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第三章ー浄化巡礼の旅ー
歪みの地②
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『今回紛れ込んでいる魔物は、今回の修正で"歪み"が完璧に修正される可能性があると言う事を分かっているのだと思う。そうなる前に、"歪み"を更に歪めるか…、更にあちら側から魔物をこちら側に引き込もうとしているのかもしれないわ。相手は魔物だけあって、魔法の力は強い。ミュー、呉々も…気を付けて。そして、あなたは、自分の感じるものを信じて。』
ウォルテライト女神様との会話を終えた頃、船外の景色に目を向けると…目視できる距離に島が見えた。
"歪みの地"
ーいよいよだー
"歪みの地"
そこは、何も無い島だった。木や花は勿論の事、草1本すら生えていない。そんな島の中心部に大きな岩がある。そして、その岩に微かな亀裂が入っている。
そう、その亀裂こそが"歪み"なのだ。
魔力持ちなら、誰でも一目見れば判る。その亀裂に穢れがある。この穢れを聖女が浄化するのだ。浄化をして修正する。それを繰り返し少しずつこの亀裂が小さくなっていったようだ。
結界を張るのは、この穢れが外に溢れ出ないように、かつ、"歪み"が外からの穢れや悪しき魔素から影響を受けないようにする為だ。故に、修正が終わる迄は、決して、何があっても結界を緩めたり外してはならない。
つまり、その結界を張っている間の魔導師、魔法使い達は、いくら魔力が大きくても強くても、攻撃されても反撃する事が出来ないと言う事なのだ。その為、魔導師達はその間、自身の体にも防御魔法などを掛ける。勿論、護衛も付いているし、攻撃して来るような者はこの地には来れない為、そんな心配は皆無なのだが…。
ー私が魔物なら、結界が完璧に張られる直前に結界に入り込むー
魔物が動くならば、そのタイミングだろう。いくら魔力が私達より強くても、10人で結界を張るのだ。流石に簡単には破れないだろう。
『自分の感じるものを信じて』
ウォルテライト女神様は、ハッキリそう言った。ならばー
「ミュー」
魔導師長に呼ばれ、ハッとする。どうやら、雪の準備ができたようだ。琢磨は、雪の後方5m程の所に立っている。
魔導師や魔法使いは、"歪み"と聖女から、100m程離れ円状に十方向に広がり、"歪み"と聖女を囲むように立っている。
「今から結界を張る。張れば、そこから私はミューに何かあっても助けてはやれない。」
魔導師長は、少し辛そうな顔をしながら言う。
「分かっています。」
「ミュー、私からの願い、覚えているな?必ず守ってもらうから…多少の無茶をしてでも無事でいるようにな。」
「ふふっ…。そこは、"無茶するな"じゃないですか?」
魔導師長の言葉に、少し緊張が解れた。
ー本当に、こう言うところ…好きだなぁー
「無茶してでもきいて欲しい事だからな。それに…色々話してくれるんだろう?俺は、それが楽しみなんだ。」
魔導師長が、私の耳元で囁いた。
いつもなら、この色気を含んだ声にやられるのだが、今は…逆に心が落ち着いて行くような感覚がした。
「はい。必ず…約束は守ります。多少の無茶はドンと来い!ですね!魔導師長も、しっかりと結界を張って下さいね!」
両手で握り拳をしながら元気よく言うと、魔導師長は一瞬キョトンとした顔をした後、フワリと優しく微笑んでくれた。
魔導師達はお互い距離がある為、各々が連絡を取れるように、耳に通信できる魔道具をつけている。勿論護衛達と琢磨にも。聖女である雪には、浄化と修正に集中させる為、遮断防御の結界が掛けられている。なので、雪は目に映る物以外は、何も起こっていないと思える程静かな場所に居る状態と同じなのだ。
「ではー」
魔導師長が一言声を上げた瞬間、10人の魔導師、魔法使いが一気に結界を張り始めた。
魔導師、魔法使いの1人1人の足元に、魔法陣が展開される。それは、各々の魔力の色をしている。さながら、光のショーでも見ているような感覚になる。
その中でも一際目を惹くのは…魔導師長の黒。圧倒的な強さを持っていることも一目で判る。黒と言えば"陰"のイメージがあるが、魔導師長の纏う黒は透き通った黒。キラキラと輝いていてとても綺麗だ。まぁ、欲目もあるだろうけど。
そして、展開された魔法陣から魔力の光が少しずつ舞い上がっていく。その光の粒は中心にある"歪み"に向かって少しずつ少しずつ伸びながら広がり、ドーム型の結界を作り上げて行く。1人1人の魔力の色が違うけれど、不思議な事に、その色は上に行けば行く程その色が白色に変わる。その変化さえも綺麗だ。
この結界が完成するまでは、まだ少し時間が掛かるだろう。
チラリと補助兼護衛の彼を見る。
その彼は、今展開されている魔法なんて目にくれず、じっと聖女を見ている。
ーやっぱり、彼だー
