初恋の還る路

みん

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第三章ー浄化巡礼の旅ー

魔導師、魔法使い集う

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「魔導師長様、ありがとうございます。」

雪は、誰もが見惚れてしまう様な笑顔で魔導師長に礼を言う。やっぱり、可愛いものは可愛い…ではなくて…これ、多分魔導師長の思う壺に…嵌まったよね…。

「ルドヴィル様、私…我が儘になると思って言えなかったのですが…魔導師長様の言うように、"歪み"を修正する時に側に…私の近くに一緒に召還されて来た琢磨が居てくれると、安心できると思うんです。」

両手を胸の前で組み、第二王子に懇願するように語る雪。
聖女様が願っているのだ…第二王子も無下にはできないだろう。

第二王子は、暫く逡巡した後躊躇いがちに口を開いた。

「ユキ様がそう願うなら…結界の中に入るのは許可しますが、ユキ様の視界に入らない場所で待機してもらいます。それでも良いですか?」

「はい!ルドヴィル様、ありがとうございます!」

花が綻ぶように笑う雪。第二王子は困ったなぁ…みたいに、でも、キラキラ笑顔を忘れない。魔導師長は…黒く微笑んでおります。思惑通りに事が進んだんだろう。

ーありがとうございますー

心の中でお礼をしておく。

「それで、結界を張るのは、10の国から各一名ずつとなっているが…アルムからはどちらが?」

「私が出る。結界に関しては私の方が得意としているからな。」

「では、叔父上、申し訳ありませんが、タクマ殿の事も気に留めて頂けますか?」

「あぁ、それは承知の上だ。もともと、私が言い出した事だからな。」

第二王子と魔導師長の会話はスムーズに進む。その横で雪はホッとしたように2人の話を聞いている。そして…チラリと琢磨を覗き見る。

何とも言えない顔…してるなぁ…。聖女様に懇願され、第二王子が許可したなら、リーデンブルク女神の加護を持っていると言っても、琢磨は騎士見習いでしかない。嫌だとは言えないよね。琢磨には悪いけど…こればっかりは我慢してもらうしかない。



「予定では、一ヶ月後の満月の日に"歪みの地"に向かいます。最後迄気を抜かずに頑張りましょう。」

最後に第二王子がそう締め括り、各々が宛がわれた部屋に下がって行き、応接室には魔導師長と私だけになった。



「魔導師長…思惑通りに事が進みましたね?」

「あぁ…。本当に、予想通りの反応をしてくれて良かったよ。」

雪があんな可愛い笑顔を魔導師長に向けたのに、魔導師長は何も思わないのだろうか?まぁ…魔導師長と第二騎士団長とギリューに至っては…なんだろうけど。

「とにかく、このまま何事もなく、巡礼の旅が終わると良いですね。」

「そうだな…。それで、無事終わってアルムに帰ったら…のお願い事をしっかり全うしてもらうからな。」

ーくぅっー

ここで"俺"を出すの、卑怯じゃないですか!?どうしても意識してしまう。魔導師長ではなく、ハルシオン様個人から言われていると…。意識し過ぎて…恥ずかしくなって、どう対応して良いか分からなくなる。

「わ…分かってますよ!!」

そっぽを向いて返事をする。すると、私の後ろに居る魔導師長が笑った気配がした。









最後の国である10ヶ国目も、特に問題なく浄化は進んだ。ウォルテライト女神様が懸念していた事ー魔物がに入り込んだかもしれないーと言う事は、無かったかもしれないと思う程順調だった。


そして、明日は満月の日。いよいよ"歪みの地"に足を踏み入れる日がやって来た。

"歪みの地" は、この大陸の中心にある。大きな大きな、それこそ、これは海ですか?と聞きたくなる程の大きな湖の中心部に小さな島があり、そこに"歪み"がある。普段であれば、"歪み"そこに行こうとしても行けないと言う不思議な場所。"歪み"そこに辿り着けるのは、リーデンブルク女神様の神託がおり、聖女が召還され大陸の穢れを浄化した後の満月の日だけである。その地に行く前日、10ヶ国の魔導師や魔法使いが一堂に会した。

私は、無詠唱でそっと自身の目に掛けた魔法を解除し、魔導師達を見渡した。
流石はその国を代表して来る者達。魔力の力は大きい。色んな色をしている。その中でも、我がアルム王国の魔導師長は一番魔力が大きいだろう。
その結界を張るべく集まった10人は、これまでの巡礼の旅で、その国で共に巡礼に回った魔導師達、魔法使い達の1人であった。

ーあれ?ー

ある1人の魔導師に目が留まる。

ーあんな魔導師?魔法使い?巡礼の時に居ただろうか?ー

容姿は簡単に言うと地球で言うアジア系。色黒な肌に、肩までの黒い髪。赤い瞳なので魔力の色も赤。魔導師長と同じ位…30歳位だろうか?その魔導師長と何やら話していて…どうやら彼は魔導師長に必死に謝っているようだ。何をしたのやら…。とにかく、魔導師長の知り合いなのだろう。

「ミューさん」

「タクマ様、何ですか?」

横に琢磨が居た事を忘れていた。

「いよいよ、明日…なんですね。」

「そうですね…」

本当に、いよいよだ…。明日で…もう…。

「アルムに帰ったら、一緒に王都の街に行って下さいね。」

そう言いながら、琢磨が私に笑いかける。

「…はい…帰ったら…。」

上手く笑えている自信がない。フードを被っていて良かった。
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