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第二章
ミューの立ち位置
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「えっと…もしですが、ユキ様が第二騎士団長様と結婚したいと言ったら、どうするんですか?」
「ん?そう言われたら断る理由は無いからね。先ずは婚約して、それから結婚すると思うよ?でも、ユキ様が私を選ぶ事はないと思うよ?」
第二騎士団長は、何て事無いように答える。この世界の貴族の結婚と言うのはこう言う事が当たり前なんだろう。私にはやっぱりちょっと無理だ。
「どうして、選ばれないと?」
私は遠慮するが、第二騎士団長はイケメンだ。しかも、ご令嬢方の人気を集める近衛騎士団のトップであり、伯爵家の嫡男でもある。にも関わらず、婚約者もまだ居ないらしい。そんな理由で、魔導師長と同じく、第二騎士団長も人気があるらしい。
「ユキ様は…異世界から来たらしいが、この世界のご令嬢と感覚は似ていると思う。何と言うか…より良い相手を選んでると言うか…。悪い意味ではなく、上昇志向は強いかと。貴族らしい女性だと思う。伯爵家の嫡男から見ると、伯爵夫人として問題無く迎え入れられるだろうと思う。逆に、ユキ様からしたら、私は伯爵止まりだからね。ユキ様の側には、第二王子と王弟が居るから…。」
と、第二騎士団長は、視線だけ魔導師長に向けながら言う。
「第二騎士団長様からは…ユキ様がその様に見えるのですね…。」
私には分からない。分からないが、そう言われて納得する自分も居る。それが本当なら、雪と琢磨が噂になった事も理解できる。雪は学年で一番可愛い、琢磨は学年で一番カッコいいと言われていた。そんな琢磨が選んだのが私だ。何の取り柄も無い私。雪からしたら…プライドが許さなかったのかもしれない。琢磨も…雪から気持ちを向けられて…嫌ではなかったのかもしれない…
ーあぁ…成る程ねー
自分勝手な思考かもしれないが、その思考をストンと受け入れる自分が居る。自然と手に力が入る。
「ミュー嬢は、他人事の様に言うけど…自分の立ち位置を理解しているのか?」
「私の…立ち位置?」
第二騎士団長が、徐に私に話をふる。
「タクマ殿ですよ。彼は聖女ではないが、リーデンブルク女神の加護を持った者。彼がもし、ミュー嬢を望んだら?」
ー琢磨がミューを選ぶ?ー
「タクマ殿は、騎士として生きていく事を選択した。貴族ではない。平民であるミュー嬢とだって結婚できる。例えば…ミュー嬢が嫌だと言っても、王命が下れば…断れない。私から見たら、ミュー嬢は今、タクマ殿に一番近い処に居ると思う。」
ヒュッと息を飲む。有り得ない…と思う。思うけど…あの時の震えていた手を。その後に見た琢磨の顔を思い出すと否定もできない自分が居る。
琢磨と?無理だ。無理に決まってる。もう、あんな思いはたくさんだ。きっと、どんなに頑張っても、もう琢磨を信頼する事はできないだろう。いつだって、雪の存在に怯えてしまうだろう。今のままの距離感で…十分だ。
「私は…もう恋なんて懲り懲りです…王命なんて出たら、上級位魔導師として暴れまくって、国外にでも逃げます。まぁ、タクマ様が私を望む事は…無いでしょうけどね。」
と、少しおどけた様に返答する。
「懲り懲り?ミュー嬢は…そんなに辛い恋をした事があるの?」
ーしまった!!ー
油断した。第二騎士団長に痛いところをつかれた。今の私は18歳。10歳の頃に魔導師見習いになった。勿論、そんな年齢で恋愛なんてしていないし、魔導師になってからも、そんな話は一切無い。前世でしてました!何て事は絶対言えない。
「さぁ?どうでしょうね?」
ーこれ以上、突っ込むな!ー
と言う気持ちを込めて誤魔化すが…油断していたところで、第二騎士団長が私に手を伸ばし、フードを目繰り上げた。
「なっ!?」
慌ててフードを被ろうとした手を捕まれる。
「そんな辛そうな顔して…。一体どんな恋をしたの?」
「……」
『辛そうな顔して』と言う第二騎士団長の方が辛そうな顔をしている。茶化してる訳でも揶揄っている訳でもない。その視線から逃れられないかのように私の体が固まる。
バチンッ
「「痛っー!?」」
第二騎士団長に捕まれていた所に、音を立てて衝撃が走り、手が離れて行った。
チラリとギリューを見ると、ギリューは少し目を見開き魔導師長を見ているようで、そのまま私も魔導師長に視線を向ける。
うん。特に魔導師長は、表情も態度も何も変わっていないー様に見える。ちょっと…空気が冷たい気がするが…気のせいだろう。
「え?マジで?」
と、第二騎士団長は、自分の手と魔導師長を交互に見ながら呟く。心なしか、顔色が悪くなったような気もする。
「…恋人でも婚約者でも無い女性に、やたら無闇に手を出すな。」
いつもより少し低い声で、魔導師長が第二騎士団長を窘める。
第二騎士団長は、驚いたように魔導師長を見詰めた後、困った様に少し笑った。
「そうか…良かったな…」
第二騎士団長が何か囁いたが、あまりにも小さくて聞こえなかった。
「?」
何だろう?と思ってるのは…どうやら私だけのようで…
「マジか…えー!?いつから!?」
と、横に居るギリューも、何か1人でぶつぶつ言いながら頭を抱えている。
私は、フードを被り直すのも忘れて独り、困惑していた。
「ん?そう言われたら断る理由は無いからね。先ずは婚約して、それから結婚すると思うよ?でも、ユキ様が私を選ぶ事はないと思うよ?」
第二騎士団長は、何て事無いように答える。この世界の貴族の結婚と言うのはこう言う事が当たり前なんだろう。私にはやっぱりちょっと無理だ。
「どうして、選ばれないと?」
私は遠慮するが、第二騎士団長はイケメンだ。しかも、ご令嬢方の人気を集める近衛騎士団のトップであり、伯爵家の嫡男でもある。にも関わらず、婚約者もまだ居ないらしい。そんな理由で、魔導師長と同じく、第二騎士団長も人気があるらしい。
「ユキ様は…異世界から来たらしいが、この世界のご令嬢と感覚は似ていると思う。何と言うか…より良い相手を選んでると言うか…。悪い意味ではなく、上昇志向は強いかと。貴族らしい女性だと思う。伯爵家の嫡男から見ると、伯爵夫人として問題無く迎え入れられるだろうと思う。逆に、ユキ様からしたら、私は伯爵止まりだからね。ユキ様の側には、第二王子と王弟が居るから…。」
と、第二騎士団長は、視線だけ魔導師長に向けながら言う。
「第二騎士団長様からは…ユキ様がその様に見えるのですね…。」
私には分からない。分からないが、そう言われて納得する自分も居る。それが本当なら、雪と琢磨が噂になった事も理解できる。雪は学年で一番可愛い、琢磨は学年で一番カッコいいと言われていた。そんな琢磨が選んだのが私だ。何の取り柄も無い私。雪からしたら…プライドが許さなかったのかもしれない。琢磨も…雪から気持ちを向けられて…嫌ではなかったのかもしれない…
ーあぁ…成る程ねー
自分勝手な思考かもしれないが、その思考をストンと受け入れる自分が居る。自然と手に力が入る。
「ミュー嬢は、他人事の様に言うけど…自分の立ち位置を理解しているのか?」
「私の…立ち位置?」
第二騎士団長が、徐に私に話をふる。
「タクマ殿ですよ。彼は聖女ではないが、リーデンブルク女神の加護を持った者。彼がもし、ミュー嬢を望んだら?」
ー琢磨がミューを選ぶ?ー
「タクマ殿は、騎士として生きていく事を選択した。貴族ではない。平民であるミュー嬢とだって結婚できる。例えば…ミュー嬢が嫌だと言っても、王命が下れば…断れない。私から見たら、ミュー嬢は今、タクマ殿に一番近い処に居ると思う。」
ヒュッと息を飲む。有り得ない…と思う。思うけど…あの時の震えていた手を。その後に見た琢磨の顔を思い出すと否定もできない自分が居る。
琢磨と?無理だ。無理に決まってる。もう、あんな思いはたくさんだ。きっと、どんなに頑張っても、もう琢磨を信頼する事はできないだろう。いつだって、雪の存在に怯えてしまうだろう。今のままの距離感で…十分だ。
「私は…もう恋なんて懲り懲りです…王命なんて出たら、上級位魔導師として暴れまくって、国外にでも逃げます。まぁ、タクマ様が私を望む事は…無いでしょうけどね。」
と、少しおどけた様に返答する。
「懲り懲り?ミュー嬢は…そんなに辛い恋をした事があるの?」
ーしまった!!ー
油断した。第二騎士団長に痛いところをつかれた。今の私は18歳。10歳の頃に魔導師見習いになった。勿論、そんな年齢で恋愛なんてしていないし、魔導師になってからも、そんな話は一切無い。前世でしてました!何て事は絶対言えない。
「さぁ?どうでしょうね?」
ーこれ以上、突っ込むな!ー
と言う気持ちを込めて誤魔化すが…油断していたところで、第二騎士団長が私に手を伸ばし、フードを目繰り上げた。
「なっ!?」
慌ててフードを被ろうとした手を捕まれる。
「そんな辛そうな顔して…。一体どんな恋をしたの?」
「……」
『辛そうな顔して』と言う第二騎士団長の方が辛そうな顔をしている。茶化してる訳でも揶揄っている訳でもない。その視線から逃れられないかのように私の体が固まる。
バチンッ
「「痛っー!?」」
第二騎士団長に捕まれていた所に、音を立てて衝撃が走り、手が離れて行った。
チラリとギリューを見ると、ギリューは少し目を見開き魔導師長を見ているようで、そのまま私も魔導師長に視線を向ける。
うん。特に魔導師長は、表情も態度も何も変わっていないー様に見える。ちょっと…空気が冷たい気がするが…気のせいだろう。
「え?マジで?」
と、第二騎士団長は、自分の手と魔導師長を交互に見ながら呟く。心なしか、顔色が悪くなったような気もする。
「…恋人でも婚約者でも無い女性に、やたら無闇に手を出すな。」
いつもより少し低い声で、魔導師長が第二騎士団長を窘める。
第二騎士団長は、驚いたように魔導師長を見詰めた後、困った様に少し笑った。
「そうか…良かったな…」
第二騎士団長が何か囁いたが、あまりにも小さくて聞こえなかった。
「?」
何だろう?と思ってるのは…どうやら私だけのようで…
「マジか…えー!?いつから!?」
と、横に居るギリューも、何か1人でぶつぶつ言いながら頭を抱えている。
私は、フードを被り直すのも忘れて独り、困惑していた。
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