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第三章ー浄化巡礼の旅ー
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*ハルシオン視点*
「魔導師長様は、アルム王国でも屈指の魔導師でいらっしゃるのですよね?この国にまで噂は届いていますわ。なので、一度お会いしたいと思っておりましたの。」
ーアイツ、私を騙したなー
浄化巡礼5ヶ国目の国には、昔から繋がりがあり、年齢もさほど変わらない比較的仲の良い魔導師が居た。今日はその魔導師の邸の近くが宿泊先だったのだが、その仲の良い魔導師"アーシム"が、久し振りに飲まないか?と誘って来た為、「勿論、喜んで。」と、二つ返事でアーシムの邸に来たのだが…
目の前には、ギラギラに着飾ったご令嬢達が並んでいる。私が、こう言うのが嫌いなのを知っている筈なのに…。
次々に話し掛けて来るコバエ達を、食事をしながら適当に受け流す。愛想もクソも無いのに、コバエ達は嬉々として私に話し掛けて来る。
ー私の肩書しか知らないくせに。本当に呆れるー
私は早々に食事を終わらせ、その場で魔法陣を展開させる。
「ハルシオン、もう帰るのか!?」
アーシムが慌てて私の方にやって来る。
「あぁ。食事、ご馳走さま。ただし…もう次はないと思う。」
そう言って私は本来の宿泊先へと転移した。
時間的には、もう他の皆も食事が終わって、各々宛がわれた部屋に戻っているか、サロンでお茶をしているかだろうか。そう言えば、ここは夜の庭園が自慢だと言っていたなと思い出し、庭園へと足を向けた。
その庭園は然程大きくはないが、色んな花が咲いていた。そこに光魔法を飛ばして幻想的な景色が広がっていた。
「成る程。確かに…綺麗だ。」
ミューが好きそうだな…と自然とそう思った時
庭園の奥の方から微かに魔力を感じた。震えるような…少しピリピリするような魔力。危険はなさそうだが、気になりそちらの方へ足を向けた。そこに居たのはー
「ミュー?」
ハッとした様に私の方へと顔を上げた。フードを被っているから、ミューがどんな表情をしているのか分からない。ただ、ミューの魔力が不安定なのが気になった。ミューを気にしつつ、タクマ殿と会話を続ける。
「コバエ」
ミューがそう囁いた後、笑った。笑っているのに辛そうで…。
ーミューに、何があった?ー
自身の胸がザワリと音を立てる。
すると、ミューがしなければいけない事を思い出したから部屋に戻ると言い、走って行ってしまった。
「ちっー」
ー逃がすか!ー
「えっ!?魔導師長様!?」
思わず舌打ちした私の後ろでタクマ殿が私を呼び止めたが、それを無視して魔法でミューの部屋まで転移した。
「…魔導…師長!?」
ミューが部屋の扉を閉める前に何とか間に合い、ミューが油断した隙に部屋に入り込み後ろ手に扉を閉めた。そして、一気に距離を縮めてミューのフードを目繰り上げた。
私が来た事に驚いたのか、フードを目繰り上げた事に驚いたのかは分からないが、驚いた様に目を見開いて私を見上げて来るその目は…
綺麗な青。晴れた日の空を連想させる様な青い瞳。その青が目に溜まった涙で揺れていた。大きく見開いていた目を、一度ゆっくり瞬く。すると、目に溜まっていた涙が流れる。それさえも綺麗に見えて、息を飲む。しかし、次の瞬間怒りの気持ちが沸いた。
「タクマ殿に…何かされたか?」
あの場に居たのはミューとタクマ殿だけだった。何があった?でも、ミューは何もされていないと言う。
「じゃあ、何故泣いている?何があった?」
それでもミューは、何も言わない。何故何も言ってくれない?
