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第一章
婚約成立
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別邸から本邸迄、初めて馬車で移動しました。
「馬車だと、あっという間に着くのね…」
歩くのは全然苦にはならないけど、今は慣れないヒールのある靴を履いているので、お迎えの馬車は有り難かった。
「旦那様と奥様とエルライン様。それに、カーンハイル公爵様と嫡男ルティウス様が、応接室でお待ちでございます。」
本邸に到着すれば、迎えに出ていたゼスにそう言われ、私が最後だったと知る。
最後って…引きこもりに加えこれって…公爵様に対して印象悪くなるだけだよねー…つい遠い目をしてしまう。でも…これもお父様の計算のうちかしら?そう思うと、ざわつく気持ちが少し落ち着いた。目を瞑り深呼吸をする。そして目を開け前を見据える。
私はーミシュエルリーナ=ティリス=レイナイト侯爵令嬢ー華麗に演じてみせるわ!
「旦那様、ミシュエルリーナ様をお連れ致しました。」
「入りなさい」
父の入室許可の言葉で、私は応接室に入り込む。
「ー遅かったな。」
「申し訳ございません。不慣れなもので、少々支度に手間取ってしまいました。」
カーテシーをしながら謝罪する。
「時間もあまり無いことだ。顔を上げなさい。そこの椅子に座るように。」
顔を上げ、部屋の中を見るー。
父が所謂誕生日席に座り、父に向かって左側の椅子に義母とエルラインが座り、その向かい側の椅子にカーンハイル公爵様とルティウス様が座って居た。私は父の反対側の1人掛けの椅子に座った。
今の父は、私のよく知っている父の顔をしている。ミシュエルリーナに全く興味の無いような、冷めた表情だ。
「では…改めて。カーンハイル公爵家嫡男ルティウスとの婚約を…エルライン嬢と結ぶ事にする。」
「えっ!?」
カーンハイル公爵様の言葉に、エルラインが驚きの声をあげた。
「…私?何故…?」
エルラインの顔は真っ青だ。その横で、義母であるキャスリーン様はしたり顔で微笑み、父は無表情だ。
カーンハイル公爵様が、少し目尻を下げ私の方を見ながら
「ミシュエルリーナ嬢は…驚かないのかい?」
「驚く…とは、どういう意味でしょうか?」
持っていた扇子で口元を隠し、首を少し傾げて公爵様に問う。
「いや…普通であれば、婚約の話が出れば、先ず上の者からとなるだろう?それを、理由無く妹にとなったのだ。どうしてか…気にならないのかい?」
公爵様は、少し目を見開いた後、また優しい眼差しで訊いてきた。
「普通ならば…ですわよね?ふふっ。私も馬鹿ではございませんから。ルティウス様の婚約者ともなれば、将来は公爵夫人に成り得る者ですわね?引きこもりの私などでは、とてもではありませんが…努められませんわ。それに引き換え、エルラインはデビュー前にも関わらず社交にも聡く、頭の回転も早いようでから。淑女としてのマナーも完璧と聞いています。カーンハイル公爵家嫡男の婚約者として、私などよりエルラインの方が相応しいと思いますわ。なので、驚く事はございませんわ。」
と、にっこり微笑みカーンハイル公爵様を見詰めると、カーンハイル公爵様は、眩しいものを見るように、目を細めた。
「成る程…」
公爵様は誰に聞かせるわけでもなく、小さな声で囁いた。
「ーでは、ルティウス殿とエルラインとの婚約を結ぶと…それで宜しいか?」
と、レイナイト侯爵が確認すると
「はいー。」
と、公爵様とルティウス様が頷く。
エルラインをチラリと見遣ると…顔を真っ赤にして目を潤ませていたー
ーえ?何で?ー
今のとこで、泣く要素あった?え?まさかのルティウス様が嫌とか?公爵夫人が嫌とか?分からないが…こればっかりは仕方無い。父がこれで宜しいか?何て訊いてはいたが、公爵からの申し出なのだ。格下の侯爵から嫌だなんて言えるわけがないのだ。だから、エルラインには…頑張ってもらうしかない!後で少しだけフォローしよう…。
「それでは、エルライン嬢の今夜の夜会のエスコートは、私がする。宜しく、エルライン嬢。」
ルティウス様がにっこりエルラインに微笑み掛ける。
「はいー。宜しくお願いします。」
「ミシュエルリーナ。お前は、私がエスコートをする。また時間に遅れられても困るから、時間までは本邸に居なさい。部屋はカリーに案内させる。」
父と義母とカーンハイル公爵親子は、まだ手続きや話があると言う事で、私とエルラインは執務室を退室する事になり、退室前に父に声を掛けられた。
「分かりました。エスコート、宜しくお願い致します。それでは、失礼致します。」
別邸に戻るのも面倒臭いと思っていたので、遠慮無く本邸に居させてもらおうーそう思い、カリーに目をやると
「あ…あの…お義姉様!」
おぅっ!ビックリしたー!そっか、エルラインも居たんだった
「どうしたの?エルライン」
「あの…あの…」
?何だろう??
「あの…時間まで…一緒にお茶でも飲みませんか?」
顔を真っ赤にして両手を組んで、私を見上げてくる。
ーくっ…ティアナも可愛いけど…エルラインがするともっと可愛いわね!!そんな可愛い顔でお願いされたら、断れないじゃない!!ー
勿論、顔には出していません。素を保っています。淑女教育万歳です。
「ええ。勿論良いわよ。カリー、そのように準備をしてくれるかしら?」
「畏まりました。では、先ずお部屋にご案内させて頂きます。」
そう言って、案内された部屋は、かつて私が使っていた部屋だった。
「馬車だと、あっという間に着くのね…」
歩くのは全然苦にはならないけど、今は慣れないヒールのある靴を履いているので、お迎えの馬車は有り難かった。
「旦那様と奥様とエルライン様。それに、カーンハイル公爵様と嫡男ルティウス様が、応接室でお待ちでございます。」
本邸に到着すれば、迎えに出ていたゼスにそう言われ、私が最後だったと知る。
最後って…引きこもりに加えこれって…公爵様に対して印象悪くなるだけだよねー…つい遠い目をしてしまう。でも…これもお父様の計算のうちかしら?そう思うと、ざわつく気持ちが少し落ち着いた。目を瞑り深呼吸をする。そして目を開け前を見据える。
私はーミシュエルリーナ=ティリス=レイナイト侯爵令嬢ー華麗に演じてみせるわ!
「旦那様、ミシュエルリーナ様をお連れ致しました。」
「入りなさい」
父の入室許可の言葉で、私は応接室に入り込む。
「ー遅かったな。」
「申し訳ございません。不慣れなもので、少々支度に手間取ってしまいました。」
カーテシーをしながら謝罪する。
「時間もあまり無いことだ。顔を上げなさい。そこの椅子に座るように。」
顔を上げ、部屋の中を見るー。
父が所謂誕生日席に座り、父に向かって左側の椅子に義母とエルラインが座り、その向かい側の椅子にカーンハイル公爵様とルティウス様が座って居た。私は父の反対側の1人掛けの椅子に座った。
今の父は、私のよく知っている父の顔をしている。ミシュエルリーナに全く興味の無いような、冷めた表情だ。
「では…改めて。カーンハイル公爵家嫡男ルティウスとの婚約を…エルライン嬢と結ぶ事にする。」
「えっ!?」
カーンハイル公爵様の言葉に、エルラインが驚きの声をあげた。
「…私?何故…?」
エルラインの顔は真っ青だ。その横で、義母であるキャスリーン様はしたり顔で微笑み、父は無表情だ。
カーンハイル公爵様が、少し目尻を下げ私の方を見ながら
「ミシュエルリーナ嬢は…驚かないのかい?」
「驚く…とは、どういう意味でしょうか?」
持っていた扇子で口元を隠し、首を少し傾げて公爵様に問う。
「いや…普通であれば、婚約の話が出れば、先ず上の者からとなるだろう?それを、理由無く妹にとなったのだ。どうしてか…気にならないのかい?」
公爵様は、少し目を見開いた後、また優しい眼差しで訊いてきた。
「普通ならば…ですわよね?ふふっ。私も馬鹿ではございませんから。ルティウス様の婚約者ともなれば、将来は公爵夫人に成り得る者ですわね?引きこもりの私などでは、とてもではありませんが…努められませんわ。それに引き換え、エルラインはデビュー前にも関わらず社交にも聡く、頭の回転も早いようでから。淑女としてのマナーも完璧と聞いています。カーンハイル公爵家嫡男の婚約者として、私などよりエルラインの方が相応しいと思いますわ。なので、驚く事はございませんわ。」
と、にっこり微笑みカーンハイル公爵様を見詰めると、カーンハイル公爵様は、眩しいものを見るように、目を細めた。
「成る程…」
公爵様は誰に聞かせるわけでもなく、小さな声で囁いた。
「ーでは、ルティウス殿とエルラインとの婚約を結ぶと…それで宜しいか?」
と、レイナイト侯爵が確認すると
「はいー。」
と、公爵様とルティウス様が頷く。
エルラインをチラリと見遣ると…顔を真っ赤にして目を潤ませていたー
ーえ?何で?ー
今のとこで、泣く要素あった?え?まさかのルティウス様が嫌とか?公爵夫人が嫌とか?分からないが…こればっかりは仕方無い。父がこれで宜しいか?何て訊いてはいたが、公爵からの申し出なのだ。格下の侯爵から嫌だなんて言えるわけがないのだ。だから、エルラインには…頑張ってもらうしかない!後で少しだけフォローしよう…。
「それでは、エルライン嬢の今夜の夜会のエスコートは、私がする。宜しく、エルライン嬢。」
ルティウス様がにっこりエルラインに微笑み掛ける。
「はいー。宜しくお願いします。」
「ミシュエルリーナ。お前は、私がエスコートをする。また時間に遅れられても困るから、時間までは本邸に居なさい。部屋はカリーに案内させる。」
父と義母とカーンハイル公爵親子は、まだ手続きや話があると言う事で、私とエルラインは執務室を退室する事になり、退室前に父に声を掛けられた。
「分かりました。エスコート、宜しくお願い致します。それでは、失礼致します。」
別邸に戻るのも面倒臭いと思っていたので、遠慮無く本邸に居させてもらおうーそう思い、カリーに目をやると
「あ…あの…お義姉様!」
おぅっ!ビックリしたー!そっか、エルラインも居たんだった
「どうしたの?エルライン」
「あの…あの…」
?何だろう??
「あの…時間まで…一緒にお茶でも飲みませんか?」
顔を真っ赤にして両手を組んで、私を見上げてくる。
ーくっ…ティアナも可愛いけど…エルラインがするともっと可愛いわね!!そんな可愛い顔でお願いされたら、断れないじゃない!!ー
勿論、顔には出していません。素を保っています。淑女教育万歳です。
「ええ。勿論良いわよ。カリー、そのように準備をしてくれるかしら?」
「畏まりました。では、先ずお部屋にご案内させて頂きます。」
そう言って、案内された部屋は、かつて私が使っていた部屋だった。
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