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「アシェル、分かっていると思うけれど、久し振りの2人きりだからと言って、羽目を外したりしないようになさい。」
「分かっていますよ、母上。無茶はしません。」
「“無茶は”─と、強調する意味は…何かあるのかしら?」
「母上の気にし過ぎなだけでは?」
「エヴィ、このプリンは新作だそうだ。食べなさい。」
「お義父様、ありがとうございます。あ、お義父様、このクッキーも美味しかったので、お義父様も食べてみて下さい。」
「ありがとう、エヴィ。」
はい。ここは、国王両陛下のプライベートルーム。そこで、今日も4人でお茶をしながらお喋りをしている。
これまたいつも通り、本気王妃VS王太子の隣で、国王と私はお菓子を食べている。そして、時折、お義父様が私の頭を撫でてくれたりする。私も子供を生んで一児の母になったけど、お義父様は相変わらず私をヨシヨシしてくれる。
『子供を生もうが、孫ができようが、エヴィが私の可愛い娘である事には変わりないからな。エヴィは……癒しだからな……』
と、お義父様から言われた時は、本当に嬉しかった。実の両親には恵まれなかったけど、こんな素敵な義両親ができて、私は幸せ者だと思う。これは、アシェルには感謝だ。
私が妊娠した時は大変だった。
何故か、1週間毎にお義父様からクッションをプレゼントされるようになり、王太子宮から本殿へ移動するとなれば、アシェルがやって来てお姫様抱っこで移動させられ、城内にいる人達からは微笑ましい目で見送られた。「庭園に行きたい」と言えば、勿論、アシェルのお姫様抱っこで移動し、庭園のガゼボでお茶をしようものなら、「体が冷えてはいけない」と言われ、アシェルの膝の上に座らされた。
ーどんな羞恥プレイなの!?ー
と、恥ずかしさのあまり、顔を隠すようにアシェルの胸に顔を埋めれば、「エヴィが可愛い」と言って、更に構い倒され───
「アシェル、お前は“程々”と言う言葉を覚えなさい。妊娠は病気ではないの。妊婦もね、無理は駄目だけれど、体を動かす事は必要なのよ。恥ずかしがっているエヴィは可愛いけど、エヴィにストレスを掛けるのは止めなさい!」
一部変な発言があったけど、お義母様の言葉はありがたかった。
「それと、あなた、一体エヴィにどれだけクッションを贈るつもりなの?もこもこに囲まれたエヴィは可愛いけれど、エヴィが硬い椅子に座る事になっても、5つぐらいあれば十分よ!」
これまた、一部変な発言があったけど、クッション20個で何とか留める事ができた。5つでも多いけど…。
お義父様からは「エヴィ、すまない。」と威厳たっぷりの国王然り─とは違い、普通の父親の様にシュン─とした顔で謝られた。普段のお義父様は、どちらかと言うと可愛らしい人だ。
「そんな事を言う母上も、まだ男の子か女の子かも分からないのに、大量の子供服を作らせてますよね?」
「あら、それは、必ず必要になる物だから、全く問題無い事よ?それに、基本は白で作らせているから、性別なんて関係無いわ。」
義母とアシェルは腹黒なので、決してどちらも折れる事はない。いつも、最終的には引き分けたまま終わっている。それでも、険悪にはならない。お互い、言い合ってスッキリしているのだろうと思う。信頼し合っているとも言うのかな?ある意味、羨ましい親子関係だなぁ─と思う。
そんな大変な妊婦生活を過ごし、生まれて来たのは男の子─王子だった。アシェルと同じシルバーブロンドの髪に、私と同じ琥珀色の瞳をしている。
王子の誕生には、国中がお祭りムードに湧き上がり、他国からの観光客も増えた。有り難い事に、友好国からのお祝いの品もたくさん贈られて来た。
その中には──
「あら、これ、多分…リンディからですよ。」
と、私の専属侍女をしてくれている、闇の精霊ライラが手にしていたのは、ゲルダン王国からの贈答品のうちの一つだった。
リンディ─
私の双子の妹で、光の魔力持ち。今は、ゲルダン王国の子爵夫人で、ゲルダン王国辺境地の鉱山で働く人達に癒やしを施している。そんなリンディも、私よりも1年程早く子供を生んでいる一児の母だ。
ちなみに、私の大好きなジェマお姉様も、1年程前に女の子を生んでいる。これがまた、お姉様に似た可愛い子で……将来は美人になるしかない。
