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*テイルザール王国*
17 来賓客
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礼儀作法は、第九側妃ティスア様から指導を受ける事になった。何か罠がある?なんて身構えていたけど、特に何かをされたりする事はなかった。
種族が違う為、グレスタンとは違うところもあったりしたけど、大きく違ってくるものはなかった。なんとも穏やかな勉強時間だった。
「ティスア様は兎族の元伯爵令嬢で、商家でかなりの財力と権力を持っているようで、それを危惧した先代の国王が今の国王陛下が王太子の時に、2人の婚約を結んだ側妃様なんだそうです。ティスア様も、レイ様と同じ所謂“人質”ですね。でなければ、ライオン族の国王が、番でもない兎を娶るなんて事はありませんから」
確かに、ティスア様はおとなしい感じの人だった。あのお茶会の時も、私に小言を言わなかった唯一の側妃様だった。
「えっと…今日は何をするんだっけ?」
「今日は、今からドレス合わせになります。1週間前って……本当にギリギリですよね。大きな調整が無いと良いんですけどね」
王族ともなれば、1ヶ月は余裕をみて仕上げるものなんだそうだけど、私の場合はその1ヶ月前にパーティーの参加を知らされて、ドレスも採寸される事なく王妃様が準備してくれた物を着るだけ。
「どんなドレスなんだろうね?」
「楽しみですね」
******
結局、礼儀作法同様、王妃様が用意してくれたドレスも、サイズに関しては特に問題はなく、軽く詰める程度で済んだ。但し、アクセサリーは用意されておらず、『自分の持っている物で合わせなさい』と言う手紙を渡された。勿論、ダンビュライトからは持たされていないし、テイルザールに来てから買った事も貰った事もない。
あるのは───
『受け取った後、そのまま捨ててしまっても構わない。レイの好きにしてもらって良いから…』
そう言って、クラウシス様が私にくれた物。馬車の中でその箱を開けて見てみると、ブルーサファイアのネックレスとムーンストーンのピアスが入っていた。お姉様のお気に入りだったアクセサリーだ。お姉様達が亡くなった後、お姉様とお母様のアクセサリーやドレスは全て邸から無くなってしまったと思っていた。
『縁起が悪いし、嘘つきが使用していた物なんて要らないだろう』
叔父がそう言って、全て廃棄してしまったのだ。
このアクセサリーも、クラウシス様がお願いして手元に残った唯一の物だったのかもしれない。それが私の手元にある事は素直に嬉しいし感謝もしているけど、だからと言って、あの時のクラウシス様を赦せる程私は優しくない。
兎に角、私が持っているアクセサリーがこれだけしかないのだから、これを着けるか、一切何も着けないか……。
「いっその事、風邪でもひいてみる?」
「レイ様、無理ですからね?」
「分かってる。言ってみただけだから。当日は、このアクセサリーを着けるわ。ある意味、あのドレスの色なら何でも合うだろうから…」
「そうですね………」
「はぁー……」と、アルマと2人でため息を吐いた後、寝る為の準備を始めた。
*建国記念祭前日*
「建国100周年、おめでとうございます」
「グレスタン大公、ありがとう。グレスタンからの魔石のお陰で、我が国も以前より暮らしやすくなった。これからも、友好国として宜しく頼む」
「…こちらこそ、宜しくお願い致します」
ここはテイルザールの王城の謁見の間。
早い国では、建国記念祭の3日前からテイルザールへとやって来ていたが、グレスタン大公がやって来たのは前日のお昼過ぎだった。
「その後ろの者がダンビュライト令嬢か?」
「建国100周年、おめでとうございます。私が…グレッタ=ダンビュライトでございます。そして、こちらが、私の夫のジャレッドでございます」
「建国100周年、おめでとうございます。このような喜ばしい祭典にご招待いただき、ありがとうございます」
そこには、グレスタン大公と共に、夫婦となったグレッタとジャレッドが居た。勿論、テイルザール国王が正式に2人を招待していたのだ。
「いや、ダンビュライト公爵家は第10側妃の実家なのだから、招待して当たり前の事だろう?まぁ…グレッタ夫人の髪色は本当に美しいな?あの時、婚約していなければ私が─と思うと残念だ。」
「……恐れ入ります……」
「明日の夜会には、側妃も参加するから、久し振りに仲良く積もる話でもすると良い。長旅、ご苦労だった」
テイルザール国王が手を振ると、控えていた女官がグレスタン大公達を滞在する客室へと案内して行った。
「本当に、ダンビュライトは髪が白いんだな。よくもまあ…色持ちを私に寄越せたもんだな…」
