初恋の還る路

みん

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第一章

夜会①

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ミシュエルリーナとして王宮に来るのは初めてだった。舞踏会などでは、色とりどりの華やかなドレスを着込んだ令嬢で溢れ還り、目がチカチカする事もあるが、今日はデビュタントの為の夜会。令嬢が身に纏うのは白いドレス。清廉さを表すのだが…

ー集団結婚式ですか?ー

日本人の記憶を思い出してしまったせいか、そんな風に思ってしまうのは、許して欲しい。


先に私達の乗った馬車が到着し、父のエスコートで会場入口迄進む。その私達の後ろを、ルティウス様にエスコートされたエルが歩いて来る。義母は、控え室で待機している。

入場は、爵位の低い順となる。恐らく、私達が最後だろう。扉の前に立って居る騎士に、父がカードを渡す。すると騎士が扉を開けー

「レイナイト侯爵令嬢、ミシュエルリーナ様、エルライン様、ご入場です」

ーうわぁ…本当に名前を叫ばれるのね…。止めて欲しい…切実に…ー

そんな事思ってませんーみたいに、侯爵令嬢したりな顔で、父と共に入場する。

何だろうか…すごく視線を感じる…。がっつり見られてるような…

「…皆、お前を見てるからな…」

と、父が私だけに聞こえるように囁く。

ーえ?何で?何で私が思ってる事が分かったの?それに、何で私を見てるの?ー

驚きをきっちり隠しながら、チラリと父の方を見ると、父も目線だけ私の方に向け口許を少し上げて笑っていた。

ーえー??何??お父様って、こんな感じの人だったの?ー

ちょっと脳内パニックになり掛けたところで、国王陛下の前にたどり着いた。

「国王陛下、少し遅くなりましたが、こちらが長女のミシュエルリーナ、後ろに居るのが次女のエルラインでございます。」

「ミシュエルリーナ=ティリス=レイナイトでございます。」
「エルライン=レイナイトでございます。」

父に紹介され、名を名乗りカーテシーをする。

「あぁ。あなた達が噂の令嬢、ミシュエルリーナ嬢とエルライン嬢だね。」

「ー陛下…"噂の"などど…失礼にあたりますわ。」

"噂の"とは?と思っていると、王妃様が国王陛下を咎めるように声を掛けた。

「あぁ、それはすまない。別に悪い意味ではないのだ。とにかく、2人とも、今宵は楽しんでくれ。デビュー、おめでとう。」

「「ありがとうございます。」」

国王陛下からお祝いの言葉をもらい、その場から下がるー前に、父が横に移動した。

横?と思いそちらを見ると…

王弟殿下として参加している魔導師長と目が合った。

ここに居るって、全く気付かなかった。
それに…何となく…すごく見られてるような…

まさか…バレてないよね?

「これはこれは、ハルシオン殿下。今夜の夜会に参加とは…また珍しいですね?何か…ありましたか?」

「…レイナイト侯爵殿…お前も私を揶揄うのか?」
王弟殿下が肩を竦める。

「揶揄っていませんよ。陛下が、ようやくハルシオンが婚約者を探しだした!と息巻いていましたので…。」

ーチッー

あー…魔導師長ってば、舌打ちしたよね?

「兄は勘違いしているだけだ。」

「左様ですか?それは残念です。殿下。こちらは、我がレイナイト家長女、ミシュエルリーナ。後ろに居るのが、次女のエルラインとその婚約者のカーンハイル公爵家嫡男ルティウス殿です。」

そのレイナイト侯爵の言葉に、会場が少しざわついた。

ーカーンハイル公爵令息が、レイナイト侯爵の次女と婚約。しかも、姉ではなく妹がー

ー姉の方は、まともに社交デビューしていないし、深窓の令嬢だからなー

ーでは、まだ姉の方は婚約者が居ないのだから、チャンスか?ー

何だろう…皆こそこそ話しているつもりだろうが…バッチリ聞こえてますよ!いや…聞こえるように言ってるのか…社交会って凄いよね…。

「…王弟殿下、初めてお目通り致します。レイナイト侯爵家長女、ミシュエルリーナでございます。」

「次女のエルラインでございます。」

「あぁ。顔を上げてくれ。2人とも、デビューおめでとう。」

顔を上げ魔導師長を見る。いつもは、前髪は横に流しているが、今日は後ろに流し後ろ髪と一緒に、少し高目の位置で髪を一つに括っている。黒曜石の様な綺麗な瞳がよく見える。やっぱりイケメンだ。婚約者どころか、恋人の1人や2人居てもおかしくない。勿体ないよね…まさかの男色!?な訳ないよね??

そして、今度こそと、父にエスコートされながら、その場から下がった。

ハルシオンが、下がって行くミシュエルリーナの後ろ姿を、目を細めて見ていた事には、ミシュエルリーナ本人は全く気付いていなかった。




「本当は、この後仕事に戻る予定だったんだが、陛下のご意向で、今夜はこのままお前に付いていて良いそうだ。」

挨拶が終わり、壁の花になる為に壁際にやって来た時に父が言い出した。

「そうなのですか?それは…心強いですね。陛下にお礼を言わなければいけませんわね?」

「ふんっ。いつもこき使われているからな。たまには良いだろう。礼などしなくて良いだろう。」

いつもの冷たい感じの父からは想像できない言い方に、思わず笑みがこぼれる。

そう言えば…琢磨と雪はいつ入場するのだろうか?この事は、父も知っているのかしら?
そう思っているとー

「第二王子、ルドヴィル様がご入場されます。」

先程の扉前に居た騎士の声が、会場に響いた。

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