上 下
11 / 75

ジェマ=ブルーム

しおりを挟む
❋本日は、2話投稿します❋














私には、双子の妹と、弟が居る。

双子の妹の一人、リンディは光の魔力持ち。
もう一人のエヴィは、水と風の魔力を持っていたけど、10歳の頃に高熱が続いた時に、その魔力を失ってしまった。
弟のサイラスとは、話した事は無い。





「エヴィ様が熱を出して寝込んでいるのに、奥様はリンディ様とお出掛けに──」

私が部屋で本を読んでいると、エメリーとアリスが話しているのが聞こえて来た。

私は2人にお願いして、エヴィの所へと行く事にした。





『ねえ…さま。ずっと……側にいてくれる?』

久し振りに会ったエヴィは、私の事を覚えていてくれて、私に側にいて欲しいと言ってくれた。
私はこの家には要らない子だと思っていた。でも、エヴィは側に居て欲しいと──。それがとても、嬉しかった。







それ以来、私とエヴィは、義母の目を盗みながら会って話をたくさんするようになった。エヴィ自身ハッキリとは言わないけど、どうやら、エヴィも義父や義母の事をあまり良くは思っていないようだった。寧ろ──




そうして、私が学校へと通う年になった。
私の実の母の父親─祖父の提案で、私は王都にあるローアン侯爵邸から通学する事になった。それは、とても有り難い申し出だった。ただ、エヴィを残して行く事だけが気掛かりだった。




ローアン邸と学校生活は、充実していてとても楽しかった。
現ローアン公爵である伯父はとても優しくて、いつも私を気に掛けてくれるし、使用人の人達も私によくしてくれている。

そして、婚約者のブレイン様。祖父同士が決めた婚約ではあるけど、いつも笑顔で私に接してくれている。学校でも、特に用事がなければお昼は一緒に食べるようにしている。

そこに……たまに王太子殿下がやって来る事もあり、その時ばかりは緊張するけど、これは仕方無い事。ブレイン様は、王太子殿下の側近の一人だから。

この王太子殿下にはまだ婚約者が居ない。

「光の魔力持ちのリンディでは?」

と、ポロッと口にした事があったけど、それに対して王太子殿下もブレイン様も笑っただけだった。












それから2年が経ち、いよいよエヴィとリンディが入学して来ると言う少し前。

「ねぇ、ジェマ。君の妹のエヴィは…どんな子なの?」

放課後、ブレイン様とお店でお茶をしている時にそう訊かれた。

「……どんな子…とは?」

「いや…その……」

と、ブレイン様は少し躊躇いながらも話をしてくれた。





「リンディと一緒に王城にと誘われたけど、馬車が嫌だから寮を選んだ??」

「あぁ。父が言っていたんだ。別に義務ではないから良いんだけど、その理由を聞いて…何と言うか…。それで、リンディ嬢も寂しそうだったと…。」

「………」

色々有り得ない。エヴィがそんな理由で寮を選ぶ筈はないし、リンディが…寂しがるなんて事は………。

私が黙り込んだのを、ブレイン様は私が肯定していると思ったのだろう。

「これはエヴィ嬢のであって、ジェマが気にする事はないから。父も、それはよく分かってるから。」

フワリと優しくて微笑むブレイン様。私を安心させる為なんだろうけど──

「──ではありません。」
「え?」
「エヴィは……我儘じゃありません。我儘なんて………言った事なんてない!」

そう。エヴィは我儘なんて言わない。いつもいつも我慢している自分だって辛い立場なのに、いつでも私を優先して──。

「───ブレイン様、ごめんなさい。私……今日はもう帰ります。」

慌てて「送って行く」と言うブレイン様を何とか断って、私は急ぎ足でローアン邸へと帰った。













そして、エヴィの入寮の日、久し振りにエヴィに会ってたくさん話をした。
この2年で少し痩せただろうか?リンディよりも少し細目の体つきになったエヴィは、幼さが抜けていて、“可愛い”と言うよりは“綺麗”の部類に入っていると思う。

「エヴィ、あの…気を悪くしないでね?ブレイン様から聞いたのだけど──」

と、私はエヴィ本人に、今回の事を訊いた。


「……リンディとお母様が……そうですか……。」

目の前に居るエヴィは、ショックを受ける訳でも、悲しむ訳でもなく……諦め?に似た表情になる。

「王城での話は、今初めて知りました。寮に入った理由は、お母様に勧められたからです。“その方が都合が良いでしょう?”と。でも………私の我儘ですか…………。」

そう言ったきり、エヴィは黙ってしまい、それとは逆に、部屋の端にある椅子に座っていた侍女ライラの表情が、笑っていながらも怒っている空気を漂わせていた。




『お姉様、別に、我儘だって事は訂正しなくて良いですから。どうせ、何を言っても、相手は光の魔力持ちのリンディだから、結果は変わらないと思うの。だったら、私は…これからは私のやりたいようにする事にしました!!』

と、何故か急にエヴィが……
気持ちが吹っ切れた?と言うのだろうか……。

エヴィはその日から、少しだけ我慢する事を、止めたようだった。







弾けたエヴィも、それはそれで可愛いけど。









しおりを挟む
感想 188

あなたにおすすめの小説

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...