85 / 105
第四章ー私の還る場所ー
癒えた体
しおりを挟む
『あなたは…どうしたい?』
「どうしたい?…とは?」
何がだろうか?「戻らない」と言う選択肢は無い。
『あなたは、"ミシュエルリーナ"ではなく、"ミュー"として生きて行く事を選んだ。その為に今迄自分の魔力の色を偽って来たわね?』
「はい…。」
『自分の魔力の色を変えると言う事は、自分に負担を掛けると言う事。それは、あなたが一番分かっていると思うけれどね。』
確かに、魔力の色を変えると言う事は自分に負担を掛ける。その分魔力は使うし、本来の力を発揮する事もできない。
『今のあなたは…銀髪に淡いラベンダー色の瞳をしているわ。』
ウォルテライト女神様が右手を私に向けると、私の目の前に鏡が顕れた。
確かに、髪はミューである銀髪だが、瞳は…本来の色ー淡いラベンダー色ーだった。
ーこの色を自分で見るのは…久し振りだー
『銀髪はレイナイト侯爵の色。そして…その淡いラベンダー色の瞳は…ライラの色。』
そう、母は、ピンクに近い…私よりも更に淡いラベンダー色だった。
『リーデンブルクが言った事覚えてる?』
「あっ!」
『ふふっ。ミューは、リーデンブルクの力と加護の影響で、魔力の色が変わったかもしれないのよ?ミューが望むなら銀髪と淡いラベンダー色の瞳でミューを固定してあげるわ。嫌なら…青色の瞳で固定するけれど。どちらにしても、もう、ミューが自分に魔法を掛けて偽ると言う事をしないようにしてあげる。いえ、させて欲しい。私には…それ位しか…ミューに恩を返せないから…。』
「ウォルテライト女神様…」
ウォルテライト女神様は、本当に申し訳なさそうな顔をしていた。
そして、もう一度私に問いかける。
『さぁ、ミューは…どうしたい?』
「私はー」
「そう言えば…ウォルテライト女神様。私が意識を失ってから、どれ位経っているのですか?」
私は、左腕に大怪我を負い、体に穢れも流し込まれた。かなり酷い状態だったと思うのに、体が軽いのは勿論のこと、大怪我を負った筈の左腕には、掠り傷一つ残っていなかった。
おそらく、ウォルテライト女神様の住みかとしているこの湖で、私の体を浄化し治癒したと言う事だろう。
ならば、一体どれ程の時間が掛かったのだろうか?そんなにお腹が空いたなぁ…とかはないから…数時間とか?と思っていたのだけど…
『一週間よ』
「はい!?一週間!?」
まさかの一週間!
ーえっ!?何で!?お腹も空いてなければ喉が渇いたって事もないのにっ!?ー
『ふふっ。この湖には神々の力が宿っているのよ。そのお陰で、ミューの怪我が治り、穢れを浄化する事ができたの。勿論、お腹が空く事も喉が渇く事もないわ。むしろ、以前より健康体になったのではないかしら?』
「…はい…本当に…体が軽くて…って…え?一週間!???」
そんなに経っているとは…思わなかった。
ならば、あの巡礼に同行していた人達は、もうそれぞれの国に戻り日常生活に戻っているのだろう。
勿論…魔導師長も…。
『目が覚めたら、私が彼の元に送ると言ったのだけどね…』
「彼の元に?」
ー何の事だろう?ー
『彼、毎日この湖に来ていたわ。今日も…そろそろ来るのではないかしら?ふふっ。』
ウォルテライト女神様は、楽しそうに笑う。
『ミュー、本当にありがとう。あなたのお陰で、"歪み"は完璧に修正できたわ。ミューは嫌かもしれないけれど、私とリーデンブルクの加護は…外さないわ。ミューには、幸せになってもらいたいから。』
ー女神様2人の加護…有難いやら恐ろしいやら…ですー
『そんなに、怖がらないでね。』
「すみません。ありがとうございます。」
ふと思い出し、ウォルテライト女神様に確認する。
「あの…一つ確認させてもらっても良いでしょうか?」
『何かしら?』
「私…魔導師長に、今回の巡礼の旅が終わったら、前世の事やミシュエルリーナの事を告白しようと思っていたんです。魔導師長に…話しても良いでしょうか?勿論、口外しないようにお願いはします。」
『勿論。彼なら何の問題もないわ。ライラの事も…。全て話してもらっても大丈夫よ。それによって、何かに影響を与えると言う事も無いわ。』
「ありがとうございます。」
ーこれで、心置きなく魔導師長に話せるー
『あぁ、やっぱり来たわね。』
ー何が?ー
と問う前に
『それじゃあ、ミュー。私はここに居てあなたの幸せを祈っているわ。』
そう言いながら優しく微笑んで、ウォルテライト女神様が右手を軽く振ると、私の体が金色の光で包まれた。あまりの眩しさにキュッと目を瞑り…一瞬の浮遊感の後、足が地に着いた感覚と、体を優しく撫でるように流れる風を感じて、ゆっくりと目を開けた。
私は、キリアンの森の湖の畔に立って居た。
服装は…ローブは着ていないが、魔導師の服を着ていた。アーシムと戦ってボロボロだった筈だけど、綺麗になっていた。
ーよし、魔力も十分あるし、このまま瑠璃宮殿に転移してー
と魔法陣を展開させようとして…
グイッと、後ろから私のお腹に誰かの腕が回され、背中から抱き寄せられた。
「どうしたい?…とは?」
何がだろうか?「戻らない」と言う選択肢は無い。
『あなたは、"ミシュエルリーナ"ではなく、"ミュー"として生きて行く事を選んだ。その為に今迄自分の魔力の色を偽って来たわね?』
「はい…。」
『自分の魔力の色を変えると言う事は、自分に負担を掛けると言う事。それは、あなたが一番分かっていると思うけれどね。』
確かに、魔力の色を変えると言う事は自分に負担を掛ける。その分魔力は使うし、本来の力を発揮する事もできない。
『今のあなたは…銀髪に淡いラベンダー色の瞳をしているわ。』
ウォルテライト女神様が右手を私に向けると、私の目の前に鏡が顕れた。
確かに、髪はミューである銀髪だが、瞳は…本来の色ー淡いラベンダー色ーだった。
ーこの色を自分で見るのは…久し振りだー
『銀髪はレイナイト侯爵の色。そして…その淡いラベンダー色の瞳は…ライラの色。』
そう、母は、ピンクに近い…私よりも更に淡いラベンダー色だった。
『リーデンブルクが言った事覚えてる?』
「あっ!」
『ふふっ。ミューは、リーデンブルクの力と加護の影響で、魔力の色が変わったかもしれないのよ?ミューが望むなら銀髪と淡いラベンダー色の瞳でミューを固定してあげるわ。嫌なら…青色の瞳で固定するけれど。どちらにしても、もう、ミューが自分に魔法を掛けて偽ると言う事をしないようにしてあげる。いえ、させて欲しい。私には…それ位しか…ミューに恩を返せないから…。』
「ウォルテライト女神様…」
ウォルテライト女神様は、本当に申し訳なさそうな顔をしていた。
そして、もう一度私に問いかける。
『さぁ、ミューは…どうしたい?』
「私はー」
「そう言えば…ウォルテライト女神様。私が意識を失ってから、どれ位経っているのですか?」
私は、左腕に大怪我を負い、体に穢れも流し込まれた。かなり酷い状態だったと思うのに、体が軽いのは勿論のこと、大怪我を負った筈の左腕には、掠り傷一つ残っていなかった。
おそらく、ウォルテライト女神様の住みかとしているこの湖で、私の体を浄化し治癒したと言う事だろう。
ならば、一体どれ程の時間が掛かったのだろうか?そんなにお腹が空いたなぁ…とかはないから…数時間とか?と思っていたのだけど…
『一週間よ』
「はい!?一週間!?」
まさかの一週間!
ーえっ!?何で!?お腹も空いてなければ喉が渇いたって事もないのにっ!?ー
『ふふっ。この湖には神々の力が宿っているのよ。そのお陰で、ミューの怪我が治り、穢れを浄化する事ができたの。勿論、お腹が空く事も喉が渇く事もないわ。むしろ、以前より健康体になったのではないかしら?』
「…はい…本当に…体が軽くて…って…え?一週間!???」
そんなに経っているとは…思わなかった。
ならば、あの巡礼に同行していた人達は、もうそれぞれの国に戻り日常生活に戻っているのだろう。
勿論…魔導師長も…。
『目が覚めたら、私が彼の元に送ると言ったのだけどね…』
「彼の元に?」
ー何の事だろう?ー
『彼、毎日この湖に来ていたわ。今日も…そろそろ来るのではないかしら?ふふっ。』
ウォルテライト女神様は、楽しそうに笑う。
『ミュー、本当にありがとう。あなたのお陰で、"歪み"は完璧に修正できたわ。ミューは嫌かもしれないけれど、私とリーデンブルクの加護は…外さないわ。ミューには、幸せになってもらいたいから。』
ー女神様2人の加護…有難いやら恐ろしいやら…ですー
『そんなに、怖がらないでね。』
「すみません。ありがとうございます。」
ふと思い出し、ウォルテライト女神様に確認する。
「あの…一つ確認させてもらっても良いでしょうか?」
『何かしら?』
「私…魔導師長に、今回の巡礼の旅が終わったら、前世の事やミシュエルリーナの事を告白しようと思っていたんです。魔導師長に…話しても良いでしょうか?勿論、口外しないようにお願いはします。」
『勿論。彼なら何の問題もないわ。ライラの事も…。全て話してもらっても大丈夫よ。それによって、何かに影響を与えると言う事も無いわ。』
「ありがとうございます。」
ーこれで、心置きなく魔導師長に話せるー
『あぁ、やっぱり来たわね。』
ー何が?ー
と問う前に
『それじゃあ、ミュー。私はここに居てあなたの幸せを祈っているわ。』
そう言いながら優しく微笑んで、ウォルテライト女神様が右手を軽く振ると、私の体が金色の光で包まれた。あまりの眩しさにキュッと目を瞑り…一瞬の浮遊感の後、足が地に着いた感覚と、体を優しく撫でるように流れる風を感じて、ゆっくりと目を開けた。
私は、キリアンの森の湖の畔に立って居た。
服装は…ローブは着ていないが、魔導師の服を着ていた。アーシムと戦ってボロボロだった筈だけど、綺麗になっていた。
ーよし、魔力も十分あるし、このまま瑠璃宮殿に転移してー
と魔法陣を展開させようとして…
グイッと、後ろから私のお腹に誰かの腕が回され、背中から抱き寄せられた。
32
お気に入りに追加
316
あなたにおすすめの小説
【R18】青き竜の溺愛花嫁 ー竜族に生贄として捧げられたと思っていたのに、旦那様が甘すぎるー
夕月
恋愛
聖女の力を持たずに生まれてきたシェイラは、竜族の生贄となるべく育てられた。
成人を迎えたその日、生贄として捧げられたシェイラの前にあらわれたのは、大きく美しい青い竜。
そのまま喰われると思っていたのに、彼は人の姿となり、シェイラを花嫁だと言った――。
虐げられていたヒロイン(本人に自覚無し)が、竜族の国で本当の幸せを掴むまで。
ヒーローは竜の姿になることもありますが、Rシーンは人型のみです。
大人描写のある回には★をつけます。
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
王太子殿下の執着が怖いので、とりあえず寝ます。【完結】
霙アルカ。
恋愛
王太子殿下がところ構わず愛を囁いてくるので困ってます。
辞めてと言っても辞めてくれないので、とりあえず寝ます。
王太子アスランは愛しいルディリアナに執着し、彼女を部屋に閉じ込めるが、アスランには他の女がいて、ルディリアナの心は壊れていく。
8月4日
完結しました。
魔法使いの恋
みん
恋愛
チートな魔法使いの母─ハル─と、氷の近衛騎士の父─エディオル─と優しい兄─セオドア─に可愛がられ、見守られながらすくすくと育って来たヴィオラ。そんなヴィオラが憧れるのは、父や祖父のような武人。幼馴染みであるリオン王子から好意を寄せられ、それを躱す日々を繰り返している。リオンが嫌いではないけど、恋愛対象としては見れない。
そんなある日、母の故郷である辺境地で20年ぶりに隣国の辺境地と合同討伐訓練が行われる事になり、チートな魔法使いの母と共に訓練に参加する事になり……。そこで出会ったのは、隣国辺境地の次男─シリウスだった。
❋モブシリーズの子供世代の話になります❋
❋相変わらずのゆるふわ設定なので、軽く読んでいただけると幸いです❋
王太子殿下が好きすぎてつきまとっていたら嫌われてしまったようなので、聖女もいることだし悪役令嬢の私は退散することにしました。
みゅー
恋愛
王太子殿下が好きすぎるキャロライン。好きだけど嫌われたくはない。そんな彼女の日課は、王太子殿下を見つめること。
いつも王太子殿下の行く先々に出没して王太子殿下を見つめていたが、ついにそんな生活が終わるときが来る。
聖女が現れたのだ。そして、さらにショックなことに、自分が乙女ゲームの世界に転生していてそこで悪役令嬢だったことを思い出す。
王太子殿下に嫌われたくはないキャロラインは、王太子殿下の前から姿を消すことにした。そんなお話です。
ちょっと切ないお話です。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
陛下から一年以内に世継ぎが生まれなければ王子と離縁するように言い渡されました
夢見 歩
恋愛
「そなたが1年以内に懐妊しない場合、
そなたとサミュエルは離縁をし
サミュエルは新しい妃を迎えて
世継ぎを作ることとする。」
陛下が夫に出すという条件を
事前に聞かされた事により
わたくしの心は粉々に砕けました。
わたくしを愛していないあなたに対して
わたくしが出来ることは〇〇だけです…
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる