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転移
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『僕は僕で、色々と仲間に話を聞いたりして解呪方法を探していたんだ。それで……確実ではないけど、一つだけ……気になる事を耳にしたから。ヴィンス……君に…聞いてもらおうと思ったんだ。』
プリュイはジゼル様に視線を向けたままだ。
『勿論、話を聞いた後で断ってもらっても構わない。強制なんてしないから。』
“魔女の呪い”は、かの魔女の婚約者が苦しんで死んでいった、その苦しみを癒しの巫女に味わわせる事。そして、そのまま死に至らしめる事。
今迄伸びていっていた左手首にあるイバラの様な模様は、魔女の呪いの発動後は短くなっていっているらしい。おそらく、その模様が完璧に無くなった時が、魔女の呪いが解けた時──ジゼル様が死んだ時となるだろう──。
その、模様が消えた瞬間、ジゼル様が負っている怪我を俺に戻す─と言うものだった。
ジゼル様には効かないプリュイの癒しの水が、俺に効くのは分かっているから。ただ、タイミングが遅ければその怪我のせいでジゼル様はそのまま死んでしまうし、早過ぎれば魔女の呪いのせいで、やはり、そのまま死んでしまう。俺も、治癒が間に合わなければ死んでしまうだろうが、正直、俺の事はどうでも良い。
『ヴィンス、“俺の事はどうでも良い”とは思わないでね?ジゼルは、君を助けたくて、生きて欲しくて自分を犠牲にしていたんだから、自分の命を軽々しく扱う事は…僕も赦さないからね?』
「──っ!分かった……」
ーそうだ。ジゼル様は俺の事を思ってー
『勿論、ジゼルを助けるつもりでいるけど…もし駄目だったとしても……ヴィンス、君だけは絶対に死なせない。助けるから、君も最後まで生きる事を諦めないでね。君を生かす事が、ジゼルの唯一の願いなんだ。』
“自分が、長生きしたい”─と、願えば良いのに
『ここまで言っておいてなんだけど…どうする?君が嫌と言うならしない。』
「断る理由などない。少しでも可能性があるなら…」
そこでようやく、プリュイが俺の方へと振り返った。
『ヴィンス…ありがとう』
何となく、プリュイの声が柔らかいような気もするが、その表情がどんなものなのかは、やっぱり分からなかった。
『この水玉から出ると、ジゼルの時が進むから、きっと血もたくさん出ると思うけど、ヴィンスは何もせずに居て欲しい。それで、タイミングをみて、僕が転移の魔法を応用したモノで、ジゼルが負っている怪我を、君に移すから。君はただ……その痛みに耐えるだけだから。何が何でも耐えて欲しい。』
今でも、あの時に受けた痛みを覚えている。あまりの痛みに…気を失ってしまったのだ。
だけど、今度は、意識を失わずに耐えて……ジゼル様がどうなるか──この目でしっかり確認したい。
取り敢えず─と言う事で、先にプリュイの創り出した水を飲んだ。そして、ジゼル様を包み込んでいる水玉の側まで行き、そこに座ってジゼル様を見上げる。
ー必ず、また、ジゼル様のペリドットの瞳に…ー
『さぁ────いくよ』
手のひらよりも小さいプリュイ。どこにそれ程の力を潜めていたのか──と思う程の魔力のような力がプリュイから溢れ出した。それはグルグルと渦を巻くように水玉へと向かい、そのままその水を吸収していき、ジゼル様の足元から少しずつ水が無くなっていく。
少しずつ…少しずつ体が現れ、左手首が現れた時、プリュイが確認するようにその手首を見る。
『本当に……ホクロ程になってる………』
どうやら、呪いの模様は、後少しで消えてしまう程になっているようだ。
その、消えていく模様を見て……一体どんな心境だったのか……。その模様が消えて、魔女の呪いが解けて、また俺を選んでくれるなら、その時は───
『ヴィンス、いくよ──』
グンッ─と、プリュイの力が更に大きくなった時、ジゼル様の体の全てが水の中から現れ、それと同時に右肩から血が溢れ出した。
「───っ!」
小さな小さな呻き声がした後、ジゼル様の体から力が抜けたかのように手がダラン─と滑り落ちた。
『まだだ……まだ……もう少し………もう少し……ジゼル、お願いだから…頑張って………っ!ヴィンス、いくよ!』
小さい体のプリュイからは想像もできない程の大きな魔法陣が俺とジゼル様の足元で展開され、一気に光が溢れ出した。それに見惚れる間も無く、俺の体が痺れるのと同時に激痛に襲われた。
「───っ!!」
この痛みは、あの時の痛みと同じだった。右肩からは血がドクドクと流れ出している。
ー息は…どうやってするものだった?ー
霞む視界で、ジゼル様とプリュイに視線を向けると、プリュイがジゼル様を床に下ろして左手首を確認しているところだった。
ージゼル様ー
それから、プリュイがその左手首に何かをした後、俺の方へと振り返り、そのまま俺の方へと飛んで来た。
『──────!!』
プリュイが何かを言っているけど……耳には入って来なかった。その顔を見たところで……どんな表情なのかは…やっぱり分からない。
ジゼル様は…どうなった?─と、口を開く前に、体が冷たい何かに包み込まれて、そのまま意識を手放した。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
✧*。٩(ˊᗜˋ*)و✧*。
プリュイはジゼル様に視線を向けたままだ。
『勿論、話を聞いた後で断ってもらっても構わない。強制なんてしないから。』
“魔女の呪い”は、かの魔女の婚約者が苦しんで死んでいった、その苦しみを癒しの巫女に味わわせる事。そして、そのまま死に至らしめる事。
今迄伸びていっていた左手首にあるイバラの様な模様は、魔女の呪いの発動後は短くなっていっているらしい。おそらく、その模様が完璧に無くなった時が、魔女の呪いが解けた時──ジゼル様が死んだ時となるだろう──。
その、模様が消えた瞬間、ジゼル様が負っている怪我を俺に戻す─と言うものだった。
ジゼル様には効かないプリュイの癒しの水が、俺に効くのは分かっているから。ただ、タイミングが遅ければその怪我のせいでジゼル様はそのまま死んでしまうし、早過ぎれば魔女の呪いのせいで、やはり、そのまま死んでしまう。俺も、治癒が間に合わなければ死んでしまうだろうが、正直、俺の事はどうでも良い。
『ヴィンス、“俺の事はどうでも良い”とは思わないでね?ジゼルは、君を助けたくて、生きて欲しくて自分を犠牲にしていたんだから、自分の命を軽々しく扱う事は…僕も赦さないからね?』
「──っ!分かった……」
ーそうだ。ジゼル様は俺の事を思ってー
『勿論、ジゼルを助けるつもりでいるけど…もし駄目だったとしても……ヴィンス、君だけは絶対に死なせない。助けるから、君も最後まで生きる事を諦めないでね。君を生かす事が、ジゼルの唯一の願いなんだ。』
“自分が、長生きしたい”─と、願えば良いのに
『ここまで言っておいてなんだけど…どうする?君が嫌と言うならしない。』
「断る理由などない。少しでも可能性があるなら…」
そこでようやく、プリュイが俺の方へと振り返った。
『ヴィンス…ありがとう』
何となく、プリュイの声が柔らかいような気もするが、その表情がどんなものなのかは、やっぱり分からなかった。
『この水玉から出ると、ジゼルの時が進むから、きっと血もたくさん出ると思うけど、ヴィンスは何もせずに居て欲しい。それで、タイミングをみて、僕が転移の魔法を応用したモノで、ジゼルが負っている怪我を、君に移すから。君はただ……その痛みに耐えるだけだから。何が何でも耐えて欲しい。』
今でも、あの時に受けた痛みを覚えている。あまりの痛みに…気を失ってしまったのだ。
だけど、今度は、意識を失わずに耐えて……ジゼル様がどうなるか──この目でしっかり確認したい。
取り敢えず─と言う事で、先にプリュイの創り出した水を飲んだ。そして、ジゼル様を包み込んでいる水玉の側まで行き、そこに座ってジゼル様を見上げる。
ー必ず、また、ジゼル様のペリドットの瞳に…ー
『さぁ────いくよ』
手のひらよりも小さいプリュイ。どこにそれ程の力を潜めていたのか──と思う程の魔力のような力がプリュイから溢れ出した。それはグルグルと渦を巻くように水玉へと向かい、そのままその水を吸収していき、ジゼル様の足元から少しずつ水が無くなっていく。
少しずつ…少しずつ体が現れ、左手首が現れた時、プリュイが確認するようにその手首を見る。
『本当に……ホクロ程になってる………』
どうやら、呪いの模様は、後少しで消えてしまう程になっているようだ。
その、消えていく模様を見て……一体どんな心境だったのか……。その模様が消えて、魔女の呪いが解けて、また俺を選んでくれるなら、その時は───
『ヴィンス、いくよ──』
グンッ─と、プリュイの力が更に大きくなった時、ジゼル様の体の全てが水の中から現れ、それと同時に右肩から血が溢れ出した。
「───っ!」
小さな小さな呻き声がした後、ジゼル様の体から力が抜けたかのように手がダラン─と滑り落ちた。
『まだだ……まだ……もう少し………もう少し……ジゼル、お願いだから…頑張って………っ!ヴィンス、いくよ!』
小さい体のプリュイからは想像もできない程の大きな魔法陣が俺とジゼル様の足元で展開され、一気に光が溢れ出した。それに見惚れる間も無く、俺の体が痺れるのと同時に激痛に襲われた。
「───っ!!」
この痛みは、あの時の痛みと同じだった。右肩からは血がドクドクと流れ出している。
ー息は…どうやってするものだった?ー
霞む視界で、ジゼル様とプリュイに視線を向けると、プリュイがジゼル様を床に下ろして左手首を確認しているところだった。
ージゼル様ー
それから、プリュイがその左手首に何かをした後、俺の方へと振り返り、そのまま俺の方へと飛んで来た。
『──────!!』
プリュイが何かを言っているけど……耳には入って来なかった。その顔を見たところで……どんな表情なのかは…やっぱり分からない。
ジゼル様は…どうなった?─と、口を開く前に、体が冷たい何かに包み込まれて、そのまま意識を手放した。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
✧*。٩(ˊᗜˋ*)و✧*。
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