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余話★ロイド視点★
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ポレット=ブラウン改め、エリー。
騎士団に入団してから通うようになった食堂『結』に、ある日バイトとしてやって来たエリー。彼女の第一印象は、“可愛い顔をした影のある女の子”だった。
その印象通り、彼女は訳ありのようだった。独り身で他国からやって来た獣人。今迄働いた事がない─没落でもした元中流貴族の令嬢か?と思っていた。それでも、一生懸命働く姿は好感の持てるものだった。
ー色んな苦労をしているんだろうなー
と、勝手に憐れんで、勝手にエリーに優しく接するようにしていた。
声を掛けても、お土産をあげても遠慮がちにお礼を言われるだけで、必要以上に俺に近付いて来ないところも、ある意味好感が持てた。
それなりに顔が良いせいで、少し微笑めば勘違いして距離を詰めて来る令嬢が多く、辟易していたのだ。
ーまぁ…人を見て遊んだりもしているけどー
それは、普通によくある事だから問題にはならない。それに、恋人や婚約者や旦那が居ない相手しか選んでいないから非難される事もない。
それでも、たまに……本気になられて責められる事もあって………その場面をエリーに見られてしまったのだ。
「最悪だ」
と思ったけど、今となっては、あの時エリーに見られて良かったのかもしれない。あれがなければ、エリーがどんな子だったかなんて、知る事がなかっただろうから。
エリーを知れば知るほど惹かれていった。
エリーは決して見た目で人を判断しない。だから、俺がいくら微笑んでも笑いかけても、頬を染める事など一度もなかった。エリーが素で笑ったな─と思ったのは、アップルパイを食べた時だったような気がする。
それから色々あって、ようやくエリーが俺に心を開いてくれた時は、本当に嬉しかった。それと同時に、俺の手で必ずエリーを幸せにしたいと思った。
ーきっと、エリーの母上もそう願っていただろうー
話を聞く限り、エリーの母上はとても優しくて立派な人だったんだろうと思う。
一番驚いた事は、エリーがまだ“ポレット=ブラウン”として公爵家の籍に残ったままだった事だ。婚約するにあたって念の為にと調べてみると、現ブラウン公爵(ポレットの叔父)が、何かあった時の為にと籍を残していたのだ。その為、現公爵に婚約する事と、エリーの今の気持ちを説明するとブラウン公爵家から籍を外し、更には新たな籍をも用意してくれた。そのお陰で、独り身の異国民であるエリーではあったけど、すぐに婚約に必要な書類を調える事ができた。ただ、この事は現公爵の意向もあって、エリー本人には伝えていない。
兎に角、ようやく婚約を受け入れてくれて、後はサインをするだけ─と言うところで、エリーからまさかの『待て』が掛かり、『婚約の前に大事なお話があるので、少し時間をください』と、真剣な顔でお願いされたのが3日前。そして、今日が、その日。
ー一体どんな話をされるのか?ー
まさか、ここまで来て『やっぱり婚約は無しで』とはならないと……思いたい。もし、万が一にもそう言われたら──
「いっその事既成事実を───」
「ロイド様、遅くなってごめんなさい!」
「うお─っ!遅くない!大丈夫だから!」
ー何て事を考えた!?ー
約束の時間より5分程遅れただけで、エリーは急いで走って来たようで、乱れた髪を手で整えながらやって来た。そんなエリーもまた、可愛らしい。
「それじゃあ…私の家でお話しますね」
と、エリーの家に向かった。
そこで聞いた話は───
「私、熊の獣人なんです」
「────────ん?」
「ですから、私、熊なんです」
「───そうなんだ」
ーそう言えば、エリーが獣化した姿は見た事がなかったなー
「それだけ…ですか?」
「ん?それだけ?あぁ…気の早い話だけど、俺達に子供ができたら、熊かもしれないって事?」
「子供!?違っ──わなくもないですけど!熊ですよ!?獣人でも比較的大きい熊なんです!リスとか兎みたいに可愛いとは真反対の熊なんです!」
「熊のエリーなら、熊でも可愛いと思うよ?」
「いや……それは………流石にないかと……」
心なし、エリーがひいているように見えるのは気のせいだろう。嘘は言っていないのに。
「なら……実際に見て下さい」
そう言うのと同時に、目の前の人間の女の子のエリーは、熊の姿へと変化した。
『どう……ですか?茶色い毛むくじゃらなんです……こんな私でも……良いんですか?』
ーそう言う事かー
俺より小さかった身長が熊になって───も俺より小さくないか?大きさも───え?ちゃんと食べてる?と心配になってしまうくらいの大きさじゃないか?
「え!?エリー、大丈夫か!?」
「は?何が!?」
思わず心配になって熊のエリーを抱き寄せてみると──
ーもふもふが気持ち良過ぎないか!?ー
小さ過ぎると思った体は、それなりにしっかりしていて、でも、女の子だからか程よく柔らかくて、茶色の毛並みがサラサラフワフワのもこもこで抱き心地が──
「控え目に言って、最高で気持ち良くて安心する」
「はい!?」
ーもふもふに包まれる安心感が半端無いー
あまりの心地良さと安心感で、ギュウギュウと抱きついていると、「勘弁して下さい!」と、熊のエリーが肉球を押し付けて来た。
「最高か!」
「何がですか!?」
もう、俺はおかしいのかもしれない。エリーが女の子でも熊でも可愛くしか見えないのだから。だから、エリーは何も不安になる事も心配する事もなく、俺の側に居れば良いのだ。
それから暫くの間、熊のエリーを堪能した後、無事に書類にサインをして婚約が調ったのだった。
時々、“もふもふ会”とやらに招集される熊のエリー。綺麗な山奥で様々なもふもふが集まるそうだが、一番最強なのがリスなんだそうだ───が、それはまた、別の話なんだそうだ。
❋これにて完結となります。最後迄読んでいただき、ありがとうございます❋
*ᴗ ᴗ)ᴗ͈ˬᴗ͈ꕤ୭*
❋【置き場】に“もふもふ会”のif話を投稿しました。お時間ある時にでも、覗いてみていただければ幸いです❋
(ꕤ ˊᵕˋㅅˊᵕˋ ୨୧)
騎士団に入団してから通うようになった食堂『結』に、ある日バイトとしてやって来たエリー。彼女の第一印象は、“可愛い顔をした影のある女の子”だった。
その印象通り、彼女は訳ありのようだった。独り身で他国からやって来た獣人。今迄働いた事がない─没落でもした元中流貴族の令嬢か?と思っていた。それでも、一生懸命働く姿は好感の持てるものだった。
ー色んな苦労をしているんだろうなー
と、勝手に憐れんで、勝手にエリーに優しく接するようにしていた。
声を掛けても、お土産をあげても遠慮がちにお礼を言われるだけで、必要以上に俺に近付いて来ないところも、ある意味好感が持てた。
それなりに顔が良いせいで、少し微笑めば勘違いして距離を詰めて来る令嬢が多く、辟易していたのだ。
ーまぁ…人を見て遊んだりもしているけどー
それは、普通によくある事だから問題にはならない。それに、恋人や婚約者や旦那が居ない相手しか選んでいないから非難される事もない。
それでも、たまに……本気になられて責められる事もあって………その場面をエリーに見られてしまったのだ。
「最悪だ」
と思ったけど、今となっては、あの時エリーに見られて良かったのかもしれない。あれがなければ、エリーがどんな子だったかなんて、知る事がなかっただろうから。
エリーを知れば知るほど惹かれていった。
エリーは決して見た目で人を判断しない。だから、俺がいくら微笑んでも笑いかけても、頬を染める事など一度もなかった。エリーが素で笑ったな─と思ったのは、アップルパイを食べた時だったような気がする。
それから色々あって、ようやくエリーが俺に心を開いてくれた時は、本当に嬉しかった。それと同時に、俺の手で必ずエリーを幸せにしたいと思った。
ーきっと、エリーの母上もそう願っていただろうー
話を聞く限り、エリーの母上はとても優しくて立派な人だったんだろうと思う。
一番驚いた事は、エリーがまだ“ポレット=ブラウン”として公爵家の籍に残ったままだった事だ。婚約するにあたって念の為にと調べてみると、現ブラウン公爵(ポレットの叔父)が、何かあった時の為にと籍を残していたのだ。その為、現公爵に婚約する事と、エリーの今の気持ちを説明するとブラウン公爵家から籍を外し、更には新たな籍をも用意してくれた。そのお陰で、独り身の異国民であるエリーではあったけど、すぐに婚約に必要な書類を調える事ができた。ただ、この事は現公爵の意向もあって、エリー本人には伝えていない。
