89 / 105
第四章ー私の還る場所ー
ハルシオンのお願いans①
しおりを挟む
*ハルシオン視点になります*
「青色の瞳は、晴れた空を映してるようだった。この淡いラベンダー色はとても綺麗で…吸い込まれそうになるな。」
俺はミューの左頬に手を添え、ミューから目を反らす事なく真っ直ぐ見つめたまま話し続ける。
「どんな色でも容姿でも…ミューはミューだ。俺は…この瞳が…好きだ。」
「…え…」
ミューは、一瞬驚いたようだが、それも一瞬。次に目を細めて何やら納得顔をする。
ーこれは、勘違いしているな。好きなのは瞳だけなのだとー
「あぁ、違うな。瞳も好きだ…だな。」
「へっ?」
今度こそ、ミューは瞠目したまま固まった。その顔ですら可愛く見えて仕方がない。クルクル変わるミューの表情を見逃したくなくて、ミューから視線を反らす事なく見続ける。
すると、ジワジワと顔が赤くなって来た。
「なっ!?え?"も"?え!?」
俺が頬に手をあてていて顔を動かせないから、目だけをキョロキョロと動かし、言葉にならない言葉を口にする。
ー本当に可愛い…愛おしいー
アーシムと闘っている時は、何も出来ない自分に腹が立った。ミューが攻撃を受け、短剣で刺された時は、結界を破ってやろうかとさえ思った。それでも、ミューの努力を無駄にしたくなくて耐えた。
アーシムがミューに穢れを流し始めた時は、心臓が抉られるような痛みに襲われた。
ー二度も彼女を喪うのか!?とー
聖女様をも恨みそうになった。早く浄化と修正を終わらせろと。
浄化と修正が終わった事を確認した瞬間、結界の魔法陣を解き、他には目もくれずミューの元に走り出した。
あんなに綺麗なラベンダー色をしていた魔力が、殆ど消えかかっていた。もう少しで魔力が枯渇していただろう。アーシムを浄化しようとして、一気に魔力を使ったのだ。その腹立たしさに、ミューを背中から抱き留めてから、俺も一気にアーシムに浄化の魔力を流し込んだ。
ミューは、安心したように俺に背中を預けてくれた。場違いな感情ではあるが、それが酷く嬉しくて愛おしいと思った。この温もりを二度と喪いたくない。もともと、逃がすつもりもなかったが…。
それから、ミューがタクマ殿達を見据えたまま、無言で立ち上がり金色の魔法陣を展開させたのは驚いた。前以て聞いてはいた。あの2人を還すと。半信半疑だったのだ。
魔法陣がゆっくり展開していくのと同時に、タクマ殿が焦りだす。どうやら、彼はアルムに帰ったらミューに想いを告げるつもりだったようだ。
更に、ミューは紺色の魔法陣を展開させ…容姿を一変させた。
ーこれは…誰だ?ー
この大陸ではない服を着て、髪が黒色。後ろ姿だから、顔は見えない。
ーミューは…どこへ行った?いや、アレが…ミューなのかー
その彼女が、タクマ殿に向かって叫んでいる。何故か、膜が張っているかのように、うまく言葉が聞き取れない。
魔法陣が完成し、金色の光が2人を包み込んだ時…聞こえたのは…
『琢磨!私も…琢磨の事…本当に好きだったよ!さようなら!』
心臓が、ドクリッと波打った。
金色の光が一気に上昇して消え、それと共に召還の魔法陣も消え、紺色の魔法陣も消えると、そこにはレイナイト侯爵令嬢が居た。
誰も動かない。いや、動けない。
予想外の戦いに、魔力の色を変える魔導師。一介の魔導師が、聖女召還の魔法陣を展開させた。有り得ないことが一気に起こり過ぎたのだ。
ーどうする?ー
と思ったのも一瞬。グラリと、目の前に居る彼女が傾いた。
「ミュー!」
地面に倒れる前に、何とかギリギリでミューを受け止めた。もう、限界なんだろう。女神2人の加護のお陰で保っている様な状態だった。とにかく、俺の魔力を流しミューの姿に戻させた。
ミューは自分でも気付いていなかったのだろう。その時、ミューは…泣いていたのだ。気を失った後も、ポロポロと涙が流れていた。
胸がキュッと締め付けられる痛み。叫びそうになった。
やはり、ミューはタクマ殿が好きだったのか?
それからがまた、驚きの連続だった。
リーデンブルク女神様の降臨に、アーシムの真実。アーシムについては、俺も異変には全く気付いていなかった。あの時気付いていれば…。
そして、神々がミューを癒す為に預かると言う。リーデンブルク女神様と言い、ウォルテライト女神様と言い、何故ミューを厚遇するのだろうか?とにかく、ミューの治癒を優先するならば、神々に任せるのが一番だろう。でも…
ーミューは、戻って来るのだろうか?ー
嫌な思考が頭の中を過る。
もし、タクマ殿に会いたいと言ったら?神々は願いを聞くのでは?
ミューの体が癒えたら、俺の元に返すと言われたが、不安で毎日キリアンの森の湖に足を向けた。その間、ウォルテライト女神様が姿を顕す事も声を掛けられる事もなかった。
それから一週間。
不安に押し潰されそうになる気持ちを何とか耐え、その日もキリアンの森の湖にやって来た。
すると、湖の畔にフワリと金色の光が舞ったかと思えば、次の瞬間、白のブラウスに黒のスラックスを履き、銀髪の髪を靡かせた女性が顕れた。
俺は無言で彼女に駆け寄り、転移魔法陣を展開させようとする彼女を、後ろから抱き寄せた。
「青色の瞳は、晴れた空を映してるようだった。この淡いラベンダー色はとても綺麗で…吸い込まれそうになるな。」
俺はミューの左頬に手を添え、ミューから目を反らす事なく真っ直ぐ見つめたまま話し続ける。
「どんな色でも容姿でも…ミューはミューだ。俺は…この瞳が…好きだ。」
「…え…」
ミューは、一瞬驚いたようだが、それも一瞬。次に目を細めて何やら納得顔をする。
ーこれは、勘違いしているな。好きなのは瞳だけなのだとー
「あぁ、違うな。瞳も好きだ…だな。」
「へっ?」
今度こそ、ミューは瞠目したまま固まった。その顔ですら可愛く見えて仕方がない。クルクル変わるミューの表情を見逃したくなくて、ミューから視線を反らす事なく見続ける。
すると、ジワジワと顔が赤くなって来た。
「なっ!?え?"も"?え!?」
俺が頬に手をあてていて顔を動かせないから、目だけをキョロキョロと動かし、言葉にならない言葉を口にする。
ー本当に可愛い…愛おしいー
アーシムと闘っている時は、何も出来ない自分に腹が立った。ミューが攻撃を受け、短剣で刺された時は、結界を破ってやろうかとさえ思った。それでも、ミューの努力を無駄にしたくなくて耐えた。
アーシムがミューに穢れを流し始めた時は、心臓が抉られるような痛みに襲われた。
ー二度も彼女を喪うのか!?とー
聖女様をも恨みそうになった。早く浄化と修正を終わらせろと。
浄化と修正が終わった事を確認した瞬間、結界の魔法陣を解き、他には目もくれずミューの元に走り出した。
あんなに綺麗なラベンダー色をしていた魔力が、殆ど消えかかっていた。もう少しで魔力が枯渇していただろう。アーシムを浄化しようとして、一気に魔力を使ったのだ。その腹立たしさに、ミューを背中から抱き留めてから、俺も一気にアーシムに浄化の魔力を流し込んだ。
ミューは、安心したように俺に背中を預けてくれた。場違いな感情ではあるが、それが酷く嬉しくて愛おしいと思った。この温もりを二度と喪いたくない。もともと、逃がすつもりもなかったが…。
それから、ミューがタクマ殿達を見据えたまま、無言で立ち上がり金色の魔法陣を展開させたのは驚いた。前以て聞いてはいた。あの2人を還すと。半信半疑だったのだ。
魔法陣がゆっくり展開していくのと同時に、タクマ殿が焦りだす。どうやら、彼はアルムに帰ったらミューに想いを告げるつもりだったようだ。
更に、ミューは紺色の魔法陣を展開させ…容姿を一変させた。
ーこれは…誰だ?ー
この大陸ではない服を着て、髪が黒色。後ろ姿だから、顔は見えない。
ーミューは…どこへ行った?いや、アレが…ミューなのかー
その彼女が、タクマ殿に向かって叫んでいる。何故か、膜が張っているかのように、うまく言葉が聞き取れない。
魔法陣が完成し、金色の光が2人を包み込んだ時…聞こえたのは…
『琢磨!私も…琢磨の事…本当に好きだったよ!さようなら!』
心臓が、ドクリッと波打った。
金色の光が一気に上昇して消え、それと共に召還の魔法陣も消え、紺色の魔法陣も消えると、そこにはレイナイト侯爵令嬢が居た。
誰も動かない。いや、動けない。
予想外の戦いに、魔力の色を変える魔導師。一介の魔導師が、聖女召還の魔法陣を展開させた。有り得ないことが一気に起こり過ぎたのだ。
ーどうする?ー
と思ったのも一瞬。グラリと、目の前に居る彼女が傾いた。
「ミュー!」
地面に倒れる前に、何とかギリギリでミューを受け止めた。もう、限界なんだろう。女神2人の加護のお陰で保っている様な状態だった。とにかく、俺の魔力を流しミューの姿に戻させた。
ミューは自分でも気付いていなかったのだろう。その時、ミューは…泣いていたのだ。気を失った後も、ポロポロと涙が流れていた。
胸がキュッと締め付けられる痛み。叫びそうになった。
やはり、ミューはタクマ殿が好きだったのか?
それからがまた、驚きの連続だった。
リーデンブルク女神様の降臨に、アーシムの真実。アーシムについては、俺も異変には全く気付いていなかった。あの時気付いていれば…。
そして、神々がミューを癒す為に預かると言う。リーデンブルク女神様と言い、ウォルテライト女神様と言い、何故ミューを厚遇するのだろうか?とにかく、ミューの治癒を優先するならば、神々に任せるのが一番だろう。でも…
ーミューは、戻って来るのだろうか?ー
嫌な思考が頭の中を過る。
もし、タクマ殿に会いたいと言ったら?神々は願いを聞くのでは?
ミューの体が癒えたら、俺の元に返すと言われたが、不安で毎日キリアンの森の湖に足を向けた。その間、ウォルテライト女神様が姿を顕す事も声を掛けられる事もなかった。
それから一週間。
不安に押し潰されそうになる気持ちを何とか耐え、その日もキリアンの森の湖にやって来た。
すると、湖の畔にフワリと金色の光が舞ったかと思えば、次の瞬間、白のブラウスに黒のスラックスを履き、銀髪の髪を靡かせた女性が顕れた。
俺は無言で彼女に駆け寄り、転移魔法陣を展開させようとする彼女を、後ろから抱き寄せた。
33
お気に入りに追加
322
あなたにおすすめの小説
【完結】鈍感令嬢は立派なお婿さまを見つけたい
楠結衣
恋愛
「エリーゼ嬢、婚約はなかったことにして欲しい」
こう告げられたのは、真実の愛を謳歌する小説のような学園の卒業パーティーでも舞踏会でもなんでもなく、学園から帰る馬車の中だったーー。
由緒あるヒビスクス伯爵家の一人娘であるエリーゼは、婚約者候補の方とお付き合いをしてもいつも断られてしまう。傷心のエリーゼが学園に到着すると幼馴染の公爵令息エドモンド様にからかわれてしまう。
そんなエリーゼがある日、運命の二人の糸を結び、真実の愛で結ばれた恋人同士でいくと幸せになれると噂のランターンフェスタで出会ったのは……。
◇イラストは一本梅のの様に描いていただきました
◇タイトルの※は、作中に挿絵イラストがあります
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。
夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】
王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。
しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。
「君は俺と結婚したんだ」
「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」
目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。
どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。

【完結】あなたに抱きしめられたくてー。
彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。
そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。
やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。
大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。
同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。
*ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。
もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる
佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます
「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」
なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。
彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。
私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。
それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。
そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。
ただ。
婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。
切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。
彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。
「どうか、私と結婚してください」
「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」
私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。
彼のことはよく知っている。
彼もまた、私のことをよく知っている。
でも彼は『それ』が私だとは知らない。
まったくの別人に見えているはずなのだから。
なのに、何故私にプロポーズを?
しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。
どういうこと?
============
「番外編 相変わらずな日常」
いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。
※転載・複写はお断りいたします。

初恋をこじらせたやさぐれメイドは、振られたはずの騎士さまに求婚されました。
石河 翠
恋愛
騎士団の寮でメイドとして働いている主人公。彼女にちょっかいをかけてくる騎士がいるものの、彼女は彼をあっさりといなしていた。それというのも、彼女は5年前に彼に振られてしまっていたからだ。ところが、彼女を振ったはずの騎士から突然求婚されてしまう。しかも彼は、「振ったつもりはなかった」のだと言い始めて……。
色気たっぷりのイケメンのくせに、大事な部分がポンコツなダメンズ騎士と、初恋をこじらせたあげくやさぐれてしまったメイドの恋物語。
*この作品のヒーローはダメンズ、ヒロインはダメンズ好きです。苦手な方はご注意ください
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。
112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。
エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。
庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる