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第二章
閑話ーハルシオン視点①ー
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*長目なので、3話に分けました。3話全て今日中に投稿します。宜しくお願いします*
またこの夢かー
昔からよくみる夢だー
夢の中に居るが、これは夢だと分かるー
暫くの間、見ていなかったのにー
ただひたすらに、暗闇の中を歩く。どこに向かっているのか、前に進んでいるのかどうかも分からない。ただ歩いているだけ。
「明日、新しい見習いの子が瑠璃宮殿に来ますから、殿下も一緒に対応して頂けますか?」
そう私に言ったのは、前任の魔導師長だった。私は生まれた時から魔力が大きく強かったのだが、この前任の魔導師長は、私よりも更に強かった。私が魔導師になる為に直接指導してくれたのもこの人だった。来年で60歳を迎えるのを機に魔導師長を引退し、奥方と領地にひきこもる事になり、私が次期魔導師長として引き継ぎをしている最中の事だった。
「彼女は平民でね。魔力は結構強くて大きいのですが、まだ10歳だと言うのに魔力が安定してるんですよ。とても興味深いですねぇ…」
この人も、魔導師特有の魔法馬鹿なタイプ。それはそれは愉しそうな顔をしながら囁いている。余程の魔力持ちなのだろう。どんな子が来るのか、少し楽しみにしている自分も居た。
「ミューです。宜しくお願い致します。」
翌日、瑠璃宮殿にやって来たその見習いは、女の子だった。肩までの銀髪に、きれな青い瞳。平民にしては姿勢がピンとしていて、挨拶も平民の10歳とは思えない程綺麗だった。特に、印象的だったのは目だった。平民のまだ10歳と言う女の子が、これから魔導師になる為に1人でここにやって来た。不安もあると思うのだが…この子の目には、一切不安の色は無かった。真っ直ぐ前だけを見て、しっかりとそこに立って居た。その目を、好ましいと思った。
「私は今は魔導師長をしてますが、来年引退するんです。それで、私の後任に、こちらのハルシオン殿が就きます。なので、困った事があった時はハルシオン殿に言って下さいね。」
と、魔導師長にふられたので、彼女が私の方へと視線を向けて来る。
「分かりました。ハルシオン様、宜しくお願い致します。」
礼をした後顔を上げ、真っ直ぐに私の目を見て来る。やはり、その目には迷いや不安などは一切無かった。
「あぁ、こちらこそ宜しく。」
と、平民ではよく行われる挨拶代わりの握手を求め手を差し出すと、一瞬彼女がたじろいだ。少し…殆ど気にならない位だが、少し間を空けてから彼女が手を差し出して来たので、握手をした。
ー?ー
違和感があった。平民の普通の挨拶としての握手だが、王族としては例え子供と言えども異性の手に、長い間触れているのは良くないと思い、握手もすぐに終わらせた。だから、手を握っていたのは一瞬程。それでも、何故か違和感があった。
ー何だ?ー
握手した手を見つめる。不快感ではない。違和感。その思考に囚われそうになる前に、魔導師長に声を掛けられ思考が途切れた。それから、これからの見習い生活の説明や、予定の話などが続き私は違和感の事をすっかり忘れてしまっていた。
それから6年。ミューは16歳の若さで上級位魔導師まで登り詰めた。その異例な早さに、この時ばかりは私も流石に驚いた。
「私は、こうなるだろうと思ってましたよ?」
と、ミューの上級位魔導師就任の祝いに、態々領地から出て来た前任の魔導師長が笑顔で言っていた。その横にミューが居るが…
ミューは、見習いが終わり、下級位魔導師になった日から、目深にフードを被るようになった。つまり、あの意思の強い目を、かれこれ5年程はまともに見ていないのだ。まだまだ成長盛りな年頃だ。ひょっとしたら、街中でミューが素顔で歩いていても気付かないかもしれないなと、たまに思う。
そう思っていたあの日。街中で、あの噂の…かの令嬢を見掛けたのだ。その淡いラベンダー色の瞳に囚われた。
ーミューも、フードの中では、かの令嬢のような目をしているのかもしれないなー
かの令嬢に惹かれたからミューを思い出したのか、ミューの目が忘れられなくてかの令嬢に惹かれたのか……。その時の私にはよく分からなかった。
ただ、その日から、何故か暗闇の中を歩く夢を見なくなっていた。
それから2年。あの夜会で、ようやくかの令嬢に会った。やはり、かの令嬢の目はしっかりとした意思を持った綺麗な目をしていた。
またこの夢かー
昔からよくみる夢だー
夢の中に居るが、これは夢だと分かるー
暫くの間、見ていなかったのにー
ただひたすらに、暗闇の中を歩く。どこに向かっているのか、前に進んでいるのかどうかも分からない。ただ歩いているだけ。
「明日、新しい見習いの子が瑠璃宮殿に来ますから、殿下も一緒に対応して頂けますか?」
そう私に言ったのは、前任の魔導師長だった。私は生まれた時から魔力が大きく強かったのだが、この前任の魔導師長は、私よりも更に強かった。私が魔導師になる為に直接指導してくれたのもこの人だった。来年で60歳を迎えるのを機に魔導師長を引退し、奥方と領地にひきこもる事になり、私が次期魔導師長として引き継ぎをしている最中の事だった。
「彼女は平民でね。魔力は結構強くて大きいのですが、まだ10歳だと言うのに魔力が安定してるんですよ。とても興味深いですねぇ…」
この人も、魔導師特有の魔法馬鹿なタイプ。それはそれは愉しそうな顔をしながら囁いている。余程の魔力持ちなのだろう。どんな子が来るのか、少し楽しみにしている自分も居た。
「ミューです。宜しくお願い致します。」
翌日、瑠璃宮殿にやって来たその見習いは、女の子だった。肩までの銀髪に、きれな青い瞳。平民にしては姿勢がピンとしていて、挨拶も平民の10歳とは思えない程綺麗だった。特に、印象的だったのは目だった。平民のまだ10歳と言う女の子が、これから魔導師になる為に1人でここにやって来た。不安もあると思うのだが…この子の目には、一切不安の色は無かった。真っ直ぐ前だけを見て、しっかりとそこに立って居た。その目を、好ましいと思った。
「私は今は魔導師長をしてますが、来年引退するんです。それで、私の後任に、こちらのハルシオン殿が就きます。なので、困った事があった時はハルシオン殿に言って下さいね。」
と、魔導師長にふられたので、彼女が私の方へと視線を向けて来る。
「分かりました。ハルシオン様、宜しくお願い致します。」
礼をした後顔を上げ、真っ直ぐに私の目を見て来る。やはり、その目には迷いや不安などは一切無かった。
「あぁ、こちらこそ宜しく。」
と、平民ではよく行われる挨拶代わりの握手を求め手を差し出すと、一瞬彼女がたじろいだ。少し…殆ど気にならない位だが、少し間を空けてから彼女が手を差し出して来たので、握手をした。
ー?ー
違和感があった。平民の普通の挨拶としての握手だが、王族としては例え子供と言えども異性の手に、長い間触れているのは良くないと思い、握手もすぐに終わらせた。だから、手を握っていたのは一瞬程。それでも、何故か違和感があった。
ー何だ?ー
握手した手を見つめる。不快感ではない。違和感。その思考に囚われそうになる前に、魔導師長に声を掛けられ思考が途切れた。それから、これからの見習い生活の説明や、予定の話などが続き私は違和感の事をすっかり忘れてしまっていた。
それから6年。ミューは16歳の若さで上級位魔導師まで登り詰めた。その異例な早さに、この時ばかりは私も流石に驚いた。
「私は、こうなるだろうと思ってましたよ?」
と、ミューの上級位魔導師就任の祝いに、態々領地から出て来た前任の魔導師長が笑顔で言っていた。その横にミューが居るが…
ミューは、見習いが終わり、下級位魔導師になった日から、目深にフードを被るようになった。つまり、あの意思の強い目を、かれこれ5年程はまともに見ていないのだ。まだまだ成長盛りな年頃だ。ひょっとしたら、街中でミューが素顔で歩いていても気付かないかもしれないなと、たまに思う。
そう思っていたあの日。街中で、あの噂の…かの令嬢を見掛けたのだ。その淡いラベンダー色の瞳に囚われた。
ーミューも、フードの中では、かの令嬢のような目をしているのかもしれないなー
かの令嬢に惹かれたからミューを思い出したのか、ミューの目が忘れられなくてかの令嬢に惹かれたのか……。その時の私にはよく分からなかった。
ただ、その日から、何故か暗闇の中を歩く夢を見なくなっていた。
それから2年。あの夜会で、ようやくかの令嬢に会った。やはり、かの令嬢の目はしっかりとした意思を持った綺麗な目をしていた。
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