兎に角、ようやく婚約を受け入れてくれて、後はサインをするだけ─と言うところで、エリーからまさかの『待て』が掛かり、『婚約の前に大事なお話があるので、少し時間をください』と、真剣な顔でお願いされたのが3日前。そして、今日が、その日。
ー一体どんな話をされるのか?ー
まさか、ここまで来て『やっぱり婚約は無しで』とはならないと……思いたい。もし、万が一にもそう言われたら──
「いっその事既成事実を───」
「ロイド様、遅くなってごめんなさい!」
「うお─っ!遅くない!大丈夫だから!」
ー何て事を考えた!?ー
約束の時間より5分程遅れただけで、エリーは急いで走って来たようで、乱れた髪を手で整えながらやって来た。そんなエリーもまた、可愛らしい。
「それじゃあ…私の家でお話しますね」
と、エリーの家に向かった。
そこで聞いた話は───
「私、熊の獣人なんです」
「────────ん?」
「ですから、私、熊なんです」
「───そうなんだ」
ーそう言えば、エリーが獣化した姿は見た事がなかったなー
「それだけ…ですか?」
「ん?それだけ?あぁ…気の早い話だけど、俺達に子供ができたら、熊かもしれないって事?」
「子供!?違っ──わなくもないですけど!熊ですよ!?獣人でも比較的大きい熊なんです!リスとか兎みたいに可愛いとは真反対の熊なんです!」
「熊のエリーなら、熊でも可愛いと思うよ?」
「いや……それは………流石にないかと……」
心なし、エリーがひいているように見えるのは気のせいだろう。嘘は言っていないのに。
「なら……実際に見て下さい」
そう言うのと同時に、目の前の人間の女の子のエリーは、熊の姿へと変化した。
『どう……ですか?茶色い毛むくじゃらなんです……こんな私でも……良いんですか?』
ーそう言う事かー
俺より小さかった身長が熊になって───も俺より小さくないか?大きさも───え?ちゃんと食べてる?と心配になってしまうくらいの大きさじゃないか?
「え!?エリー、大丈夫か!?」
「は?何が!?」
思わず心配になって熊のエリーを抱き寄せてみると──
ーもふもふが気持ち良過ぎないか!?ー
小さ過ぎると思った体は、それなりにしっかりしていて、でも、女の子だからか程よく柔らかくて、茶色の毛並みがサラサラフワフワのもこもこで抱き心地が──
「控え目に言って、最高で気持ち良くて安心する」
「はい!?」
ーもふもふに包まれる安心感が半端無いー
あまりの心地良さと安心感で、ギュウギュウと抱きついていると、「勘弁して下さい!」と、熊のエリーが肉球を押し付けて来た。
「最高か!」
「何がですか!?」
もう、俺はおかしいのかもしれない。エリーが女の子でも熊でも可愛くしか見えないのだから。だから、エリーは何も不安になる事も心配する事もなく、俺の側に居れば良いのだ。
それから暫くの間、熊のエリーを堪能した後、無事に書類にサインをして婚約が調ったのだった。
時々、“もふもふ会”とやらに招集される熊のエリー。綺麗な山奥で様々なもふもふが集まるそうだが、一番最強なのがリスなんだそうだ───が、それはまた、別の話なんだそうだ。
❋これにて完結となります。最後迄読んでいただき、ありがとうございます❋
*ᴗ ᴗ)ᴗ͈ˬᴗ͈ꕤ୭*
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しずぽん様
ありがとうございます。
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kokekokko様
ありがとうございます。
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