「俺には言えない?」
思わず素の俺が出た。
しかもミューは、俺がミューに触れたままの事よりも、『俺』発言の方が気になるらしい。
ー俺は、男として見られていないのだろうか?ー
少し落ち着いたのか、離してくれと言う。そんな目で訴えられても…誘われてるようにしか見えないのは…俺の欲目からだろう。自分ばかりが振り回されてるような気がして、自分勝手な考えだが、ミューに意趣返しをする。
「何故泣いていたか話してくれたら、この手を離してあげる。」
と言いながら抱き寄せた。
ローブで隠れていて普段では分からないが、ほっそりした腰。髪がフワリと靡けば甘い香りがして、クラリとする。
ミューの反応が面白かったのと、これ以上は自分の方がヤバくなると思い、そっとミューから離れた。
ウォルテライト女神様がまた顕れ、魔物がこちら側に入り込んでいるかもしれない事と、タクマ殿達を還す時の事を話しに、ミューが私の部屋にやって来た。
理由は分かっている。女神様に関係する事だ。急いで報告と相談と思ったんだろう。それでもーと思う。結構遅い時間に…俺の部屋で二人きり。
ーやっぱり、俺の事、男として意識してないよな?俺は、"魔導師長"でしかないのか?ー
タクマ殿を見る目を思い出す。切なそうな目だった。まるで…恋をしていたような…
話は終わった!とばかりに挨拶をしてあっさりと部屋から出て行こうとするミュー。その後ろ姿が何とも腹立たしくなって…。
俺の腕の中に囲い込んだー。
「魔導師長様は、アルム王国でも屈指の魔導師でいらっしゃるのですよね?この国にまで噂は届いていますわ。なので、一度お会いしたいと思っておりましたの。」
ーアイツ、私を騙したなー
浄化巡礼5ヶ国目の国には、昔から繋がりがあり、年齢もさほど変わらない比較的仲の良い魔導師が居た。今日はその魔導師の邸の近くが宿泊先だったのだが、その仲の良い魔導師"アーシム"が、久し振りに飲まないか?と誘って来た為、「勿論、喜んで。」と、二つ返事でアーシムの邸に来たのだが…
目の前には、ギラギラに着飾ったご令嬢達が並んでいる。私が、こう言うのが嫌いなのを知っている筈なのに…。
次々に話し掛けて来るコバエ達を、食事をしながら適当に受け流す。愛想もクソも無いのに、コバエ達は嬉々として私に話し掛けて来る。
ー私の肩書しか知らないくせに。本当に呆れるー
私は早々に食事を終わらせ、その場で魔法陣を展開させる。
「ハルシオン、もう帰るのか!?」
アーシムが慌てて私の方にやって来る。
「あぁ。食事、ご馳走さま。ただし…もう次はないと思う。」
そう言って私は本来の宿泊先へと転移した。
時間的には、もう他の皆も食事が終わって、各々宛がわれた部屋に戻っているか、サロンでお茶をしているかだろうか。そう言えば、ここは夜の庭園が自慢だと言っていたなと思い出し、庭園へと足を向けた。
その庭園は然程大きくはないが、色んな花が咲いていた。そこに光魔法を飛ばして幻想的な景色が広がっていた。
「成る程。確かに…綺麗だ。」
ミューが好きそうだな…と自然とそう思った時
庭園の奥の方から微かに魔力を感じた。震えるような…少しピリピリするような魔力。危険はなさそうだが、気になりそちらの方へ足を向けた。そこに居たのはー
「ミュー?」
ハッとした様に私の方へと顔を上げた。フードを被っているから、ミューがどんな表情をしているのか分からない。ただ、ミューの魔力が不安定なのが気になった。ミューを気にしつつ、タクマ殿と会話を続ける。
「コバエ」
ミューがそう囁いた後、笑った。笑っているのに辛そうで…。
ーミューに、何があった?ー
自身の胸がザワリと音を立てる。
すると、ミューがしなければいけない事を思い出したから部屋に戻ると言い、走って行ってしまった。
「ちっー」
ー逃がすか!ー
「えっ!?魔導師長様!?」
思わず舌打ちした私の後ろでタクマ殿が私を呼び止めたが、それを無視して魔法でミューの部屋まで転移した。
「…魔導…師長!?」
ミューが部屋の扉を閉める前に何とか間に合い、ミューが油断した隙に部屋に入り込み後ろ手に扉を閉めた。そして、一気に距離を縮めてミューのフードを目繰り上げた。
私が来た事に驚いたのか、フードを目繰り上げた事に驚いたのかは分からないが、驚いた様に目を見開いて私を見上げて来るその目は…
綺麗な青。晴れた日の空を連想させる様な青い瞳。その青が目に溜まった涙で揺れていた。大きく見開いていた目を、一度ゆっくり瞬く。すると、目に溜まっていた涙が流れる。それさえも綺麗に見えて、息を飲む。しかし、次の瞬間怒りの気持ちが沸いた。
「タクマ殿に…何かされたか?」
あの場に居たのはミューとタクマ殿だけだった。何があった?でも、ミューは何もされていないと言う。
「じゃあ、何故泣いている?何があった?」
それでもミューは、何も言わない。何故何も言ってくれない?
「俺には言えない?」
思わず素の俺が出た。
しかもミューは、俺がミューに触れたままの事よりも、『俺』発言の方が気になるらしい。
ー俺は、男として見られていないのだろうか?ー
少し落ち着いたのか、離してくれと言う。そんな目で訴えられても…誘われてるようにしか見えないのは…俺の欲目からだろう。自分ばかりが振り回されてるような気がして、自分勝手な考えだが、ミューに意趣返しをする。
「何故泣いていたか話してくれたら、この手を離してあげる。」
と言いながら抱き寄せた。
ローブで隠れていて普段では分からないが、ほっそりした腰。髪がフワリと靡けば甘い香りがして、クラリとする。
ミューの反応が面白かったのと、これ以上は自分の方がヤバくなると思い、そっとミューから離れた。
ウォルテライト女神様がまた顕れ、魔物がこちら側に入り込んでいるかもしれない事と、タクマ殿達を還す時の事を話しに、ミューが私の部屋にやって来た。
理由は分かっている。女神様に関係する事だ。急いで報告と相談と思ったんだろう。それでもーと思う。結構遅い時間に…俺の部屋で二人きり。
ーやっぱり、俺の事、男として意識してないよな?俺は、"魔導師長"でしかないのか?ー
タクマ殿を見る目を思い出す。切なそうな目だった。まるで…恋をしていたような…
話は終わった!とばかりに挨拶をしてあっさりと部屋から出て行こうとするミュー。その後ろ姿が何とも腹立たしくなって…。
俺の腕の中に囲い込んだー。
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