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第三章ー浄化巡礼の旅ー
歪みの地①
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"歪みの地"に入るのは、聖女様と結界を張る10ヶ国の魔導師や魔法使い。それに、その魔導師達の補佐兼護衛役が1人ずつ。そして、今回は特例としてリーデンブルク女神の加護を持った琢磨の計22人。
過去の文献で明らかになっているのだが、もし"歪みの地"に入る資格の無い者が居れば、その"歪みの地" に辿り着く事ができない…その島を目にする事すらできなかったと言う。
その過去の文献には、聖女が召還された国の王子が、ただ聖女の側を離れたくないと言う理由で、この"歪みの地"へ同行したらしいが、いくらそこを目指そうとも、その日のうちに辿り着く事ができず、その日の上陸を諦め、次の満月の日迄待機する事となった。
その次の満月の日、王子は同行せず21人で"歪みの地"を目指せば、あっと言う間に辿り着いたと言う。故に、"歪みの地"には、リーデンブルク女神様が認めたー資格がある者だけしか辿り着けないと言う事が判ったのだ。
今回第二王子が、琢磨の同行を躊躇った理由はそれだった。もし、琢磨に資格がなければ、今日の私達の行動が無駄になり、更には次の満月の日まで何もできなくなるからだ。
ーそんな心配は必要無いー
逆に、琢磨が"歪みの地"に入る事は、リーデンブルク女神とウォルテライト女神をはじめ、神々の願い…"歪み"の修正と…2人の帰還…それが、神々の悲願だから。
「あぁ、あいつは"アーシム"。前に、私にコバエを用意した張本人だ。その時に縁を切った筈なんだが、しつこい位に謝罪して来たから、取り敢えず、謝罪だけは受け取った。」
魔導師長に、魔導師長に必死で謝っていた人の事を訊けば、そう答えが返って来た。
巡礼の時に居たか?と訊けば、居たと言う。私にはいまいち記憶に残っていなかったのだが、魔導師長が言うから居たんだろう。
「叔父上!ミュー!」
魔導師長と話していると、第二王子と第二騎士団長が、雪と琢磨を連れてやって来た。
「いよいよ、"歪みの地"へ出発ですね。私達は一緒に行けませんが、無事を祈っていますね。」
第二王子が私達にそう言い
「ミュー嬢も気を付けて下さいね。」
と、第二騎士団長に声を掛けられ、私と魔導師長と琢磨と雪と一緒に、用意されていた船に乗り込んだ。
ーいよいよ、"歪みの地"へ出発だー
『…ュー…ミュ…』
船に乗り込み5分位経った頃、微かに声が聞こえた。
「?」
辺りを見回してみても、私を呼んでいるような人は居なかった。今は、船の中にある大きなホールにある椅子に座っている。魔導師長と雪は他国の魔導師や魔法使いと歓談中。琢磨は他国の騎士らしき人達と歓談している。
私は椅子から立ち上がり、そっとホールから外に出た。
『ミュー…』
「ウォルテライト女神様っ!?」
口に出してからハッとして、手で口を塞ぎ、辺りを見回す。
ー良かった…誰も居ないー
そして、頭の中で語り掛ける。
『ウォルテライト女神様、お久し振りでございます。』
『ミュー、ごめんなさい。ずっと語り掛けていたのだけれど…どうやら、魔物に邪魔をされていたみたいなの。』
『えっ!?魔物!?』
『私達は、あまり強く人間界に手が出せないのは判るわね?そこをうまく利用されてるみたいなのよ。魔物は、この船に入り込んでいるわ。』
『この…船に!?でも、それでは…資格が無いとみなされ、"歪みの地"に辿り着けないのでは?』
魔物に資格なんてないだろう。今日と言う日が無駄になるどころか、"歪み"を直す聖女である雪が危ないのでは!?