「「変な虫がつかないようにしよう(しましょう)!」」
と、ここで初めて、義兄となったブレイン=アンカーソン様と意気投合した──と思う。
話は戻って──
リンディからだと言う贈り物は、レースで編み上げられたブランケットだった。
「このブランケットには、癒しの魔法が掛けられていて、その魔力が、リンディのモノだから…」
闇の精霊のライラが言うなら、そうなんだろう。
「リンディ……」
ーそう言えば、お姉様の時も、これに似たブランケットが贈られて来てなかったっけ?ー
その時は、“フロイド=ブルーム”からの贈り物だった。
「………」
あれもきっと、リンディからだったのだ。
その話を、その日の夜、寝室にやって来たアシェルにだけ伝えていた。
産後1年は、王太子妃の公務も外交の仕事もお休みとなっていた。お陰で、1年は我が子とゆっくり過ごす事ができた。
そして、1年半経った今、外交の仕事として、ゲルダン王国に視察に行く事になった。日程は1週間。
視察に行くのは、王太子と王太子妃の2人と外交官2人。我が子であるクラウスはお留守番だ。王族のルールとして、国外に出る時は、余程の理由がない限り、王位第一継承者と第二継承者が同行する事は禁止されているそうだ。
初めて長期間離れる事になり、心配や不安もあったけど、ライラと義父母が居てくれると言う事で、安心して行く事ができそうだ。
そして、その同行者の中には、ゲルダン王国の魔石の輸入を取り仕切っているハザルバート商会の嫡子であり私の親友のメリッサも居る。勿論、私の護衛には、私の親友のルイーズも居る。
「視察と言っても、友好の為の挨拶周りみたいなものだから、気楽に行ってらっしゃい。」
とお義母様に言われた事もあり、久し振りの外交を兼ねた公務ではあったけど、あまり緊張し過ぎる事なくその日を迎える事ができた。
久し振りのゲルダン王国は、以前来た時よりも国中が活気に溢れていた。
我が国と貿易を行っている事で、国中に食物が行き渡り、お金も回るようになり、平民の貧富の差が少なくなっているとの事だった。
そうして、観光を兼ねた視察も残すところ1か所となった。最後に向かったのは───
「アラバスティア王国王太子様、王太子妃様、この様な辺境地迄来ていただき、ありがとうございます。」
リンディの旦那であるネッドが治めている領にある鉱山だった。
ネッドに案内されながら鉱山を見て回り、その最後に案内されたのは休憩室兼救護室だった。勿論、そこには
「王太子様、王太子妃様……お久し振りでございます。」
以前よりも柔らかい雰囲気のリンディが居た。
この日は、そのまま子爵邸に泊まる事になっていた為、リンディと一緒に邸に戻り、ゲルダン国王からの差し入れもあり、結構な豪華な食事が出された。それから、アシェルをはじめ男性陣はアルコールを飲み始め、私達女性陣はサロンへと移動した─と言っても、そこに移動したのは、私とリンディと──
「遅れてしまったわね。」
と、転移魔法でやって来たジェマお姉様だけだった。
「可愛い…リンディにそっくり…だから、エヴィにも似てるわね。名前は何て言うの?」
「エリーよ。」
すやすやとベッドに眠っているのは、リンディの子で、エリー。
ジェマお姉様の子はレティシア。
我が子はクラウス。
レティシアもクラウスも連れて来る事はできなかったけど、これから先、いつか会えたらなぁ─と思う。
姉妹3人だけでお茶をする─なんて…初めてじゃないだろうか?因みに、これは、アシェルの計らいだ。
『一度、姉妹3人でゆっくり話してみたら?ブランケットのお礼もしたいだろう?』
ーアシェルにはまた、お礼をしないとねー
「リンディ、ブランケットありがとう。あのブランケットのお陰で、クラウスも病気知らずで元気に育ってるの。」
「私からも…リンディ、ありがとう。あのブランケット、レティのお気に入りで、ずっと使っているの。勿論、レティも病気知らずで元気に育てるわ。」
「──なっ……私じゃ…」
「“私じゃない”なんて言わせないわよ?アラバスティアの優秀な魔道士が、ブランケットに掛けられた魔力はリンディのモノだって認めているんだから。」
ー本当は闇の精霊だけどー
