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*竜王国*

27 夢物語?

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『私の可愛いレイラーニ。お願い──を護って』






「…………??」

目を開けると、フカフカのベッドの上だった。
天蓋からは、真っ白なレース状のカーテンが垂れ下がっている。
テイルザールの私のベッドは、大人2人がゆっくり寝れる位の大きさだったけど、今寝ているベッドは更に大きくて3人は余裕で寝られそうだ。

「と言うか、ここは何処?うーん……」

確か、アルマが居なくなった後、更にガレオンさんと口論していたところで、ジャレッド様に名前を呼ばれて──

『今すぐレイ様をこちらに渡してもらおうか?』

と言って……ネルさんとユーリッシュさんが現れて助けてもらって─助かったと思ったら、何だか体中が熱くなって、これ以上ユーリッシュさんの側に居たら駄目だと思って───

「それからの記憶がない……」

サッと血の気が引く。媚薬を盛られた可能性があった。だから、ユーリッシュさんから離れようとしたけど、それからどうなったの?今は……落ち着いている。まさか────

「レイ様!目が覚めましたか!?」
「っ!アルマ!!」
「ああ、良かった!どこか痛い所とか…気分が悪い事はないですか?」
「うん。喉が渇いてる以外は特に…それで…わたし………」
「何か飲み物をお持ちしますね。話はそれからで…」

アルマは私を落ち着かせるような穏やかな笑顔を向けてから、小走りで部屋から出て行った。





アルマが持って来てくれたのは、果実水とスープとパンだった。
なんと、あの夜会から丸1日以上眠っていたようで、食事を目にした途端、お腹がキュルキュルと自己主張をし始め、寝起きにも関わらず用意してくれたスープとパンをペロリと平らげる事ができた。そして、食べ終わって暫くすると、医師様がやって来て診察をしてくれた。

「獣人の媚薬を盛られたそうですが、対処が早かったようで、後遺症もありませんし、もうスッカリ抜けていますから安心して下さい。ただ、体力は落ちているようなので、暫くの間はゆっくり過ごすようにして下さい」

対処とは一体──と不安になったけど、アルマから聞いた話によれば、ネルさんが作った万能薬のお陰で媚薬を浄化する事ができたようで、最悪の事態にはならなかったそうだ。
それから、医師様は薬を処方した後部屋から出て行き、それと入れ替わるようにネルさんとユーリッシュさんが入って来た。

「ネルさん!ユーリッシュさん!」

まだ詳しくは聞いていないけど、色々大変だったところを助けてくれたのが、ネルさんとユーリッシュさんだったらしい。

「レイ様、医師は問題無いと言っていたけど、本当に大丈夫かい?」
「はい。大丈夫です。ありがとうございます」

ベッドの上で座ったまま、ペコリと頭を下げてお礼を言う。

「大丈夫なら……話をしても?」
「あの…この格好のままで良ければ」
「勿論、そのままで大丈夫ですよ。少し、長い話になるから、もし疲れたりしたら言って下さいね」

先ずは私がパーティーホールを出てからの話を教えてくれた。





「ネルさんが……竜王!?でも…薬師で……」
「竜王になる前は薬師だったから、それも本当の事なんだ」

竜王とは、世襲制ではなく実力で引き継いでいくそうで、ネルさんは先代竜王の治世では薬師だったそうだ。
ある年の武術大会で、薬師のネルさんが先代竜王に勝ち、ネルさんが新たな竜王になったのが、今から100年前。竜人の寿命は200歳から500歳と言われているから、ネルさんは見た目以上の年齢なのかもしれない。

「3大種族の中で1番強靭だと言われる竜人でも、呪いを掛けられたりするんですね…」
「恥ずかしながら、普通なら…有り得ないんだけどね。ましてや、呪術を掛けたのが魔法に乏しい獣人族だったのに…何とも間抜けな竜王だろう?」

ふふっ─と自嘲気味に笑うネルさんを、ユーリッシュさんは心配そうな視線を向けている。

「少し、私の話を聞いてもらえるかな?」
「はい」

ネルさんは自分の両手をギュッと握って、軽く息を吐いた後、ゆっくりと語り出した。



獣人や竜人には“つがい”と言う、本能で結ばれる相手が居る。ただ、その番に出会えればラッキーで、ほぼ出会える事はない。
ただ、竜人は、番と出会い結ばれると寿命が長くなるそうで、平均寿命が200歳から500歳と幅があるのはそのせいなんだそうだ。

「特に竜人は子供が生まれにくい種で、番であれば子ができやすいんだ。だから、番と出会えたら、相手が他種族の者であろうが貴族であろうが平民であろうが、諸手を挙げて喜んで迎え入れられる存在なんだ。そんな存在の番に……私は幸運にも巡り合う事ができた」

ーそれは、何て素敵な事なんだろうー

恋や恋愛がいまいちよく分からない私でも、それが幸運である事は分かる。

「なら、ネルさんはその番の人と結婚しているんですね?」
「んー…それがね……私の番は人間ひと族の女性でね……出会った時にはもう既に70歳近くの未亡人で、子供が3人、孫が6人、曾孫が2人も居たんだ」

どうやら、“めでたしめでたし”な夢物語ではないようです。





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