初恋の還る路

みん

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番外編

ハルシオン=サルヴァ=アルム

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*近況に書いた通り、テンション上がって書いてしまいました(笑)何本か投稿する予定です。お付き合い頂ければ嬉しいです。宜しくお願いします*











「ふふっ…」

「ミュー?」

俺の腕の中にスッポリ収まっているミューが、ふいに笑う。声を掛けるが、いまいち返事と言うか反応が無い。

「…寝てしまった?」

ピクリとも動かない。

ーマジかー

「はぁ…これは、喜ぶべきか?」

俺の事を信頼しているからこそ、身を任せてくれてるんだろうけど…男として…みられてないのでは?
本当に、ミューが相手だと調子が狂うと言うか、思い通りに行く事があまりない。俺の処に落ちて来たと思ったけど、目を離すとすぐに消えてしまいそうだ。そう思うと、ミューを抱き締めている手に、更に力が入る。

サラリとミューの髪が俺の頬に流れる。もう少し力を入れると折れるんじゃないかと、心配になる位細い腰。俺の腕にスッポリ収まるミュー。どんなに抱き締めてもキスをしても、まだまだミューが足りない。

「はぁ…俺は思春期のガキか?」

ミューが寝てくれて良かったのかもしれない。あのまま無自覚に煽ってくるミューを相手にしていたら…ヤバかったかもしれない。

少し力を緩めて、そっとミューの顔を覗き込む。

安心しきった様な顔で寝ている。

ー寝顔も可愛いー

俺、さっきから可愛いしか言ってない気がするな。本当に、ジルベルトの事をとやかく言えなくなって来たな。

さて…これからどうする?もう、俺はミューを逃す気は無い。ミューも、俺の処に落ちていると言った…よな?ならば、もう離さなくて良いだろう。

「よし…」

と、1人で納得し、ミューを抱き抱えて立ち上がる。本当は、ミューの部屋に送り届けるつもりだったが…と、思いながら俺の寝室への扉を開け、部屋の中に入る。そのままベッドまで行き、そこにそっとミューを降ろし、布団を掛ける。ここでゆっくり寝てもらおう。

「おゆすみ、ミュー。」

そっとミューの唇にキスを落とした。











「魔導師長、おはようございます。明日の護衛の予定表を持って来ました。少し変更があるみたいです。その確認の為に、後で第二騎士団長様がいらっしゃるかもしれません。」

「分かった。」

「それでは、失礼しまー」

「ティアナ、ちょっと頼みがある。」

早々に退室しようとするティアナを呼び止める。

「はい、何でしょうか?」

「朝食はミューと一緒に食べるから、2人分持って来てくれないか?」

「…は?」

ティアナが目を見開いて固まる。

「昨日、ミューが無事に帰って来てね。そのまま私の部屋で寝てしまったんだ。起きたらお腹が空いてると思うから、一緒に食べようかと思ってね。」

「……えっと…何でっー!?じゃなくて!!えっ!?」

そう。手加減せずに、外堀も埋めて行く。

ティアナが退室した後、自室の寝室へと足を運ぶ。ミューは、まだ俺のベッドで眠ったままだった。そのベッドの縁に腰掛けて、ミューの頬にそっと手を寄せた。

「…んー…」

ミューの目が軽く震え、ゆっくりと目蓋が上がる。

ー寝起きでポヤッとしてるミューも…うん、良いな…可愛いー

本当に、ミューはいくら見ていても飽きない。飽きるどころか、そのクルクル変わる表情を見逃したくなくて、じっとミューを見つめる。

『魔導師長』と、名前も間違えてから、ミューの後頭部に手をあてグッと引き寄せて噛み付くようにキスをする。

顔を赤くして怒って来るが、全く怖くない。むしろ可愛いだけだ。前に、同じ様な事をジルベルトが言っていたな…。朝からは止めて欲しいと…朝じゃなかったら良いのか?と、素直に訊けば、屁理屈だと怒られた。

ーまぁ、キスはしたい時にするけどー

こう言う事に慣れてないから、手加減して欲しいと言うけど、こっちはかなり手加減をしている…筈だ。足りない位だし…とは黙っておくが…。

すると、ミューが俺の手を握って…

もう逃げるつもりは無いから、手加減して欲しいと言う。

ーいや、それ、逆に俺を煽ってるからな?ー

と思いながら耐える。

ミューはそのまま視線を反らす事なく、真っ直ぐに俺を見据えたまま…

何があっても俺の元に還って来たい。それ位俺の事が好きだとー言ってくれた。

その言葉だけで胸がいっぱいになった。ようやく、ミューが俺の手の届く処に来たような感覚。嬉しくて、そっとミューの唇にキスを落とした。





やはり、ミューは元気になったと言っても、疲れてはいるようで、お昼を食べた後、また寝てしまった。勿論、俺の部屋のベッドでー。
その為、俺は自室でその日の実務をこなしていた。





「ハルシオン…お前ね、もっと手加減できないのか?」

少し泣きそうな顔をしながら、ジルベルトがやって来た。

「手加減はしてる…筈だけど?」

「いやいやいやいや!してないだろう!外堀の埋め方もえげつないからな!俺、泣くよ!?」

そう言えば、アシュトレア伯爵家は、あの先代の第一騎士団長であったレイモンド殿が動いたのだったか…。きっと、レイナイト侯爵も彼には否とは言えなかっただろうな。

「まだ、正式に"妹"にはなってないだろう?」

「今はまだだが、もういつでも迎えられるように準備は整っている!もう妹で確定だから!俺の可愛い妹だから!」

「"可愛い"の所だけ受け取っておく。」

「そこだけ受け取るな!兎に角、相手は12も年下だし、絶対恋愛に慣れてないんだから、本気は出すなよ!」

あまりにも泣きそうな顔で言うから、コイツも大概だなぁ…と思う。

「ただ…俺は嬉しいよ?ハルシオンがまた、人を好きになった事。本当に良かったと…思っている。今度こそ、幸せになれると良いな。」

先程までの泣きそうな顔ではなく、ここに令嬢が居れば、卒倒しそうな程の笑顔を浮かべる。ジルベルトに本当の事は言えないが、ミシュエルリーナ嬢の事では、色々と心配を掛けてしまったなと思う。

「ありがとう、ジルベルト。勿論、ミューと2人で幸せになるよ。」

「くっ…羨ましい奴め!!」

結局、ジルベルトは最後には…泣いたのだった。

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