24 / 105
第一章
義姉妹
しおりを挟む「それでは、時間になりましたら呼びに参りますので、それまではゆっくりとお寛ぎ下さいませ。」
お茶の準備を終えた後、そう言ってカリーもリザもエルライン付きの侍女も退室し、部屋には私とエルラインの2人だけになった。
さて、何を話そうかしら?取り敢えず、婚約に関してのフォローかしら?と、思案していると
「あの…お義姉様、婚約に関してなのですが…本当に私で良かったのでしょうか?」
「良かったのでしょうか?とは?公爵様側が望んだ事なのよ?良いに決まっているでしょう?」
「…そうではなくて…お義姉様は自分には無理だと仰いましたが…本当はお義姉様だって…公爵夫人に成り得る程の力量をお持ちではないですか…。淑女としてのマナーだって…。ただ、社交デビューしていないってだけで…」
あぁ…この子は、本当にちゃんと私を見ているのか。
「…エルライン、ありがとう。でもね、例えエルラインが言うように、私に公爵夫人になる力量があったとしても、社交を蔑ろにしているようでは駄目なのよ。デビューしてないから何て、言い訳にはならないわ。カーンハイル公爵は四大公爵家の筆頭でもあり、代々宰相を勤める王家の忠信。ご婦人方を束ねる為にも社交は大事なのよ。私には無理だわ。私は…エルライン、あなたなら出来ると思っているの。だから、エルラインが婚約者になって良かったと本当に思っているわよ?」
「お…義姉…さま…」
顔を真っ赤にして…泣いているー
「え?エルライン!?何故泣いてるの!?ひょっとして、この婚約が嫌だったの!?」
「違います!嬉しくて!!」
「え?嬉しい??」
ちょっと意味が分からないー
「お義姉様に褒めてもらえて…とっても嬉しくて!!」
えーそこ!?ひょっとして、執務室での涙目も私がこの子を褒めたからなの?感動してるの??
「私、お義姉様みたいに立派な女性になりたくて…お義姉様はお顔は勿論ですが、所作の一つ一つもお綺麗で…初めてお会いした時から、ずっと憧れていたんです。それで、お義姉様みたいになれたらって…少しでも近付けたらって…それで一生懸命頑張って来たんです。その…お母様の手前、お義姉様に声を掛けたりは出来なかったのですが…。」
真っ赤になった両頬を、両手でおさえ泣きながら語り出す。
よく、あの野心家(?)の母親から純粋培養できたなーうん。可愛い。
ー前世では独りっ子だった。だからだろうか?勿論、前世を思い出す前から、兄の事は大好きだった。でも、前世を思い出してからは、"妹"と言う存在が余計に可愛くて仕方無く見えるのだ。義理ではあるが、妹には変わりない。しかも、私を慕ってくれている。うん。可愛い(笑)
「こんな引きこもりの私を慕ってくれるなんて…エルラインは変な子ね?でも…嬉しいわ。ありがとう。ふふっ…これから…お義母様が居ない時だけだけど、エルと呼んでも良いかしら?」
「!勿論ですわ!!どうぞ、エルと呼んで下さい!!」
力いっぱい、嬉しそうにエルラインーエルが声を上げる。それは淑女としてはどうかと思うが、とても可愛いと思った。
もっと早くーエルと話をしていれば良かった…。後どれ位この子と姉妹として会えるのだろうか。ミューとして前に進む時に、私はこの子を傷付けてしまうのだろうか?とにかく、今日はめいいっぱい許される限り、エルを可愛がろう。
ー後どれ位ー
そう思っていたのに…。これが最後になるなんて、この時の私は思ってもいなかった。
エルと今迄の空白を埋めるように、沢山お喋りをした。それでも1時間位だっただろうか?夜会に出発する前に身嗜みを整えなければと言う事で、エル付きの侍女が早目にエルを迎えに来た。
「もっとお話をしたかったのですが…。お義姉様、また、きっと、絶対に一緒にお茶をして下さいね?」
と、名残惜しそうな顔をしながら、侍女に引き摺られるように部屋を後にした。
「エルって、本当に可愛いわね。本当に、あのお義母様の子なの?」
「お嬢様、失礼ですよ…」
ーリザ、やっぱり否定しないのねー
「では、お嬢様も身嗜みを整えましょうか」
「えぇ。リザ、宜しくね。」
「お父様、今気付いたのですけど…私、今日の夜会に参加する意味がありましたか?」
あれから、カーンハイル公爵様は、夜会前に宰相としての仕事があると、一足先に王宮へと向かった。そして、父の指示で義母とエルとルティウス様が同じ馬車に。私と父が同じ馬車にと、二台の馬車で王宮に向かう事になった。今、この馬車の中には私と父の二人だけ。リザもレイナイト邸でお留守番である。
「どう言う意味だ?」
本当に意味が分からないと言うような顔で言われる。
「もともと、私は私の婚約者だったルティウス様にエルラインを守る為に参加させられた訳ですよね?ルティウス様の婚約者がエルラインに決まったのならば、私は必要なかったのではないでしょうか?」
「あぁ、そう言う事か。必要性ね…あるのはあるが…それは、また夜会が終わったら説明しよう。それに、"参加"で噂が回ってるからなぁ…」
参加で噂が回ってる?
「…よく分かりませんが…ここまで来ましたから、参加しますけどね。後程のお話、楽しみにしておきますわ。」
と微笑めば、父は困ったように笑った。
そして、遂に王宮に到着したのである。
31
お気に入りに追加
316
あなたにおすすめの小説
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
陛下から一年以内に世継ぎが生まれなければ王子と離縁するように言い渡されました
夢見 歩
恋愛
「そなたが1年以内に懐妊しない場合、
そなたとサミュエルは離縁をし
サミュエルは新しい妃を迎えて
世継ぎを作ることとする。」
陛下が夫に出すという条件を
事前に聞かされた事により
わたくしの心は粉々に砕けました。
わたくしを愛していないあなたに対して
わたくしが出来ることは〇〇だけです…
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
王太子殿下の執着が怖いので、とりあえず寝ます。【完結】
霙アルカ。
恋愛
王太子殿下がところ構わず愛を囁いてくるので困ってます。
辞めてと言っても辞めてくれないので、とりあえず寝ます。
王太子アスランは愛しいルディリアナに執着し、彼女を部屋に閉じ込めるが、アスランには他の女がいて、ルディリアナの心は壊れていく。
8月4日
完結しました。
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる