初恋の還る路

みん

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第二章

神々の失態②

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*本日、2話目の投稿です*







『それからの事は…レイナイト侯爵から聞いて、知っているわね?』

「はい。また親子として転生したこと…ですね?」

『そう。どんな影響が出るのか分からなかったから、色々な制約を掛けた…。そのせいで…またあなたの母親…ライラには辛い思いをさせてしまった…。』

ウォルテライト女神は、寂しげに、そして悔しそうな顔をして目を伏せた。

親子として転生できたが、自分にしか分からない再会。愛している夫には愛人が居る。邪気にされていた訳ではなかったが、辛かっただろうと思う。でもー

「ウォルテライト女神様もご存知かと思いますが、父から聞いた話では…父の記憶が戻ってから母が亡くなる迄の1年間。たった1年だったけど、母は本当に幸せだったと…言っていたそうです。おそらく…母は…誰の事も恨んだりなどしてはいないと思います。また私達と再会できた事を…感謝していたと思います。」

ウォルテライト女神は、ゆるゆると顔を上げ、またその紺色の瞳で私を見つめる。

『ありがとう』 









『次に…ミュー、あなたの事を話すわね。』

母の話が終わった後、昂った感情を落ち着かせるように、互いに何を語る事もなく紅茶を飲んだ。そして、落ち着いて来た頃、ウォルテライト女神がまた語り出した。


私が前世で事故死したのは、母の巻き込まれ召還の影響が大きいかもしれないと。私が此方に転生した際、私の記憶を読み取ったらしいのだが、私には本来、まだまだ未来に続く路が視えたそうだ。そして、琢磨と雪との問題も視えたと。私の予定外の死と転生。本来まだ続く未来があった琢磨と雪との繋がり。それは、更に"歪み"に影響を及ぼす種となってしまったと。

本来、今回の聖女は、この大陸のアルムとは違う国の女性だったらしい。だが、今回の"歪み"の大元は母から続く神々の失態が原因。その原因を正さなければ"歪み"を直す事は不可能。そのライラは亡くなっており、ライラとその夫であるレイナイト侯爵は、もう既に"歪み"に影響を与える事はないだろうと、神々は判断した。そう、残るはー

『ミュー、後はあなただけなのよ。』

紺色の瞳に見つめられ、私も逸らさずに見つめ返す。

『私の失態を棚に上げてと思うけれど…。ミュー、あなたが自分の名前を思い出せば…をどうするべきか…判るわ。そして、ができるのは…ミューだけなの。その為に…ライラにも言ってなかったのだけれど…あなたには私の加護…力を少し与えているわ。』

「えっ!?」

ウォルテライト女神の力!?何それ!?確かに水の魔法は使える。使えるけど…特にこれと言って突出して優れているとか感じた事はない。

『そうよ。普段では感じないでしょうね。が来れば判るわ。』

「その時…」

本来召還する予定のなかった雪と琢磨。私しかできない事。きっと…そう言う事なんだろう。私の憂いも…断ち切る為に…。自然と思った瞬間、頭の中で声がした。


『ふふっ。ミューはまだ小さいし分からないと思うけど…***の時もとっても可愛かったわ。またあなたを生めて…育てられる事がとても嬉しいわ。***とは呼べないけど…ミューって似てるでしょ?これは内緒よ?秘密ね?私の…ミシュエルリーナ。』



…愛してるわ。前世でも今世でも。私の愛しい子』


"みゆき"そうだ。私の名前は…

棚橋美幸たなはしみゆき

名前を思い出した瞬間、目の前が一気にクリアになる感覚がした。そして、雪と琢磨が召還された時の事を思い出す。2人が召還された時に展開された魔法陣。これに引っ掛かりがあった事を思い出した。その引っ掛かりが最後に必要なピースだったと…理解した。

目の前に居るウォルテライト女神が目を細めて優しく笑む。

『思い出したのね?』

「はいー。」

『本当に、ごめんなさいね。私の失態であなた達3人の人生を狂わせてしまった。本来ならば、私は神失格なのだけれど…ライラが大切にしたレイナイト侯爵とミューとコーライルの幸せを見届ける迄私はこの湖ここに居るわ。』

ウォルテライト女神は優しく微笑み、これで終わりかな?と思ったところで…

『あ、大事な事を言い忘れてたわ。ライラが亡くなる前に…リーデンブルクがライラの夢に渡ったのよ。最後に一つ…何か願い事はないかって。そうしたらライラはね、コーライルとミューに何かあったら助けてやって欲しいって。だからね、ミュー。貴女がは…あなたの自由よ。あなたがしても、私は貴女を支持するし、貴女を何者からかも守るわ。それだけは覚えていてね?』

「はい。ありがとうございます。」

『では、そろそろお別れの時間ね。ミュー、貴女ならいつでも歓迎するわ。また会いに来てくれるかしら?』

"いつでも"何て、神様相手に有り得ない話だろう。会って、ましてやお茶を飲んだりお話したり…多分、次回またなんて事はもうないだろう。それでも…

「ウォルテライト女神様がお望みであれば…是非。」

『ふふっ。楽しみにしているわね。』

そう言ってから、スッとウォルテライト女神が軽く右手を上に上げる。

私はそこで、意識を失ったー。




『どうか…彼女達が幸せになりますように…』
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