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慰労会
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浄化巡礼は、誰一人欠ける事なく無事終える事ができた。
王都に帰還してから3日間の休養が与えられた後、慰労会が行われる事になった。
その慰労会には、リュークレインさんは、カミリア王女の近衛ではなく、アリスタ公爵家嫡男として出席する事となった為、婚約者である私も参加する事になった。
本当は、美緒さんと樹君とは慰労会の前に会って話をしたかったけど、陽真が居ると思うと……会いに行く事は諦めた。
その代わり、また落ち着いたら、ゆっくり会おうと約束をした。
慰労会には、数多くの貴族が集まった。
「ある意味、この慰労会は“お見合い”の場でもあるからね。」
と苦笑するのはリナティアさん。リナティアさんも、アリスタ公爵令嬢として、私達と一緒に今回の慰労会に参加している。婚約解消してから釣書が沢山来ているのは知っているけど、未だに新たな婚約は結んでいない。
リナティアさんは、しっかりしていて、本当に可愛くて優しい女の子。この慰労会で、良い人と出会えれば良いなと思う。
そして、国王陛下の挨拶と労いの言葉から始まった慰労会は、通常の夜会では行われるダンスは無しとなり、ゆっくりと食事をしたりお喋りをする事をメインとした夜会になっている。
それは、こちらの世界に慣れてはいない美緒さんと樹君の為でもあった。
ーダンスなんて、できないからねー
と、私も助かった!と、心の中でこっそりと喜んだ。
「美緒さん、樹君、お疲れ様でした。」
「ありがとう。」
「ありがとうございます。」
あちこちから声を掛けられて、色んな人達に囲まれていた2人とようやく話せるようになったのは、慰労会が始まってから1時間程経ってからだった。陽真は、今もケリーさんと一緒にケーキを食べている。その姿を見てホッとしていると
「陽真、巡礼中はずっとケリーさんに怒られてたんだ。」
陽真は剣士としての能力はチート級で、なんでも1人で行動したり、自分勝手な行動をしていたようで、その事をケリーさんにこっぴどく叱られたらしい。
それでも、最初は反発していた陽真も、段々とケリーさんの言う事を聞くようになり、今ではすっかりケリーさんに懐いてしまっているそうだ。
ケリーさんの方はと言うと、“面倒な弟に懐かれた”と、言う感じで、恋愛感情は全く無いそうだ。
陽真は優良物件でもお薦め物件でもないけど、ケリーさんみたいにしっかりした年上の女性が良いのかもしれない。
兎に角、もう二度と私に関わってくれないなら、何でも良い─と言うのが、私の本心だ。
「あ、2人は初めてだったよね?彼女は、リナティアさん。リュークレインさんの妹なの。」
と、美緒さんと樹君にリナティアさんを紹介すると、リナティアさんはフワリと微笑んだ。
「リナティア=アリスタです。宜しくお願い致します。遅くなりましたが、今回の巡礼、お疲れ様でした。そして、ありがとうございます。」
リナティアさんは、軽く頭を下げるだけの所作さえも優雅で綺麗だ。見惚れない方が難しい位に。何度も言うけど、本当に可愛い子なんです。
「私は美緒です。宜しくお願いします。」
「俺は樹。宜しくお願いします。えっと……リナティアさん…と呼んでも?」
「え?あ、はい。リナティア─と、呼んで下さい。」
リナティアさんは筆頭公爵家の令嬢。美緒さんも樹君も爵位はな無いけど、レベルマックスの魔導士であり、精霊の加護持ち─愛し子だから、リナティアさんと付き合っていく事には問題は無い。私の友達の2人が、リナティアさんと仲良くなってくれれば嬉しいな─と思っていたけど……。
顔を少し赤らめているリナティアさんと、そのリナティアさんを優しいし目で見ている樹君。2人で楽しそうに話をしている。
ーリナティアさんが、めちゃくちゃ可愛い!!ー
「ねーねー、杏子さん。あの2人……アリじゃない?」
と、美緒さんが私にコソッと耳打ちをする。
「ふふっ。アリだと、私は嬉しいかな。」
正直に言うと、美緒さんと樹君はもしかして─と思っていたけど、全くそうではなかったらしい。
しかも!なんと!美緒さんは、浄化巡礼で同行していた魔導士さん達の中に気になる人が居るらしく、今度、その人と街にお出掛けする約束をしているらしい。「また、ゆっくり話を聞いてね。」と顔を赤くした美緒さんも、めちゃくちゃ可愛い!しかも、コレ、“女子トーク”とか言うやつですよね!?高校の時に憧れていた女子トーク!!「勿論!いつでも聞くよ!」と、あまりの嬉しさに、美緒さんの両手を握りしめながら答えた事は許して下さい。
そんなこんなで、美緒さんも樹君もリナティアさんも、なんだか幸せそうに笑っていて、見ている私までもが幸せな気分になった。
「キョウコ、そろそろ…俺の事も見てくれる?」
「ひゃいっ!?」
リナティアさん達に向けていた視線を、リュークレインさんの手によって、顔ごとリュークレインさんの方へと持ち上げられた。
「見ます!しっかり見るので、この手は離して下さい!」
ーこんな事をされると、心臓がいくつあっても足らないからね!?ー
「──可愛いな。」
「──ぬぁっ!?」
手を離してくれた代わりに、そのまま頬に軽くキスをされた。目の前に居た美緒さんと樹君には微笑まられ、リナティアさんにはまた頷かれ、遠巻きで見ていた数名の令嬢には黄色い声をあげられた。
