初恋の還る路

みん

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後日談

ミュー=アシュトレア

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❋本編完結後に、“置き場”に投稿したお話です。こちらに移動しました❋









*ミューと、ハルシオンが婚約中の話になります*






「それじゃあ、ルミ…お祖母様が、あの有名な魔法使いだったんですね!?」

「あぁ、そうだ。ルミナは隣国の第二王女だったんだが、魔法の勉強をする為にアルム王国に留学して来たんだ。本当に優秀な魔法使いだった。」



ここは、王都にあるアシュトレア伯爵邸。

貴族が嫌で、レイナイト侯爵お父さんと計画して、ただの魔導師のミューになったのに…何故か…数日前…“ミュー=アシュトレア伯爵令嬢”になってしまった。

ーいや…理由は解っているー

私と婚約しようとしていた人が、王弟殿下である“ハルシオン=サルヴァ=アルム”様だったからである。

王弟殿下の相手が平民の魔導師。それでも、私は上級位魔導師。それにリーデンブルク女神とウォルテライト女神の加護を持っている。なので、爵位持ちの出自でなくても大丈夫なのでは?と言う意見も多数あったみたいだけど──

『加護を持っているが故に、悪いことを企む者が出ないとは限らぬだろう?ならば、我がアシュトレア家が後ろ楯となれば守れる。』

と、引退して領地に篭っていた先代の第一騎士団長である、レイモンド=アシュトレア様が議会で言い放ったらしい。そして、誰も反対する事もなく…




『ミュー嬢、これを読んで、最後のここの空欄の所にサインしてくれる?』

と、満面の笑みを浮かべた第二騎士団長様が居た。そして、その横にレイモンド様が…何故か…涙を流しながら座って居た。
私の横に座っていたハルシオン様も…少し…いや、かなりひいていた…のは…気が付かなかったフリをした。


そんなこんなで、貴族になり、その場でハルシオン様との婚約もスムーズ過ぎる程スムーズに調った。

そして、今、アシュトレア邸のサロンで、レイモンド様…もとい、お祖父様とお茶をしながらお祖母様の話を聞いていたのである。そのお祖母様と言うのが、アルム王国でも有名な魔法使いのルミナ様だったのには…本当に驚いた。私の尊敬する人の1人だったのだ。


「失礼しますよ?お祖父様、またミューを独り占めですか?」

そう言いながらサロンに入って来たのは、ランルート=アシュトレア様。私の7つ年上の兄になった人だ。

「お…ラン兄様…お帰りなさい。」

「あぁ、ただいま、ミュー。はい、お土産。」

満面の笑顔をしながら、ラッピングされた箱を手渡される。

「…ラン兄様…お仕事から帰って来る度にお土産なんて…勿体無いですよ!?」

そう、このランルート様もとい、ラン兄様は私に極甘なのだ。隙あらば甘やかして来るし、こうやって、毎日のようにお土産と称してお菓子を買って来てくれるのだ。

「迷惑…だった?」

ーくっ…ー

さっきまでの笑顔は何処へ行った?とばかりに、シュンとした顔。捨てられた子犬の様な顔。

「迷惑ではないんですけど、いつももらってばかりで申し訳なくてですね?だから─」

「迷惑じゃないなら受け取って?僕が、大好きな妹であるミューにあげたくてしてるだけだから。」

ーぐふっー

美青年の笑顔は凶器です!そんな笑顔で大好きとか言われたら…断れません…。

「…分かりました。ラン兄様、ありがとうございます。」

と、私もニッコリ笑顔でお礼を言う。

「はぁー…本当にミューは可愛いなぁ…嫁にやるの…嫌になるよ…」

ーいやいや、嫁になる為にここに居るからね?嫁には行きますよ?ー


「私も混ぜなさい!」

ババーンッと音が出る勢いでサロンに入って来たのは

「お義母様…」

であるフェリシア=アシュトレア伯爵夫人だった。

「お義父様がいらっしゃると、ミューちゃんは必ず長ーい時間お義父様に取られてしまうから、寂しいわ…」

そう言って拗ねるお義母様は、45歳には見えない位に可愛らしい人だ。このお義母様も、放っておくと次から次へと私の服やドレスやアクセサリーを買おうとするので、毎回止めるのに一苦労している。

「それじゃあ、お義母様も一緒にお茶しましょう?」

と、私が言うと

「勿論よ!ミューちゃん!」

と、抱き付かれた。まぁ…いつも通りだ。





「あれ?今日は皆でお茶してるの?」

と、ひょっこりとサロンに顔を出して来たのは

「あ、。お帰りなさい。」

「く─っ。今日もまだ肩書呼びか─。」

片手で顔を覆って嘆いているのは勿論──
ジルベルト=アシュトレア第二騎士団長様。戸籍上では、この人も12歳年上の義兄だ。

私がこのアシュトレア家の養子になった瞬間に、この家の人達から“お祖父様”“お義母様”“お義父様”“お義兄様”と呼んで欲しい!と言われたので、慣れないながらも頑張って、お願いされた通りに呼ばせてもらっているけど…第二騎士団長様だけは別である。

ー初めて会った日の事は…忘れないー

それでも…何だか最近では、ちょっと可哀想かな?私も大人気ないかな?と思ったりもしている。

「…更に少し悔しいが…ミュー、お土産を…よ。」

?」

首を傾げて騎士団長様の後ろを見てみると

「ハルシオン様!?」

「「「「──っ!!」」」」

「ミュー、5日ぶりだな?元気だったか?」

たった5日。されど5日。久し振りにハルシオン様に会えて、自然と笑顔になって…そのまま勢いに任せて、ハルシオン様に抱き付いてしまった。

「くそうっ…めっちゃ可愛い!僕の妹、めっちゃ可愛い!殿下め──っっ」

「あらあら…ミューちゃんったら…本当に可愛いわねー。ふふっ。」

「私とルミナみたいだなぁ。仲が良くて何よりだ。」

ーは…恥ずかしい!!ー

顔を上げる事ができなくて、そのままグリグリとハルシオン様の胸に擦り付ける。

「…ミュー…後で覚えておけよ?」

と、ハルシオン様が私の耳元で低く囁いた。

ーえ?何を?あれ?これ、ヤバイやつ!?ー

一瞬で、更に顔が熱くなる。

「はぁー本当に、ミューはハルシオンが好きなんだねー。はいはい、今日は遅くなっても良いけど、必ず今日中に帰って来るようにね。ハルシオン、アシュトレア邸 ここに送り届けるように!」

「え?何が?」

「ようやく大きな仕事が一段落してね。今から明日のお昼迄、時間ができたから…今日はミュとデートでもしようかと思って迎に来た。」

「…デート…」

「はいはい、時間が勿体無いから、早く行っておいで?」

と、騎士団長様が苦笑しながら手を振る。

私はハルシオン様から離れて、騎士団長様の前まで行き──

「ありがとうございます!──。じゃあ、行って来ます!」

そしてハルシオン様の元に戻り、2人でサロンを後にした。


『ジルお義兄様』


「ジル…おにいさま…??お義兄様!! って!?」

「兄上、良かったですね。」

「ジル、良かったわねー。半分は殿下のお陰だと思うけど。」


ーうん…やっぱり…良いな…泣きそうだ…ー

ハルシオンのお陰と言うのが、少し気に食わないが…可愛い妹に免じて許す!だが!朝帰りなんてものは…まだ許さないからな!

そんなジルベルトの心の叫びは、勿論ハルシオンには届いていない訳で──


その日の内には帰って来たけど、馬車から降りて来たミューの顔は真っ赤で、ハルシオンの顔がホクホク顔だった事は…皆が見て見ぬフリをした。


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