初恋の還る路

みん

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番外編

ジルベルト=アシュトレア

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*ジルベルトは、書いていて楽しいので、また書いてしまいました。宜しくお願いします*














「ありがとう、ジルベルト。勿論、ミューと2人で幸せになるよ。」

くっそう…羨まし過ぎる!!きっと、妹でいる期間なんて、あっと言う間だけだろう…。すぐに嫁に行ってしまうんだ…あぁ…切ない…。世の中の花嫁の父親は、皆こんな気持ちなんだろうか…辛いな…ホントに泣ける。

「で?ミュー嬢が帰って来た事、ちゃんと報告したのか?昨日のうちには帰って来ていたんだろう?」

「…起きたら、報告に行く。」

「まだ報告してなかったのか!?って、またここで寝かせてるのか!?いい加減部屋に帰してやれ!!」

ハルシオンこいつは、こんな奴だったか?執着が凄くないか?レイナイト侯爵令嬢の事があったから、仕方無いのか?いや…本当にミュー嬢の事が好きなんだろう。

「とにかく、本当に、ミュー嬢が起きたら報告に行けよ?皆、ミュー嬢が帰って来るのを待ってるんだからな?」

ハルシオンに念を押して、明日の護衛の変更の説明をしてから、俺はハルシオンの自室を後にした。










「色々とご心配をお掛けして、すみませんでした。」

俺がハルシオンに念を押した日の夕方、ハルシオンから報告を受けた国王陛下が、主だった少数の貴族達を謁見の間に召集し、浄化巡礼の旅に出た第二王子、ハルシオン、ミュー嬢、俺を囲み、ディナーをとる事になった。

前以て聞いてはいたが、ミュー嬢の瞳の色が変わっていた。

淡いラベンダー色だ。

あの、レイナイト侯爵令嬢もあのような色ではなかっただろうか?だから、ハルシオンは…更にミュー嬢に執着するようになったのか?少しモヤッとした気持ちが沸き起こる。

ミュー嬢は、フードを被ってはいなかった。貴族とのディナーだが、ドレスではなく魔導師の服装をしている。初めてミュー嬢の顔をまともに見る人ばかりなんだろう。皆瞠目したまま固まっている。

ー俺の妹が可愛い過ぎる!ー

それでも、王弟殿下であるハルシオンが、それはそれは愛おしそうな目でミュー嬢を見つめながらエスコートをして謁見の間に入って来たのだ。誰もミュー嬢に声を掛ける者は居なかった。
恐らく、ここに居る貴族の中には、平民であるミュー嬢をよく思わない者も居るだろう。だが、この国の上級位魔導師であり神々の加護を授かった。それ故に、直接、且つあからさまに手を出す馬鹿は居ないだろう。

チラリと国王陛下を見ると、何とも言えない…キラッキラな笑顔でハルシオンとミュー嬢を見てうんうんと頷いている。

ーコレ、可愛いハルシオンおとうとの為に、俺が一肌脱ぐぞ!と息巻いている時の顔だなぁー

国王陛下がこうなっては、もう誰も止められない。止められるとしたら王妃陛下だけだが…この王妃陛下も、ミュー嬢を見た途端に目が輝きだした。

ーコレ、両陛下揃って暴走する流れだなー

2人の婚約、婚姻はスムーズ且つ早く済む事になるかもしれない…

ー本当に辛いー

嫁に行くの、早過ぎないか?まだまだ可愛い年頃なのにっー。





そんなこんなで、ディナーは特に問題が起こる事もなく、二時間程でお開きになった。

ミュー嬢をエスコートしながら退室するハルシオンを捕まえて

「今日は、ちゃんと部屋に帰してやれよ。」

と、耳元で念押しする。

ふと、視線を感じてミュー嬢を見る。

「第二騎士団長様。お久し振りですね。遅くなりましたが、旅の間は色々とありがとうございました。お疲れ様でした。」

軽く頭を下げた後、ニコリと笑う。

ー可愛い過ぎて辛いな!ー

「ミュー嬢も、お疲れ様でした。もう、体は大丈夫?」

「はい。もうスッカリ元気です。来週からは、また護衛の仕事にも戻りますので、その時は宜しくお願いします。」

「こちらこそ、宜しくお願いしますね。あぁ、その前に、少しミュー嬢の時間をもらえればと思ってるので、また都合の良い日を教えてもらえるかな?」

「何故?」

笑顔でお願いしても、ミュー嬢は、露骨に嫌そうな顔をする。
本当に、こう言うところも、可愛いなぁ。
他の令嬢なら、喜んで時間を作ってくれるんだが…ミュー嬢には通じない。それがまた、俺を清々しい気持ちにさせる。

「ミュー、これは、"ジルベルト"ではなく、"アシュトレア伯爵家"としての申し出だと思うから、時間を作ってやってくれるか?」

ハルシオンが助け船を出す。意外だなと思ったが…外堀を埋める為の一手だと思ってるからかと納得した。

「…分かりました。第二騎士団長様の都合に合わせますから、また日時を教えて下さい。」

「あぁ、ありがとう。」

そして、またハルシオンがミュー嬢をエスコートをして瑠璃宮殿へと帰って行った。


アシュトレア伯爵家との養子縁組の話をする時は、お祖父様も同席すると言い、今も王都にあるアシュトレアの本邸に滞在している。
早く連絡をとって、日時を決めなければな。

いよいよ…いよいよミュー嬢が妹になるのだ!短い期間かもしれないが、『お兄様』と呼んでもらう為に頑張ろう!!




そして、それから3日後、無事に俺に"妹"ができたのだった。
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