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第一章
義母の思惑
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「次の夜会が、エルのデビューとなるのは知っているでしょう?」
義母が言う。
「ええ。知っていますわ。」
ー私の時は何もせず、未だに社交界にデビューしてませんけどねー
笑顔を作りながら、心で毒づく。
「エルには、まだ婚約者も居ないから、その日は旦那様がエスコートをして下さる事になっているの。」
父がねー。子供の為に動くなんて…意外だわー。
「それでね。エスコートはできるけど、お仕事が忙しいようで、ずっと一緒には居られないと言うのよ。それではエルが心配でね。」
あー…何となく分かったわ
「ならば、あなたも一緒に行って、エルの側に居てもらおうかと思ったのよ。それに、あなたが居れば…ルティウス様にも…守ってもらえるでしょう?」
ルティウス様ーそれが本音かー。
ールティウス=カーンハイルー
カーンハイル公爵家嫡男。私の婚約者ー父が決めた名ばかりの婚約者だ。四大公爵家の筆頭でもある。現カーンハイル公爵は宰相を勤め厳格者。国王陛下の信も厚い。国王陛下の幼馴染でもあるらしい。
その嫡男でもあるルティウス様も、次期宰相として、公爵様の元で一年前から宰相補佐として勉強をされている。もともと政略による婚約なので、殆ど顔を合わせる事もない。数ヵ月に一度、花や宝石やアクセサリー等が贈られては来るが…それも最低限の礼儀を通しているだけだろう。アクセサリーなんて…私に合ってる物が贈られた事が無い。いっそ清々しくて笑える位に。私の髪や瞳の色なんて知らないのではないだろうか?別にいいけどー
とにかく、私からしたらそんな人でも次期公爵、宰相が決定されている人物だ。自分の大事な娘の側に置くには丁度良いのだろう。これを機に、エルラインと関係を持たせようとしてるのだろう。
「私は構いませんが…カーンハイル様がどうおっしゃるか…」
「それは大丈夫です。ルティウス様にお伺いの手紙を出したの。そうしたら、ルティウス様も公爵様も許可して下さったわ」
ー私よりも先に?呆れるわ…別に良いけどー
「お母様…少しおかしくないですか?何故、お義姉様への確認が今なのですか?こんな急なお話になって!お義姉様に迷惑が掛かるではありませんか!」
ん?何故エルラインが怒ってるの?逆に、エルラインにとっては良い話だと思うけど…
「ミシュエルリーナなら大丈夫よ?だって…深窓の令嬢らしく別邸で過ごしてるだけだもの。何も迷惑にはならないわ」
ー役立たずの令嬢なんだから、こうゆう時に役に立ってもらわなきゃねー
副声音が聞こえました。
「お母様!」
「ーエル。部屋に戻っても良いのよ?」
義母に言い返そうと声を上げたエルラインに、キャスリーンは笑顔でそう告げた。エルラインがキュッと唇を噛み締めて黙り込む。
「ーいえ…何もありませんし、部屋にもまだ帰りません!」
どうゆう事?義母が私を嫌っていてエルラインを可愛がっているのは知っている。でもエルラインはどうだろう?エルラインが私を嫌っているようには見えない。寧ろ、慕われてるような感じもするがーとにかく、今はー
「分かりました。カーンハイル様と公爵様が許可されているならば、私に異存はありません。」
その様に準備します。と言うと、義母は笑顔で頷いた。
もう話す事は無いとばかりに、すぐに義母は退室して行った。そして、退室した義母を見送り、私も別邸に戻るべくエルラインに声を掛ける
「エルライン、次の夜会では宜しくね。では、失礼するわね」
リザが応接室の扉を開け退室しようとすると
「お義姉様!もう別邸にお戻りになってしまうのですか?」
「ーええ。本邸に居る必要がないから…」
眉をハの字にして泣きそうな顔をしてこちらを見る。
えー…私が苛めてるみたいじゃない!
「あの…また会えますよね?えっと…そう!夜会!夜会には、ここから一緒に行って頂けますか?お義姉様と一緒なら、私も心強いのですが」
「…えっと…そう…ね。お義母様やカーンハイル様が許可して頂けたらね。」
「!はい!私から必ずお願いしておきます!」
もー、訳が分からない。とにかくエルラインがとっても嬉しそうに私を見てくるのだ。ここまで来たら可愛いしかない。
義母とエルラインの温度差に困惑しつつ、私はリザと本邸を後にした。
「…リザ…そのー…エルラインって…」
「はい、エルライン様は、お嬢様の事が大好きです。えぇ。そうです。エルライン様の自室にお嬢様の姿絵を飾ってらっしゃる位大好きですね。」
はい、まさかの全肯定でした。
「何で!?」
思わずリザに素で突っ込んだ。
「何でと言われても分かりませんが…。エルライン様とお嬢様が初めて顔を合わせた時から、エルライン様はお嬢様の事を慕っておりましたよ?何でも、お嬢様はエルライン様にとって素敵なお姫様なんだそうです。
見た目は勿論ですが、お嬢様の立ち居振舞いの美しさも語っておりましたよ?普段、なかなか会えないと、いつも侍女達に愚痴ってるとか。
それでも、お嬢様に対する自分の母親の態度も知っているので、なかなか表だって口には出されてないようですが。」
義母に嫌われてるのだ。エルラインからも良い感情を持たれてはいないと思っていた。何故だろうか?それでも、好意を寄せられるのは嫌ではない。
機会があるのならば、ゆっくりエルラインとお茶でもしながら話すのも良いかも知れない。そう思いながら、次の夜会の準備を始めた。
義母が言う。
「ええ。知っていますわ。」
ー私の時は何もせず、未だに社交界にデビューしてませんけどねー
笑顔を作りながら、心で毒づく。
「エルには、まだ婚約者も居ないから、その日は旦那様がエスコートをして下さる事になっているの。」
父がねー。子供の為に動くなんて…意外だわー。
「それでね。エスコートはできるけど、お仕事が忙しいようで、ずっと一緒には居られないと言うのよ。それではエルが心配でね。」
あー…何となく分かったわ
「ならば、あなたも一緒に行って、エルの側に居てもらおうかと思ったのよ。それに、あなたが居れば…ルティウス様にも…守ってもらえるでしょう?」
ルティウス様ーそれが本音かー。
ールティウス=カーンハイルー
カーンハイル公爵家嫡男。私の婚約者ー父が決めた名ばかりの婚約者だ。四大公爵家の筆頭でもある。現カーンハイル公爵は宰相を勤め厳格者。国王陛下の信も厚い。国王陛下の幼馴染でもあるらしい。
その嫡男でもあるルティウス様も、次期宰相として、公爵様の元で一年前から宰相補佐として勉強をされている。もともと政略による婚約なので、殆ど顔を合わせる事もない。数ヵ月に一度、花や宝石やアクセサリー等が贈られては来るが…それも最低限の礼儀を通しているだけだろう。アクセサリーなんて…私に合ってる物が贈られた事が無い。いっそ清々しくて笑える位に。私の髪や瞳の色なんて知らないのではないだろうか?別にいいけどー
とにかく、私からしたらそんな人でも次期公爵、宰相が決定されている人物だ。自分の大事な娘の側に置くには丁度良いのだろう。これを機に、エルラインと関係を持たせようとしてるのだろう。
「私は構いませんが…カーンハイル様がどうおっしゃるか…」
「それは大丈夫です。ルティウス様にお伺いの手紙を出したの。そうしたら、ルティウス様も公爵様も許可して下さったわ」
ー私よりも先に?呆れるわ…別に良いけどー
「お母様…少しおかしくないですか?何故、お義姉様への確認が今なのですか?こんな急なお話になって!お義姉様に迷惑が掛かるではありませんか!」
ん?何故エルラインが怒ってるの?逆に、エルラインにとっては良い話だと思うけど…
「ミシュエルリーナなら大丈夫よ?だって…深窓の令嬢らしく別邸で過ごしてるだけだもの。何も迷惑にはならないわ」
ー役立たずの令嬢なんだから、こうゆう時に役に立ってもらわなきゃねー
副声音が聞こえました。
「お母様!」
「ーエル。部屋に戻っても良いのよ?」
義母に言い返そうと声を上げたエルラインに、キャスリーンは笑顔でそう告げた。エルラインがキュッと唇を噛み締めて黙り込む。
「ーいえ…何もありませんし、部屋にもまだ帰りません!」
どうゆう事?義母が私を嫌っていてエルラインを可愛がっているのは知っている。でもエルラインはどうだろう?エルラインが私を嫌っているようには見えない。寧ろ、慕われてるような感じもするがーとにかく、今はー
「分かりました。カーンハイル様と公爵様が許可されているならば、私に異存はありません。」
その様に準備します。と言うと、義母は笑顔で頷いた。
もう話す事は無いとばかりに、すぐに義母は退室して行った。そして、退室した義母を見送り、私も別邸に戻るべくエルラインに声を掛ける
「エルライン、次の夜会では宜しくね。では、失礼するわね」
リザが応接室の扉を開け退室しようとすると
「お義姉様!もう別邸にお戻りになってしまうのですか?」
「ーええ。本邸に居る必要がないから…」
眉をハの字にして泣きそうな顔をしてこちらを見る。
えー…私が苛めてるみたいじゃない!
「あの…また会えますよね?えっと…そう!夜会!夜会には、ここから一緒に行って頂けますか?お義姉様と一緒なら、私も心強いのですが」
「…えっと…そう…ね。お義母様やカーンハイル様が許可して頂けたらね。」
「!はい!私から必ずお願いしておきます!」
もー、訳が分からない。とにかくエルラインがとっても嬉しそうに私を見てくるのだ。ここまで来たら可愛いしかない。
義母とエルラインの温度差に困惑しつつ、私はリザと本邸を後にした。
「…リザ…そのー…エルラインって…」
「はい、エルライン様は、お嬢様の事が大好きです。えぇ。そうです。エルライン様の自室にお嬢様の姿絵を飾ってらっしゃる位大好きですね。」
はい、まさかの全肯定でした。
「何で!?」
思わずリザに素で突っ込んだ。
「何でと言われても分かりませんが…。エルライン様とお嬢様が初めて顔を合わせた時から、エルライン様はお嬢様の事を慕っておりましたよ?何でも、お嬢様はエルライン様にとって素敵なお姫様なんだそうです。
見た目は勿論ですが、お嬢様の立ち居振舞いの美しさも語っておりましたよ?普段、なかなか会えないと、いつも侍女達に愚痴ってるとか。
それでも、お嬢様に対する自分の母親の態度も知っているので、なかなか表だって口には出されてないようですが。」
義母に嫌われてるのだ。エルラインからも良い感情を持たれてはいないと思っていた。何故だろうか?それでも、好意を寄せられるのは嫌ではない。
機会があるのならば、ゆっくりエルラインとお茶でもしながら話すのも良いかも知れない。そう思いながら、次の夜会の準備を始めた。
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