に伝えなかった。しかも、その語学の先生には
「勉強が嫌だと言って、部屋から出て来ない」
と、嘘をついた。勿論、その先生はその場で怒り帰ってしまった。
それから、食事やお菓子にも少しずつ嫌がらせをし始める。
「食事が不味いと言って食べない。」
「辛い物が好きらしい。」
「野菜が嫌いだから、具がないスープが良い」
等々、好き嫌いで我が儘だと、料理長も手を抜くようになる。
「私達から取り上げたお菓子でお腹がいっぱいだから、食事は要らないそうです。」
とハル様付きの侍女が言えば、料理長もそれを疑わず作らなくなる。そうして、ハル様の食事が1食や2食出なくても誰も不思議に思わなかったと。
「この世界でのルールに従うのが嫌で、私達侍女を側に置くのを嫌がって、いつも追い出されるんです。」
と、目を潤ませて訴えれば、今迄の噂がある分信憑性を持たせ、更に周りがそれを信じる。
気が付けば、ハル様は傲慢かつ我が儘な巻き込まれ異世界人となっていた。
*今日中に、もう1話投稿する予定です*
76
お気に入りに追加
2,380
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない
猪本夜
ファンタジー
2024/2/29……3巻刊行記念 番外編SS更新しました
2023/4/26……2巻刊行記念 番外編SS更新しました
※1巻 & 2巻 & 3巻 販売中です!
殺されたら、前世の記憶を持ったまま末っ子公爵令嬢の赤ちゃんに異世界転生したミリディアナ(愛称ミリィ)は、兄たちの末っ子妹への溺愛が止まらず、すくすく成長していく。
前世で殺された悪夢を見ているうちに、現世でも命が狙われていることに気づいてしまう。
ミリィを狙う相手はどこにいるのか。現世では死を回避できるのか。
兄が増えたり、誘拐されたり、両親に愛されたり、恋愛したり、ストーカーしたり、学園に通ったり、求婚されたり、兄の恋愛に絡んだりしつつ、多種多様な兄たちに甘えながら大人になっていくお話。
幼少期から惚れっぽく恋愛に積極的で人とはズレた恋愛観を持つミリィに兄たちは動揺し、知らぬうちに恋心の相手を兄たちに潰されているのも気づかず今日もミリィはのほほんと兄に甘えるのだ。
今では当たり前のものがない時代、前世の知識を駆使し兄に頼んでいろんなものを開発中。
甘えたいブラコン妹と甘やかしたいシスコン兄たちの日常。
基本はミリィ(主人公)視点、主人公以外の視点は記載しております。
【完結:211話は本編の最終話、続編は9話が最終話、番外編は3話が最終話です。最後までお読みいただき、ありがとうございました!】
※書籍化に伴い、現在本編と続編は全て取り下げとなっておりますので、ご了承くださいませ。
美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます
今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。
アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて……
表紙 チルヲさん
出てくる料理は架空のものです
造語もあります11/9
参考にしている本
中世ヨーロッパの農村の生活
中世ヨーロッパを生きる
中世ヨーロッパの都市の生活
中世ヨーロッパの暮らし
中世ヨーロッパのレシピ
wikipediaなど

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる