初恋の還る路

みん

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第三章ー浄化巡礼の旅ー

琢磨と雪と私

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*本日は2話投稿します*









「タクマ様は、お疲れではありませんか?」

少しお話ししませんか?と琢磨に誘われ、庭園のベンチに腰を掛けた。勿論、お互いベンチの端と端に座り、2人の間は人1人分空いている。

「全然疲れてませんよ。何と言うか…浄化の旅って、もっとこう…危険と隣り合わせで苦労の連続で…とか思ってたんですけど…。特に、他国に出てからは、何だか…観光旅行をしてるみたいな気分です。」

「ふふっ…そうですね。」

日本では、魔物と戦いながら旅をするとか、魔王を倒すとか色々な物語やゲームがあった。琢磨も、この浄化巡礼の旅もそんなイメージを持っていたんだろう。大きな違いは、この大陸の人間や獣人が一番恐れているのが…"歪み"のの世界の魔物だと言う事だろう。魔物は決してと手を結ぶ事はない。殺戮一辺倒なのだ。ならば、国同士で争い"歪み"を悪化させるより平和を選ぶのは当たり前の事。浄化の邪魔をするなんて事はもっての他である。

浄化巡礼の旅に、護衛なんて要る?と思える位平和な旅なのだ。

「タクマ様も、ご令嬢方にサロンへ誘われてましたけど…行かなくて良かったんですか?ユキ様も、寂しそうでしたよ?」

この国のご令嬢方と雪が、第二王子や第二騎士団長は勿論の事、琢磨にも声を掛けてサロンに誘っていたのだが、琢磨はそれを断ったようだった。雪は眉をハの字に下げ寂しそうな顔をしたのだが、周りのイケメン子息達に慰められつつサロンへと行ってしまった。

ー前世でもよく目にするシーンだったなぁー

雪は本当に容姿は可愛いし、困った顔をされると庇護欲がそそられて助けてあげたくなる。昔から変わらないなぁ…。

「寂しそう…か…。いや、俺が居なくても、寂しくないと思いますよ。」

「え?」

琢磨にしては、やけに棘のある言い方だなと思い琢磨の方に視線を向けると、琢磨は、目の前の庭園を見ているようで…どこか遠くを見ているような顔をしていた。

「…前に…大切にしたかった…好きだった子が居たって話…しましたよね?俺…その子の事…裏切ってしまったんです。」

ーやっぱり…そうだったんだー

「……」

私は何も言えず、琢磨から視線を外して目の前に広がる庭園を見渡した。

「雪が、雪だけが悪いんじゃないんですけど…俺の選択も間違ってばっかりだったんですけど…雪の言いなりになって拒みきれなかった自分が許せないんです。」

「…その彼女には…何と?」

「何も。何も言えませんでした。多分…俺の裏切りを知ったまま…」

になった事を目の当たりにした瞬間、私は死んじゃったんだよねー

「そこからの俺は更に最低で…。怒りをぶつけるように…雪と関係を持ったんです。そんな最低な事を2年位続けて…。でも、このままじゃいけないと思って、そこから雪には何も言わずに雪から離れたんです。それで、ここに召還される迄の5年位は会ってなかったんですよ。5年ぶりに会ったのだって…彼女の命日で…お墓参りに行った時に偶然会っただけで…」

「彼女の…命日…」

琢磨は、今迄その大切にしたかった彼女が死んだとは言っていなかった。でも、今ハッキリと彼女の命日と。墓参りと言ったのだ。その彼女とは、やっぱり私の事だった。

「はい。彼女は…事故で亡くなりました。」

琢磨が、膝の上に置いている自分の手を握りしめる。

「過去は変えられない。なら、俺が変わらなきゃって。彼女を忘れる事なんてできないし、忘れたくない。だから、これからは、彼女が恥ずかしくないような人間になろうって。そんな自分勝手な思いだけど、この5年間やって来ました。でも…久し振りに会った雪は…何も変わってなかった。でも、この雪に対する気持ちも、自分勝手なんですけどね。」

琢磨は自嘲気味に笑う。

「人を1人傷付けても…平気なんですよ。自分が認めた人間に対してはどこまでも優しくするけど、認めて無い人間に対しては冷淡なんですよ。その冷淡さを隠すのが…うまいんです。だからか、俺は雪の笑顔が怖いんです。正直、第二王子が俺と雪の間に入ってくれるので…助かってるんです。」

ー成る程。第二王子は…琢磨と雪の緩衝材になっているのかー

ようやく、第二王子の雪に対する行動?思惑?が判った。雪が琢磨に執着しないようにしているのだ。それが、雪に対して第二王子が心を寄せているからなのか、琢磨と亀裂を入れさせない為かは分からないけど…。

「ユキ様は…タクマ様の事が好きなのかと思っていたのですが…第二王子の事が好きなんでしょうか?」

「"好き"かどうかは分からないけど、雪の中で今の"一番"は第二王子だと思う。俺は"控え"位じゃないかな?」

おおぅ…琢磨、結構毒舌なんだな…そして…雪。私の全く知らない人みたいな雪。私は、表面通りの雪しか知らなかった。

琢磨は『雪の』と言った。誘ったのは雪で、応えたのが琢磨と言う事なんだろう。そんな事なら、最初から私と付き合わなければ良かったのに。私を突き放せば良かったのに。

どす黒い感情に引き摺られるように、魔力が溢れそうになる。

ー駄目だ!落ち着け!ー

グッと目を閉じて魔力を抑えようした。

「ミュー?」

ここには居ない筈の人の声がした。
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