「なっ………バレないと思ったのに……私からだと分かったら、受け取ってくれないと思って……でも…使ってくれて嬉しい……ありがとう。」
「「………」」
本当に、リンディは変わった。
こうやって、姉妹3人で穏やかに向き合う日が来るとは思わなかった。
「使わない……訳ないでしょう?リンディは……私の妹なんだから。」
「そうよ、リンディ。住んでいる国は違うけど、いつでも遊びに来てね?」
「………ありがとう……エヴィ、ジェマお姉様………」
3人でちょっぴり泣いた後、育児の話やお互いの子供自慢をした後………軽ーく旦那の愚痴をこぼし合った事は、3人だけの秘密だ。
一頻り語り合った後、ジェマお姉様はアシェルの計らいで極秘で来ていた為、また、極秘のうちに転移魔法でアラバスティアへと帰って行き、私は今夜泊まる部屋へと戻って来た。
「姉妹3人でのお茶は、楽しめたか?」
「アシェル!」
その部屋には、既に入浴も終えたアシェルが、ソファーに座ってお茶を飲んでいた。
「アシェル、本当にありがとう。」
アシェルにギュウッと抱きついてお礼を言う。
「こんな日が来るなんて…思わなかった…本当に…嬉しい…ありがとう、アシェル!アラバスティアに帰ったら、何かお礼を───」
と、アシェルの顔を見上げてハッとする。
ーヤバいー
アシェルが、久し振りに腹黒爽やか笑顔になっている。そろそろと、アシェルの胸に両手をついて距離をとろうとして───できなかった。
「何処に行くんだ?」
「えっと……お風呂?かな?」
「お風呂は、後で良いんじゃないか?」
ー“何の後ですか!?”とは訊いてはいけないー
「アシェル、ここは───」
「大丈夫だ。ネッドに、このフロアから人払いをさせているから。」
“フロアから人払い”
ー準備が……完璧過ぎませんか?腹黒過ぎませんか?“いかにも”で、恥ずかし過ぎませんか?ー
『アシェル、分かっていると思うけれど、久し振りの2人きりだからと言って、羽目を外したりしないようになさい。』
ーお義母様が言っていた事は……この事だったのかー
そう気付いたのは、アシェルに散々攻め立てられて意識を失う直前だった。
❋リクエストからの、姉妹再会編でした。ありがとうございました。他のリクエストも、可能な限り頑張ります。気長に待っていただけると幸いです❋
✧*。(๑•̀д•́๑)و✧*。
「分かっていますよ、母上。無茶はしません。」
「“無茶は”─と、強調する意味は…何かあるのかしら?」
「母上の気にし過ぎなだけでは?」
「エヴィ、このプリンは新作だそうだ。食べなさい。」
「お義父様、ありがとうございます。あ、お義父様、このクッキーも美味しかったので、お義父様も食べてみて下さい。」
「ありがとう、エヴィ。」
はい。ここは、国王両陛下のプライベートルーム。そこで、今日も4人でお茶をしながらお喋りをしている。
これまたいつも通り、本気王妃VS王太子の隣で、国王と私はお菓子を食べている。そして、時折、お義父様が私の頭を撫でてくれたりする。私も子供を生んで一児の母になったけど、お義父様は相変わらず私をヨシヨシしてくれる。
『子供を生もうが、孫ができようが、エヴィが私の可愛い娘である事には変わりないからな。エヴィは……癒しだからな……』
と、お義父様から言われた時は、本当に嬉しかった。実の両親には恵まれなかったけど、こんな素敵な義両親ができて、私は幸せ者だと思う。これは、アシェルには感謝だ。
私が妊娠した時は大変だった。
何故か、1週間毎にお義父様からクッションをプレゼントされるようになり、王太子宮から本殿へ移動するとなれば、アシェルがやって来てお姫様抱っこで移動させられ、城内にいる人達からは微笑ましい目で見送られた。「庭園に行きたい」と言えば、勿論、アシェルのお姫様抱っこで移動し、庭園のガゼボでお茶をしようものなら、「体が冷えてはいけない」と言われ、アシェルの膝の上に座らされた。
ーどんな羞恥プレイなの!?ー
と、恥ずかしさのあまり、顔を隠すようにアシェルの胸に顔を埋めれば、「エヴィが可愛い」と言って、更に構い倒され───
「アシェル、お前は“程々”と言う言葉を覚えなさい。妊娠は病気ではないの。妊婦もね、無理は駄目だけれど、体を動かす事は必要なのよ。恥ずかしがっているエヴィは可愛いけど、エヴィにストレスを掛けるのは止めなさい!」
