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第二章
騎士団
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「ミューさん!」
「タクマ様、お待たせしてしまいましたか?」
ここは、騎士達の宮殿である朱殷宮殿にある訓練場。琢磨の魔法指導の任を受けた次の日、指示された時間よりも少し早目に来たつもりだったのだが、もうすでに、そこに琢磨の姿があったのだ。
「いえ、お昼を食べた後、軽く運動をしてただけなので。」
にっこり笑う琢磨の横には、父と同じ年齢程の騎士が居た。黒い騎士服を着ていると言う事は…
「そちらは…第一騎士団団長であるアルバニア様…でしょうか?」
短い銀髪で、瞳はルビーの様に赤く目は切れ長。左頬にうっすらとだが傷痕がある。
切れ長の目を更に細めて微笑み
「私の事をご存知だったか?その通り、私はクロウエル=アルバニア。第一騎士団の団長を務めている。タクマに関して何かあれば、私に直接言ってもらって構わない。」
「ありがとうございます。私は、上級位魔導師のミューでございます。予定では週に3日程、こちらでお世話になります。何かあれば、遠慮無くアルバニア様を頼らせて頂きます。宜しくお願い致します。」
おそらく、平民である私を気遣ってくれての発言なのだろう。魔導師長からも言われてるだろうけど。でも、こうして騎士団の団長から直接言ってもらえると、私としてもやりやすくなるので助かる。
「ま、何かあったところで、ミュー殿は上級位魔導師だからな。私が出る幕も無いかもしれないが…」
と、顎に手をやりながらニヤリと嗤う。
ーこの手の笑顔には心当たりがあるわー
笑顔眩しい騎士団長が、チラリと後ろを振り返ると、騎士団長の後ろから2人の騎士が一歩前に出て来た。
2人とも赤色の騎士服を着ている…と言う事は、見習い騎士である朱色の騎士服を着ている琢磨より上。階級を示すバッジは無し。平の騎士と言う事ね。魔力持ちではあるが、琢磨よりはるかに弱い。それでも、今日は琢磨と一緒に魔法の訓練をさせると言う事ね。
「王弟殿下から聞いているかもしれないが、今日はこの2人にも魔法の指導をお願いしたい。あくまでも、この2人はタクマのついでだから、もし足手まといになるようなら放っておいてもらって構わない。」
それから、騎士団長はそっと私の耳元に屈み込み
「問題があれば、それなりに対処してもらって構わない。」
そう囁いて離れて行った騎士団長を見遣ると…それはそれは綺麗な黒い笑顔をしていた。
ー何?私の周り、黒い人しか居ないの?ー
ひきつりそうになる顔をなんとか治める。
多分…この2人は問題児なんじゃないだろうか?どう問題があるかは分からないが、何か問題を起こして、それに対して私が対処する。それを初日に…見せしめの意味があるのだろう。この騎士団長の笑顔を見るに、思い切り、遠慮無くやって良いって事だろう。
「解りました。それでは、今日は予定通り、タクマ様には風による攻撃魔法の指導をしていきます。そちらの方達も風をお使いですか?」
騎士団長を見ながら返事をし、その後で2人の騎士へと視線を移す。
「私の名前はモーリア=シルストリア。風使いです。」
「私はアレクシス=ベルガルト。私も風使いです。」
シルストリアもベルガルトも伯爵だった筈。貴族のデフォルトなのか、この2人も所謂"イケメン"である。一見爽やかそうには見えるけど…
「了解しました。では、後でお二方の魔力がどの位あるのか確認させて頂いてから、タクマ様メインで指導をさせて頂きます。」
飽くまで、琢磨がメインである事を強調して言うと、2人とも一瞬だが顔に不快感を表した。
ー駄目貴族特有のプライドだけ一人前な感じかな?と言う事は…平民である私の事も、絶対よくは思ってないよねー
ちらりと騎士団長を見ると、私の思考を肯定するかのようにニヤリと嗤った。本当に面倒くさい…。相手は伯爵家の令息だが、騎士団長からの言質はとったし、思い切りやらせてもらおう。きっと、騎士団長だけではなく、魔導師長もどこからかこの様子を見ているのだろう。この2人が言い逃れができないように。そっと、軽く息を吐いた。
「ミュー殿、すまないが所用ができたので、少し外させてもらうが、このまま予定通り訓練を続けてくれ。」
「分かりました。」
騎士団長を呼びに来たのはジョシュア様だ。と言う事は…今回の見せしめは、騎士団と魔導師団と王室の三つのゴーサインが出ていると言う事なんだろう…何?この2人は…今まで何をやらかしてたんだろうか?その2人を見遣る。
2人とも魔力はそこそこあるのだが、やはり微妙なコントロールが苦手なようだったので、琢磨とは別にコントロールの練習を、琢磨には、的をたて、そこに風魔法を当てる練習をしてもらっている。
訓練場から騎士団長とジョシュア様の姿が見えなくなった瞬間、2人は動き出した。
ーはぁ…やっぱりこうなるのね…ー
頭が痛くなる。監視されているような気配もひしひしと感じるのに…この2人は何も感じてないのだろうか?色々駄目な騎士だなぁ…。とになく、ササッとやっちゃいますか。と、目を瞑り軽く息を吐いた。
「タクマ様、お待たせしてしまいましたか?」
ここは、騎士達の宮殿である朱殷宮殿にある訓練場。琢磨の魔法指導の任を受けた次の日、指示された時間よりも少し早目に来たつもりだったのだが、もうすでに、そこに琢磨の姿があったのだ。
「いえ、お昼を食べた後、軽く運動をしてただけなので。」
にっこり笑う琢磨の横には、父と同じ年齢程の騎士が居た。黒い騎士服を着ていると言う事は…
「そちらは…第一騎士団団長であるアルバニア様…でしょうか?」
短い銀髪で、瞳はルビーの様に赤く目は切れ長。左頬にうっすらとだが傷痕がある。
切れ長の目を更に細めて微笑み
「私の事をご存知だったか?その通り、私はクロウエル=アルバニア。第一騎士団の団長を務めている。タクマに関して何かあれば、私に直接言ってもらって構わない。」
「ありがとうございます。私は、上級位魔導師のミューでございます。予定では週に3日程、こちらでお世話になります。何かあれば、遠慮無くアルバニア様を頼らせて頂きます。宜しくお願い致します。」
おそらく、平民である私を気遣ってくれての発言なのだろう。魔導師長からも言われてるだろうけど。でも、こうして騎士団の団長から直接言ってもらえると、私としてもやりやすくなるので助かる。
「ま、何かあったところで、ミュー殿は上級位魔導師だからな。私が出る幕も無いかもしれないが…」
と、顎に手をやりながらニヤリと嗤う。
ーこの手の笑顔には心当たりがあるわー
笑顔眩しい騎士団長が、チラリと後ろを振り返ると、騎士団長の後ろから2人の騎士が一歩前に出て来た。
2人とも赤色の騎士服を着ている…と言う事は、見習い騎士である朱色の騎士服を着ている琢磨より上。階級を示すバッジは無し。平の騎士と言う事ね。魔力持ちではあるが、琢磨よりはるかに弱い。それでも、今日は琢磨と一緒に魔法の訓練をさせると言う事ね。
「王弟殿下から聞いているかもしれないが、今日はこの2人にも魔法の指導をお願いしたい。あくまでも、この2人はタクマのついでだから、もし足手まといになるようなら放っておいてもらって構わない。」
それから、騎士団長はそっと私の耳元に屈み込み
「問題があれば、それなりに対処してもらって構わない。」
そう囁いて離れて行った騎士団長を見遣ると…それはそれは綺麗な黒い笑顔をしていた。
ー何?私の周り、黒い人しか居ないの?ー
ひきつりそうになる顔をなんとか治める。
多分…この2人は問題児なんじゃないだろうか?どう問題があるかは分からないが、何か問題を起こして、それに対して私が対処する。それを初日に…見せしめの意味があるのだろう。この騎士団長の笑顔を見るに、思い切り、遠慮無くやって良いって事だろう。
「解りました。それでは、今日は予定通り、タクマ様には風による攻撃魔法の指導をしていきます。そちらの方達も風をお使いですか?」
騎士団長を見ながら返事をし、その後で2人の騎士へと視線を移す。
「私の名前はモーリア=シルストリア。風使いです。」
「私はアレクシス=ベルガルト。私も風使いです。」
シルストリアもベルガルトも伯爵だった筈。貴族のデフォルトなのか、この2人も所謂"イケメン"である。一見爽やかそうには見えるけど…
「了解しました。では、後でお二方の魔力がどの位あるのか確認させて頂いてから、タクマ様メインで指導をさせて頂きます。」
飽くまで、琢磨がメインである事を強調して言うと、2人とも一瞬だが顔に不快感を表した。
ー駄目貴族特有のプライドだけ一人前な感じかな?と言う事は…平民である私の事も、絶対よくは思ってないよねー
ちらりと騎士団長を見ると、私の思考を肯定するかのようにニヤリと嗤った。本当に面倒くさい…。相手は伯爵家の令息だが、騎士団長からの言質はとったし、思い切りやらせてもらおう。きっと、騎士団長だけではなく、魔導師長もどこからかこの様子を見ているのだろう。この2人が言い逃れができないように。そっと、軽く息を吐いた。
「ミュー殿、すまないが所用ができたので、少し外させてもらうが、このまま予定通り訓練を続けてくれ。」
「分かりました。」
騎士団長を呼びに来たのはジョシュア様だ。と言う事は…今回の見せしめは、騎士団と魔導師団と王室の三つのゴーサインが出ていると言う事なんだろう…何?この2人は…今まで何をやらかしてたんだろうか?その2人を見遣る。
2人とも魔力はそこそこあるのだが、やはり微妙なコントロールが苦手なようだったので、琢磨とは別にコントロールの練習を、琢磨には、的をたて、そこに風魔法を当てる練習をしてもらっている。
訓練場から騎士団長とジョシュア様の姿が見えなくなった瞬間、2人は動き出した。
ーはぁ…やっぱりこうなるのね…ー
頭が痛くなる。監視されているような気配もひしひしと感じるのに…この2人は何も感じてないのだろうか?色々駄目な騎士だなぁ…。とになく、ササッとやっちゃいますか。と、目を瞑り軽く息を吐いた。
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