『その逆なのよ。魔物にはある意味資格があるの。魔物を"歪み"のあちら側に還さなければいけないから。それを分かっているから、この中に潜り込んだようなの。
私は、既に多くの影響をこの大陸に及ぼしているから、本来の力を使う事ができないの。だから、この中に魔物が紛れ込んでいるのは分かるけど…それ以上は…ごめんなさい。』
これ以上、この大陸でウォルテライト女神様が力を使うと、更にこの大陸に何かしらの影響が出ると言う事なんだろう。神々の世界も大変なんだなぁ…と苦笑した。
『本当に…ごめんなさい…』
ウォルテライト女神様が更に謝る。
ー思考を読めるんでしたね…こちらこそすみませんー
魔物は、"歪みの地"で雪、もしくは"歪み"に何かするつもりなんだろう。ただ、私も結界を張る魔導師長の補佐兼護衛としてその地に立ち入るが、聖女様の修正が行われている間は結界の外に居る事になる。10人による魔導師や魔法使いの張る結界だ。魔力が多くて強い私でも、その結界をすり抜けて中に入る事はできない。
ーどうする?ー
『そこは大丈夫。結界の中で何か起こった場合、リーデンブルクがミューを結界の中に入れるようにするわ。そこからは…ミューに任せる形になるけれど…。最低限の事だけれど、ミューには、私とリーデンブルクの加護をつけているわ。』
ーリーデンブルク女神様の加護付きなんて、聞いてません!ー
『ふふっ、言ってなかったからね?』
ウォルテライト女神様は、悪戯が見つかっちゃった!みたいに笑った。
過去の文献で明らかになっているのだが、もし"歪みの地"に入る資格の無い者が居れば、その"歪みの地" に辿り着く事ができない…その島を目にする事すらできなかったと言う。
その過去の文献には、聖女が召還された国の王子が、ただ聖女の側を離れたくないと言う理由で、この"歪みの地"へ同行したらしいが、いくらそこを目指そうとも、その日のうちに辿り着く事ができず、その日の上陸を諦め、次の満月の日迄待機する事となった。
その次の満月の日、王子は同行せず21人で"歪みの地"を目指せば、あっと言う間に辿り着いたと言う。故に、"歪みの地"には、リーデンブルク女神様が認めたー資格がある者だけしか辿り着けないと言う事が判ったのだ。
今回第二王子が、琢磨の同行を躊躇った理由はそれだった。もし、琢磨に資格がなければ、今日の私達の行動が無駄になり、更には次の満月の日まで何もできなくなるからだ。
ーそんな心配は必要無いー
逆に、琢磨が"歪みの地"に入る事は、リーデンブルク女神とウォルテライト女神をはじめ、神々の願い…"歪み"の修正と…2人の帰還…それが、神々の悲願だから。
「あぁ、あいつは"アーシム"。前に、私にコバエを用意した張本人だ。その時に縁を切った筈なんだが、しつこい位に謝罪して来たから、取り敢えず、謝罪だけは受け取った。」
魔導師長に、魔導師長に必死で謝っていた人の事を訊けば、そう答えが返って来た。
巡礼の時に居たか?と訊けば、居たと言う。私にはいまいち記憶に残っていなかったのだが、魔導師長が言うから居たんだろう。
「叔父上!ミュー!」
魔導師長と話していると、第二王子と第二騎士団長が、雪と琢磨を連れてやって来た。
「いよいよ、"歪みの地"へ出発ですね。私達は一緒に行けませんが、無事を祈っていますね。」
第二王子が私達にそう言い
「ミュー嬢も気を付けて下さいね。」
と、第二騎士団長に声を掛けられ、私と魔導師長と琢磨と雪と一緒に、用意されていた船に乗り込んだ。
ーいよいよ、"歪みの地"へ出発だー
『…ュー…ミュ…』
船に乗り込み5分位経った頃、微かに声が聞こえた。
「?」
辺りを見回してみても、私を呼んでいるような人は居なかった。今は、船の中にある大きなホールにある椅子に座っている。魔導師長と雪は他国の魔導師や魔法使いと歓談中。琢磨は他国の騎士らしき人達と歓談している。
私は椅子から立ち上がり、そっとホールから外に出た。
『ミュー…』
「ウォルテライト女神様っ!?」
口に出してからハッとして、手で口を塞ぎ、辺りを見回す。
ー良かった…誰も居ないー
そして、頭の中で語り掛ける。
『ウォルテライト女神様、お久し振りでございます。』
『ミュー、ごめんなさい。ずっと語り掛けていたのだけれど…どうやら、魔物に邪魔をされていたみたいなの。』
『えっ!?魔物!?』
『私達は、あまり強く人間界に手が出せないのは判るわね?そこをうまく利用されてるみたいなのよ。魔物は、この船に入り込んでいるわ。』
『この…船に!?でも、それでは…資格が無いとみなされ、"歪みの地"に辿り着けないのでは?』
魔物に資格なんてないだろう。今日と言う日が無駄になるどころか、"歪み"を直す聖女である雪が危ないのでは!?
『その逆なのよ。魔物にはある意味資格があるの。魔物を"歪み"のあちら側に還さなければいけないから。それを分かっているから、この中に潜り込んだようなの。
私は、既に多くの影響をこの大陸に及ぼしているから、本来の力を使う事ができないの。だから、この中に魔物が紛れ込んでいるのは分かるけど…それ以上は…ごめんなさい。』
これ以上、この大陸でウォルテライト女神様が力を使うと、更にこの大陸に何かしらの影響が出ると言う事なんだろう。神々の世界も大変なんだなぁ…と苦笑した。
『本当に…ごめんなさい…』
ウォルテライト女神様が更に謝る。
ー思考を読めるんでしたね…こちらこそすみませんー
魔物は、"歪みの地"で雪、もしくは"歪み"に何かするつもりなんだろう。ただ、私も結界を張る魔導師長の補佐兼護衛としてその地に立ち入るが、聖女様の修正が行われている間は結界の外に居る事になる。10人による魔導師や魔法使いの張る結界だ。魔力が多くて強い私でも、その結界をすり抜けて中に入る事はできない。
ーどうする?ー
『そこは大丈夫。結界の中で何か起こった場合、リーデンブルクがミューを結界の中に入れるようにするわ。そこからは…ミューに任せる形になるけれど…。最低限の事だけれど、ミューには、私とリーデンブルクの加護をつけているわ。』
ーリーデンブルク女神様の加護付きなんて、聞いてません!ー
『ふふっ、言ってなかったからね?』
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