それに、人間としては悪くない美人だ。
「少し…遊ぶのも良いか?」
と、テイルザール国王は去って行くグレッタの後ろ姿を見つめていた。
種族が違う為、グレスタンとは違うところもあったりしたけど、大きく違ってくるものはなかった。なんとも穏やかな勉強時間だった。
「ティスア様は兎族の元伯爵令嬢で、商家でかなりの財力と権力を持っているようで、それを危惧した先代の国王が今の国王陛下が王太子の時に、2人の婚約を結んだ側妃様なんだそうです。ティスア様も、レイ様と同じ所謂“人質”ですね。でなければ、ライオン族の国王が、番でもない兎を娶るなんて事はありませんから」
確かに、ティスア様はおとなしい感じの人だった。あのお茶会の時も、私に小言を言わなかった唯一の側妃様だった。
「えっと…今日は何をするんだっけ?」
「今日は、今からドレス合わせになります。1週間前って……本当にギリギリですよね。大きな調整が無いと良いんですけどね」
王族ともなれば、1ヶ月は余裕をみて仕上げるものなんだそうだけど、私の場合はその1ヶ月前にパーティーの参加を知らされて、ドレスも採寸される事なく王妃様が準備してくれた物を着るだけ。
「どんなドレスなんだろうね?」
「楽しみですね」
******
結局、礼儀作法同様、王妃様が用意してくれたドレスも、サイズに関しては特に問題はなく、軽く詰める程度で済んだ。但し、アクセサリーは用意されておらず、『自分の持っている物で合わせなさい』と言う手紙を渡された。勿論、ダンビュライトからは持たされていないし、テイルザールに来てから買った事も貰った事もない。
あるのは───
『受け取った後、そのまま捨ててしまっても構わない。レイの好きにしてもらって良いから…』
そう言って、クラウシス様が私にくれた物。馬車の中でその箱を開けて見てみると、ブルーサファイアのネックレスとムーンストーンのピアスが入っていた。お姉様のお気に入りだったアクセサリーだ。お姉様達が亡くなった後、お姉様とお母様のアクセサリーやドレスは全て邸から無くなってしまったと思っていた。
『縁起が悪いし、嘘つきが使用していた物なんて要らないだろう』
叔父がそう言って、全て廃棄してしまったのだ。
このアクセサリーも、クラウシス様がお願いして手元に残った唯一の物だったのかもしれない。それが私の手元にある事は素直に嬉しいし感謝もしているけど、だからと言って、あの時のクラウシス様を赦せる程私は優しくない。
兎に角、私が持っているアクセサリーがこれだけしかないのだから、これを着けるか、一切何も着けないか……。
「いっその事、風邪でもひいてみる?」
「レイ様、無理ですからね?」
「分かってる。言ってみただけだから。当日は、このアクセサリーを着けるわ。ある意味、あのドレスの色なら何でも合うだろうから…」
「そうですね………」
「はぁー……」と、アルマと2人でため息を吐いた後、寝る為の準備を始めた。
*建国記念祭前日*
「建国100周年、おめでとうございます」
「グレスタン大公、ありがとう。グレスタンからの魔石のお陰で、我が国も以前より暮らしやすくなった。これからも、友好国として宜しく頼む」
「…こちらこそ、宜しくお願い致します」
ここはテイルザールの王城の謁見の間。
早い国では、建国記念祭の3日前からテイルザールへとやって来ていたが、グレスタン大公がやって来たのは前日のお昼過ぎだった。
「その後ろの者がダンビュライト令嬢か?」
「建国100周年、おめでとうございます。私が…グレッタ=ダンビュライトでございます。そして、こちらが、私の夫のジャレッドでございます」
「建国100周年、おめでとうございます。このような喜ばしい祭典にご招待いただき、ありがとうございます」
そこには、グレスタン大公と共に、夫婦となったグレッタとジャレッドが居た。勿論、テイルザール国王が正式に2人を招待していたのだ。
「いや、ダンビュライト公爵家は第10側妃の実家なのだから、招待して当たり前の事だろう?まぁ…グレッタ夫人の髪色は本当に美しいな?あの時、婚約していなければ私が─と思うと残念だ。」
「……恐れ入ります……」
「明日の夜会には、側妃も参加するから、久し振りに仲良く積もる話でもすると良い。長旅、ご苦労だった」
テイルザール国王が手を振ると、控えていた女官がグレスタン大公達を滞在する客室へと案内して行った。
「本当に、ダンビュライトは髪が白いんだな。よくもまあ…色持ちを私に寄越せたもんだな…」
それに、人間としては悪くない美人だ。
「少し…遊ぶのも良いか?」
と、テイルザール国王は去って行くグレッタの後ろ姿を見つめていた。
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