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第一章
聖女と…
しおりを挟む「ユキ様が、聖女としての力を持っていた。故に、ユキ様が聖女様と認定された。」
休み明けに、瑠璃宮殿にある執務室に向かうと、ギリューが待ち構えていた。
「他に色々話があるから、今から一緒に殿下の執務室に行くぞ!」
と、興奮落ち着かないギリューに引っ張られながら魔導師長の執務室迄やって来た。
「少しはゆっくりできたか?」
「はい。魔導師長のお陰でゆっくりできました。ありがとうございます。」
ー色々あって心労も増えたけど…とは言いませんー
「では、昨日の鑑定の話からー。結果は聞いているな?タナカ ユキ様が聖女であると認定された。魔力も大きく安定している。これからどうするか…考えている間に、この国や大陸の歴史など色々学んでもらうことになった。生活に必要な事や一般常識もだな。異世界とここでは、色んな事が違うだろうからね。」
過去の文献にもあったのだ。異世界とここでは、色んな事が違っているらしい。ここでは当たり前の事でも、彼女達にとっては異様な事である事や、逆もまた然り。それ故に、普通の生活にでさえ支障を来すと。
今迄当たり前だっ事が一気に変わるのだ。大変だろうなと思う。今回は、1人ではないーと言うのは、少しでも救いになるのだろうか?なれば良いなと思う。
「それで、イトウ タクマ殿だが…聖女としての力は持っていなかった。だが、本人の自覚は無いが魔力は持っていた。それと、身体能力が異様に高くなっているようだ。それと、2人ともに女神の加護がついているそうだ。」
ー良かったー
加護がついていると言う事は、今回は異世界から2人も召還され驚いたが、これも女神様の意向通りだと言う事になる。
2人ともに魔力も高いと言う事で、2人とも魔法の訓練をする事になった。タクマ様の方は、騎士にも興味があるようで、騎士の訓練の見学、適正があるかどうかみてみると言う。
「魔法の訓練に関してだが、当初の予定通りギリューに任せる。ただ、今回は2人と言う事で、訓練の内容によっては、ミューかティアナに補佐に入ってもらう。そのあたりは、3人で話し合って決めてくれ。」
えー…私、これからも関わっちゃうのかぁ…。ちょっと心配だな。次会った時もあんな風になったら…。その時は魔導師長に正直に言うしかないよね。自分でもどうしようもないのだから。
それに…魔方陣の方に集中したいしね。
「取り敢えず、今日の午後に、私とミューとティアナの3人で、改めてユキ様とタクマ様に挨拶に行くぞ!」
「今日!?」
ギリューの言葉に驚く。
「ん?何か不都合があるのか?」
「ーいえ、何も無いですー」
心の準備が出来てないだけですー何て言えないよねー。
ーチクリーと胸が痛んだ気がしたが、気付かないふりをしたー。
「2人も召還されてたのね!聞いた時はビックリしたわ!その上、私も指導で会ったりお話できたりするなんて!嬉しい限りだわ!」
ティアナが目を輝かせながらはしゃいでいる。昼からの挨拶を前に、ティアナと一緒にご飯を食べながらこれからの事を相談する。
「でね、ティアナに…ちょっとお願いがあって…」
どうしたの?とティアナに訊かれ、私は口を開く。
「私、できるなら魔法陣の方に集中したいの。できる限りで良いから、補助はティアナメインでお願いできないかなぁ?」
「勿論大丈夫よ!出来る限りは、私がフォローするから、それは気にしないで!」
嘘ではない。出来れば魔法陣を完成させて、元の世界に還れると言う選択肢を増やしたいーそう思っているから。
あの2人にどう対応していくのか…後で会った時に私がどうなるのか…それからまた、考えればいい。そう自分に言い聞かせながら、ギリューが迎えに来る迄ティアナとお喋りをしていた。
ー天青離宮(聖女様の為の離宮)ー
お茶を兼ねてのご挨拶。今回は、ギリューとティアナと私の3人が、ユキ様とタクマ様のもとへ向かう事になっている。
天青離宮は、空のような美しいブルーを基調とした宮殿である。浄化を意味するセレナイトー聖女様にピッタリだなと思う。離宮全体が清らかな雰囲気で満ちているような感じもする。
「ユキ様、タクマ様。魔導師の方々がお見えになりました。」
案内役の女官が扉をノックし、入室の確認をとる。すると、間を置かず
「お待ちしておりました。」
と、中からサリーが扉を開け、私達を中へと促した。
ギリュー、ティアナ…そして、私の順番で入室した。
「わざわざこちらに来て頂いて…すみません」
ユキ様が申し訳無さそうに言う。
「いえ。こちらがお伺いする事が、本来のかたちですから、お気になさいませんように。」
!!ギリュー様がまともな事言ってるわー!!と、ミューとティアナが心の中で叫んだ。
こちらへーと、サリーに椅子に座るよう促され、3人が椅子についた。
「タクマ様は?」
「少し、散歩をすると言って出て行ってしまって。でも、もうすぐ戻って来るとー」
「遅れてすみません!」
ユキ様が言い掛けた時、テラス側の扉が開き、タクマ様が飛び込んで来た。
ードクンッー
ー!ー
何故?やはり…心臓が嫌な音をたて始める。
前回程震える事はないが…嫌な不快感が体を絡めとるような感覚に襲われる。
一体、どうなってる?フードの奥に顔を隠し、目を瞑り周りに気付かれないように深呼吸をした。
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