初恋の還る路

みん

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第一章

レイナイト侯爵①

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*この話の前に、一話(閑話を)投稿しています*






「お嬢様、本邸に旦那様がお帰りになられたようです。」

夜会前日、仕事が午前中迄だったので、早目にレイナイトの別邸に戻り、夜会の事や婚約の事、そしてこれからの事を考えていたところに、リザが知らせを聞いて部屋にやって来た。

「ーそう…。じゃあ、申し訳無いけど、明日の夜会迄に話したい事があるから、時間を作って頂けないか…訊いて来てくれるかしら?」

「賜りました。」

そう言って、リザは部屋から出て行った。





結果、今日の夕食後に、時間があるとの事。そして、私がではなく、父が別邸こちらに来ると言う事になった。

もともと、父も私に話があったのかもしれない。それも…義母の耳に入れたくないような話が。だから、珍しく早い時間に邸に帰って来たのかも。
どんな話の流れになるのか分からないけど…私は前に進むと決めたのだ。言いたい事は言わせてもらう。そう決意した。





夕食は、本邸からも何も連絡がなかったので、予定通り私は別邸で1人で食べた。
そして、私の夕食が終わり一時間程してー

「お嬢様、旦那様がいらっしゃいました。応接室でお待ちでございます。」

「わかったわ。すぐに向かうわ。」





ーコンコンー

「お父様、ミシュエルリーナでございます。」

「入りなさい」

久し振りに聞く父の声は、どことなく優しい感じがした。

「失礼致します。」


入室の許可が出たので、少し緊張しながら応接室の扉を開け、入室してから父に一礼する。顔を上げ前を見ると、父がこちらを見てー

微笑んでる!?

え?何で?え???

「話が…あるのだろう?そこの椅子に座りなさい。」

「…はい…では、失礼します。」

戸惑いながら、指定された椅子に座れば、父がテーブルを挟んだ向かい側の椅子に座った。

「…久し振りだな。まぁ…元気そうで良かった…。で、話とは何だ?…いや…婚約の事か夜会の事についてか?」

「…えっと…」

もう、何に驚けば良いのか解らない。これは、本当に私の父だろうか?元気そうで良かった?そんな私を気遣うような言葉…初めてだ。こんなに柔らかい人だっただろうか?

「はい…婚約の事と夜会の事。それと…これからの事について…です。」

「そうか。では…先ず婚約についてか。ミシュエルリーナお前が婚約者ではないと言う事についてだな?」

「やはり…本当の事なのですね?私ではなく、"レイナイト侯爵令嬢"となのですね?」

「そうだ。正しくは、ミシュエルリーナかエルラインのどちらかーだ。明日の夜会でエスコートする方を婚約者と定める予定だろう。そして、恐らくではあるが…ルティウス殿はエルラインを選ぶだろう。」

「そう…でしょうね」

私が深窓の令嬢だからもあるかも知れないが、今迄贈られて来た物を見て気が付いた。私には全く似合わないプレゼント。ただ、これらをエルラインが身に付けると…似合う物ばかりだった。明るい性格で、小さなお茶会には義母に付き添い顔を出していた。マナーも完璧で頭の回転も早いらしく、次期宰相と期待されるルティウス様の目にも留まったのだろう。次期公爵夫人に相応しいのは、姉ではなく、妹のエルラインの方だと。

「残念ーではないのか?」

「は?」
呆れたような声を思わず出してしまった。

「あ、すみません。残念などとは思っていません。ただ、この婚約の話が決まった時、お父様が私だと言っていたので…。何故私と言ったのか不思議に思って…。」

「あぁ…それは…あの時は…キャスリーンが居たからな。」

「は?」

またー呆れた声が出ちゃったよ!!!
ちょっと意味が分からない。何を言ったら良い?

キャスリーンあれは、おまえに対して対抗心が大きいからな。カーンハイル公爵家嫡男のルティウス殿とお前の婚約が整ったと言えば、あれが勝手に動くだろうと思ったのだ。実際、予想通りの働きをしてくれたがな。」

そう言いながら、右手を口に当てククッと笑った。

「もともとは、カーンハイル公爵向こうから婚約の話を持ち掛けて来たんだ。公爵は…何と言うか…お前の母親…ライラに憧れてたらしくてな。そのライラの娘を自分の息子の嫁にしたかったらしい。ただ、お前はデビューもせず社交もせずの引きこもり。公爵夫人としては問題があるーと、ルティウス殿が反対したんだ。」

おぅ…ルティウス様息子の方がまともな思考の持ち主だったのね…

「笑っちゃう事に、お互いがお互いの意見を変えないから話が進まなくてね。それなら、婚約者を"レイナイト侯爵令嬢"にして、エルラインのデビューの年迄様子をみるって事にしたんだよ。カーンハイル公爵としては、それまでにお前が社交デビューしてくれる事を望んでたけど…こっちにはキャスリーンが居るから無理だよね。」

父が、悪戯っ子の様に嗤う。

「ルティウス殿がエルラインを選ぶのは確実だろう。だから、キャスリーンからの明日の夜会でのお願いを聞いたんだろう。次期公爵夫人として立てるのは…ミシュエルリーナよりエルラインだと…誰の目から見てもそう思うだろう。これは、カーンハイル公爵が何か言ったところで、覆る事はないだろうね。お前が…上級位魔導師だなんて…誰も知らないだろうからね。」


「ーえ!?」

私は目を見開き、父を見るー。

父は…少し寂しそうに目を細め私を見ていた。
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