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第一章
真実④
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「私が自由になれない?」
私が自由になるのと、父を嫌う事が、どう関係するんだろうか?どんな理由があっても、親子の仲が良いのは良い事じゃないんだろうか?
「貴族に生まれたからには、昔程ではないが、結婚に関しては政略的な要素が多分に含まれる。日本の記憶が戻った時、きっとそれが一番お前を苦しめるだろうと思った。」
確かにー。日本とこの世界での恋愛や結婚の意味は全く異なる。記憶が戻る前は、カーンハイル様との結婚だって貴族として当たり前だと思っていた。
でも、記憶が戻ってからは…無理だった。雪と琢磨の事を除外しても。
「それに、今世も私がまた早く死んでしまったら?それこそ、アレがお前にどんな婚約者を宛がうか…社交デビューすらしていない令嬢の貰い手だ…想像するだけで吐き気がする!」
父が、苦虫を噛み潰した様な顔をするが、手をグッと握り締め息を吐く。
「お前が私を嫌いになれば…レイナイト侯爵家に未練が無くなれば、お前が何の憂いも無くレイナイト侯爵家を出て行けると思ったんだ。レイナイト侯爵家を棄てられると…」
目を見開いて父を見る。言いたい事はあるのに、言葉が出てこない。
「お前に魔力がある事は…私が自分の名前を思い出した時に気付いた。その時に、私も魔力持ちになったんだ。」
「え!?」
そんなに前から!?全く気付かなかった。
「気付かなかっただろう?ライラのノートにあったが…女神様意向の転生故の"チート"らしい。」
"チート"
懐かしいワードだなぁ…2人揃って軽く笑む。
「お前もそうだろうが、魔力の色を変えて魔力無しを装っている。そんな事、私達2人にしかできないだろうね。お前が魔導師見習いになり、どんどん力をつけ上級位魔導師になった時、これで、お前をレイナイト侯爵家から解放させる事ができると…思ったところで、まさかのカーンハイル公爵からの婚約話だー。魔力暴走を起こすかと思った。」
ーチートで魔力暴走は止めて下さい!それ、絶対駄目なヤツです!ー
まぁ、婚約云々の話は昨日したからいいな?と父が前置きをする。
「本当は、嫌われたままお前とは離れるつもりだった。つもり…だったのに…欲が出た。」
父が、困った様な顔をする。
「昨日、お前の方から私と話したいと連絡を取りに来ただろう?それが嬉しくて…我満できなくて…アレにも邪魔されたくなくて…」
あぁ…。それで、父が別邸に来るって流れになったのね。
「それでも、嫌われたままで良いと…レイナイト侯爵を演じようと思ったのに…お前の顔を見たら…無理だった。出来なかった。お前を見たら…もう一度、もう一度だけ…"お父さん"と呼んで欲しいと…欲が出た。」
「……」
「すまない。」
また、今日2回目。視界がボヤけてくる。
「謝らないで。私は…本当の事を話してくれて…嬉しかったから…お父さん…ありがとう。」
父が一瞬目を見張った後、顔をくしゃりと崩して泣き笑いした。
お互い、少し気持ちを落ち着かせる為、紅茶を口にする。
「お前は…今回召還された2人とは…知り合いなのか?」
父の急な問い掛けに驚く。
「何故、そう思ったの?」
「さっきの夜会で、あの2人を見るお前の目が…何となく辛そうだっから。」
父に見られていたのかー。表情には出してなかったと思ったのに。
「私…」
話し掛けた瞬間、父が手を上げ制止する。
「いや、無理に言う必要はないよ。私が知らない前世のお前の事も、今は言う必要はない。恐らくだが…前世のお前とあの2人の事が、お前にとっての"鍵"なのかも知れないな。」
雪と琢磨が…"鍵"…。お母さんの意向で父と私が転生した。ならば、雪と琢磨がそうである可能性は否定できない。
ーそこから逃げてはいけないー
今迄逃げて来たけど、これからは、自分の為に向かっていかなければ。前を…向くんだ。
「これから、お前は私の娘のミシュエルリーナではなく、魔導師ミューとして生きて行くんだ。その為の布石は打った。もう…今のここからミシュエルリーナは…この大陸には存在しない。」
「存在しない?」
さっきの行動が布石だとは思ったけど…存在しないとは?
「お前は、夜会からの帰りに、レイナイト侯爵に恨みを持つ者に襲われ、逃げる途中に馬車ごと崖から転落。そのまま川に流されミシュエルリーナは行方不明ー。遺体は数日後発見されるが、損傷が激しく顔は確認できなかったが、着ているドレスでミシュエルリーナと決定づけられたー。」
「は!?」
ー私、死んじゃったの!?ー
ここまで来たら、淑女仮面は要らないよね?
「勿論、遺体は本物じゃないよ?私がタイミングを見計らって、こっそり作って用意するから。うん、チートって凄いよね?」
さっき迄のシリアスは何処へ行った?父が、ゼス以上に黒い笑顔をしている。
「お前の父ではなくなるが…お前は王宮に勤める魔導師ミュー。私も王宮に勤める者だ。そこで、たまたま知り合いになるかもしれないね?知り合いなら、お話しても誰も文句は言わないよね?」
あ、この人真っ黒だ!えぇ、勿論口には出しません。前世警察官、今国王陛下の側近。計算高い腹黒さんであっても可笑しくはないよね!本当に、さっきの涙を返して欲しい!!
私が自由になるのと、父を嫌う事が、どう関係するんだろうか?どんな理由があっても、親子の仲が良いのは良い事じゃないんだろうか?
「貴族に生まれたからには、昔程ではないが、結婚に関しては政略的な要素が多分に含まれる。日本の記憶が戻った時、きっとそれが一番お前を苦しめるだろうと思った。」
確かにー。日本とこの世界での恋愛や結婚の意味は全く異なる。記憶が戻る前は、カーンハイル様との結婚だって貴族として当たり前だと思っていた。
でも、記憶が戻ってからは…無理だった。雪と琢磨の事を除外しても。
「それに、今世も私がまた早く死んでしまったら?それこそ、アレがお前にどんな婚約者を宛がうか…社交デビューすらしていない令嬢の貰い手だ…想像するだけで吐き気がする!」
父が、苦虫を噛み潰した様な顔をするが、手をグッと握り締め息を吐く。
「お前が私を嫌いになれば…レイナイト侯爵家に未練が無くなれば、お前が何の憂いも無くレイナイト侯爵家を出て行けると思ったんだ。レイナイト侯爵家を棄てられると…」
目を見開いて父を見る。言いたい事はあるのに、言葉が出てこない。
「お前に魔力がある事は…私が自分の名前を思い出した時に気付いた。その時に、私も魔力持ちになったんだ。」
「え!?」
そんなに前から!?全く気付かなかった。
「気付かなかっただろう?ライラのノートにあったが…女神様意向の転生故の"チート"らしい。」
"チート"
懐かしいワードだなぁ…2人揃って軽く笑む。
「お前もそうだろうが、魔力の色を変えて魔力無しを装っている。そんな事、私達2人にしかできないだろうね。お前が魔導師見習いになり、どんどん力をつけ上級位魔導師になった時、これで、お前をレイナイト侯爵家から解放させる事ができると…思ったところで、まさかのカーンハイル公爵からの婚約話だー。魔力暴走を起こすかと思った。」
ーチートで魔力暴走は止めて下さい!それ、絶対駄目なヤツです!ー
まぁ、婚約云々の話は昨日したからいいな?と父が前置きをする。
「本当は、嫌われたままお前とは離れるつもりだった。つもり…だったのに…欲が出た。」
父が、困った様な顔をする。
「昨日、お前の方から私と話したいと連絡を取りに来ただろう?それが嬉しくて…我満できなくて…アレにも邪魔されたくなくて…」
あぁ…。それで、父が別邸に来るって流れになったのね。
「それでも、嫌われたままで良いと…レイナイト侯爵を演じようと思ったのに…お前の顔を見たら…無理だった。出来なかった。お前を見たら…もう一度、もう一度だけ…"お父さん"と呼んで欲しいと…欲が出た。」
「……」
「すまない。」
また、今日2回目。視界がボヤけてくる。
「謝らないで。私は…本当の事を話してくれて…嬉しかったから…お父さん…ありがとう。」
父が一瞬目を見張った後、顔をくしゃりと崩して泣き笑いした。
お互い、少し気持ちを落ち着かせる為、紅茶を口にする。
「お前は…今回召還された2人とは…知り合いなのか?」
父の急な問い掛けに驚く。
「何故、そう思ったの?」
「さっきの夜会で、あの2人を見るお前の目が…何となく辛そうだっから。」
父に見られていたのかー。表情には出してなかったと思ったのに。
「私…」
話し掛けた瞬間、父が手を上げ制止する。
「いや、無理に言う必要はないよ。私が知らない前世のお前の事も、今は言う必要はない。恐らくだが…前世のお前とあの2人の事が、お前にとっての"鍵"なのかも知れないな。」
雪と琢磨が…"鍵"…。お母さんの意向で父と私が転生した。ならば、雪と琢磨がそうである可能性は否定できない。
ーそこから逃げてはいけないー
今迄逃げて来たけど、これからは、自分の為に向かっていかなければ。前を…向くんだ。
「これから、お前は私の娘のミシュエルリーナではなく、魔導師ミューとして生きて行くんだ。その為の布石は打った。もう…今のここからミシュエルリーナは…この大陸には存在しない。」
「存在しない?」
さっきの行動が布石だとは思ったけど…存在しないとは?
「お前は、夜会からの帰りに、レイナイト侯爵に恨みを持つ者に襲われ、逃げる途中に馬車ごと崖から転落。そのまま川に流されミシュエルリーナは行方不明ー。遺体は数日後発見されるが、損傷が激しく顔は確認できなかったが、着ているドレスでミシュエルリーナと決定づけられたー。」
「は!?」
ー私、死んじゃったの!?ー
ここまで来たら、淑女仮面は要らないよね?
「勿論、遺体は本物じゃないよ?私がタイミングを見計らって、こっそり作って用意するから。うん、チートって凄いよね?」
さっき迄のシリアスは何処へ行った?父が、ゼス以上に黒い笑顔をしている。
「お前の父ではなくなるが…お前は王宮に勤める魔導師ミュー。私も王宮に勤める者だ。そこで、たまたま知り合いになるかもしれないね?知り合いなら、お話しても誰も文句は言わないよね?」
あ、この人真っ黒だ!えぇ、勿論口には出しません。前世警察官、今国王陛下の側近。計算高い腹黒さんであっても可笑しくはないよね!本当に、さっきの涙を返して欲しい!!
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