36 / 75
テスト─からの
しおりを挟む
「レイラーン国については、“数日”と明記せず、“2、3日”と明記した方が良いと思います。」
「それはどうして?」
「レイラーン国は、国風がのんびりした穏やかな国なので、一週間位迄が“数日”の範囲になるそうです。でも、私達からしたら、数日とは2、3日位ですよね?こちら側が2、3日で届くと思っている物が一週間かかると言う可能性が出て来るからです。」
殿下に案内されたのは、王城内にある応接室だった。
その応接室に入ると、外交官の人が2人と、私が話せる3ヶ国語を話せる人がそれぞれ1人ずつの計3人。その5人が横並びに椅子に座っていた。殿下と宰相様は、退室すると思っていたが、この部屋の端に椅子を移動させ、その椅子に座って私達のやり取りを見ている。
結果、大陸共通語は勿論の事、他の3ヶ国語に於いても問題無しとされた。「これで終わりか?」と思えば、とある商家とレイラーン国と交した契約書を見せられ、何度も契約通りの納品がされず困っているのだが、相手は契約を守っていると言い会話ができない─と言う。
レイラーン国は常夏の島国で、その国を治めているのは、もともとは民衆から選ばれた領主の1人だった。島国と言う事もあり、あまり周りの国から影響を受ける事もなかった為、国風がとても穏やかな国──のんびりしているのだ。少しの遅刻遅延は気にしない。とにかく、おおらかな国だ。
「国が違えば価値観も変わりますから、自国の感覚で契約すると、擦れ違う事はたくさん出て来ると思います。なので、この場合は、どちらも間違った事は言っていません。お互いが、正しい主張をしています。後は、もう一度話し合って、きちんとした数字…日数を明記するだけですね。」
我が国─アラバスティアの外交が強化されたのは、現国王陛下が王位に就いてからで、まだまだ日は浅い。特に、レイラーン国は自然が豊かで、このアラバスティアにはないフルーツがたくさんあり、ここ数年でそのフルーツが人気になり、輸入の契約をする商家が増えているらしい。そのレイラーン国もまた、外交にはまだまだ不慣れなようだ。
「では……これは────」
と、また別の契約書を見せられ、意見を求められ、気になるところがれば意見して、分からない事は分からないと、素直に答えて行った。
「じゃあ、これだと────」
「はい。そろそろ終わりにしましょうか?」
お互い意見を言い合っていると、宰相様からストップが掛かり、外交官の2人と私はハッとなった。
「今日は、3ヶ国語のレベルの確認だけだった筈でしたけど……外交としてのテストも、一気にできてしまいましたね?」
宰相様が苦笑すると「「そうですね!」」と外交官の2人は笑顔で頷いた。
どうやら、私は外交のお手伝いに合格できたようです。
後は、国同士の契約が絡んで来る為、色々な制約が必要となる。それらの契約書が調ってから、また登城すると約束をして、宰相様と外交官の人達は部屋から出て行った。
「お疲れ様。」
そして、この部屋に残って居るのは、私とライラと殿下だ。
「ありがとうございます。」
気が付けば、午前中の早い時間に来た筈が、既にお昼を過ぎていた。
ー道理でお腹が空いてるなぁ…と思ったわー
「ライラ、お昼はどこかで──」
「あ、ランチなら用意済みだから、今からそこに移動するぞ。」
「───はい?」
ー用意済み?何処に?ー
用意済みと言われれば、断れる筈もなく、渋々殿下の後を付いて行った。
案内された場所は、王城内にある庭園と思われる場所だった。
王城に入って直ぐに目にした庭園では、大きな木や大輪を咲かせた花が色とりどりに咲いていて、見る者を魅力するような庭園だったが、この庭園には比較的小ぶりな花が多い。可愛らしい……何となく落ち着く感じの庭園である。
「スズランもあるんですね。」
「エヴィは、スズランが好きなのか?」
「そうですね…。私は、大きな花より、スズランみたいに小さい花の方が好きですね。」
「小さい花の方が─か。分かった。ここは後でゆっくり見れば良いから、取り敢えずはランチにしよう。」
そう言って、殿下はまた優しい笑顔を私に向けた後、更に庭園の奥にあるガゼボへと歩みを進めた。
