初恋の還る路

みん

文字の大きさ
上 下
61 / 105
第二章

動き出す2人

しおりを挟む
「18歳!?」

「はい。なので、タクマ様より七つ年下になりますね。」

「え?何?俺犯罪になる?いや…ここでは成人が16だったか?」

ボソボソと琢磨が何かを言ってるが、よく聞こえないのでスルーする。

訓練が終わり、訓練場から朱殷宮殿しゅあんきゅうでんに戻る時に、琢磨に『女性に訊くのは失礼かもしれませんが…』と前置きされ、年齢を訊かれ『18歳です』と答えたら、目を大きく見開いて驚かれた。確かに、アルム国の人達は地球で言うと欧米人のような容姿をしている為、実際年齢より上に見えない事もない。琢磨の方こそ、25歳には見えない。もっと若く見えるのだ。

「それではタクマ様、次回の訓練は3日後となりますので、3日後の今日と同じ時間にまた宜しくお願いします。」

朱殷宮殿にたどり着き、私は瑠璃宮殿へ。琢磨は朱殷宮殿の自室へ行く為、次回の訓練の予定を伝えて琢磨と別れて瑠璃宮殿へ向かおうとした。

「あの、ミューさん!」

琢磨に背を向けた瞬間、呼び止められた。

「はい、何でしょうか?」

呼び止められたので、もう一度琢磨の方に体ごと向き直る。

「あーっと…。その、今度、時間があったら王都の街にでも一緒に行きませんか?」

ーえ?絶対に嫌だー

そんな事、ハッキリと口に出して言えないけど…。えーっと…取り敢えずは…

「すみません。おそらくですが…今回の浄化の旅が終わる迄は…難しいかもしれません…。」

これ、まるっきりの嘘ではない。私は今、本当に忙しいのだ。普段の魔導師としの仕事は勿論の事、その間に琢磨の魔法指導、帰還魔法陣の作成など、やることが山積みなのだ。

「そう…なんですか…」

琢磨があからさまにションボリ顔をする。捨てられた子犬のように…。そんなに街に行きたかったのかなぁ?

「タクマ様がどうしても行きたいようでしたら、誰か案内役を頼んでおきましょうか?」

「いや!それは大丈夫です!」

琢磨が両手を振って断って来る。

「?そうですか?なら良いですけど…。それでも困ったら言って下さい。誰か用意しますので。それでは、これで失礼します。」

と、今度こそはと、私は瑠璃宮殿へ足を向けた。

「はぁ…全然伝わってない…間接的なのは駄目なのか…」

と、琢磨が項垂れていた事は私は全く知らなかった。





「ミュー、お昼を取った後、王都の外れにあるキリアンの森に行くぞ。」

「え!?今日ですか?」

朱殷宮殿から瑠璃宮殿に戻り、今日の訓練の報告をしに魔導師長の執務室に入室してすぐに言われた。王都の外れと言っても転移魔法で移動できる為、全く問題は無いのだけど…

「あ、キリアンの森と言う事は…第二騎士団が視察の下見に行った際、魔獣が出たとか言っていた所ですか?」

「そうだ。王都近辺で、どの位悪しき魔素や淀みが出ているのか…確認して欲しいと上からのお達しだ。」

「では…その結果によって、出立の日が決まると?」

「おそらく。もともと早目に出立する予定だったが、更に早まる可能性もある。」

「分かりました。魔導師長はもうお昼は食べましたか?」

「私もまだだ。魔導師長の執務室ここに2人分のお昼を持って来るように頼んだから、一緒に食べるぞ。」

「うえっ!?」

ーここで、2人で一緒に食べる!?何で!?ー

ビックリして変な声を出してしまったし!!

「くくっ…何だ?その返事は?あぁ…まさかだが…嫌だと言う事ではないな?」

ー嗤ったくせに!何で威圧を掛けて来るんですか!?泣いて良いですか!?ー

「まさか!嫌なんてことはないですよ!光栄過ぎてビックリしただけですよ!!ありがとうございます!!」

何だかよくわからないけど、お礼を言っておく。

「くくっ…。」


あ…魔導師長が…笑ってる。と同じ様に…笑ってる。良かった。もう…囚われていないのだろうか?前に…進めたのだろうか?良かった…と思うのに…

ーチクリー

と胸が痛むのは…何て自分勝手な感情なんだろう。


「はいはーい!お昼をお持ちしましたよー!」

と、元気良くティアナがお昼を持ってやって来た。

「ティアナ!久し振りね!」

落ち掛けた気持ちを持ち上げ、久し振りに会えたティアナに意識を向けた。

「本当に久し振りね。ミューは元気だった?朱殷宮殿では、結構派手にやったらしいわね?また、時間ができたら色々聞かせてね!」

ティアナが私をギュウギュウ抱きしめながら、更に上目遣いでお願いして来る。

「ティアナさん?ちょっと可愛い過ぎますよ?私、拐って帰っちゃいますよ?」

「うむ。ミューに拐われるのは、吝かではないわ!ただ、私、これからまた一仕事があるのよ。!また時間作るから!!」

「えー!?今から一緒にここでお昼食べて行かない?」

食べる時間位あるだろうと思い誘ってみたのだけど

「…ミューさん…私、それだけはできないわ。ごめんなさい。」

ちょっとひきつった様な顔をしながら断られ、『じゃあ…またね!』と、2人分のお昼ご飯だけを置いていそいそと部屋から出て行ってしまった。






ーギリュー執務室ー

「ギリューさん。」

「何だい?ティアナさん。」

「いつから状況に?」

「私だって知らないよ!先日驚いたばかりだ!」

「女の私がミューに抱きついただけでも威嚇されましたけど?」

「女で良かったな。威嚇だけで良かったと思うように…」

ギリューとティアナは、遠い目をしながらミューの安全を祈った。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

真実の愛は、誰のもの?

ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」  妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。  だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。  ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。 「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」 「……ロマンチック、ですか……?」 「そう。二人ともに、想い出に残るような」  それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。

陛下から一年以内に世継ぎが生まれなければ王子と離縁するように言い渡されました

夢見 歩
恋愛
「そなたが1年以内に懐妊しない場合、 そなたとサミュエルは離縁をし サミュエルは新しい妃を迎えて 世継ぎを作ることとする。」 陛下が夫に出すという条件を 事前に聞かされた事により わたくしの心は粉々に砕けました。 わたくしを愛していないあなたに対して わたくしが出来ることは〇〇だけです…

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

辺境伯へ嫁ぎます。

アズやっこ
恋愛
私の父、国王陛下から、辺境伯へ嫁げと言われました。 隣国の王子の次は辺境伯ですか… 分かりました。 私は第二王女。所詮国の為の駒でしかないのです。 例え父であっても国王陛下には逆らえません。 辺境伯様… 若くして家督を継がれ、辺境の地を護っています。 本来ならば第一王女のお姉様が嫁ぐはずでした。 辺境伯様も10歳も年下の私を妻として娶らなければいけないなんて可哀想です。 辺境伯様、大丈夫です。私はご迷惑はおかけしません。 それでも、もし、私でも良いのなら…こんな小娘でも良いのなら…貴方を愛しても良いですか?貴方も私を愛してくれますか? そんな望みを抱いてしまいます。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 設定はゆるいです。  (言葉使いなど、優しい目で読んで頂けると幸いです)  ❈ 誤字脱字等教えて頂けると幸いです。  (出来れば望ましいと思う字、文章を教えて頂けると嬉しいです)

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈 
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...