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ジェマ=ブルーム
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❋本日は、2話投稿します❋
私には、双子の妹と、弟が居る。
双子の妹の一人、リンディは光の魔力持ち。
もう一人のエヴィは、水と風の魔力を持っていたけど、10歳の頃に高熱が続いた時に、その魔力を失ってしまった。
弟のサイラスとは、話した事は無い。
「エヴィ様が熱を出して寝込んでいるのに、奥様はリンディ様とお出掛けに──」
私が部屋で本を読んでいると、エメリーとアリスが話しているのが聞こえて来た。
私は2人にお願いして、エヴィの所へと行く事にした。
『ねえ…さま。ずっと……側にいてくれる?』
久し振りに会ったエヴィは、私の事を覚えていてくれて、私に側にいて欲しいと言ってくれた。
私はこの家には要らない子だと思っていた。でも、エヴィは側に居て欲しいと──。それがとても、嬉しかった。
それ以来、私とエヴィは、義母の目を盗みながら会って話をたくさんするようになった。エヴィ自身ハッキリとは言わないけど、どうやら、エヴィも義父や義母の事をあまり良くは思っていないようだった。寧ろ──
そうして、私が学校へと通う年になった。
私の実の母の父親─祖父の提案で、私は王都にあるローアン侯爵邸から通学する事になった。それは、とても有り難い申し出だった。ただ、エヴィを残して行く事だけが気掛かりだった。
ローアン邸と学校生活は、充実していてとても楽しかった。
現ローアン公爵である伯父はとても優しくて、いつも私を気に掛けてくれるし、使用人の人達も私によくしてくれている。
そして、婚約者のブレイン様。祖父同士が決めた婚約ではあるけど、いつも笑顔で私に接してくれている。学校でも、特に用事がなければお昼は一緒に食べるようにしている。
そこに……たまに王太子殿下がやって来る事もあり、その時ばかりは緊張するけど、これは仕方無い事。ブレイン様は、王太子殿下の側近の一人だから。
この王太子殿下にはまだ婚約者が居ない。
「光の魔力持ちのリンディでは?」
と、ポロッと口にした事があったけど、それに対して王太子殿下もブレイン様も笑っただけだった。
それから2年が経ち、いよいよエヴィとリンディが入学して来ると言う少し前。
「ねぇ、ジェマ。君の妹のエヴィは…どんな子なの?」
放課後、ブレイン様とお店でお茶をしている時にそう訊かれた。
「……どんな子…とは?」
「いや…その……」
と、ブレイン様は少し躊躇いながらも話をしてくれた。
「リンディと一緒に王城にと誘われたけど、馬車が嫌だから寮を選んだ??」
「あぁ。父が言っていたんだ。別に義務ではないから良いんだけど、その理由を聞いて…何と言うか…。それで、リンディ嬢も寂しそうだったと…。」
「………」
色々有り得ない。エヴィがそんな理由で寮を選ぶ筈はないし、リンディが…寂しがるなんて事は………。
私が黙り込んだのを、ブレイン様は私が肯定していると思ったのだろう。
「これはエヴィ嬢の我儘であって、ジェマが気にする事はないから。父も、それはよく分かってるから。」
フワリと優しくて微笑むブレイン様。私を安心させる為なんだろうけど──
「──ではありません。」
「え?」
「エヴィは……我儘じゃありません。我儘なんて………言った事なんてない!」
そう。エヴィは我儘なんて言わない。いつもいつも我慢している自分だって辛い立場なのに、いつでも私を優先して──。
「───ブレイン様、ごめんなさい。私……今日はもう帰ります。」
慌てて「送って行く」と言うブレイン様を何とか断って、私は急ぎ足でローアン邸へと帰った。
そして、エヴィの入寮の日、久し振りにエヴィに会ってたくさん話をした。
この2年で少し痩せただろうか?リンディよりも少し細目の体つきになったエヴィは、幼さが抜けていて、“可愛い”と言うよりは“綺麗”の部類に入っていると思う。
「エヴィ、あの…気を悪くしないでね?ブレイン様から聞いたのだけど──」
と、私はエヴィ本人に、今回の事を訊いた。
「……リンディとお母様が……そうですか……。」
目の前に居るエヴィは、ショックを受ける訳でも、悲しむ訳でもなく……諦め?に似た表情になる。
「王城での話は、今初めて知りました。寮に入った理由は、お母様に勧められたからです。“その方が都合が良いでしょう?”と。でも………私の我儘ですか…………。」
そう言ったきり、エヴィは黙ってしまい、それとは逆に、部屋の端にある椅子に座っていた侍女ライラの表情が、笑っていながらも怒っている空気を漂わせていた。
『お姉様、別に、我儘だって事は訂正しなくて良いですから。どうせ、何を言っても、相手は光の魔力持ちのリンディだから、結果は変わらないと思うの。だったら、私は…これからは私のやりたいようにする事にしました!!』
と、何故か急にエヴィが……弾けた。
気持ちが吹っ切れた?と言うのだろうか……。