一部変な発言があったけど、お義母様の言葉はありがたかった。
「それと、あなた、一体エヴィにどれだけクッションを贈るつもりなの?もこもこに囲まれたエヴィは可愛いけれど、エヴィが硬い椅子に座る事になっても、5つぐらいあれば十分よ!」
これまた、一部変な発言があったけど、クッション20個で何とか留める事ができた。5つでも多いけど…。
お義父様からは「エヴィ、すまない。」と威厳たっぷりの国王然り─とは違い、普通の父親の様にシュン─とした顔で謝られた。普段のお義父様は、どちらかと言うと可愛らしい人だ。
「そんな事を言う母上も、まだ男の子か女の子かも分からないのに、大量の子供服を作らせてますよね?」
「あら、それは、必ず必要になる物だから、全く問題無い事よ?それに、基本は白で作らせているから、性別なんて関係無いわ。」
義母とアシェルは腹黒なので、決してどちらも折れる事はない。いつも、最終的には引き分けたまま終わっている。それでも、険悪にはならない。お互い、言い合ってスッキリしているのだろうと思う。信頼し合っているとも言うのかな?ある意味、羨ましい親子関係だなぁ─と思う。
そんな大変な妊婦生活を過ごし、生まれて来たのは男の子─王子だった。アシェルと同じシルバーブロンドの髪に、私と同じ琥珀色の瞳をしている。
王子の誕生には、国中がお祭りムードに湧き上がり、他国からの観光客も増えた。有り難い事に、友好国からのお祝いの品もたくさん贈られて来た。
その中には──
「あら、これ、多分…リンディからですよ。」
と、私の専属侍女をしてくれている、闇の精霊ライラが手にしていたのは、ゲルダン王国からの贈答品のうちの一つだった。
リンディ─
私の双子の妹で、光の魔力持ち。今は、ゲルダン王国の子爵夫人で、ゲルダン王国辺境地の鉱山で働く人達に癒やしを施している。そんなリンディも、私よりも1年程早く子供を生んでいる一児の母だ。
ちなみに、私の大好きなジェマお姉様も、1年程前に女の子を生んでいる。これがまた、お姉様に似た可愛い子で……将来は美人になるしかない。
「「変な虫がつかないようにしよう(しましょう)!」」
と、ここで初めて、義兄となったブレイン=アンカーソン様と意気投合した──と思う。
話は戻って──
リンディからだと言う贈り物は、レースで編み上げられたブランケットだった。
「このブランケットには、癒しの魔法が掛けられていて、その魔力が、リンディのモノだから…」
闇の精霊のライラが言うなら、そうなんだろう。
「リンディ……」
ーそう言えば、お姉様の時も、これに似たブランケットが贈られて来てなかったっけ?ー
その時は、“フロイド=ブルーム”からの贈り物だった。
「………」
あれもきっと、リンディからだったのだ。
その話を、その日の夜、寝室にやって来たアシェルにだけ伝えていた。
産後1年は、王太子妃の公務も外交の仕事もお休みとなっていた。お陰で、1年は我が子とゆっくり過ごす事ができた。
そして、1年半経った今、外交の仕事として、ゲルダン王国に視察に行く事になった。日程は1週間。
視察に行くのは、王太子と王太子妃の2人と外交官2人。我が子であるクラウスはお留守番だ。王族のルールとして、国外に出る時は、余程の理由がない限り、王位第一継承者と第二継承者が同行する事は禁止されているそうだ。
初めて長期間離れる事になり、心配や不安もあったけど、ライラと義父母が居てくれると言う事で、安心して行く事ができそうだ。
そして、その同行者の中には、ゲルダン王国の魔石の輸入を取り仕切っているハザルバート商会の嫡子であり私の親友のメリッサも居る。勿論、私の護衛には、私の親友のルイーズも居る。
「視察と言っても、友好の為の挨拶周りみたいなものだから、気楽に行ってらっしゃい。」
とお義母様に言われた事もあり、久し振りの外交を兼ねた公務ではあったけど、あまり緊張し過ぎる事なくその日を迎える事ができた。
久し振りのゲルダン王国は、以前来た時よりも国中が活気に溢れていた。
我が国と貿易を行っている事で、国中に食物が行き渡り、お金も回るようになり、平民の貧富の差が少なくなっているとの事だった。
そうして、観光を兼ねた視察も残すところ1か所となった。最後に向かったのは───