そのガゼボには、色んな種類のサンドイッチが用意されていた。2人で食べるには、量が多過ぎるのでは?とギョッとしていると「エヴィが何が好きなのか分からなかったから、一通りの種類を用意したんだ。」と言われた。
「たかが伯爵令嬢─魔力無しの私なんかの為に申し訳無いです!」
何て叫んでしまったら、「それじゃあ、今後の為に、エヴィの好きな物を教えてくれるか?」と訊かれて「勿論です!今後、無駄のないようにする為にも、お答えします!」
ー食べ切れない程のモノを用意してもらうなんて、申し訳無いからね!!ー
と、その日は、殿下と何が好きなのか……いつもより少し楽しい気持ちでお喋りしがらのランチとなった。
「あれ?“今後の為”って……どう言う事なんだろう?」
そう気が付いたのは、その日の夜、寮の自室のベッドに入ってからだった。
「それはどうして?」
「レイラーン国は、国風がのんびりした穏やかな国なので、一週間位迄が“数日”の範囲になるそうです。でも、私達からしたら、数日とは2、3日位ですよね?こちら側が2、3日で届くと思っている物が一週間かかると言う可能性が出て来るからです。」
殿下に案内されたのは、王城内にある応接室だった。
その応接室に入ると、外交官の人が2人と、私が話せる3ヶ国語を話せる人がそれぞれ1人ずつの計3人。その5人が横並びに椅子に座っていた。殿下と宰相様は、退室すると思っていたが、この部屋の端に椅子を移動させ、その椅子に座って私達のやり取りを見ている。
結果、大陸共通語は勿論の事、他の3ヶ国語に於いても問題無しとされた。「これで終わりか?」と思えば、とある商家とレイラーン国と交した契約書を見せられ、何度も契約通りの納品がされず困っているのだが、相手は契約を守っていると言い会話ができない─と言う。
レイラーン国は常夏の島国で、その国を治めているのは、もともとは民衆から選ばれた領主の1人だった。島国と言う事もあり、あまり周りの国から影響を受ける事もなかった為、国風がとても穏やかな国──のんびりしているのだ。少しの遅刻遅延は気にしない。とにかく、おおらかな国だ。
「国が違えば価値観も変わりますから、自国の感覚で契約すると、擦れ違う事はたくさん出て来ると思います。なので、この場合は、どちらも間違った事は言っていません。お互いが、正しい主張をしています。後は、もう一度話し合って、きちんとした数字…日数を明記するだけですね。」
我が国─アラバスティアの外交が強化されたのは、現国王陛下が王位に就いてからで、まだまだ日は浅い。特に、レイラーン国は自然が豊かで、このアラバスティアにはないフルーツがたくさんあり、ここ数年でそのフルーツが人気になり、輸入の契約をする商家が増えているらしい。そのレイラーン国もまた、外交にはまだまだ不慣れなようだ。
「では……これは────」
と、また別の契約書を見せられ、意見を求められ、気になるところがれば意見して、分からない事は分からないと、素直に答えて行った。
「じゃあ、これだと────」
「はい。そろそろ終わりにしましょうか?」
お互い意見を言い合っていると、宰相様からストップが掛かり、外交官の2人と私はハッとなった。
「今日は、3ヶ国語のレベルの確認だけだった筈でしたけど……外交としてのテストも、一気にできてしまいましたね?」
宰相様が苦笑すると「「そうですね!」」と外交官の2人は笑顔で頷いた。
どうやら、私は外交のお手伝いに合格できたようです。
後は、国同士の契約が絡んで来る為、色々な制約が必要となる。それらの契約書が調ってから、また登城すると約束をして、宰相様と外交官の人達は部屋から出て行った。
「お疲れ様。」
そして、この部屋に残って居るのは、私とライラと殿下だ。
「ありがとうございます。」
気が付けば、午前中の早い時間に来た筈が、既にお昼を過ぎていた。
ー道理でお腹が空いてるなぁ…と思ったわー
「ライラ、お昼はどこかで──」
「あ、ランチなら用意済みだから、今からそこに移動するぞ。」
「───はい?」
ー用意済み?何処に?ー
用意済みと言われれば、断れる筈もなく、渋々殿下の後を付いて行った。
案内された場所は、王城内にある庭園と思われる場所だった。
王城に入って直ぐに目にした庭園では、大きな木や大輪を咲かせた花が色とりどりに咲いていて、見る者を魅力するような庭園だったが、この庭園には比較的小ぶりな花が多い。可愛らしい……何となく落ち着く感じの庭園である。
「スズランもあるんですね。」
「エヴィは、スズランが好きなのか?」
「そうですね…。私は、大きな花より、スズランみたいに小さい花の方が好きですね。」
「小さい花の方が─か。分かった。ここは後でゆっくり見れば良いから、取り敢えずはランチにしよう。」
そう言って、殿下はまた優しい笑顔を私に向けた後、更に庭園の奥にあるガゼボへと歩みを進めた。
そのガゼボには、色んな種類のサンドイッチが用意されていた。2人で食べるには、量が多過ぎるのでは?とギョッとしていると「エヴィが何が好きなのか分からなかったから、一通りの種類を用意したんだ。」と言われた。
「たかが伯爵令嬢─魔力無しの私なんかの為に申し訳無いです!」
何て叫んでしまったら、「それじゃあ、今後の為に、エヴィの好きな物を教えてくれるか?」と訊かれて「勿論です!今後、無駄のないようにする為にも、お答えします!」
ー食べ切れない程のモノを用意してもらうなんて、申し訳無いからね!!ー
と、その日は、殿下と何が好きなのか……いつもより少し楽しい気持ちでお喋りしがらのランチとなった。
「あれ?“今後の為”って……どう言う事なんだろう?」
そう気が付いたのは、その日の夜、寮の自室のベッドに入ってからだった。
47
お気に入りに追加
3,337
あなたにおすすめの小説
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
【完結】護衛騎士と令嬢の恋物語は美しい・・・傍から見ている分には
月白ヤトヒコ
恋愛
没落寸前の伯爵令嬢が、成金商人に金で買われるように望まぬ婚約させられ、悲嘆に暮れていたとき、商人が雇った護衛騎士と許されない恋に落ちた。
令嬢は屋敷のみんなに応援され、ある日恋する護衛騎士がさる高位貴族の息子だと判明した。
愛で結ばれた令嬢と護衛騎士は、商人に婚約を解消してほしいと告げ――――
婚約は解消となった。
物語のような展開。されど、物語のようにめでたしめでたしとはならなかった話。
視点は、成金の商人視点。
設定はふわっと。
変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!
utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑)
妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?!
※適宜内容を修正する場合があります
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)
松丹子
恋愛
スパダリな父、優しい長兄、愛想のいい次兄、チャラい従兄に囲まれて、男に抱く理想が高くなってしまった女子高生、橘礼奈。
平凡な自分に見合うフツーな高校生活をエンジョイしようと…思っているはずなのに、幼い頃から抱いていた淡い想いを自覚せざるを得なくなり……
恋愛、家族愛、友情、部活に進路……
緩やかでほんのり甘い青春模様。
*関連作品は下記の通りです。単体でお読みいただけるようにしているつもりです(が、ひたすらキャラクターが多いのであまりオススメできません…)
★展開の都合上、礼奈の誕生日は親世代の作品と齟齬があります。一種のパラレルワールドとしてご了承いただければ幸いです。
*関連作品
『神崎くんは残念なイケメン』(香子視点)
『モテ男とデキ女の奥手な恋』(政人視点)
上記二作を読めばキャラクターは押さえられると思います。
(以降、時系列順『物狂ほしや色と情』、『期待ハズレな吉田さん、自由人な前田くん』、『さくやこの』、『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい』、『色ハくれなゐ 情ハ愛』、『初恋旅行に出かけます』)
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる