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無礼男子
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店を出た後、そのまま人通りの少ない、少し高台にある公園へとやって来た。
フードを被った彼を先頭に、コレ呼び男子と髪撫で男子がリンディを挟んで後に続き、その3人の後ろを私とライラ、その後ろに、気が付けばもう1人のフードを被った人が付いて来ていた。
ー彼が、1人で行動する訳がないものねー
きっと、前を歩く3人は、彼の正体には気付いてないだろう。彼は、これ以上私達が目立たないように、大事にしない為に人目の少ない場所へと誘導してくれているんだろうけど……この3人が理解しているのかいないのかは……否。絶対に理解していないだろう。下手すれば、彼にさえ掴みかかるかもしれない。
ーん?いっその事、手を出してもらった方が、色んな意味で良いのかな?ー
と、色々呑気?な事を考えているうちに、彼が歩みを止めていた。そこは、人目の少ない公園の少し奥のベンチのある場所だった。
そこで歩みを止めた彼が振り返り
「それで?あんな人目の多い場所で揉め事とは……感心しないね。」
「別に、揉め事を起こそうとは…思ってなかった。ただ、礼儀のなってない奴を窘めようと──」
「─窘めようとして、無抵抗の女性に手を上げようとしたのか?」
「ちがっ──」
「違わないだろう?そもそも、先に無礼を働いたのはお前達だ。彼女は何もしていない。」
「ア………アレは、光の魔力持ちのリンディ嬢を無視したんだ。俺達の忠告も無視した。魔力無しのくせに!」
“アレ”やら“魔力無し”やら……どんどん墓穴を掘っているのが分かってない───んだろうなぁ。“魔力無しのくせに”とは、差別用語だ。貴族において、魔力無しとは確かに卑下される対象になりやすいが、現国王はそれについて、明らかな魔力無しの者への侮辱行為が確認された場合は、その相手を罰する事ができる法律を調えたのだ。彼もまた、それを分かった上で、無礼男子を煽っている。
ーやっぱり腹黒………ー
「この2人は悪くないんです。私の為に……」
両手を胸の前で組み、彼に懇願するように無礼男子を擁護するリンディ。
「ならば、君は、無実の姉ではなく、その2人を庇うんだね?」
「“庇う”なんて……。ただ、彼らは私が姉であるエヴィに無視された事を気にして下さっただけなんです。」
ー誰が誰を無視したの?と、訊いてみて良いかなぁ?ー
「はぁ──本当に、まともな話すらできないのだな。あまり大事にせず済ませたかったが──お前達は、家を巻き込んでしまっても良いんだな?」
「「はぁ!?」」
「素直に謝れば、ここだけの問題で片付けようと思っていたんだ。チャンスは……与えてあげたんだよ?」
「なっ─お前に、何の権限が─────っ!ぐぅっっ」
髪撫で男子が、彼に掴みかかろうとした瞬間、私の後ろにいた男性が素早く動き、その髪撫で男子の腕を掴み後ろに捻り上げて、そのまま前に体を押し倒した。
ほんの一瞬の出来事だった。
それを目の当たりにしたコレ呼び男子とリンディは、一気に顔色を悪くさせて立ち尽くしている。
「権限は……大いにあるかなぁ?」
と言いながら、彼は被っていたフードを取り払った。
そこに現れたのは──
「「お……王太子…殿下!」」
アシェルハイド王太子殿下だ。
*ブレインが、ジェマを出迎える為に執務室から出て行った直後の、王太子執務室にて*
『エヴィ様が、侍女と街に出掛けるようです』
「エヴィが街に?」
基本、エヴィは外出する事が殆どない。この1年で外出したのは──今日を入れると7回目だったか?
兎に角、エヴィがお出掛けするのは、本当に珍しい。そう言えば…俺の今日の執務も…終わっているよな?
「俺も、今から……街に出る。」
『では、15分後に裏にお越し下さい』
そう言って、影は気配を消した。
俺は王太子ではあるが、学生のうちは─と、父である国王陛下から、比較的自由にさせてもらっている。父もそうだったようで、市井に出て民の生活を見て知る事は大切な事なのだ。勿論、1人で出掛ける事はない。必ず、影が数人付く。俺には最低3人は必ず付いている。
光の魔力持ちのリンディ嬢にも、護衛として1人付けている。そして、闇の魔力持ちであろうエヴィにも──。エヴィには……2人。
その、エヴィに付いている影と、俺の影との連携で、エヴィがどこに居るのかは直ぐに分かった。どうやら、侍女と一緒にランチを食べているようだ。通りに面した窓ガラス越しに、楽しそうにお喋りをしているエヴィを視界に捉えた。
ー偶然を装って声を掛けるかー
そう思いながら店へと近付いていくと、エヴィの元にリンディ嬢と、彼女に寄り添うように2人の男がやって来た。その男2人は─リンディ嬢と同じBクラスの子爵の子息だ。
ーこんな所で、揉め事なんか起こすなよー
と言う俺の願いも虚しく──予想通りに揉め事を起こした3人。
ーさて、どうしてやろうか?ー
俺は、フードの中でこれからの展開を予想しながら人目の少ない場所へと足を向けた。
フードを被った彼を先頭に、コレ呼び男子と髪撫で男子がリンディを挟んで後に続き、その3人の後ろを私とライラ、その後ろに、気が付けばもう1人のフードを被った人が付いて来ていた。
ー彼が、1人で行動する訳がないものねー
きっと、前を歩く3人は、彼の正体には気付いてないだろう。彼は、これ以上私達が目立たないように、大事にしない為に人目の少ない場所へと誘導してくれているんだろうけど……この3人が理解しているのかいないのかは……否。絶対に理解していないだろう。下手すれば、彼にさえ掴みかかるかもしれない。
ーん?いっその事、手を出してもらった方が、色んな意味で良いのかな?ー
と、色々呑気?な事を考えているうちに、彼が歩みを止めていた。そこは、人目の少ない公園の少し奥のベンチのある場所だった。
そこで歩みを止めた彼が振り返り
「それで?あんな人目の多い場所で揉め事とは……感心しないね。」
「別に、揉め事を起こそうとは…思ってなかった。ただ、礼儀のなってない奴を窘めようと──」
「─窘めようとして、無抵抗の女性に手を上げようとしたのか?」
「ちがっ──」
「違わないだろう?そもそも、先に無礼を働いたのはお前達だ。彼女は何もしていない。」
「ア………アレは、光の魔力持ちのリンディ嬢を無視したんだ。俺達の忠告も無視した。魔力無しのくせに!」
“アレ”やら“魔力無し”やら……どんどん墓穴を掘っているのが分かってない───んだろうなぁ。“魔力無しのくせに”とは、差別用語だ。貴族において、魔力無しとは確かに卑下される対象になりやすいが、現国王はそれについて、明らかな魔力無しの者への侮辱行為が確認された場合は、その相手を罰する事ができる法律を調えたのだ。彼もまた、それを分かった上で、無礼男子を煽っている。
ーやっぱり腹黒………ー
「この2人は悪くないんです。私の為に……」
両手を胸の前で組み、彼に懇願するように無礼男子を擁護するリンディ。
「ならば、君は、無実の姉ではなく、その2人を庇うんだね?」
「“庇う”なんて……。ただ、彼らは私が姉であるエヴィに無視された事を気にして下さっただけなんです。」
ー誰が誰を無視したの?と、訊いてみて良いかなぁ?ー
「はぁ──本当に、まともな話すらできないのだな。あまり大事にせず済ませたかったが──お前達は、家を巻き込んでしまっても良いんだな?」
「「はぁ!?」」
「素直に謝れば、ここだけの問題で片付けようと思っていたんだ。チャンスは……与えてあげたんだよ?」
「なっ─お前に、何の権限が─────っ!ぐぅっっ」
髪撫で男子が、彼に掴みかかろうとした瞬間、私の後ろにいた男性が素早く動き、その髪撫で男子の腕を掴み後ろに捻り上げて、そのまま前に体を押し倒した。
ほんの一瞬の出来事だった。
それを目の当たりにしたコレ呼び男子とリンディは、一気に顔色を悪くさせて立ち尽くしている。
「権限は……大いにあるかなぁ?」
と言いながら、彼は被っていたフードを取り払った。
そこに現れたのは──
「「お……王太子…殿下!」」
アシェルハイド王太子殿下だ。
*ブレインが、ジェマを出迎える為に執務室から出て行った直後の、王太子執務室にて*
『エヴィ様が、侍女と街に出掛けるようです』
「エヴィが街に?」
基本、エヴィは外出する事が殆どない。この1年で外出したのは──今日を入れると7回目だったか?
兎に角、エヴィがお出掛けするのは、本当に珍しい。そう言えば…俺の今日の執務も…終わっているよな?
「俺も、今から……街に出る。」
『では、15分後に裏にお越し下さい』
そう言って、影は気配を消した。
俺は王太子ではあるが、学生のうちは─と、父である国王陛下から、比較的自由にさせてもらっている。父もそうだったようで、市井に出て民の生活を見て知る事は大切な事なのだ。勿論、1人で出掛ける事はない。必ず、影が数人付く。俺には最低3人は必ず付いている。
光の魔力持ちのリンディ嬢にも、護衛として1人付けている。そして、闇の魔力持ちであろうエヴィにも──。エヴィには……2人。
その、エヴィに付いている影と、俺の影との連携で、エヴィがどこに居るのかは直ぐに分かった。どうやら、侍女と一緒にランチを食べているようだ。通りに面した窓ガラス越しに、楽しそうにお喋りをしているエヴィを視界に捉えた。
ー偶然を装って声を掛けるかー
そう思いながら店へと近付いていくと、エヴィの元にリンディ嬢と、彼女に寄り添うように2人の男がやって来た。その男2人は─リンディ嬢と同じBクラスの子爵の子息だ。
ーこんな所で、揉め事なんか起こすなよー
と言う俺の願いも虚しく──予想通りに揉め事を起こした3人。
ーさて、どうしてやろうか?ー
俺は、フードの中でこれからの展開を予想しながら人目の少ない場所へと足を向けた。
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