王都に帰還してから3日間の休養が与えられた後、慰労会が行われる事になった。
その慰労会には、リュークレインさんは、カミリア王女の近衛ではなく、アリスタ公爵家嫡男として出席する事となった為、婚約者である私も参加する事になった。
本当は、美緒さんと樹君とは慰労会の前に会って話をしたかったけど、陽真が居ると思うと……会いに行く事は諦めた。
その代わり、また落ち着いたら、ゆっくり会おうと約束をした。
慰労会には、数多くの貴族が集まった。
「ある意味、この慰労会は“お見合い”の場でもあるからね。」
と苦笑するのはリナティアさん。リナティアさんも、アリスタ公爵令嬢として、私達と一緒に今回の慰労会に参加している。婚約解消してから釣書が沢山来ているのは知っているけど、未だに新たな婚約は結んでいない。
リナティアさんは、しっかりしていて、本当に可愛くて優しい女の子。この慰労会で、良い人と出会えれば良いなと思う。
そして、国王陛下の挨拶と労いの言葉から始まった慰労会は、通常の夜会では行われるダンスは無しとなり、ゆっくりと食事をしたりお喋りをする事をメインとした夜会になっている。
それは、こちらの世界に慣れてはいない美緒さんと樹君の為でもあった。
ーダンスなんて、できないからねー
と、私も助かった!と、心の中でこっそりと喜んだ。
「美緒さん、樹君、お疲れ様でした。」
「ありがとう。」
「ありがとうございます。」
あちこちから声を掛けられて、色んな人達に囲まれていた2人とようやく話せるようになったのは、慰労会が始まってから1時間程経ってからだった。陽真は、今もケリーさんと一緒にケーキを食べている。その姿を見てホッとしていると
「陽真、巡礼中はずっとケリーさんに怒られてたんだ。」
陽真は剣士としての能力はチート級で、なんでも1人で行動したり、自分勝手な行動をしていたようで、その事をケリーさんにこっぴどく叱られたらしい。
それでも、最初は反発していた陽真も、段々とケリーさんの言う事を聞くようになり、今ではすっかりケリーさんに懐いてしまっているそうだ。
ケリーさんの方はと言うと、“面倒な弟に懐かれた”と、言う感じで、恋愛感情は全く無いそうだ。
陽真は優良物件でもお薦め物件でもないけど、ケリーさんみたいにしっかりした年上の女性が良いのかもしれない。
兎に角、もう二度と私に関わってくれないなら、何でも良い─と言うのが、私の本心だ。
「あ、2人は初めてだったよね?彼女は、リナティアさん。リュークレインさんの妹なの。」
と、美緒さんと樹君にリナティアさんを紹介すると、リナティアさんはフワリと微笑んだ。
「リナティア=アリスタです。宜しくお願い致します。遅くなりましたが、今回の巡礼、お疲れ様でした。そして、ありがとうございます。」
リナティアさんは、軽く頭を下げるだけの所作さえも優雅で綺麗だ。見惚れない方が難しい位に。何度も言うけど、本当に可愛い子なんです。
「私は美緒です。宜しくお願いします。」
「俺は樹。宜しくお願いします。えっと……リナティアさん…と呼んでも?」
「え?あ、はい。リナティア─と、呼んで下さい。」
リナティアさんは筆頭公爵家の令嬢。美緒さんも樹君も爵位はな無いけど、レベルマックスの魔導士であり、精霊の加護持ち─愛し子だから、リナティアさんと付き合っていく事には問題は無い。私の友達の2人が、リナティアさんと仲良くなってくれれば嬉しいな─と思っていたけど……。
顔を少し赤らめているリナティアさんと、そのリナティアさんを優しいし目で見ている樹君。2人で楽しそうに話をしている。
ーリナティアさんが、めちゃくちゃ可愛い!!ー
「ねーねー、杏子さん。あの2人……アリじゃない?」
と、美緒さんが私にコソッと耳打ちをする。
「ふふっ。アリだと、私は嬉しいかな。」
正直に言うと、美緒さんと樹君はもしかして─と思っていたけど、全くそうではなかったらしい。
しかも!なんと!美緒さんは、浄化巡礼で同行していた魔導士さん達の中に気になる人が居るらしく、今度、その人と街にお出掛けする約束をしているらしい。「また、ゆっくり話を聞いてね。」と顔を赤くした美緒さんも、めちゃくちゃ可愛い!しかも、コレ、“女子トーク”とか言うやつですよね!?高校の時に憧れていた女子トーク!!「勿論!いつでも聞くよ!」と、あまりの嬉しさに、美緒さんの両手を握りしめながら答えた事は許して下さい。
そんなこんなで、美緒さんも樹君もリナティアさんも、なんだか幸せそうに笑っていて、見ている私までもが幸せな気分になった。
「キョウコ、そろそろ…俺の事も見てくれる?」
「ひゃいっ!?」
リナティアさん達に向けていた視線を、リュークレインさんの手によって、顔ごとリュークレインさんの方へと持ち上げられた。
「見ます!しっかり見るので、この手は離して下さい!」
ーこんな事をされると、心臓がいくつあっても足らないからね!?ー
「──可愛いな。」
「──ぬぁっ!?」
手を離してくれた代わりに、そのまま頬に軽くキスをされた。目の前に居た美緒さんと樹君には微笑まられ、リナティアさんにはまた頷かれ、遠巻きで見ていた数名の令嬢には黄色い声をあげられた。
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