エヴィはその日から、少しだけ我慢する事を、止めたようだった。
弾けたエヴィも、それはそれで可愛いけど。
私には、双子の妹と、弟が居る。
双子の妹の一人、リンディは光の魔力持ち。
もう一人のエヴィは、水と風の魔力を持っていたけど、10歳の頃に高熱が続いた時に、その魔力を失ってしまった。
弟のサイラスとは、話した事は無い。
「エヴィ様が熱を出して寝込んでいるのに、奥様はリンディ様とお出掛けに──」
私が部屋で本を読んでいると、エメリーとアリスが話しているのが聞こえて来た。
私は2人にお願いして、エヴィの所へと行く事にした。
『ねえ…さま。ずっと……側にいてくれる?』
久し振りに会ったエヴィは、私の事を覚えていてくれて、私に側にいて欲しいと言ってくれた。
私はこの家には要らない子だと思っていた。でも、エヴィは側に居て欲しいと──。それがとても、嬉しかった。
それ以来、私とエヴィは、義母の目を盗みながら会って話をたくさんするようになった。エヴィ自身ハッキリとは言わないけど、どうやら、エヴィも義父や義母の事をあまり良くは思っていないようだった。寧ろ──
そうして、私が学校へと通う年になった。
私の実の母の父親─祖父の提案で、私は王都にあるローアン侯爵邸から通学する事になった。それは、とても有り難い申し出だった。ただ、エヴィを残して行く事だけが気掛かりだった。
ローアン邸と学校生活は、充実していてとても楽しかった。
現ローアン公爵である伯父はとても優しくて、いつも私を気に掛けてくれるし、使用人の人達も私によくしてくれている。
そして、婚約者のブレイン様。祖父同士が決めた婚約ではあるけど、いつも笑顔で私に接してくれている。学校でも、特に用事がなければお昼は一緒に食べるようにしている。
そこに……たまに王太子殿下がやって来る事もあり、その時ばかりは緊張するけど、これは仕方無い事。ブレイン様は、王太子殿下の側近の一人だから。
この王太子殿下にはまだ婚約者が居ない。
「光の魔力持ちのリンディでは?」
と、ポロッと口にした事があったけど、それに対して王太子殿下もブレイン様も笑っただけだった。
それから2年が経ち、いよいよエヴィとリンディが入学して来ると言う少し前。
「ねぇ、ジェマ。君の妹のエヴィは…どんな子なの?」
放課後、ブレイン様とお店でお茶をしている時にそう訊かれた。
「……どんな子…とは?」
「いや…その……」
と、ブレイン様は少し躊躇いながらも話をしてくれた。
「リンディと一緒に王城にと誘われたけど、馬車が嫌だから寮を選んだ??」
「あぁ。父が言っていたんだ。別に義務ではないから良いんだけど、その理由を聞いて…何と言うか…。それで、リンディ嬢も寂しそうだったと…。」
「………」
色々有り得ない。エヴィがそんな理由で寮を選ぶ筈はないし、リンディが…寂しがるなんて事は………。
私が黙り込んだのを、ブレイン様は私が肯定していると思ったのだろう。
「これはエヴィ嬢の我儘であって、ジェマが気にする事はないから。父も、それはよく分かってるから。」
フワリと優しくて微笑むブレイン様。私を安心させる為なんだろうけど──
「──ではありません。」
「え?」
「エヴィは……我儘じゃありません。我儘なんて………言った事なんてない!」
そう。エヴィは我儘なんて言わない。いつもいつも我慢している自分だって辛い立場なのに、いつでも私を優先して──。
「───ブレイン様、ごめんなさい。私……今日はもう帰ります。」
慌てて「送って行く」と言うブレイン様を何とか断って、私は急ぎ足でローアン邸へと帰った。
そして、エヴィの入寮の日、久し振りにエヴィに会ってたくさん話をした。
この2年で少し痩せただろうか?リンディよりも少し細目の体つきになったエヴィは、幼さが抜けていて、“可愛い”と言うよりは“綺麗”の部類に入っていると思う。
「エヴィ、あの…気を悪くしないでね?ブレイン様から聞いたのだけど──」
と、私はエヴィ本人に、今回の事を訊いた。
「……リンディとお母様が……そうですか……。」
目の前に居るエヴィは、ショックを受ける訳でも、悲しむ訳でもなく……諦め?に似た表情になる。
「王城での話は、今初めて知りました。寮に入った理由は、お母様に勧められたからです。“その方が都合が良いでしょう?”と。でも………私の我儘ですか…………。」
そう言ったきり、エヴィは黙ってしまい、それとは逆に、部屋の端にある椅子に座っていた侍女ライラの表情が、笑っていながらも怒っている空気を漂わせていた。
『お姉様、別に、我儘だって事は訂正しなくて良いですから。どうせ、何を言っても、相手は光の魔力持ちのリンディだから、結果は変わらないと思うの。だったら、私は…これからは私のやりたいようにする事にしました!!』
と、何故か急にエヴィが……弾けた。
気持ちが吹っ切れた?と言うのだろうか……。
エヴィはその日から、少しだけ我慢する事を、止めたようだった。
弾けたエヴィも、それはそれで可愛いけど。
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