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レナルド=フォレクシス王太子
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祭典の3日前の今日、フォレクシスの王太子レナルドがレイノックス王国の王城に到着した。今日の夜は、王族のみで夕食をとるとの事だった。
今回の祭典の主賓はフォレクシス王太子と、竜王。竜王は祭典当日に来るらしい。
他国に関しては、王族が来るのか大使が来るのかは分からないが、祭典の前日にやって来るそうで、今はまだ、お兄様達しか来国していない。
「ルチア様とご飯を食べるの、久し振りで嬉しいです!」
「私も嬉しいわ。」
私は今、久し振りにリルとヴァレリアと3人で、私の部屋で夕食をとっている。
リルも、祭典が終わるまで王城で寝泊まりしていて、いつもは指導をしてくれている人達と一緒にご飯を食べたりしているけど、今日はフォレクシス王太子一行が来国すると言う事で、訓練も休みだった為、久し振りに一緒に夕食をとる事になったのだ。
ーロルフ様とは、何か進展はあったのかしら?ー
いや……まだないか…。ジゼルとの婚約が解消されたばかりだし、ロルフ様も自覚したばかりだもんね…。でも、早目に何とかしないと……エリアナ=オコーエルが動きそうよね……。彼女なら、きっと、ロルフ様を狙って来るだろう。勿論、親である公爵だってグイグイ来るだろう。
「祭典では、リル達、聖女は何かするの?」
「祭典の初日に、大神殿でお祈りをした後、大神殿から王城までパレードをしながら帰って来て、夜は夜会に参加します。お祈りは大丈夫なんですけど、やっぱり夜会と言うのは、平民の私にとっては遠慮したいところかな。」
確かに、夜会と言うのは色々と面倒くさいものがあると思う。特に、聖女であっても平民のリルに対して、貴族達がどんな目で見るのか……学園でのリルを見ていれば、良いものばかりではない事は分かっている。でも……きっと、自覚したロルフ様と王太子がフォローしてくれるだろう。
「その夜会で、リルは誰とダンスをするの?」
「ロルフ様と踊る事になったの。」
この国に居る聖女5人のうち、未婚で婚約者が居ないのは、リルとオコーエル様だけのようで、他の3人はそれぞれ夫や婚約者と踊るそうだ。
「オコーエル様は誰と踊るの?」
「オコーエル様は、王太子殿下と踊るみたい。」
ー王太子、自分の体を張って、ロルフ様の相手をリルにしたのねー
「リル、第二王子と踊れて…良かったわね?」
「え?」
「いつも踊っているなら、気持ち的には少し楽だろうし……2人はとってもお似合いだと思うわ。」
「お似合いって………それは、ロルフ様に失礼になるわ……私は…平民だし。」
ーあれ?リルは…自覚してる?ー
そうか。自分は平民だから─と、意識的にロルフ様から一歩引いていたのか。婚約者が居たと言う事もあったんだろうけど。
「でも、リルは“聖女”なんだから、もっと自信を持って良いと思うわよ?兎に角、夜会は……そんな事は気にせずに楽しんで欲しいな─って思ってるわ。」
「ルチア様…はい。ありがとうございます。」
はにかんだ様に笑うリルは、やっぱり可愛い。
夜会では、平民だと気にせずに楽しむ事ができたら良いな─と思いながら、「まだまだ自信がないので、食事のマナーのチェックをして欲しい!」とリルにお願いされ、チェックをしながら夕食を続けた。
その日の夜は、いつもより人気を感じるからか、ベッドに入っても眠れず、テラスに出て夜空を眺める。
いつもは静かな夜だけど、遠くから微かに音楽が聞こえて来る。
よくよく考えたら、祭典とか目の当たりにするの、初めてじゃないかなぁ?リルから聞いた話では、街には色んな屋台や露店もたくさん並んだり、路上パフォーマンスなどもあったりして、大賑わいになるらしい。
ー1日だけでも良いから、行けたら良いなぁー
そう思いながら夜空を見上げれば、そこには満点の星が輝いていた。
******
『レナルド、ストーカーみたいだぞ?』
『煩い。しょうがないだろう。こんな時間でもなければ、来れなかったんだからな。』
ーまさか、テラスに出て来るとは思わなかったがー
俺はレナルド─フォレクシスの王太子であり、ジゼルの兄でもある。兄と言っても、兄らしい事など一度もした事はないし、最後に会話を交わしたのがいつだったかさえ覚えていない。覚えているのは、ジゼルがまだまだ赤子と呼ばれる時に手を握った時の温かさと…その次が、シェールの魔力暴走を止めた後の、ジゼルの手の冷たさだった。どれほど“魔女の呪い”を恨んでも恨みきれない。解呪方法も見付からず、時だけが過ぎて行く。それでも、文句の1つ、我儘1つ言わなかったジゼル。
『最後の我儘です。』
そう言って、頭を下げたジゼル。初めての我儘とは言えない我儘は、“レイノックスへの留学”と“ロルフ王子との婚約解消”だった。ロルフ王子との婚約は、ジゼルに未来を見て欲しかったから。そんな身勝手な父や母、俺達の願いは、逆にジゼルを苦しめてしまっただけかもしれない。既に、婚約は解消された。更には、ロルフ王子と聖女リルとやらの後押しもして欲しいと。それが、ジゼルの願いなら…父も母も叶えるだろう。
テラスで夜空を見上げているジゼルを、少し離れた所から見つめる。今の俺は、白虎に獣化して、夜中になり皆が寝静まった頃にこっそりとジゼルを覗きに来たのだ。ジゼルは、こちらには気付いていない。
『ルチアは、可愛くなりましたね。』
『ジゼルは昔から可愛かったし、気安く名前を呼ぶな。ジゼルは俺の可愛い妹だ。』
『今の彼女は、私の可愛い妹のルチアです。』
『───ちっ……』
屁理屈を言うのは、俺の近衛であり、セレニアの婚約者であり、書類上のルチアの兄でもあるアンディー=クルーデン。コイツもまた、獣化して狼になっている。
ジゼルは暫く夜空を眺めた後、部屋へと入って行った。
『ジゼル……』
ー何としても、解呪方法を見つけ出す!ー
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
今回の祭典の主賓はフォレクシス王太子と、竜王。竜王は祭典当日に来るらしい。
他国に関しては、王族が来るのか大使が来るのかは分からないが、祭典の前日にやって来るそうで、今はまだ、お兄様達しか来国していない。
「ルチア様とご飯を食べるの、久し振りで嬉しいです!」
「私も嬉しいわ。」
私は今、久し振りにリルとヴァレリアと3人で、私の部屋で夕食をとっている。
リルも、祭典が終わるまで王城で寝泊まりしていて、いつもは指導をしてくれている人達と一緒にご飯を食べたりしているけど、今日はフォレクシス王太子一行が来国すると言う事で、訓練も休みだった為、久し振りに一緒に夕食をとる事になったのだ。
ーロルフ様とは、何か進展はあったのかしら?ー
いや……まだないか…。ジゼルとの婚約が解消されたばかりだし、ロルフ様も自覚したばかりだもんね…。でも、早目に何とかしないと……エリアナ=オコーエルが動きそうよね……。彼女なら、きっと、ロルフ様を狙って来るだろう。勿論、親である公爵だってグイグイ来るだろう。
「祭典では、リル達、聖女は何かするの?」
「祭典の初日に、大神殿でお祈りをした後、大神殿から王城までパレードをしながら帰って来て、夜は夜会に参加します。お祈りは大丈夫なんですけど、やっぱり夜会と言うのは、平民の私にとっては遠慮したいところかな。」
確かに、夜会と言うのは色々と面倒くさいものがあると思う。特に、聖女であっても平民のリルに対して、貴族達がどんな目で見るのか……学園でのリルを見ていれば、良いものばかりではない事は分かっている。でも……きっと、自覚したロルフ様と王太子がフォローしてくれるだろう。
「その夜会で、リルは誰とダンスをするの?」
「ロルフ様と踊る事になったの。」
この国に居る聖女5人のうち、未婚で婚約者が居ないのは、リルとオコーエル様だけのようで、他の3人はそれぞれ夫や婚約者と踊るそうだ。
「オコーエル様は誰と踊るの?」
「オコーエル様は、王太子殿下と踊るみたい。」
ー王太子、自分の体を張って、ロルフ様の相手をリルにしたのねー
「リル、第二王子と踊れて…良かったわね?」
「え?」
「いつも踊っているなら、気持ち的には少し楽だろうし……2人はとってもお似合いだと思うわ。」
「お似合いって………それは、ロルフ様に失礼になるわ……私は…平民だし。」
ーあれ?リルは…自覚してる?ー
そうか。自分は平民だから─と、意識的にロルフ様から一歩引いていたのか。婚約者が居たと言う事もあったんだろうけど。
「でも、リルは“聖女”なんだから、もっと自信を持って良いと思うわよ?兎に角、夜会は……そんな事は気にせずに楽しんで欲しいな─って思ってるわ。」
「ルチア様…はい。ありがとうございます。」
はにかんだ様に笑うリルは、やっぱり可愛い。
夜会では、平民だと気にせずに楽しむ事ができたら良いな─と思いながら、「まだまだ自信がないので、食事のマナーのチェックをして欲しい!」とリルにお願いされ、チェックをしながら夕食を続けた。
その日の夜は、いつもより人気を感じるからか、ベッドに入っても眠れず、テラスに出て夜空を眺める。
いつもは静かな夜だけど、遠くから微かに音楽が聞こえて来る。
よくよく考えたら、祭典とか目の当たりにするの、初めてじゃないかなぁ?リルから聞いた話では、街には色んな屋台や露店もたくさん並んだり、路上パフォーマンスなどもあったりして、大賑わいになるらしい。
ー1日だけでも良いから、行けたら良いなぁー
そう思いながら夜空を見上げれば、そこには満点の星が輝いていた。
******
『レナルド、ストーカーみたいだぞ?』
『煩い。しょうがないだろう。こんな時間でもなければ、来れなかったんだからな。』
ーまさか、テラスに出て来るとは思わなかったがー
俺はレナルド─フォレクシスの王太子であり、ジゼルの兄でもある。兄と言っても、兄らしい事など一度もした事はないし、最後に会話を交わしたのがいつだったかさえ覚えていない。覚えているのは、ジゼルがまだまだ赤子と呼ばれる時に手を握った時の温かさと…その次が、シェールの魔力暴走を止めた後の、ジゼルの手の冷たさだった。どれほど“魔女の呪い”を恨んでも恨みきれない。解呪方法も見付からず、時だけが過ぎて行く。それでも、文句の1つ、我儘1つ言わなかったジゼル。
『最後の我儘です。』
そう言って、頭を下げたジゼル。初めての我儘とは言えない我儘は、“レイノックスへの留学”と“ロルフ王子との婚約解消”だった。ロルフ王子との婚約は、ジゼルに未来を見て欲しかったから。そんな身勝手な父や母、俺達の願いは、逆にジゼルを苦しめてしまっただけかもしれない。既に、婚約は解消された。更には、ロルフ王子と聖女リルとやらの後押しもして欲しいと。それが、ジゼルの願いなら…父も母も叶えるだろう。
テラスで夜空を見上げているジゼルを、少し離れた所から見つめる。今の俺は、白虎に獣化して、夜中になり皆が寝静まった頃にこっそりとジゼルを覗きに来たのだ。ジゼルは、こちらには気付いていない。
『ルチアは、可愛くなりましたね。』
『ジゼルは昔から可愛かったし、気安く名前を呼ぶな。ジゼルは俺の可愛い妹だ。』
『今の彼女は、私の可愛い妹のルチアです。』
『───ちっ……』
屁理屈を言うのは、俺の近衛であり、セレニアの婚約者であり、書類上のルチアの兄でもあるアンディー=クルーデン。コイツもまた、獣化して狼になっている。
ジゼルは暫く夜空を眺めた後、部屋へと入って行った。
『ジゼル……』
ー何としても、解呪方法を見つけ出す!ー
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
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