結界が作り上げられていくのを肌で感じながら、私は彼から目を離さない。不思議と焦りや不安は無かった。
そして、結界が完成するだろう直前、彼が結界内に入り込む。
「なっ!?アーシム!?」
アーシムと同じ国で結界を張っていた魔導師が叫んだ。
ウォルテライト女神様との会話を終えた頃、船外の景色に目を向けると…目視できる距離に島が見えた。
"歪みの地"
ーいよいよだー
"歪みの地"
そこは、何も無い島だった。木や花は勿論の事、草1本すら生えていない。そんな島の中心部に大きな岩がある。そして、その岩に微かな亀裂が入っている。
そう、その亀裂こそが"歪み"なのだ。
魔力持ちなら、誰でも一目見れば判る。その亀裂に穢れがある。この穢れを聖女が浄化するのだ。浄化をして修正する。それを繰り返し少しずつこの亀裂が小さくなっていったようだ。
結界を張るのは、この穢れが外に溢れ出ないように、かつ、"歪み"が外からの穢れや悪しき魔素から影響を受けないようにする為だ。故に、修正が終わる迄は、決して、何があっても結界を緩めたり外してはならない。
つまり、その結界を張っている間の魔導師、魔法使い達は、いくら魔力が大きくても強くても、攻撃されても反撃する事が出来ないと言う事なのだ。その為、魔導師達はその間、自身の体にも防御魔法などを掛ける。勿論、護衛も付いているし、攻撃して来るような者はこの地には来れない為、そんな心配は皆無なのだが…。
ー私が魔物なら、結界が完璧に張られる直前に結界に入り込むー
魔物が動くならば、そのタイミングだろう。いくら魔力が私達より強くても、10人で結界を張るのだ。流石に簡単には破れないだろう。
『自分の感じるものを信じて』
ウォルテライト女神様は、ハッキリそう言った。ならばー
「ミュー」
魔導師長に呼ばれ、ハッとする。どうやら、雪の準備ができたようだ。琢磨は、雪の後方5m程の所に立っている。
魔導師や魔法使いは、"歪み"と聖女から、100m程離れ円状に十方向に広がり、"歪み"と聖女を囲むように立っている。
「今から結界を張る。張れば、そこから私はミューに何かあっても助けてはやれない。」
魔導師長は、少し辛そうな顔をしながら言う。
「分かっています。」
「ミュー、私からの願い、覚えているな?必ず守ってもらうから…多少の無茶をしてでも無事でいるようにな。」
「ふふっ…。そこは、"無茶するな"じゃないですか?」
魔導師長の言葉に、少し緊張が解れた。
ー本当に、こう言うところ…好きだなぁー
「無茶してでもきいて欲しい事だからな。それに…色々話してくれるんだろう?俺は、それが楽しみなんだ。」
魔導師長が、私の耳元で囁いた。
いつもなら、この色気を含んだ声にやられるのだが、今は…逆に心が落ち着いて行くような感覚がした。
「はい。必ず…約束は守ります。多少の無茶はドンと来い!ですね!魔導師長も、しっかりと結界を張って下さいね!」
両手で握り拳をしながら元気よく言うと、魔導師長は一瞬キョトンとした顔をした後、フワリと優しく微笑んでくれた。
魔導師達はお互い距離がある為、各々が連絡を取れるように、耳に通信できる魔道具をつけている。勿論護衛達と琢磨にも。聖女である雪には、浄化と修正に集中させる為、遮断防御の結界が掛けられている。なので、雪は目に映る物以外は、何も起こっていないと思える程静かな場所に居る状態と同じなのだ。
「ではー」
魔導師長が一言声を上げた瞬間、10人の魔導師、魔法使いが一気に結界を張り始めた。
魔導師、魔法使いの1人1人の足元に、魔法陣が展開される。それは、各々の魔力の色をしている。さながら、光のショーでも見ているような感覚になる。
その中でも一際目を惹くのは…魔導師長の黒。圧倒的な強さを持っていることも一目で判る。黒と言えば"陰"のイメージがあるが、魔導師長の纏う黒は透き通った黒。キラキラと輝いていてとても綺麗だ。まぁ、欲目もあるだろうけど。
そして、展開された魔法陣から魔力の光が少しずつ舞い上がっていく。その光の粒は中心にある"歪み"に向かって少しずつ少しずつ伸びながら広がり、ドーム型の結界を作り上げて行く。1人1人の魔力の色が違うけれど、不思議な事に、その色は上に行けば行く程その色が白色に変わる。その変化さえも綺麗だ。
この結界が完成するまでは、まだ少し時間が掛かるだろう。
チラリと補助兼護衛の彼を見る。
その彼は、今展開されている魔法なんて目にくれず、じっと聖女を見ている。
ーやっぱり、彼だー
結界が作り上げられていくのを肌で感じながら、私は彼から目を離さない。不思議と焦りや不安は無かった。
そして、結界が完成するだろう直前、彼が結界内に入り込む。
「なっ!?アーシム!?」
アーシムと同じ国で結界を張っていた魔導師が叫んだ。
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