初恋の還る路

みん

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第四章ー私の還る場所ー

ハルシオンのお願いans①

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*ハルシオン視点になります*




「青色の瞳は、晴れた空を映してるようだった。この淡いラベンダー色はとても綺麗で…吸い込まれそうになるな。」

俺はミューの左頬に手を添え、ミューから目を反らす事なく真っ直ぐ見つめたまま話し続ける。

「どんな色でも容姿でも…ミューはミューだ。俺は…この瞳が…好きだ。」

「…え…」

ミューは、一瞬驚いたようだが、それも一瞬。次に目を細めて何やら納得顔をする。

ーこれは、勘違いしているな。好きなのはなのだとー

「あぁ、違うな。好きだ…だな。」

「へっ?」

今度こそ、ミューは瞠目したまま固まった。その顔ですら可愛く見えて仕方がない。クルクル変わるミューの表情を見逃したくなくて、ミューから視線を反らす事なく見続ける。
すると、ジワジワと顔が赤くなって来た。

「なっ!?え?"も"?え!?」

俺が頬に手をあてていて顔を動かせないから、目だけをキョロキョロと動かし、言葉にならない言葉を口にする。

ー本当に可愛い…愛おしいー








アーシムと闘っている時は、何も出来ない自分に腹が立った。ミューが攻撃を受け、短剣で刺された時は、結界を破ってやろうかとさえ思った。それでも、ミューの努力を無駄にしたくなくて耐えた。
アーシムがミューに穢れを流し始めた時は、心臓が抉られるような痛みに襲われた。

ー二度も彼女を喪うのか!?とー

聖女様をも恨みそうになった。早く浄化と修正を終わらせろと。
浄化と修正が終わった事を確認した瞬間、結界の魔法陣を解き、他には目もくれずミューの元に走り出した。
あんなに綺麗なラベンダー色をしていた魔力が、殆ど消えかかっていた。もう少しで魔力が枯渇していただろう。アーシムを浄化しようとして、一気に魔力を使ったのだ。その腹立たしさに、ミューを背中から抱き留めてから、俺も一気にアーシムに浄化の魔力を流し込んだ。

ミューは、安心したように俺に背中を預けてくれた。場違いな感情ではあるが、それが酷く嬉しくて愛おしいと思った。この温もりを二度と喪いたくない。もともと、逃がすつもりもなかったが…。

それから、ミューがタクマ殿達を見据えたまま、無言で立ち上がり金色の魔法陣を展開させたのは驚いた。前以て聞いてはいた。あの2人を還すと。半信半疑だったのだ。

魔法陣がゆっくり展開していくのと同時に、タクマ殿が焦りだす。どうやら、彼はアルムに帰ったらミューに想いを告げるつもりだったようだ。

更に、ミューは紺色の魔法陣を展開させ…容姿を一変させた。

ーこれは…誰だ?ー

この大陸ではない服を着て、髪が黒色。後ろ姿だから、顔は見えない。

ーミューは…どこへ行った?いや、アレが…ミューなのかー

その彼女が、タクマ殿に向かって叫んでいる。何故か、膜が張っているかのように、うまく言葉が聞き取れない。
魔法陣が完成し、金色の光が2人を包み込んだ時…聞こえたのは…

『琢磨!私も…琢磨の事…本当に好きだったよ!さようなら!』

心臓が、ドクリッと波打った。

金色の光が一気に上昇して消え、それと共に召還の魔法陣も消え、紺色の魔法陣も消えると、そこにはレイナイト侯爵令嬢が居た。

誰も動かない。いや、動けない。

予想外の戦いに、魔力の色を変える魔導師。一介の魔導師が、聖女召還の魔法陣を展開させた。有り得ないことが一気に起こり過ぎたのだ。

ーどうする?ー

と思ったのも一瞬。グラリと、目の前に居る彼女が傾いた。

「ミュー!」

地面に倒れる前に、何とかギリギリでミューを受け止めた。もう、限界なんだろう。女神2人の加護のお陰で保っている様な状態だった。とにかく、俺の魔力を流しミューの姿に戻させた。
ミューは自分でも気付いていなかったのだろう。その時、ミューは…泣いていたのだ。気を失った後も、ポロポロと涙が流れていた。

胸がキュッと締め付けられる痛み。叫びそうになった。
やはり、ミューはタクマ殿が好きだったのか?

それからがまた、驚きの連続だった。

リーデンブルク女神様の降臨に、アーシムの真実。アーシムについては、俺も異変には全く気付いていなかった。あの時気付いていれば…。

そして、神々がミューを癒す為に預かると言う。リーデンブルク女神様と言い、ウォルテライト女神様と言い、何故ミューを厚遇するのだろうか?とにかく、ミューの治癒を優先するならば、神々に任せるのが一番だろう。でも…

ーミューは、戻って来るのだろうか?ー

嫌な思考が頭の中を過る。

もし、タクマ殿に会いたいと言ったら?神々は願いを聞くのでは?

ミューの体が癒えたら、俺の元に返すと言われたが、不安で毎日キリアンの森の湖に足を向けた。その間、ウォルテライト女神様が姿を顕す事も声を掛けられる事もなかった。




それから一週間。

不安に押し潰されそうになる気持ちを何とか耐え、その日もキリアンの森の湖にやって来た。

すると、湖の畔にフワリと金色の光が舞ったかと思えば、次の瞬間、白のブラウスに黒のスラックスを履き、銀髪の髪を靡かせた女性が顕れた。
俺は無言で彼女に駆け寄り、転移魔法陣を展開させようとする彼女を、後ろから抱き寄せた。

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