「アラバスティア王国王太子様、王太子妃様、この様な辺境地迄来ていただき、ありがとうございます。」
リンディの旦那であるネッドが治めている領にある鉱山だった。
ネッドに案内されながら鉱山を見て回り、その最後に案内されたのは休憩室兼救護室だった。勿論、そこには
「王太子様、王太子妃様……お久し振りでございます。」
以前よりも柔らかい雰囲気のリンディが居た。
この日は、そのまま子爵邸に泊まる事になっていた為、リンディと一緒に邸に戻り、ゲルダン国王からの差し入れもあり、結構な豪華な食事が出された。それから、アシェルをはじめ男性陣はアルコールを飲み始め、私達女性陣はサロンへと移動した─と言っても、そこに移動したのは、私とリンディと──
「遅れてしまったわね。」
と、転移魔法でやって来たジェマお姉様だけだった。
「可愛い…リンディにそっくり…だから、エヴィにも似てるわね。名前は何て言うの?」
「エリーよ。」
すやすやとベッドに眠っているのは、リンディの子で、エリー。
ジェマお姉様の子はレティシア。
我が子はクラウス。
レティシアもクラウスも連れて来る事はできなかったけど、これから先、いつか会えたらなぁ─と思う。
姉妹3人だけでお茶をする─なんて…初めてじゃないだろうか?因みに、これは、アシェルの計らいだ。
『一度、姉妹3人でゆっくり話してみたら?ブランケットのお礼もしたいだろう?』
ーアシェルにはまた、お礼をしないとねー
「リンディ、ブランケットありがとう。あのブランケットのお陰で、クラウスも病気知らずで元気に育ってるの。」
「私からも…リンディ、ありがとう。あのブランケット、レティのお気に入りで、ずっと使っているの。勿論、レティも病気知らずで元気に育てるわ。」
「──なっ……私じゃ…」
「“私じゃない”なんて言わせないわよ?アラバスティアの優秀な魔道士が、ブランケットに掛けられた魔力はリンディのモノだって認めているんだから。」
ー本当は闇の精霊だけどー
「なっ………バレないと思ったのに……私からだと分かったら、受け取ってくれないと思って……でも…使ってくれて嬉しい……ありがとう。」
「「………」」
本当に、リンディは変わった。
こうやって、姉妹3人で穏やかに向き合う日が来るとは思わなかった。
「使わない……訳ないでしょう?リンディは……私の妹なんだから。」
「そうよ、リンディ。住んでいる国は違うけど、いつでも遊びに来てね?」
「………ありがとう……エヴィ、ジェマお姉様………」
3人でちょっぴり泣いた後、育児の話やお互いの子供自慢をした後………軽ーく旦那の愚痴をこぼし合った事は、3人だけの秘密だ。
一頻り語り合った後、ジェマお姉様はアシェルの計らいで極秘で来ていた為、また、極秘のうちに転移魔法でアラバスティアへと帰って行き、私は今夜泊まる部屋へと戻って来た。
「姉妹3人でのお茶は、楽しめたか?」
「アシェル!」
その部屋には、既に入浴も終えたアシェルが、ソファーに座ってお茶を飲んでいた。
「アシェル、本当にありがとう。」
アシェルにギュウッと抱きついてお礼を言う。
「こんな日が来るなんて…思わなかった…本当に…嬉しい…ありがとう、アシェル!アラバスティアに帰ったら、何かお礼を───」
と、アシェルの顔を見上げてハッとする。
ーヤバいー
アシェルが、久し振りに腹黒爽やか笑顔になっている。そろそろと、アシェルの胸に両手をついて距離をとろうとして───できなかった。
「何処に行くんだ?」
「えっと……お風呂?かな?」
「お風呂は、後で良いんじゃないか?」
ー“何の後ですか!?”とは訊いてはいけないー
「アシェル、ここは───」
「大丈夫だ。ネッドに、このフロアから人払いをさせているから。」
“フロアから人払い”
ー準備が……完璧過ぎませんか?腹黒過ぎませんか?“いかにも”で、恥ずかし過ぎませんか?ー
『アシェル、分かっていると思うけれど、久し振りの2人きりだからと言って、羽目を外したりしないようになさい。』
ーお義母様が言っていた事は……この事だったのかー
そう気付いたのは、アシェルに散々攻め立てられて意識を失う直前だった。
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