初恋の還る路

みん

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第一章

対面

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あれから、女性が目覚めたのは翌日の朝だった。目覚めた時は、少し取り乱していたようだが、目覚めたと知らせを聞いた男性がやって来ると落ち着き、2人で一緒に朝食を取ったそうだ。
それから、もう一度医師に2人の体調を確認してもらい、大丈夫だろうと言う結果が出た。

そして、その日の昼過ぎ。ティータイムを兼ねて話をする流れとなった。

その話し合いをするのは…

今回の聖女召喚の神託を受けた神官長と、聖女様のお世話係の第二王子と、魔導師のトップである魔導師長と、その補佐役として…

「何故私じゃないのですかーー??」

ギリュー様が泣きながら訴える。うん。本当に泣いてます。

「お前が居ると進む話も進まなくなる可能性があるからだ。別に、今後一切関わるなとは言っていない。
今日は、ただ単にどうしてこんな事になっているのか説明すると共に、今後の事もしっかり話をするだけだ。
お前が気になるのは、今回召喚された者達の魔力だろう?それは、また後々の話だ。その時は配慮してやるから」

王弟殿下が、泣いているギリューを宥める。

「それに、男ばかりではあちらを威圧してしまうだろう?いざと言う時、同性であるミューが居ると助かるだろう。」

「えー…と言う事は、話し合い中は、フードは禁止ですか?」

「誠意を見せる為なら仕方ないだろう」

はい。そんなに睨まないで下さい。魔導師長が睨むと恐いんですよ!

「とにかく、これはルドヴィル王子が決めた事だ。今日は、私とルドヴィル王子と神官長とミューの4人で会う。」



ギリューの恨めしそうな顔を横目で見つつ、話をする為の部屋までやって来た。

ここはアルム王国の王宮にある、第二王子の執務室である。黒を基調としたシンプルな家具で統一されている。
大きな執務卓の後ろには、大きなガラスの扉があり、テラスに出られるようになっている。
執務卓を挟んで反対側には長方形のテーブルと、それを囲むように三人掛けのソファーと一人掛けのソファーがそれぞれ向かい合わせに配置されている。
第二王子が執務卓側の一人掛けのソファー、第二王子の左側の三人掛けソファーに神官長と魔導師長が座り、私は取り敢えず魔導師長の斜め後ろ側に立った。

召喚された2人ー異世界人ーが来る迄、これからの話の流れを確認し合う。

コンコンー

「サリーでございます。お二方をお連れ致しました。宜しいでしょうか?」

第二王子が私達3人に目をやり、ゆっくりと頷き
「入ってくれ」

「失礼致します」

サリーが扉を開けると、召喚された異世界人2人が入室して来た。

第二王子がサッと立ち上がると共に、2人も立ち上がり出迎える。

「本来であれば、こちら側から出向かなければいけないのですが…来て頂いて申し訳ない。そして、来て頂きありがとうございます」

第二王子が当たり前のように自然に頭を下げる。
「いえ…大丈夫です」
と、男性も申し訳なさそうな声で答えた。

私はフードを目深に被っているので、異世界人2人がどんな顔をしているかが、いまいちよく分からない。声のトーンからして、怒ってはいないようだ。

「取り敢えずは、こちらに来て座って下さい」

2人が移動して、魔導師長と神官長の向かい側の三人掛けソファーに座った。
と同時に、魔導師長がチラッと私の方に視線を向ける。

ー分かってます。フードを外せって事ですね?でもねー…王子にはまだ何も言われてないしなーと思い、魔導師長の視線に気付かないフリをしてみたー

「まず、時間の都合をつけて頂き、感謝します。昨日言ったように、今回の事ーどうしてこうなったのか、説明させて頂きたいと思います。
その前に、自己紹介からしましょうか。
私は、このアルム王国第二王子、ルドヴィル=ファルカ=アルムです。」

第二王子が、私達に目配せする。

「私は魔導師長のハルシオン=サルヴァ=アルムと言います」

「私は、この国の神官の長を勤めております。サヴァン=ローニーと言います」

「私は魔導師長の部下の一人。魔導師のミューと言います」

まだ、フードを外せと言われていないので、目深に被ったまま挨拶をした。

「小柄だなと思ってましたが…女性…の方ですか?」
と、男性が声を掛けた。

「ミュー…」

ぐぅっ…魔導師長の威圧がヤバい(汗)王子も嗤ってるし…仕方無いので、ソロソロと手を動かしてフードを外した。

「はい。正真正銘の女です。ご無礼、失礼致しましたー」

フードを外し一礼して顔を上げ、前に居る異世界人2人に目を向けた


ドクンッ


と、また、心臓が嫌な音をたてた。

「あ、いえ!変な意味で言った訳じゃないんです!すみません!」
男性は、焦ったように謝って来た。

「あなたは悪くありませんよ。ミューが失礼な態度をとっていたのが悪いのです。こちらこそ、申し訳ない。」

王子もしれっとミューを注意した。魔導師長も呆れ顔でもう一度ミューに目をやり…

「ミュー?どうした?」

「…どうしたとは?」

解っている。おそらく、顔色が悪いのだろう。

「フードを外して緊張してるのか?」

緊張じゃない。何か分からないが、胸がざわついて落ち着かない。相変わらず心臓がドクドクと嫌な音を立てている。意識していなければ手足が震えそうにる。

「あのー。こっちは気にしないので、フードを被ってもらっても構いませんよ?」

と、女性が口を開いた。ではーと言い、遠慮なくフードを被り直した。ついでに、第二王子に座るようにと促されたので、第二王子の反対側の一人用のソファーに腰掛けた。

「あ、すみません。自己紹介でしたね。
俺はー俺の名前は伊藤琢磨です。"日本"から来ました。」

ーイトウタクマー

ドクンッ

「私の名前は、田中雪です。同じく、日本から…来ました。」

ータナカユキー

ドクンッドクンッ

私の心臓が、悲鳴をあげそあうになったー
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