初恋の還る路

みん

文字の大きさ
上 下
14 / 105
第一章

聖女と…

しおりを挟む


「ユキ様が、聖女としての力を持っていた。故に、ユキ様が聖女様と認定された。」

休み明けに、瑠璃宮殿にある執務室に向かうと、ギリューが待ち構えていた。

「他に色々話があるから、今から一緒に殿下の執務室に行くぞ!」

と、興奮落ち着かないギリューに引っ張られながら魔導師長の執務室迄やって来た。

「少しはゆっくりできたか?」

「はい。魔導師長のお陰でゆっくりできました。ありがとうございます。」

ー色々あって心労も増えたけど…とは言いませんー

「では、昨日の鑑定の話からー。結果は聞いているな?タナカ  ユキ様が聖女であると認定された。魔力も大きく安定している。これからどうするか…考えている間に、この国や大陸の歴史など色々学んでもらうことになった。生活に必要な事や一般常識もだな。異世界とここでは、色んな事が違うだろうからね。」

過去の文献にもあったのだ。異世界とここでは、色んな事が違っているらしい。ここでは当たり前の事でも、彼女達にとっては異様な事である事や、逆もまた然り。それ故に、普通の生活にでさえ支障を来すと。

今迄当たり前だっ事が一気に変わるのだ。大変だろうなと思う。今回は、1人ではないーと言うのは、少しでも救いになるのだろうか?なれば良いなと思う。

「それで、イトウ  タクマ殿だが…聖女としての力は持っていなかった。だが、本人の自覚は無いが魔力は持っていた。それと、身体能力が異様に高くなっているようだ。それと、2人ともに女神の加護がついているそうだ。」

ー良かったー

加護がついていると言う事は、今回は異世界から2人も召還され驚いたが、これも女神様の意向通りだと言う事になる。

2人ともに魔力も高いと言う事で、2人とも魔法の訓練をする事になった。タクマ様の方は、騎士にも興味があるようで、騎士の訓練の見学、適正があるかどうかみてみると言う。

「魔法の訓練に関してだが、当初の予定通りギリューに任せる。ただ、今回は2人と言う事で、訓練の内容によっては、ミューかティアナに補佐に入ってもらう。そのあたりは、3人で話し合って決めてくれ。」

えー…私、これからも関わっちゃうのかぁ…。ちょっと心配だな。次会った時もあんな風になったら…。その時は魔導師長に正直に言うしかないよね。自分でもどうしようもないのだから。

それに…魔方陣の方に集中したいしね。


「取り敢えず、今日の午後に、私とミューとティアナの3人で、改めてユキ様とタクマ様に挨拶に行くぞ!」

「今日!?」

ギリューの言葉に驚く。

「ん?何か不都合があるのか?」

「ーいえ、何も無いですー」

心の準備が出来てないだけですー何て言えないよねー。

ーチクリーと胸が痛んだ気がしたが、気付かないふりをしたー。









「2人も召還されてたのね!聞いた時はビックリしたわ!その上、私も指導で会ったりお話できたりするなんて!嬉しい限りだわ!」

ティアナが目を輝かせながらはしゃいでいる。昼からの挨拶を前に、ティアナと一緒にご飯を食べながらこれからの事を相談する。


「でね、ティアナに…ちょっとお願いがあって…」

どうしたの?とティアナに訊かれ、私は口を開く。

「私、できるなら魔法陣の方に集中したいの。できる限りで良いから、補助はティアナメインでお願いできないかなぁ?」

「勿論大丈夫よ!出来る限りは、私がフォローするから、それは気にしないで!」

嘘ではない。出来れば魔法陣を完成させて、元の世界に還れると言う選択肢を増やしたいーそう思っているから。

あの2人にどう対応していくのか…後で会った時に私がどうなるのか…それからまた、考えればいい。そう自分に言い聞かせながら、ギリューが迎えに来る迄ティアナとお喋りをしていた。







ー天青離宮(聖女様の為の離宮)ー

お茶を兼ねてのご挨拶。今回は、ギリューとティアナと私の3人が、ユキ様とタクマ様のもとへ向かう事になっている。
天青離宮は、空のような美しいブルーを基調とした宮殿である。浄化を意味するセレナイトー聖女様にピッタリだなと思う。離宮全体が清らかな雰囲気で満ちているような感じもする。


「ユキ様、タクマ様。魔導師の方々がお見えになりました。」

案内役の女官が扉をノックし、入室の確認をとる。すると、間を置かず

「お待ちしておりました。」

と、中からサリーが扉を開け、私達を中へと促した。

ギリュー、ティアナ…そして、私の順番で入室した。

「わざわざこちらに来て頂いて…すみません」

ユキ様が申し訳無さそうに言う。

「いえ。こちらがお伺いする事が、本来のかたちですから、お気になさいませんように。」

!!ギリュー様がまともな事言ってるわー!!と、ミューとティアナが心の中で叫んだ。

こちらへーと、サリーに椅子に座るよう促され、3人が椅子についた。

「タクマ様は?」

「少し、散歩をすると言って出て行ってしまって。でも、もうすぐ戻って来るとー」

「遅れてすみません!」

ユキ様が言い掛けた時、テラス側の扉が開き、タクマ様が飛び込んで来た。

ードクンッー

ー!ー

何故?やはり…心臓が嫌な音をたて始める。

前回程震える事はないが…嫌な不快感が体を絡めとるような感覚に襲われる。

一体、どうなってる?フードの奥に顔を隠し、目を瞑り周りに気付かれないように深呼吸をした。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

異世界からしか開きません

さよ
恋愛
実家に帰省した加七子は家ごと変な空間へ飛ばされた。 開かなかった玄関から現れたボロボロの男の子を助けようとするが、いつの間にか姿が消えている。 こちらからは開けられないのに、なぜか異世界からは開く玄関のドア。そんな家で加七子はひとり暮らしていたのだが……。 異世界に行ったら成長した男の子と再開した。

陛下から一年以内に世継ぎが生まれなければ王子と離縁するように言い渡されました

夢見 歩
恋愛
「そなたが1年以内に懐妊しない場合、 そなたとサミュエルは離縁をし サミュエルは新しい妃を迎えて 世継ぎを作ることとする。」 陛下が夫に出すという条件を 事前に聞かされた事により わたくしの心は粉々に砕けました。 わたくしを愛していないあなたに対して わたくしが出来ることは〇〇だけです…

辺境伯へ嫁ぎます。

アズやっこ
恋愛
私の父、国王陛下から、辺境伯へ嫁げと言われました。 隣国の王子の次は辺境伯ですか… 分かりました。 私は第二王女。所詮国の為の駒でしかないのです。 例え父であっても国王陛下には逆らえません。 辺境伯様… 若くして家督を継がれ、辺境の地を護っています。 本来ならば第一王女のお姉様が嫁ぐはずでした。 辺境伯様も10歳も年下の私を妻として娶らなければいけないなんて可哀想です。 辺境伯様、大丈夫です。私はご迷惑はおかけしません。 それでも、もし、私でも良いのなら…こんな小娘でも良いのなら…貴方を愛しても良いですか?貴方も私を愛してくれますか? そんな望みを抱いてしまいます。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 設定はゆるいです。  (言葉使いなど、優しい目で読んで頂けると幸いです)  ❈ 誤字脱字等教えて頂けると幸いです。  (出来れば望ましいと思う字、文章を教えて頂けると嬉しいです)

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

【完結】記憶が戻ったら〜孤独な妻は英雄夫の変わらぬ溺愛に溶かされる〜

凛蓮月
恋愛
【完全完結しました。ご愛読頂きありがとうございます!】  公爵令嬢カトリーナ・オールディスは、王太子デーヴィドの婚約者であった。  だが、カトリーナを良く思っていなかったデーヴィドは真実の愛を見つけたと言って婚約破棄した上、カトリーナが最も嫌う醜悪伯爵──ディートリヒ・ランゲの元へ嫁げと命令した。  ディートリヒは『救国の英雄』として知られる王国騎士団副団長。だが、顔には数年前の戦で負った大きな傷があった為社交界では『醜悪伯爵』と侮蔑されていた。  嫌がったカトリーナは逃げる途中階段で足を踏み外し転げ落ちる。  ──目覚めたカトリーナは、一切の記憶を失っていた。  王太子命令による望まぬ婚姻ではあったが仲良くするカトリーナとディートリヒ。  カトリーナに想いを寄せていた彼にとってこの婚姻は一生に一度の奇跡だったのだ。 (記憶を取り戻したい) (どうかこのままで……)  だが、それも長くは続かず──。 【HOTランキング1位頂きました。ありがとうございます!】 ※このお話は、以前投稿したものを大幅に加筆修正したものです。 ※中編版、短編版はpixivに移動させています。 ※小説家になろう、ベリーズカフェでも掲載しています。 ※ 魔法等は出てきませんが、作者独自の異世界のお話です。現実世界とは異なります。(異世界語を翻訳しているような感覚です)

そう言うと思ってた

mios
恋愛
公爵令息のアランは馬鹿ではない。ちゃんとわかっていた。自分が夢中になっているアナスタシアが自分をそれほど好きでないことも、自分の婚約者であるカリナが自分を愛していることも。 ※いつものように視点がバラバラします。

処理中です...